幻想郷で死に戻る俺は   作:せかいちっ!

78 / 238
七十六話 トラウマの月兎〜lunatic rabbit.

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

姫様の暇潰しに付き合えと言われたが、こちらのお嬢様もだいぶ暇しているらしく……かなりの頻度で呼び出される。

 

 

「蓮司、暇なのだけど噺は無いの?」

 

 

「……こっちの姫様にも何かないか絡まれるんだけど」

 

 

「って事はあるじゃない、話しなさい」

 

 

「人形持ってきます」

 

 

永遠亭でも忙しなさは変わらない。

部屋へと戻り、人形をバッグから持って行く……

 

 

「あっすみません」

 

 

「えっ……」

 

 

油断していたわけではないが、自分の部屋にあの兎がいる……

俺を狂気に陥れたあの兎が……

 

 

「なんで……ここに……?」

 

 

「姫様から部屋の掃除を言われまして。お客様が居ない時間をと思ったのですが申し訳ありません」

 

 

天井を見る事で視線を逸らす。

真正面からは無事だとしても見る気はないし、無事だとも思えない。

 

 

「あの……何をなさっているのでしょうか?」

 

 

「目を……見ないように」

 

 

「ああそうですねすみません、瞳を見せるわけにはいかないですもんね!!」

 

 

やっぱり、あの瞳は覗き込んではいけないものらしい。また見たらアウトだった。

 

 

「兎に角……部屋から……」

 

 

「あっすぐに出ますね」

 

 

そうして近付いて来るが、一向に出る気配がない。何があった?

 

 

「あのすみません……」

 

 

「……何?」

 

 

「どいていただけると」

 

 

「ああ、そうか……」

 

 

脚が竦んでいて、うまく動かせない。

そのせいで兎も外に出れずに半ば詰みなんじゃないかと思い始めて来た。

 

 

「後少し……動いていただけると」

 

 

「分かっては居るんですが……」

 

 

俺が邪魔で外に出られない。

慌てて探す、そして上を向いてそのまま下がるといった無謀な行為を行った結果……つまづいた。

 

 

「危ないです!!」

 

 

そのまま手を引かれたが、結局もつれて倒れる。

瞼を開けると、赤い瞳に吸い込まれる程近くにある。

 

 

「わああああああああああ!?」

 

 

「なっなんですか!?」

 

 

「何があったの!?」

 

 

レミリアが慌てて部屋から出て来る。

あっこれは不味い……

 

 

「……蓮司、頼んだはずの事をせずに何してるの?」

 

 

「あのレミリア……これには理由が、がふっ」

 

 

頭を踏まれた。そう言うのがご褒美の種族では無いので勘弁して欲しい。

 

 

「あの……私は……」

 

 

「勝手に手を出そうとしたんだし、相応の目をあってもらうべきね」

 

 

「そんなつもりじゃあああああああ!!」

 

 

廊下に二人の悲鳴が轟いたが、誰も助けには来なかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「酷い目に遭った……」

 

 

「大丈夫ですか……?」

 

 

「大丈夫で……あれ?」

 

 

「どうかしたんですか!?」

 

 

「いや大丈夫だなって……」

 

 

「だからそう聞いたのですが……」

 

 

狂気の瞳を見たはずなのに、平気だった。

慣れたとかそう言ったのは無いはずだが……どう言う事だ?

 

 

「あの……その瞳って」

 

 

「どうかしました?」

 

 

「見ても大丈夫なんですか?」

 

 

「はい……と言うか日常的に能力が使われてると支障しか無いでしょう?」

 

 

「そう言われるとそうですね……」

 

 

「だから大丈夫です、狂気に陥ったりしません」

 

 

「……良かった」

 

 

「なんでそこまで瞳を怖がるんですか?」

 

 

「いや……実際に狂気は怖いですし」

 

 

「なんで知ってるんです?」

 

 

「いや……本で読んだので」

 

 

「ああ、あの本ですか……本当に面倒です」

 

 

「ダメなんですか?病院の存在を分かってもらえるいい機会だと思ったのですが」

 

 

「能力まで全て晒されていい気分な人は居ませんよ……」

 

 

「そう言われるとそうですね……」

 

 

「と言うわけで私は安全なので見てもらっても大丈夫ですよ」

 

 

「なるほど」

 

 

大丈夫と言われてじーっと見る。

紫の髪に、瞳を前は見れなかったが……ルビーのように透き通った赤だ。

兎の目は赤いと言うが、本当に赤いなあと。

 

 

「あの……」

 

 

「どうしました?」

 

 

「そこまでマジマジと見られると恥ずかしいのですが……」

 

 

「あっごめんなさい」

 

 

慌てて目を逸らす、つい見過ぎてしまった事に申しわけなくなる。

 

 

「私もこうやって真っ直ぐ見られたことがないので……」

 

 

「ついと言うかなんというか……」

 

 

掛けるべき言葉が分からないので曖昧な回答になる。

 

 

「まだ自己紹介すらしてない気がするのですが」

 

 

「そうですよね、ついつい名乗り忘れてた……小野寺蓮司、一般人です」

 

 

「一般人?吸血鬼に好かれているのに?」

 

 

「はい!一般人です!!」

 

 

「分かりました……私は鈴仙・優曇華院・イナバ元月の兎です」

 

 

「月の……」

 

 

「おかしいですか?」

 

 

「いえ、ただ月の住人そこまで居るんだなと」

 

 

「あくまで永遠亭内だけですけどね」

 

 

なるほど、月人がここら辺に集まっているのか。

 

 

「しかし、挨拶もしてなかったって言うのに。色々とすみませんでした!!」

 

 

「謝罪……なのですかね?」

 

 

「だったらありがとうございます?」

 

 

「なんで感謝してるんですか……?」

 

 

「おかしいですか?」

 

 

「おかしいですよ」

 

 

うん、そりゃおかしいよな……

ここの感謝はただのヤバいやつじゃん、よく考えたら……

 

 

「適度に、ですかね?」

 

 

「適度って言葉をこう言って使う人は初めてですが……多分そうだと思います」

 

 

「姫様とかにあまり変な事言わないでくださいね……悪影響受けやすいので」

 

 

「確かに……悪ノリしそうなタイプですね……」

 

 

「本当にお願いしますね……あの泥棒が来てる時点で怯えてるので」

 

 

「了解しました」

 

 

「そこまでずっと見てないならいいですけど……本当に見過ぎないでくださいね!!」

 

 

そう言われるとつい目が行ってしまう。

そしてそれに気付いてまた逸らされる……申し訳ない反射と言うか……

 

 

「しかし……」

 

 

「どうしました?」

 

 

「瞳だけで、警戒してて……話してみたら予想以上にいい人だと思ったので……自分が恥ずかしいと」

 

 

「いえ、これから大丈夫って分かってもらえたなら大丈夫です」

 

 

この子もなんだかんだいい子だったんだ……能力は許す気ないけど、色々と改める必要があるな。やっぱり能力は許す気ないけど。

 

 

「と言うわけで、数日の間かもしれませんが改めてよろしくお願いしますね!!」

 

 

そう言いながら手を握られる。警戒心は無いのか……?

一応はこっちは散々警戒した身なんだけど。

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

流石に永遠亭で彼女もやらかすわけはないか、信じるとしよう永遠亭内でまずい人はいないと。

 

 

「蓮司、人形はまだかし……」

 

 

レミリアが扉を開ける。

今の俺は……手を握られている。

 

 

「懲りてないようね」

 

 

「レミリア!!話を!!」

 

 

今度は踏まれるなどではなくて、部屋へと引きずられて行った……何が起きるか分からなくて怖い。

 

 

「……警戒するべき対象を間違ったな」

 

 

「何言ってるのよ?」

 

 

一番の恐怖は、どうやら友人らしい事が身をもって分かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

to be continued

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。