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永遠と須臾を操る程度の能力。
それが蓬莱山輝夜の能力であり、時間を一瞬であったり永遠であったり縮めたり伸ばしたりする事ができる。
その為どれだけの期間を過ごそうとも周りにとって一瞬だと言うこともあり、誰も気付けない。
「……俺は、永遠亭に居たはずだよな?」
辺りを見渡しても真っ暗闇だ。
月すらも見えないし夜とも思えない……ただ彼女は言ったはずだ……永夜返しと。
「暗いな……不安になる」
誰か居れば良いと思ったが、当然そんな事は無い、一人でこの闇の中を佇む。
「これが難題か……」
辺りを確認出来ないのは時間経過が長く感じる筈だ……だからこそいつまで待てばいいか分からない今、不安がどんどん募って行く。
「確か外の世界でもこう言ったの聞いた事あった気がしたな」
ネットか何かで聞いた事があった気がする。正確には何かは思い出せないけど、暗闇の中で一人で長い時間いるって、実際狂うのかもしれないな……
「正直な話、寝るのが一番楽なのだとは思う」
どれだけの時間を寝ればいいか分からないが、余計な考えをする必要はないし……と。
そう思いつつ、身体を倒して横になるも眠る事が出来ない。
「……人は暗い方が寝やすい筈だと思うのだけど」
周囲すらも見渡せない暗闇では、不安過ぎて寝付く事が出来なかった。
この見えない先には何が潜んでいるのだろうと、潜んでるとは思えないが……それでも恐怖心が消えない。
「難しいで済むレベルじゃないでしょこれ……」
不安な気持ちを必死に押さえ付けてテンションで乗り切ろうとする。
最初はそう決めたが……終わらない闇に気付けば心は擦り減っていっていた。
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「どれだけ経った……?」
時計の針すら見えないこの世界に、俺はどれだけ閉じ込められているのだろうと……
数時間どころか、数分しか経ってないかもしれないが、そこを確認する術は無い……体力も分かりやすく消耗している。
「……」
いつ終わるか分からない。だからって諦められない……そもそもどう諦めるか分からないけど。
「……何か考えたりで体力使いたくないけど。何か考えないと潰される」
幻想郷内での事を考えたが……正直周りのせいか暗い過去ばかりを思い出した。
「死ぬなよ俺……これ以上に辛い過去はあったろうよ」
幻覚に侵されていたあの時よりはマシだが……これだけ周りが見えないとまた幻覚が起きそうで怖いな……
「いっそ……幻覚じゃない方が恐ろしいまでもあるけど」
1000年分の殺し合いと言っていた……そちらを見せられた方がまずいのは事実だ。
血で血を洗う光景が永遠と流される。そうなった場合は俺ではキツそうだ。
「むしろそれが来たら心が壊れる可能性まであるか……?」
心壊もあり得るかもしれないが……あくまで嫌悪感やそれによって心がダメージを負うだけだ。
それは問題でしかないが……ただ、輝夜さんの言っていた憎悪とどう結び付くかが分からない。
「……」
そのままただただ身構えてしまい体力を無駄に消耗してしまう。
ただし、幸運だったのは……限界を迎えて暗過ぎて眠れないを通り過ぎて、自然と寝てしまえた事だろうか……
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「やっぱりそう上手くはないか……」
目を覚ましたものの、周りはまだ暗いままだ。
このままでは結局また体力を失うか……
「いい加減寂しい……」
言った所で何かが変わるわけではないが……どれだけの時間が経ったか分からないのに、事態は何も変わらず暗闇のまま……
「子の刻、丑の刻とスペルカード自体も進んでいるのかもしれないけど……当然それすらも聞こえない」
本で多少読んで夜明けで終わりだとは知ったけど……と言うか難題と言うよりもうこれ苦行なんじゃ……?
「確か神社とかでやる奴で……」
確かそう言ったら、あの子は苦行は僧侶がやる事で神社じゃなくて寺ですよって言って……それで……それで……
「……君は一体」
無理やり思い出そうとしても頭の中に禁止の二文字が流れ出す。
正直禁止と言う言葉の意味が分からない。何を禁止しているんだ?
「あの時と違って……時間はある」
頭痛で頭を押さえながら、それでもなんとかゆっくり考えようとするが、結論は一つしか浮かばない。
「何かを思い出すことを禁止されている……?」
そう考えると自分は何かを忘れているのだろう……
問題は何をと言うよりも、どれだけ忘れているかだ……
「……流石に幻想郷に来る前の事だけだと思うけど」
外の世界で友達だったはずの人が思い出せない。
他のメンツも殆ど居たしそんな話をしたな程度だ……外の世界を思い出す事を禁止されている?
「それとも……それだけじゃない?」
必死に考えようとすると、まるで幻覚かのように暗闇のはずの辺りに友人達の姿が思い浮かぶ……ただし禁止を表すかのように×印が付いており、さしずめホラーだ。
「疲れてるからだろ……?疲れてるからだよな……?」
疲れてるからこんな得体の知れない幻覚を見るんだと、そう思いながら冷静になろうとするも全くなれない。
「誰なんだよ……なんで思い出せないんだよ」
そう言う能力を持った妖怪に出会った?
そんな筈はないか、文献を読んでも記憶を弄ったりする妖怪は……
「八雲紫?」
勘でしか無いが違う気がする。境界を操れると表記されていたし弄ることは可能かも知れないが……読んだ内容的には違和感がある。
「ただそんな妖怪は他には……」
さとりさんとかなら調べられるかもと思ったが……そもそも心の底に浮かぶ事すら出来ないから無理か。
「輝夜さんが介入してるのかもしれないし……休もう。これも難題が理由とか言われたら嵌ってるわけだしな」
そうだ、その可能性があるんだ……だから耐えないといけないし一度寝るか……
そう思いながら目を閉じる、その瞬間何かを見た気がした……
「にとりさん……?」
あの人が妖怪の山から降りるわけがないし、何より髪の色が違った気がした……
恐る恐る目を開ける、それと同時に酷い頭痛がした。
それを思い出してはならないと言わんばかりに……
「あがっ……」
君なのか?この頭痛の原因は。一部が欠けているのは……
「にとりさ……」
慌てて手を伸ばすが通り抜ける。
やっぱり心身共に疲れて見た幻覚なんだなと。
ただ……それなら俺は何故彼女の様な姿を浮かべる事が出来たのかと。
それもふわっとじゃなくてクッキリと……見た事ないと出来ない様な姿で……
「だったら君は一体……」
しかし限界はとうに超えており、そのまま気絶した。
辻褄が合わない事を時折感じていたが……もしかしてその子が何か知っているのでは?との思いだけ記憶しながら。
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to be continued