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「やっと来たのね、随分待たせるじゃない」
「すみません、ついさっき起きたばかりなので」
「まあ良いわ、肝試しどうだったかしら?」
「どうだったって……死に掛けたんですが」
「それは私でも予想外だったってわけよ」
明らかに嘘だろうな……予想外って言って姿が全く見えなくなるのはあり得ない話だ。
「予想外ですか……」
「ええ、その事については幾ら私でも申し訳ないって思ったの。だから今回は各チームに一つずつ願い事を叶える事にしたわ」
それはアリスさんに聞いた通りだ。
貴女の方から言われるとは思わなかったが……
「それで、願いは何かしら?」
「願いですか……」
「ああ、妹の衝動を抑える薬って言うのは既に吸血鬼から聞いたわ。だから別の願いで大丈夫よ」
別の願い……か。
正直浮かんでいるし直ぐにでも言い出す事は出来る。
ただし……博打に近い。
「まだ決まってないかしら?」
「いえ……決まっています」
「まあ、当然よね」
何故確信しているのかは正直不明だが……
こちらを見通していると言うよりも何かを願うと予想が付いているのか?
アリスさん辺りとかから話を聞いたのだろうか?でも俺言ってないしな……
「それで願いですが……輝夜さん」
そう言った瞬間彼女の口角が上がった気がする……どう言う事だ?
「やはりそうよね、私よね。嬉しい話だけど、でもそれはちょっと……」
「妹紅さんに謝って下さい」
「……は?」
「それが俺の願いです」
「……どう言うつもり?」
「かつて自分は妹紅さんに命を救われた事があるんで」
「……初耳なのだけど」
「正直、二人の関係とか知りませんでしたし……」
「……」
「輝夜さん?」
「嫌よ」
……正直答えとしては断られると思っていた。
だが一度賭けた以上は貫き通すと決めたんだ。
「それが俺の願いです」
「ぐぬぬぬぬ……」
妹紅さんも憎悪の目で輝夜さんを睨んでいた。
本来であれば介入する事じゃないのかもしれない……
ただ俺も妹紅さんを苦しめた加害者なのだから……責任を取るべきだ。
「そもそも貴方が何をわかっているって言うのよ!!」
「輝夜さんが本物のかぐや姫で、妹紅さんが不死の薬で不死身になってしまった事は」
「かぐや姫……」
「竹取物語で読みました」
「竹取物語……?私が書いたあの本じゃ?」
「いいえ、違います」
全部情報を出してやる。冥界組に知られるとどうなるか怖い所はあるが……もう退けないんだ。
「外の世界で読みました」
「……まさか、外の人間なの?」
「はい、何故か幻想入りする羽目になりましたが……」
「……だから人嫌いの吸血鬼達とも仲良くなれたのかしら」
「だと思います。初めに会った時は命懸けでしたが……」
実際は死に戻りがあるからだが、流石にそこまで晒すと間違いなく不死である彼女は試しにと殺すだろうし言い出さない。
「紅魔館の中でも異質だと思ったけど……それなら確かに異質ね」
「……それで紅魔館に辿り着く前に妹紅さんに助けられたんです」
「本当に?」
「ええ本当です」
嘘は言っていない、その間に死にはしたが紅魔館の前に命を救われている。
「少なくとも……その恩人にやらかしてしまった以上はどうにかしたいわけですが……」
「……悔しい程に筋が通るわね」
少なくとも彼女は俺の存在もまた輝夜の仕業かと言っていた。
だからここで何もしなければまた続くだろう。
「なら、条件があるわ」
「……なんでしょうか?」
「小野寺蓮司、私の物になりなさい」
嘲笑うかのような表情で彼女は呟いた
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「……断りますけど?」
当たり前だがその言葉に乗る必要はないし、乗る気も一切無い。
「……そこは普通了承する所じゃないの?」
「……俺はそもそも物ではありませんし」
「だったら物扱いしなければ良いと?」
「いいえ、そうでは無いです」
「……貴方は最初から交渉する気無いのね、分かったわ」
「……どうせ俺を妹紅さんに見せびらかすつもりでしょう?」
「刺客を送ったり、直接殺しに行かないだけマシじゃない」
「殺伐しないで、仲直りどうにか出来ませんかと」
「出来るわけないじゃ無い、あの子との因縁は1000年をも軽く超えると言うのに、今更仲直りしましょう?そんな事出来るわけ無いでしょ?」
1000年……20にすらなっていない俺の何十倍の人生だ。
当然それだけの期間ずっと敵でいるのであれば、仲直り出来るとは思えないが……だからと言って何もしないまま終わらせるのは悔いしかない。
「俺が輝夜さんの友人とかで気軽に言ってるわけじゃありません。願いが何でも叶うと言う物を使ってでもどうにかしたいって……」
「ただの外の人間風情が、どれだけ吠えれば気が済むのよ」
「……」
一瞬気圧される。だがこのまま怯えて引っ込んだ所で悪印象が残るだけだ。
「ただの人間だからこそ彼女に恩義を感じてそうしたいと……」
「やっぱり私より妹紅なのね」
「……」
一瞬意味に惑いかけたが、そう言う話では無く俺が誰の味方するかって話だろう。
それは当然、味方するなら妹紅さんの方だと。
恩を仇で返したままは絶対にしたく無いから。
「いいわ、ただし条件を付けるわ。私の頭は安く無いの」
「俺をコレクションアイテムにしないでくださいね……?」
「しないわよ、正直いらないわ」
ここは悲しむべきなのか悩む。悲しんだら隙を突かれそうだが。
「竹取物語読んだのでしょう?」
「読みました……教科書にも載る程ですし」
「だったら分かるわね、かの皇子達が結婚と言う願いを叶えるためにした事を」
「……難題ですか」
「ええ、良く分かってるじゃない」
「しかしアレらは少なくとも幻想郷には無いのでは無いでしょうか?」
「そもそも貴方には彼等ほど人望も金も無いでしょうし期待してないわよ」
「……それは確かに事実ですが。では何をすればよろしいでしょうか?」
「簡単な話よ」
簡単な話と聞いて息を呑む、態々彼女がこれだけ言う事は間違い無く簡単では無いからだ。
「私達が互いに殺し合った長さを知らないから軽口を叩けるのでしょ?だからこそ、その永夜を知りなさい?」
「何を……?」
「永夜返し」
彼女のその言葉と共に、辺りは何も無い闇に包まれたのだった。
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to be continued