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それからまた一日が経ち、明日案内してくれると言う話になった。
今日はジッとしているのもなんだと言われて、一日だけバイトさせてもらっている。
ちなみにだが妹紅さんは一日猶予があるならと人里に行ってしまった。良く話題に出る慧音さんって人だろうか?
骨董屋と思っているのもあり、客層もそう言った物を求めてくるのかと思っていたが……本当に色々な客が来るんだなと。
「どうしたんだい?」
「いえ……冷やかし多いなって思いまして」
「そもそも売ってる物自体少ないしね」
「え?売ってないんです?」
「正直手放すのが惜しいからね」
えぇ……それでいいのか?色々な意味で。
「本人がいいならいいんですが」
「これくださーい」
「それは売り物じゃないよ」
「えー」
「残念ながら売るつもりは無いよ」
「ガーン……」
意気消沈のまま客は帰って行く。
本当に売る気はないんだな……
「と言うわけだ」
「分かりました」
とにかく売らなければいいのだろうか?
いや……それはおかしいか。
「おや」
「どうしました?」
「ちょっと珍しいお客様がね」
「あの人ですか?」
「ああ合っているね。……そうだ対応して来てもらえるかい?」
「それは構いませんが……」
元々さっきまで居た客は見ていただけなはずだけど、何故対応するのだろうか。
万引きとかしそうには思わないんだが……まあいいか。
「あの商品眺めている子ですよね?」
遠くから見て分かった事は、黒髪に三つ編み、首元にスカーフのような物を巻いているように見える。
幻想郷では色々な種族も見ていて、日本人離れしたような見た目の子が多かったが。輝夜さんとかみたいに良くいるようなタイプの人に見える。
「あの人はどうにも苦手なんだ……」
後ろからぼそっと聞こえた気がした。
いや……嫌いだからって押し付けないでくださいよ。
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「いらっしゃいませ」
「……この店、店員雇ったの?と言うか客のもとに来るなんて聞いてないけど」
「まあ自分も行って来てくれと言われたものでして……」
「ふぅん……まあどうせ対応を面倒くさがったんでしょう」
「えぇ……それでいいんですかね」
「どうせあの人は真面目に働く気ないでしょうしね」
その後も霖之助さんの事を良くも悪くも色々と話した。
悪い子では無さそうなんだが……面倒くさそうな理由は分かった。
「一応俺も仕事中ですから……」
「どうせ今はもう他に客はいないわよ」
「そうですね……」
つまりはだいぶ話し込んでしまったらしい。
霖之助さんが何も言わないし問題は無いのだろうけど。
「まあいいわ。あまり話過ぎても営業妨害言われそうだし……売る気がない癖に営業妨害って本当に好き勝手言うわよねって」
「偶に売ってるらしいですから……」
「でも貴方もこんな店で働くだなんて災難ね。好き勝手やる店主に振り回されそうだし」
「……成美くん。そろそろやめてくれないか?」
「やっと重い腰をあげたんですね森近霖之助さん」
「一応客と店主ってだけじゃなくて知り合いなんですね二人とも……」
「一応ね。魔理沙の友人の友人って感じだけど」
「ああ魔理沙さんの……」
「ちょっとアンタも魔理沙と知り合いなの!!」
「え?まあ少しはってくらいですが……」
「今何処に居るか知らないかしら?」
「いえ……今は流石に……」
永遠亭で別れてから何処に行ったかっては聞いてないしな……
と言うかまだ戻って来てないのだろうか?
「ほんと……いつもふらっとして居なくなるわね……香霖堂に通い詰めても来てないし」
「……だから冷やかしはよしてくれと言ったはずだが」
「ならこの前の商品を」
「非売品だ」
「やっぱり売ってくれないじゃない」
魔法の森に近いのもあるせいか魔理沙さんの知り合いはこの辺は多いんだな……
と言うか恨むよりも心配してくれる人もいるんだって驚いたが。
「まあそうね……魔理沙を見かけたら魔法の森に報告しに来てちょうだい」
「え?魔法の森ですか?」
「何かあった?ああ迷うのね……」
「と言うよりもアリスさんと魔理沙さん以外にも森に住んでいる人って居るんですねって」
「……成美くんどころかあちらこちらに妖精までもいるが」
「……マジですか?」
「偶然合わなかったは無いだろうし、森に入った事があるのならばその妖精達に何かされてたのかもしれないね」
「……あの時迷子になったのは!?」
同じ所を何度も回っていたのは……妖精のせいだったって言うのか。
「それは純粋に迷子だと思うがね。迷うには迷うし」
「そうですか……」
勝手に犯人にしてごめんなさい妖精さん。
「よく魔法の森に入ったわね。一般人なら無謀でしょうし」
「あの時は……まあ色々ありましたので……」
「そう……」
そう言いながらこちらの方をマジマジと見てくる。
一体どうしたのだろうか?森に入れる肉体じゃ無いとか?
「貧相ね」
「……うぐ」
「ああごめんなさい。肉体がって意味じゃ無いわ」
「じゃあどう言う意味なんです……」
悲しい事は起こらないで欲しい。
「魂がよ」
「魂が貧相ってどう言う事ですか?」
チキンとかそう言う意味だろうか?それならむしろ逆な気もするが……
「魂が消えかかってる……いえ、これはもう消えている?」
「え?俺死んでるんです?」
いやいやいや、冗談を急に言わないで下さい。
「いえ、ほんの僅かね……これじゃあ生きていけないはずなんだけど」
「第一なんで分かるんですか?」
「私はちょっと特殊でね。生命操作に長けてる魔法使いだからその延長線みたいなものよ」
この子も魔法使いなのか……能力も多種多様なんだなと。
「救済しなければいけない程……弱々しい」
「救済って俺殺されるんです!?」
弱々しいって言った後にだと死は救済とか言われるタイプなんじゃ無いかって思ってしまう。
「いえ、私は地蔵だから。人は皆救済しないといけないのよ」
「地蔵……?」
どう見ても地蔵には見えないんだが……
「ちなみに魔理沙が言う事には触ると柔らかいらしい」
「煩いわよ変態メガネ」
「ははは……」
苦笑いをする。じゃあ触ってみるなんて恐ろしい事は出来ない。
「とにかく風が吹けば消えるような生命をしているわ。気を付けなさい」
「……ご忠告ありがとうございます」
「不満そうね」
「いきなり貴方死ぬわよって言われましたらそりゃ……」
「それもそうね。言い方はあったかもしれないわ」
生命力が薄いってどう言う事だ?
俺はもう死に掛けなのだろうか?
それとも……死に戻りし過ぎて生命が弱って来てるとか……?それは分からないしどうしようもないけど。
「それじゃあ帰るわ」
「次からはもうちょっと別の商品に興味を持ってくれると嬉しいね」
「だったら興味を惹くものか魔理沙でも用意しなさい」
「……君には危険過ぎて魔理沙を売る事は出来ないかな」
「買うわけじゃないわよ!?」
少し怒声を混ぜながら彼女は外へと足を向ける。
「えっと有難うございました……」
「君、名前は」
「小野寺蓮司です」
「じゃあ蓮司さん、もしも何か分かったりしたら魔法の森に訪ねて来なさい」
「何かと言われましても」
「人間は皆救済するのが仕事だから」
「なんで人間って分かったのかも不思議ですが……」
少なくともこの霖之助さんは半妖らしいが俺と区別は付かないと思うし。
「この矢田寺成美に不可能は無いのよ、地蔵が救うべき対象を分からないなんてあってはならないわ!!」
「……あっはい」
大した自信だなと思った。
「それじゃあまた今度魔理沙が来てる事期待するわ」
「僕に言われてもね……」
彼女は帰って行ったが……残念ながら魔理沙さんが来るのは本当に誰も予想が出来ないだろう。
「……それじゃあ最後の客も帰ったし、今日は店じまいだ。明日は無縁塚でいいんだね?」
「はい……有難うございます」
「ん?どうした?」
「いえ……さっき言われた事が気になりまして」
「ああ魂が貧相って話か……気にしても仕方ないだろう」
「そうですかね……」
「どちらにせよ知ったところで行動は変わらないだろう?」
「そう言われるとそうですね……」
「だから君らしく居ればいいと思うよ」
「有難うございます」
俺の魂が弱りかけているのは何が理由だか分からないが、心当たりがあり過ぎるかもしれない……
ただそれでもやる事は変えてはいけない。その通りだ。
「……深く考えずに寝るか。重要なのは明日だ」
いっそ忘れてしまえば楽になるだろうと思いながら、目を閉じたのであった。
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to be continued