ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~   作:真夜中のミネルヴァ

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サタデーナイトフィーバー ~リア充たちの夜~ 5

 

 大通りを一つ入った日枝神社の裏手、付近に大使館や公邸などが並ぶ閑静な小高い一画にある山王会館は、議員宿舎にほど近い地の利もあって議会関係者や地方から訪れる陳情者たちなどの御用達ともなっている宿泊施設だった。

 そのツインルームの一室――。

 黒田アリスは肌を接した弟のヒサオ――那智陽佐雄――の腕の中で微睡(まどろ)んでいた。入れ子のように背中から抱かれて。

 耳元に、遊び疲れたのか安らかな寝息を立てて休む弟の息遣いを感じている。けれども眠ってはいても、彼の両手は大切な獲物を逃すまいというように彼女のふたつの膨らみを包んでいるのだった。

 美少女の敏感な肉の蕾の先端が男の(たなごころ)に軽く触れるたびに甘い感覚を生んでいて、彼女が眠りに落ちそうになるとそれを阻んで許してはくれないのだ。

 愛されて、何度も逸楽の波にもみくちゃにされて、ようやく辿り着いた波打ち際。

 静かな……二人だけの秘密のベッド……。

 行為の妨げとなって疎ましかったのか、暖房のよく効いた部屋で毛布は床に落とされていて、若い汗のにおいのする真っ白なシーツの上で上気した色白の女体が(つや)めく事後の余韻を留めていた。

 窓の外はすっかり暗く、ベッドサイドに備え付けられたデジタルクロックは21:36を示している。

 姉弟で一緒にチェックインをしたのが午後の四時少し前。

 議員の親族だからということなのか、思っていた通りにホテル側からは特に身分の確認をされることもなく、何事もなく無事に部屋へと入ることができたのだった。

 扉が閉じて二人だけになってから、戯れにするような軽い挨拶のキスからはじまって、気がついたときには裸に剥かれてベッドの上に身を横たえていた。

 それから――。

 うたた寝を何度か挟みながら、もうかれこれ五時間もの間、一心に睦み合っていたようである。

 夕食さえも忘れて……。

 弟に抱かれるのはこの日で三度目のことだったが、以前とは違ってまるで別人のように大胆にふるまったヒサオにアリスは途惑いながらも応えてしまっていた。弟が示した情熱の一途さと、流されるままに自らが演じてしまった痴態を思い出すと、恥ずかしさが蘇ってたちまち身も心もまた妖しく熱くなってくる。

 これで良かったんだという思いと、いけないことをしてしまったという罪の意識とが少女の胸を往き来していた。

 それは以前のようなお互いさまのセックスではなくて、自分の体が男の色に染め上げられていくという背徳感のある経験だったからなのかもしれない。

 けれども肌を許したのがヒサオであったことを後悔はしていなかった。互いに初体験の相手として、もっとも身近な、そして親密な姉弟として、ほんのささやかな冒険にチャレンジしてみることがそんなに悪いことのようには思えなかったのだ。

 それに弟が自分を姉としてではなく異性として見ていることには、実際に彼がそれを冗談めかして口にするようになるずっと以前から気がついていた。

 そして自分自身も心密かにヒサオに対して男を感じていたのだ。

 その思いは彼が齢を重ねていよいよ雄性を放つようになって、ますます強くなっていったのだった。

 ただ……。

 こんなにも燃えてしまうと、もう後戻りができなくなってしまうのではないか、もしそうなったら一体どうなってしまうのだろう……?

 それを思うと心にまたさざ波が立つ。

 仲の良い姉弟という(のり)を越えた禁断のいとなみ、近親相姦。

 他人にはけして知られてはいけないこと――。

 それなのに……。

 背中で、うーん――と、いううめき声がして、ヒサオが目を覚ましたのが判った。

 すぐに彼女の胸を包んでいた手が動いて、感じやすい部分を中心に撫でるようにして、アリスはその動きを止めさせようと弟の手に両手を添えるのだった。

「姉さん、ごめん、僕、また寝ちゃったみたい……」

 女の体を這う手の動きには自分のものにしたという自信からか、もうためらいも恐れもなく、腹から脇腹、そして胸へとくすぐったくも心地のいい刺戟を与えてくる。

 アリスの胸はまだ未完成で膨らみきってはいなかったが、色白の体に薄紅色の乳輪が大きく拡がった姿はとても官能的で、服を着ている時の楚々とした容子からは窺い知れないほどの肉感があるのだった。

 股間を飾る漆黒の草むらも匂い立つようにふんわりとしていて、秘密の唇を隠すほどになっている。

 乳先を男の指がなぞるように円を描いて、また目覚めを促していた。

 彼女の長い黒髪をかき分けて、うなじの辺りのにおいを嗅ぎながら唇を寄せられて、

「姉さん、愛してる……」

 囁きかけてきた。

 初めての時、あんなにもぎこちなかった弟が、いまはしっかり彼女をリードして歓びへと導いていた。 

「……ヒサオちゃん……わたしは……あなたの恋人にはなれないのよ……」

 吐息が熱を帯びてくるのがわかって、アリスは弟を諫めた。ただもはやその言葉にどれほどの意味があるのだろうかとも思っているのだった。

 とっくに一線を越えてしまったばかりか、情熱のおもむくままに人には見せてはならない姿になって禁忌の上にも禁忌を重ねてしまった罪深い自分たちには、どんなお行儀の良い言葉も空々しく響くばかり。

「どうして……?」

「だってわたしたちは……」

「姉と弟だから――?」

「そうよ……」

「セックスをすれば、たとえ姉弟でももう恋人同士だよ。僕は姉さんのことが好きで、ずっと姉さんとしたかったんだから……姉さんは違うの?」

「………」

「それに……僕たち、本当に姉弟なのかな……?」

「……きまってるでしょ……なにをいってるの、いまさら……」

「だって僕、姉さんの体の匂い、好きだから……」

「変なこと、言わないでよ……」

 (たしな)めたものの本音では安堵してもいるのだった。睦んだ相手から体臭を好まれて、女心がくすぐられている。

「でも、匂いってとても大事なことなんだって」

「大事なこと?……またそれも、“その人”から教えてもらったの……?」

「うん……」

 愛撫の最中、以前とはまるで違うやり方になって、前戯に惜しみなく時間をとるようになった弟の変貌ぶりに驚いたアリスがその理由を尋ねると、友人からいろいろとセックスに関する秘訣を教えてもらったのだという。

 その友人にも同様に年上の恋人、それも未だヴァージンのままにされている子が居るそうで、いやらしいことにオーラルセックスの豊富な経験から女体の仕組みや、なりたちをよく心得ていて、どこをどのようにするといいのか、逆にどうしたらいけないのかといったことをいろいろ吹き込まれてきたらしい。

「もし僕らが遺伝的に近くてインセストタブーが働くのなら、相手の体臭を疎ましく感じるはずでしょ? でも姉さんには全然そんなことにならなかったよ……」

 たしかにアリスも弟の体臭を愛おしく感じることはあっても、けして嫌だとは思わない。

「……それは……ただ昔から親しんでいて、慣れていただけなのかもしれないから……」

「僕が姉さんのだいじなところの匂いを知ったのは、つい最近だけど」

「ヒサオちゃんっ――」

「彼女のセックスの匂いが好きっていうのは、二人の体の相性がとてもいいっていうことなんだって」

 露骨な言葉をぶつけられて、アリスの白皙の美貌がたちまち朱に染まっていく。羞恥に身を竦める姉の肩を、弟の手がいたわるようにして撫でつけていた。

「大丈夫だから聞いてよ、姉さん……」

「………」

「僕、嬉しかったんだ……姉さんの匂いを嗅ぎながら、やっぱり、そうだったんだって胸に落ちて……」

 デリカシーの欠けた物言いに、後ろを振り返って姉として打擲(ちょうちゃく)したいところだったが、真っ赤になったアリスにはそれができずに、

「……やっぱり?……やっぱりって……?」

 と、恥ずかしさに堪えながら探るように問いを返すのが精一杯だった。

「僕たち、姉と弟っていうのとは違うのかもしれないから……」

「……どういうこと……?」

 ヒサオは思いがけないことを口にしてびっくりする。

「ヒサオちゃんは、私たちのどちらかかが……それとも二人ともなのかしら、パパたちの養子だったのかもしれないって思ってるの?……それを疑ってるの?」

「養子というのとは違うかもしれないけど……二人とも同じ両親の間から産まれたのは間違いないから……」

「それなら……」

「でも、僕たちってデザイナーズでしょ……修正パッチを重ねるうちにオリジナルからかけ離れてしまって、もはや親族とは言えないくらいの遺伝的距離ができているとしたら?」

「それは……可能性は否定しないけど……でもそんなのは詭弁よ……それでわたしたちが姉弟ではないことにはならないから……」

「だって、そもそも近親相姦がタブーなのは子供を作った際の遺伝的障害の発生確率が上がるからで、倫理観にも裏付けがあったけれど、今はそれも科学の力で抑えられて意味がなくなっているから、むしろ旧弊と化したのは社会通念の方かもしれないじゃない?」

 そのことはアリスも以前に何度も考えていたことだった。ただ、それで済ませることができるのならどんなに気が楽だろうと思う。

「仮にヒサオちゃんの言う通りだったとしても……私たちが人には言えない関係であることには変わりはないわ……」

「それなら構わないよ、セックスはそもそも人には言えないことだから」

 弟の手がまたアリスの肌の上をじっくりと探るように撫で始めた。

「ちょっと……ヒサオちゃん……」

「こうすると……気持ちがいいでしょ……こっちよりも……ね――?」

「え?……うん……」

 確かに、こうされる――方が、こっち――よりも、ぞくっとするくらい感じるのだった。

 アリスは驚きに大きな黒瞳をパチクリさせる。

「女の子の体は、つるんとしていて滑らかに見えるけど……でも、細かい産毛が生えていて、それは四つ足の動物だったころの名残を留めているんだって……だから産毛の流れも、体についた雨水などを体幹から抹消へ、内側から外へと効率よく流せるようになっていて、その毛足の向きに逆らって撫でると刺戟が強くなるんだ……こうするよりも……こうすると……より気持ちが良くなる筈なんだよ」

 ヒサオの目には、まるで見えない産毛の流れが映っているように、巧みにお触わりしてくる。

「あっ……♡」

 微妙な部分をたどって這い上がってきた手に胸を包まれて、その危ないくすぐったさにアリスは目を閉じて堪えた。

「んっ……だめっ……」

「だめ――? いまのが姉さんのミルクラインだと思うよ……やさしく触れられると気持ちいいよね」

「ミルクライン……!?」

「乳首がたくさんある動物みたいに副乳ができるところなんだって。ヒトでは退化しているけど、でも乳首がなくても感じやすいんだ」

「いやだわ、なんだか女のことに妙に詳しくなって……いやらしい……」

「わからないままに痛いことや辛いことをされるよりいいでしょ?」

「それはそうだけど……」

「ここも感じるよね……姉さんの体、敏感だから……」

 弟の指先が乳首の他にも的確に周りの感じやすいところを捉えていた。それはただくすぐったいだけではなく、体の奥からじわんっと熱っぽくなってくるような妖しいこそばゆさなのだ。

 女の身からすると自分たちの体の秘密が、こんなにも相手方に漏れていることに呆れてため息が出る。実際、ある種の男たちは、女性自身よりも女の生理に通じていたりするから本当に油断がならなかった。

 密森先輩は、わたしの大切な弟にとんだ悪知恵を授けてくれたものだ――と、詰りたくなる。

「……変態じゃないのっ……その人って……」

「そうかなあ? じゃあ僕も変態になっちゃおうかな」

「イヤよ、ヒサオちゃんがおかしくなるのは……」

 ヒサオの言っていた友人が、彼のルームメイトの三年生、密森黎太郎だというのは、わざわざ心を読もうとしなくてもすぐに判ったのだった。肌と肌とを接していれば、たとえ低位のテレパシスト――アリスの能力は他人には伏せていたが、実はレベル1程度の接触テレパスなのだった――であっても自分が閉ざそうとしない限り、相手の心が自然に流れ込んでくることがあるからだ。

 驚いたのは――ヒサオはそのことにはまだ気がついていないようだったが――彼、密森黎太郎の年上の恋人というのが、どうやらあの操祈先生らしいということ。

 俄かには信じられなかったが状況証拠がそれが事実であることを告げていた。

 これまでバラバラだったパズルのピースが一つに合わさったことで描かれた絵は、あまりにも意外なものだった。

 年が明けて、新年の挨拶を兼ねて新生徒会長として教員室を訪れた時、食峰操祈と握手を交わした際に、何故か彼のイメージが流れ込んできたのをアリスはずっと奇妙に感じていて、以来、胸の中にわだかまりとして残っていたのだが、二人が恋人同士だというのならそれも頷けた。

 前生徒会長の山崎碧子が密森黎太郎に関心を向けていたわけも、それで合点がいったのだった。

 碧子が美しい女教師に対して屈折した感情を抱いていることは、彼女の近くに居るものであれば誰もが気がついていただろう、理由は今も謎のままだったが、力の信奉者である碧子にとって、かつて同じ学園で自分以上の能力をもって女王として君臨していた食峰操祈を、どこかで煙たく感じていたとしても分からぬではなかった。

 密森黎太郎が彼女の目に留まったのは、おそらく食蜂操祈にまつわるスキャンダルの臭いを嗅ぎつけてのことだ。

 ここまでの推測はたぶん当たらずといえども遠からず。

 あの学園都市を代表する美女にして、コンテストを経て今や世界にも名を知られることとなった美人教師が、あろうことか未成年の男子生徒と濃密な関係を結んでいる――。

 発覚すれば間違いなく世間を揺るがす大きな問題になるだろう、山崎碧子にとっては自身のコンプレックス解消のための恰好のネタになるのに違いない。

 そういえば――。

 一昨日の午後、密森黎太郎は碧子の自室に招かれていて、女子たちの間でひとしきり噂になっていた。それも前副会長を排して、一対一で一時間もの間、碧子は男子生徒と二人だけになっていた。

 理由は、たしか前会長時代に進められていた年度予算合理化案作成の際の不明朗な会計処理についてとか、だった筈。

 しかし今となってはそれが表向きの理由で、碧子の本当の目的とは、彼と女教師との間の禁断の関係の確認であったに違いないと思う。

 きっと碧子の訊問に対して、能力者でもない密森黎太郎は秘密を守り通すことなどできなかったに違いない。

 ということは……。

 碧子は食峰操祈のセックススキャンダルの確証を握ったことになる……。

 それがいったいどういうことになるのかアリスには判らなかった。

 だが碧子には、願わくば二人をそっとしておいて欲しいと思うのだ。タブーを知りつつ愛を育むことのせつなさと不安は、アリスにとっても身につまされることだったからだ。

 中学生の男子と女教師の恋というのは自分たち同様か、あるいは法的に言えばそれ以上に禁忌、タブーの間柄。

 ただでさえ能力者率の高い学園に居て、今日まで関係を秘匿するのは大変なことだっただろうと思う。

 そしてそれが露見するというのは、おそらく破綻することと同義。ひっそりと愛を育む二人の仲を引き裂くのはあまりにも無慈悲というものだった。

 そもそも恋愛に年齢制限を設けること自体がおかしいと思う。

「どうしたの、姉さん……」

 刹那、考え事をしていて、弟の問いかけに反応するのが遅れていたようだった。その隙を突かれて、弟の手が股間に伸びてきたのがわかると、アリスはそれを拒んで膝を曲げて逃れた。

「ヒサオちゃんっ、もうだめっ――」 

「ひらいてよ姉さん……続きをしようよ……」

「もういいでしょ? だって夕ご飯もまだだし、レストラン、終わっちゃうわ」

「お腹空いたの?」

「わたしは平気だけど……でもあなたはお昼も食べてないって言ってたから、ちゃんと食べないと……」

「それなら僕は大丈夫、あとで下のコンビニに行って何か買ってくるから……今は姉さんの体をもっと食べたいな」

 お尻のあたりに弟の情熱の塊が熱っぽく固く触れている。

「そんなこと言って……」

「だって、女の子の体って凄いんだもん……いろんな秘密の場所があって……姉さんの体にもそれがあるなんて、すごく興味がわくから……」

 ヒサオの指が、また腰骨のあたりから乳房の脇にかけて体の上をスーッとなぞり、それだけでゾクッとするほどの甘い感覚が生まれていた。

「くすぐったいわっ……」

 引きずられるようにアリスも声色を甘くしていた。

「くすぐったいところは、女のコの体の美味しいところなんだって」

 二の腕をさっと掴まれて腋の下を露わにされてしまう。すぐに顔を寄せられて、きわどい匂いを嗅ぎ取られながら、口づけが落ちてきた。

「ねぇっ、おかしなことしないで……」

 けれども美姉の言葉はもう弟の耳には届かない。

 ヒサオの唇がソフトなタッチでくすぐったい部分を上へ下へとなぞっていきながら、おもむろに乳先に戻ってくると今度は尖りを舌の上で転がされる。

 けれども上半身ばかりを責められて油断していると、あっと思った時には下半身を無防備な姿にされていて結局、全身をくまなく愛されてしまうかたちになっているのだった。

 アリスは腕を伸ばし、せつない手の動きで、ダメよ――と、言わせて、弟の顔をそこから追い払おうとした。

 でもやっぱり拒みきれなくて愛撫に身を任せてしまう。

 巧みな、それはそれは巧みな口づけ。やさしくて、ちょっとものたりないとさえ感じるマイルドな刺戟。でも、それこそが女を虜にする危険な罠なのだった。

 体の芯にまで熱を通そうというように、とろ火でじっくりと嬲られると本当にどうにかなってしまいそう。

 初めての時には痛みを感じて、ただ嵐が過ぎるのを待つような気持ちでいたものが、いまは安心してゆだねることができるのだった。

 これも、あの――密森先輩――の入れ知恵なの?

 セックスについてたどたどしかった弟を、ちょっとしたアドバイスで女(たら)しに仕立てあげてしまうような悪い人。

 そんないやらしい男の相手をするとなったら、さぞや先生も大変だろうと思う。

 でも、こんなふうにされたら……。

 弟の両手は乳房にも伸びて、三つの場所が一度に爪弾かれる三重奏になっていた。それは体の中心から手足の先に至るまで、目も眩むような快感を産み出しているのだ。

 胎内に官能の炎を宿した少女の体は、全身の肌の感度が増しているようで、どの部分もちょっと触れられただけでビリっと電気が奔るような感じになっているのだった。

「……ヒサオちゃんっ……」

 ほっそりとした長い脚を大胆に開いて、めくるめく歓びに身を(よじ)って堪えながら、アリスを包むピンク色の光はどんどん大きく膨らんでいった。

「ああっ! いっちゃうっ!」

 最初に訪れた歓びの波に呑まれた瞬間、彼女の中でタブーも倫理もなにもかもが蒸発してしまっていた。

 ただ純粋に弟を愛おしいと思っていた。

 自分をこんなにも大切に愛してくれる人、それなのに自分が彼を愛していけないことなどあるはずがないと思う。

「気持ちよかった?」

 事後の余韻に、まだヒクヒクと小刻みにふるえる下腹部から顔を上げてヒサオがこちらの機嫌を窺っていて、アリスは言葉にする代わりに瞳を大きくしてこっくり頷いた。

「嬉しいな、姉さんに悦んでもらえて……ねぇ、今度は僕が入ってもいいかな……?」

 それはもう拒むことのできないプロポーズなのだった。

 思いどおりの姿にされて、思いどおりに愛されて……。

 あげく最後は、思いどおりにまた結ばれてしまう。

 姉なのに弟を諌めることもままならない。けれども姉と弟ではなくて男と女というのならそれも仕方がないとも思えてくる。

「いいわ……いらっしゃい……」

 恥ずかしい姿のままで裸の胸を開いて招いたのは、姉として弟へ向けて示すせめてもの矜持だったのかもしれなかった。

「姉さん……愛してる……」

 姉に脚を大きく開かせたまま、ヒサオが体の上を這い上がってきた。

「わたしもよ……愛してるわ……」

 唇を重ねる。ソフトなキス。アリスは弟の纏っていた自分のニオイにたじろいだが、でもそれは、ほんの一瞬のこと。ヒサオがぐっと腰を沈めてくると、すぐに感覚が麻痺して気にならなくなっていた。弟の背中に腕をまわし腰に脚を巻きつける。

 やがて二つの体は磁石同士が吸いつくように、どこにも隙間がないほどぴったりと一つになるのだった。

 

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