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痛みによって目を覚ます……自分の身に何が起きたのか思い出せぬまま。
「いたたたた……」
自分は……そうだ思い出した穴に落ちたんだ……そうしなきゃいけない気がしたから……なんでだ?
「と言うか……」
ベッドで寝かされている……?
誰かに拾われたのか。
「勝手に動き回るのは不味いよな……」
ひとまず周りを確認するが……かなり殺風景だ。
と言うか部屋で家主がどんな人かを判断するのも不味いか……?
「別に判断するくらいなら構いませんよ」
「っ!?」
扉の前に少女がいた……入ってきたのを気付かなかったが、いつのまにだ?
「目が覚めましたか?」
「はい……」
もしかしてこの少女が助けてくれたのだろうか?
それなら命の恩人だが。
「気にしませんよ、そのくらい」
「え……?」
まるで見透かされたような感じがするが……
一体どう言うことなんだ?
「……詳しくは部屋で話します。落ち着いたら来てください」
「分かりました……」
そうして少女が去っていく。
明らかに歳下には見えるし見た感じ可愛らしいように思えるが……何やら違うものも感じた。
「着替えは……少なくとも部屋にないし、行くしかないかな」
お礼も言いたいし行くとしようか……ただ何処行けばいいんだこれ?
『こっちだよー』
「こっちかな?」
建物の中を歩いてゆく、ここ穴の下だよな?
こんな立派な建物があるのか。
そのまま歩いて行って開けた場所に出る。
「……早いですね」
「なんでですかね……なんとなくこっちだと思ったので」
「その割には確信していたような……。まあいいです」
「あの……助けてもらったんですよね」
「まあ……正直助かると思っていませんでしたが」
「ありがとうございました」
「……」
少女は何も答えずにこちらの方を見てきた。
「しかしそんな酷かったんですか俺……」
「地霊殿まで直接落ちて来て全身が潰れる方があるはずなのに……むしろ生きてる方がおかしいです」
「運が良かったんだな俺……」
自分の傷を見ると本気で治療されたのが分かる。
生きていられたのはこの懸命な治療のおかげでもあるんだろうな。
「最低限出来る程度をしたまでです」
「っ……ああ、そう言えば俺の名前は……」
「小野寺蓮司さんですよね、存じております」
「……」
汗が流れる、そしてわざわざ示して来たんだろうなって思う。
もしかして覗かれてるのか?と。
「はい、貴方の心を覗いていますよ」
「凄いっすね……」
「凄いって感想が来るのも意外ですが……」
ああそうだ、そう考えるとこの子も通常の人間とは違う。
あのルーミアのように……
「ええ、私も妖怪です」
「……意外ですね」
「何も妖怪が人を食べるってわけではないですよ」
「なるほど……」
元の世界では考えられないようだ……
いや元々は妖怪なんていなかったけど。
「サトリって知ってますか?」
「……漫画とかでなら」
「そう言えば外の人間でしたね」
「はい、そうですね」
「外に出て行った方がいいですよ」
「なんっ……」
「治療はしましたがそれ以上の面倒は見る気はありません」
「確かにそうか……無理言うのもどうかだし」
「出て行けとは言いませんが、この地霊殿では暮らし辛いと思います」
「出て行けって言われないなら少しだけはいいですかね……この傷で出るのも厳しそうだし」
「……すぐに出たくなりますよ」
「……」
何を企んでいるか分からない、悪い子だとは思わないんだが。
「この地霊殿は嫌われ者が集まっています」
「嫌われているようには思えませんけど……」
心を読まれることは不都合とかはあるかもしれない。
……ただ……嫌われる程では無いのではないだろうか?
「……へぇ」
あれ?もしかして怒ってます?怒らせることしました?
「怒っていませんよ別に。ただ、嫌われ者の意味を……トラウマを見せてあげようってだけです」
「トラウマ……」
嫌な予感がする……首筋に汗が垂れる……
本能がまずいと知らせているように。
「貴方の心底を見させてもらいます」
そう言うと少女の胸元の目が光った。
身体が透き通るような感覚があった。
「貴方はこの世界で……なるほど」
色々と覗かれているのだろう……ただし逆らったところでどうしようもないしそのまま流される。
「死に戻り……貴方もただの人間では無いのですね。もしかして化け物」
「っんな言い方すんじゃねえ!!」
俺は人間だ……化物なんかじゃない……
アイツらが言ってたことは違うはずだ……
そこを掘り返さないでくれ……
「人間の里で裏切られ、嫌われて……今まで生きるのすらどうでもいいと言っていた人とは到底思えませんね」
「……」
そう言われるとそうだ……今までどうでもいいって思ってたのに自分でも激情すると思わなかった。
「この程度で激情するなら地底は貴方がいる場所ではありません、お帰りください」
「ひとつ聞かせてくれ」
俺は本当に妖怪なのか?
「……持っている能力、人間から見れば貴方も十分に化け物でしょう」
「……アンタからすれば?」
「わたしからですか?」
人里で化け物扱いされたんだ……この能力話そうともどうせ化け物扱いされるだろう。
なら妖怪であるこの少女にとってはどうなんだ。
「……なるほど、そう言うことですか」
「ああ、突然キレたり落ち着いたり騒がしくてすまないがな」
「口調がだいぶ荒れていますね、助けた恩をお忘れですか?」
「はぐらかすのはいい、答えてくれ」
「……ただの人間ですよ、所詮大した力もないちっぽけな人間です」
「そうですか……」
「なので妖怪と悪霊の集うここに貴方の居場所はありませんよ」
「ただ……無理やりは追い出さないんでしょう?」
「……わたしに怒りを覚えていたのでは?」
「ああ、確かに化け物なんざ言われて頭に来たよ。そんなわけねえだろって」
「では、どうして?」
「でも少なくとも貴女は俺を人間扱いしてくれますし、こんな能力を持っていてもここでなら人間でいられる」
「人間が住むには適した地では無いんですけどね」
「構わない、どうせ人里でだって外の世界とは多く離れていたんだ」
「後悔しますよ?」
「少なくとも今死んで元に戻るくらいなら、少しでもここで情報集めた方がいいですしね。今はまだロクに動けないのもありますし」
「好きにしてください」
そう言って彼女は席を立つ。
その表情は複雑そうな顔をしている。
「家主さん」
「……古明地さとりです」
名前を聞こうと思ったがそれを察してか先んじて答えてくれる。
古明地さとり、この館の主人で良さそうだが……本当に名前までもがさとりなんだなって。
「では失礼します、あの部屋は使っていいので好きにしてください」
「それじゃあさとりさん」
俺の命を救われて助けられた。
この人がいなければ間違いなく今回もまた死んでいただろう。
ただ……トラウマを思い出させられたのは少し許せない。
だから……
「嫌われ者同士仲良くしましょう」
少しだけ悪態をついたのだった。
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to be continued