ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~   作:真夜中のミネルヴァ

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戦いが終わって少年たちは……

 いつもは元気な夏上康祐や松之崎純平も、その日の朝食の際は緊張のためか普段よりも口数も少なめで、たまにブチあげる気勢もカラ元気にしか見えず、食の方もあまり進んでいる容子ではなかったのだが、今はグループ――イケてない男子六人――全員が上機嫌でランチを囲んでいた。

 彼らが陣取る食堂の長テーブルの上には鳥の唐揚げに竜田揚げ、フライドチキン、チキンカツ――学食のその日、日曜日のサンデーランチのメインディッシュの全て――と、それにフライドポテトなど、それぞれが六人前+オマケ分を山盛りにした大皿が置かれ、その他にも麻婆豆腐やら餃子、八宝菜、青椒肉絲などの中華、更にはハンバーガーやピザ、サンドイッチなどもあって、和洋中が入り乱れてのアンバランスの上に纏まりもないとっちらかった取り合わせではあるが、健啖(けんたん)男児の好物ばかりがズラリと並んでまことに賑やかであった。

 みなこれでもかと盛られたどんぶり飯を抱え、据えられたご馳走の片っ端から取り皿に盛り付けると、白飯を掻き込むようにしている。

 さながら勝利を喜ぶ兵士たちの宴のようでもあった。

 さもありなん――。

 今朝の九時に一斉に公表されたウエブ上での学園都市統一高校入試合同合否発表は、昨日の特別考査を受験した生徒たち――常盤台では三年生の半数以上が該当していたが、それでも例年よりはかなり減っていた――にとっては、まさに夫々の将来を決することになるかもしれない重要な結果であり、当事者たちばかりか、その周りに居るものたちにとっても固唾を呑む瞬間だったのだ。

 グループからは夏上康祐、堀田靖明、松之崎純平の三人と、推薦が定まっていたものの長点上機の物性科学系へのチャレンジを選んだ黒川田勇作の計四名が受験組で、推薦で既に長点上機の医学生物学系に決まっていたレイと静菜の情報科学系への推薦を果たしていた志茂妻真の二人がバックアップにまわって受験組を支援する形となって、昨一週間は受験勉強と課題レポートの作成に六名全員が一丸となって取り組んでいたのだ。

 なかでも推薦選考での評価が最も低かったコースケ――夏上康祐――の行方は誰もが気がかりで、レイは過去問の模範解答作りや出題傾向の分析、課題レポート用の文献の整理から、出来上がったテキストの査読などを懸命に行って、もっともエネルギーを割いていたのだった。その甲斐もあってかコースケは長点上機の社会科学系への補欠合格となり、つい先ほど、十一時を少し回った頃に正式な合格通知を得たという次第だったのである。

 これには本人だけでなくグループ全員で快哉を叫んだ。

 かくして誰一人落ちこぼれる事なく無事に進路が決まり、晴ればれとした気持ちで迎えたランチタイムだった。

 それを受けてコースケは

「ここは全部、俺のおごりだ。これまで忙しくてあんまりゆっくり食えなかったからな、みんな今日はなんでも好きにやってくれ、ドリンク、デザートも含めて遠慮なくじゃんじゃんいこうぜっ、俺の手持ちのクレジットがスッカラカンになるまでつきあうからよっ、おまえ等には世話になったからな、ささやかな感謝の気持ちだ、ありがとう……ホント、ありがとな……」

 頭を下げて言いながら、最後は柄にもなく涙ぐむ。

「あー世話をしてやった、まったく手のかかるヤツだったぜ」

 純平も鼻をぐずらせながら応じ、コースケは

「ヌカせ、てめーも十分レイたちに世話になったクチだろがっ」

 口では落としながらも友の片手をガッチリ握り、互いに肘と肘とをぶつけ合って健闘を讃え合う。

「おまえも自分のテストがあるのによ、俺の手伝いもしてくれてたからな……」

「いいんだよ、あれは俺の勉強にもなってたから……だいたいダチがピンチなときは助け合うってのが仲間っつうもんだろっ」

「すまねぇな……チキショウ、せっかく盛り上がってるのにしんみりしちまうじゃねぇかっ、気ぃ利かせろバカヤローっ」 

「良かったよね、本当に良かったよね、みんな頑張った甲斐があって」 

 レイも顔をほころばせながら周りのテーブルを窺うと、すべての生徒が希望を果たしたわけではないらしく、幾つかのテーブルではクラスは違うが、悲嘆にくれる少女を慰める少女たちの姿も見えていた。

 この最終試験に不合格となると、次はランダムに定員割れのある高校へと振り分けられることになるが、実際はアルマ――学園都市を総覧する人工知能――が見えざる手を使い各生徒の適性に応じた進路へと配置され、そちらで自身の本当の才能に気がついて能力を伸ばす生徒も少なくないのだ。

 ただこうした裏の仕掛けに接することができる者は学園都市全体を見渡してもほんのわずかであり、生徒はもとより教職員にすらこうした事情は知らされてはいなかった。

 故に、今朝の合否の結果を受けた後の昼の食堂は悲喜こもごも、レイたちのようなイケてない男子グループに笑顔が弾ける一方で、片やカースト上位だった女子グループの幾つかのテーブル席の上にはどんよりと重たい暗雲が低く垂れ込めているような具合で、明暗がくっきりと分かれた形になっていた。

「けど、おまえ、文転して良かったのか?」

 マコト――志茂妻真――が巨体を揺すってフライドチキンと鳥の唐揚げに交互に食らいつきながらコースケに訊いた。

 もとより惑星開発、軌道エレベーターといった巨大技術への関心が高く、将来は技術屋志望だったコースケが、いくら長点上機とはいえ社会学系へと転向したことは、進学先を優先して夢を諦めてしまったようにも見えるからだった。

「物性科学なら静菜も一流だぜ、おまえの惜敗ポイントならこっちの方が確率高かったし、なにも将来の目標まで変えて長上にこだわんなくても良かったんじゃね?」

 静菜の物性科学系への合格を決めたヤッさん――堀田靖明――があらためてコースケに問いかけた。

「社学だったら、まぁ実績では静菜の方が上っちゃ上だからなぁ、学年トップの山崎碧子サマも靜菜を選んだみてぇだし……まぁあいつは数理経済学、金融工学がお目当てで片手間に在校中にさっさと司法試験に通るつもりなんだろうけどな」

 静菜の社会学系への進学を果たした純平が口を添えた。

「そのことなんだけどね、進学してからでも成績次第では内部でコースの変更もできるからさ」

 レイがコースケに代わって応えた。

「でも、それって相当きついって話じゃん、よほど好成績じゃないと難しいって、だから俺は試験を受けることにしたんだけど」

 長点上機の物性科学系への合格を決めたばかりのゆうちゃん――黒川田勇作――が話を引き継ぐ。

「かもしれないけど、でも無理じゃないし、毎年、各校で一人、二人はそういう生徒も出るっていうから……たしか操祈先生もそうだったんだって」

「「え、そうなのっ――?!」」

 純平とヤッさんが驚きに目を剥いてレイの方を見た。

「知らなかったの?」

「俺は知ってたぜ――」

 マコトは得意げに太鼓腹を反らした。隣でゆうちゃんも相槌を打ち、そしてコースケはわが意を得たりとばかりに大きく頷いている。

「操祈先生は常盤台時代は劣等生だったらしくて、それで高校は推薦も試験も全部落っこちて、当時は今みたいに進路振り分けが無かったから半年遅れて秋入学で長上の社会学系に潜り込んでから、そこから猛勉強して数物系に移ったんだって」

「おいレイ、おまえそんなハナシどうして知ってるんだよ」

「ボクは……栃織さんから以前に聞いたことがあってさ……」

 嘘ではないが、操祈から直接聞かされても居たのだった。

 自身がひどい劣等生で、欠点だらけの落ちこぼれだったことを。とてもレイが思っているような特別な人間などではないという点を強調して。

 大きな瞳を懸命に、可愛い女の子の顔をして、まるで女子中学生のようないとけないオーラを全開にして打ち明けられては、そのあとは思いっきり可愛がらずにはいられなかった。生理を間近にした操祈のにおいは普段よりもかなりきつめで、このとびきり美しい年上の恋人については強い性器臭を好む少年をおおいに歓ばせたのだ。

 きっとそんなつもりなどなかった操祈が泣きそうな顔で真っ赤になって恥じらうところがなにより愛おしくて、粘り気のある濃厚な蜜は彼女にしか作れないすばらしい味と香りとでもてなして、健気に愛撫に堪える操祈自身以上に少年の心を甘くとろけさせてくれたのだった。

 それを思い出すと股間が不穏な気配になりそうで、レイはその時の記憶を脳裏から振り払うと、パンの間にチキンカツを挟んだものをガブリとやって気持ちを切り替えた。そうしながら、

「純平くんは知らなかったの……?」

「知らねぇよ……そうかぁ、栃織ルートかよ……」

「修学旅行の時に先生が話したみたいだよ、今は女子ならみんな知ってるんじゃないかな……」

「俺もレイから聞かされる前に奈津天(なつぞら)さんから聞いて知ってたよ、でもその話、意外だよなぁ、あの先生が劣等生だったなんてサ……あの人、なにもかも完璧にしか見えないから」

 勇作もレイの話の補強をした。

「ボクはてっきり知ってるものとばっかり思ってたんだけど……」

「ハイハイ、カノジョ持ちの情強者、ごっそさん」

「俺らはな、おまえらみたいな有力な敵信傍受班まで備えた最新型のイージスと違って、受信の精度がまるで違うんだよっ、女同士のことになるとヒラ電の会話だって頭の上を素通りするばっかでサッパリ聞こえてこねぇんだ」

「ソコ、妬かない妬かない――」

 マコトがまぜっかえす。

「マコトぉ、おまえはどうして知ってる?」

 ヤッさんが詰め寄り

「俺はこの学園都市の女子のことならたいがいのことは知ってるぜ、ただし美女美少女限定だがな」

「オメーの情報はネットの噂がソースでアテになんねーのばっかだろうがよっ」

「ついこないだも操祈ちゃんがこの春、寿退職するってデマに盛大に釣られてたばっかりじゃねぇかっ」

「あれは……俺もハナからガセだとは思ってたよ――」

 マコトは痛いところを衝かれて防戦となるが、

「てやんでぇ、情けねぇ顔して俺らに第一報を届けに来た時はマジにしか見えなかったぜっ」

「そりゃおまえらだってそうだったろっ――」

 ひとしきりの応酬の後、ようやく

「まぁ要するに俺は長上に入って操祈ちゃんの後をしっかりフォローするつもりってワケだ」

 コースケが得意げに宣言した。目論見によると、入ってしまえばこっちのモンというワケで、入学後に最難関の数物コースへの変更を願い出るつもりでいるという。

「また無謀な事を考えたもんだな……操祈ちゃんとおまえとじゃ比較にもなんねぇだろ」

 仲間からの当然の忠告にもコースケは臆せず悪びれるそぶりもない。

「操祈ちゃんの将来の夫としちゃ、妻のたどったコースをしっかりトレースしてこそだかんな」

 毎度のことながら、コースケの妄想にはつきあいきれんとばかりに、残りの者たちは「どうするよ、このド阿呆は」と互いに顔を見合わせるばかりになるのだった。

「あのなコースケ、夢みんのはたいがいにしとけよ、操祈ちゃんとオメェとじゃ釣り合うわけねぇだろっ、月とスッポン、磯のアワビの片思いだ――」

 そう腐しながら、厨房から呼ばれたヤッさんは「ハイ――」と手を上げて応えて席から立ちあがった。

「磯のアワビのナンちゃらって、またヤッさん、ヤケに時代がかった言い回しをしますなぁ……あ、レイどの、わるいがソコのソースとってくれない?」

「うん――」

 マコトは二枚重ねにしたチキンカツに、レイから渡された業務用の大きなボトルからとんかつソースをどばどばかけながら

「だいたい操祈ちゃんは半年遅れて入って、他の人の半年前に卒業って、高校を二年で、それもトップクラスで卒業してるんだよね。その間、最難関の数物コースへの変更までしてるってのにこの離れ技……まーあの人は普通に天才だね……そのことに本人はさっぱり自覚がないみたいだけど、本当なら中学の先生なんてしてないで最前線の研究者をしてたってちっともおかしくないんだな」

「コースケの数学の成績からすると、難しいとは思うけどトライするのは自由だから、ただ俺はおまえが物性に来るのを待ってるぜ」

 常識人の勇作がみんなが納得できるところに話を落とし込んだ。

「自覚ないっていえばさ、あの人、自分のことどう思ってるんだろ? あんな美人なのにそういうのにゼンゼン頓着ないっていうか、まるで自分のことをどこにでもいる普通の人みたいに思ってる風だろ、そんなの絶対ありえないのに……女子たちも訝しんでるみたいだぜ、なんで先生はいつも人の前に立つのを避けようとするんだろうって、もしも自分らなら自信満々でどこにでもブイブイ乗り出していくのにってな」

 マコトが女子情報を披瀝すると、厨房カウンターから五目そばの丼を載せたトレーを大事そうに捧げ持ちして戻って来たヤッさんが、椅子に長身を窮屈そうにして掛けながらまた話の輪に加わった。

「もしかすると普通の人のフリをしてるのかもな、みんなを萎縮させないように」

「それはないと思うなぁ、あの距離の近さを考えると。女子らと混ざってるときは教師には見えないくらい連中と馴染んでるし」

「その一方で男にはガードが堅そうだしって、まるでウブな感じだもんなぁ……そこが可愛いんだけど」

「昔、先生が常盤台にいたころはイケイケ女子の筆頭格だったらしいじゃん、今じゃ全然、そんな感じしねぇけどな、想像もつかねぇ」

「能力――って、やっぱ精神にも影響を与えてるのかもな、どう思う、レイ?」

「うーん……そういう研究結果も出てるらしいよ……能力を失うと性格も変わるとかって……よく知らないけど……」

「やっぱ、そうなのか……操祈ちゃんは人類史上最強のサイキック、レベル5だったんだもんな……それが無くなりゃ、そりゃ心への影響も大きいわな……」

「でも、性格は変わっても人格までもが変わるわけじゃないって……能力によって覆われていた元からある面が表になるだけだとか……たとえば年をとって一見、振る舞いは穏やかになっても、その人の本質までは変わらないっていうか、嫉妬深い人はやっぱりそのままだったりするよね」

「まぁな、爺さんになっても喧嘩っ早いやつはマンマだしな。うちのジジイを見てるとわかるぜ、年取って丸くなるどころかますます剣呑な感じになってるからよ」

 コースケがこぼした。常になく複雑な顔つきになっていて、家庭内の事情が垣間見えるようである。

「人ってそんなに簡単に変われるもんじゃないから……逆にちょっと成功したりすると浅ましい地金が出ちゃったりする人って珍しくないじゃない? ボクだって自信ないな、もしも巨万の富を得て何でも思い通りにできるとなったら……何をしても裁かれることがないとなったら、見境いがなくなっちゃうかもしれないし……たくさんの人が死ぬことにも鈍感になって、自分の利益だけを追求できるようになっちゃったりしてね……」

「人間は弱いですからな、その点は同感。俺がもしもギガリッチになったら、秘密の無人島にハーレムをつくって、そこに幼女から熟女までズラリと揃えて毎日っていうか、四六時中とっかえひっかえするよ」

 マコトが好色な本音を隠さずに言って、みんなの一斉口撃を浴びることになったが、この巨漢は気にも留めずにどこ吹く風、旺盛な食欲を見せつけてチーズバーガーのダブルをむしゃむしゃやりながら

「おまえたちカッコつけすぎ、人間なんて所詮そんなもんだから」

 と、まるで取り合わない。

 結局、みなそれぞれに思い当たる節でもあるのか「うーん」と唸るばかりになって、誰一人としてそれ以上ツッコもうとする者はいなくなってしまうのだった。

「……だけど操祈先生は世界を自分の思うままにできる力を持っていたのに、そうしなかったんだよ、それって凄いことだよ。巨大な力を持っていて、でもそれを自分の欲望を満たすために使おうとしなかった。それだけでも、とても自制心のある人だと思うな。だから先生の場合、万事について控えめっていうか高度な自己抑制は身に備わったものなんだと思うよ、他者への思いやりとかやさしさとかを含めて……それって今の操祈先生を見てると頷けるでしょ?」

「なるほどね……ワカルぜ……普通はそうならねぇもんな、コイツみてぇにやりたい放題したくなるよな」

 コースケが斜め向かいに居るマコトに向けて顎をしゃくった。

「無い袖は振れねぇ、どんなになっても元からねぇもんは出てきようもねぇってか……」

「たしかに人ってそんな簡単には変われないよな」

「それに……先生の場合はきっと思春期がそんな具合だったから、もしかすると今が先生にとっての本当の意味での中学生活なのかもしれないし……」

 勝手な想像を口にしながらレイは、自分でもそれが実際のところなのではと思うのだった。

 素の操祈は、教室でいる時以上に表情がくるくる変わるのが愛らしいのだ。

 小さなことでも瞳をまん丸にして驚いたり、些細な失敗にシュンと落ち込んだり、喜んだり悲しんだり怒ったり、感情の起伏の大きさは大人のレディというよりも未だ少女のものだった。 

「そうかぁ……だから操祈ちゃんは先生で年上なのにあんなにカワイく見えるのかもな……ヤベっ、よけい好きになりそうだ……好きになっても絶対に手が届きっこないのに……」

 レイの話を聞いていた一同を奇妙な沈黙が支配した。合格通知に沸いていたつい先ほどまでの勢いがすっかり影を潜め、むしろ沈鬱な空気に囲繞されている。

 あらためて自分たちが日頃、当たり前のように接していた担任の教師がどれほど特別な存在であるかに気がついて、その人との別れの時が迫っていることに俄かに思い至ったようなのだった。

「なら、あのオッパイは反則だよな……白ビキニの先生、超スゴかったし……スタイルがいいのはわかってたけど、あんなケシカラン巨乳だったなんて……それに香水らしい香水をつかってないところもオトナっぽくないっていうか……あの顔と体で一年の女子たちみたいなシャンプーと石鹸の香りってのも、もーどんだけなんだかと……」

 自称、女性生理に通じるマコトが鼻の下を伸ばしてそう云い、思春期ど真ん中にいる仲間たちのこみいった心理をひっかきまわしていく。

 担任教師である操祈を性的な目で見ることは、今なお潔癖な男子にとってはどこか禁忌である一方で、かえってそれがより強い衝動をもたらすものでもあるのだった。

 それぞれが去来するさまざまな思いを持て余す中、ひとりレイだけは忸怩を覚えつつも操祈の体臭への飢えを感じていた。

 ああ、先生のにおいが欲しいな……。

 先週は結局、一度もデートができなかったのだ。

 レイの側にも友人たちの試験の支援という理由があったのだが、操祈からも今週はダメ、と念押しされていた。

 理由はあえて訊かなくても判っていた。

 生理期間中だから――。

 少年は、そんなの全然かまわないのに、と思う。むしろそういう時の彼女の姿も見てみたかったが、今はまだ無理強いするのは可哀想だからと大人しくしていたのだった。

「ミスコン……断然、いちばんきれいだったよな……」

「当然といえば当然かもしんないけど、やっぱりあのルックスだから海外では受けてたらしくて、あの後しばらくの間ネット界では、世界の恋人――なんて言われてたりしてたんだよ」

「なぁマコト、たしか操祈ちゃんって、ハリウッドからもオファーがあったんだよな?」

「俺が知ってる限りじゃ四件かな。うちひとつはGGの相手役って話で主人公に敵対する隣国王家のお姫さまっていう大役。歴史大作ロマンの正統派ヒロインって、ピタッとハマれば一気にブレーク間違い無しのビッグチャンスだから、むこうの本気度がどれほどのものだったかが窺えるかと。出演料も素人の新人に対しては破格の好条件だったとかで……他にも企画書だけなら十指に余るくらいあったらしいぜ」

「GGって、あのジョージ・グラントン? ってことはいきなり大スターの向こうを張ってたかもしれなかったのかよ」

「ソソソソ、そゆこと、そゆこと。向こうさんとしちゃ操祈ちゃんを本気で“世界の恋人”にするつもりだったみたいで、でもどんな好条件のオファーが舞い込んでも、先生はそれを片っ端から断って、自分にはその気はないからって話も聞かずに門前払いってことだったらしくて」

「ホント、欲がねぇよなあ、うちのガッコの給料なんてたかがしれてるのによぉ」

「やっぱ世の中、金じゃねぇのよっ、みんな金の話になるとすぐに目の色が変わっちまってムキになるけどよ、人には金よかよっぽどダイジなもんがあるってことを、オレらに教えてくれてんのよ、操祈ちゃんは」

「俺としちゃ胸許が広く開いたドレス姿の先生の、たわわな胸のお肉が息をする度にはちきれそうになるところを大画面で見てみたかったりもするんで、ちょっぴり残念な気もー」

「ヤメロっ、オレたちの操祈ちゃんをそういう目で見るのはっ、オメェのヘンタイ趣味に先生を巻き込むなっ」

「ヘンタイ趣味? じゃあ堀田氏は操祈先生のノースリーブ写真、欲しくないんだ」

「「えっ、そんなのあんのかっ!?」」

 途端に少年たちは色めきたった。

「あるって言ったらどうする?」

「おい、ホントかよその話っ」

 マコトはチェシャ猫のようにニヤニヤ笑いを顔に貼付けたまま、自分のスマホの画面をまるまっちい指先で繰りはじめた。

「俺らが一年の夏、先生が着任する前にウチを訪問した時の写真がオレのスマホにあったのが見つかってでつね……その頃の操祈ちゃんはまだガードがそんなでもなくて、スーツを着てなかったから長い両腕がにょっきり、そんで無造作に腕を上げたときには腋の下もモロ出しって具合で、それはもう目の毒、目の毒、まぁお上品なみんなには関心ないとは思いまつけどね」

 あげくに何ごともなかったようにスマホをポケットに戻そうとしていた。これでは煽られた側はおさまらない。

「え、ちょっと待てよマコト、それだけかよ、見せろよっ」

 コースケは椅子から乗り出して、ハス向かいのマコトのスマホを覗きこもうとしていた。

「だってみんな興味ないんでしょ? 先生にエッチな妄想しちゃイケナイって」

「いや、それはヤスがそう言ってるだけで」

「そうかな、みんな堀田氏の言ったのを黙認してたよね」

「それは……わかった、俺があやまる、悪かった、俺が悪かった、だから頼む、見せてくれっ」

「どうしようかなぁ……」

 なおも勿体つけていたマコトだったが、結局、全員のスマホに当該データを送信して、レイのもとにも数枚の写真が送られてきたのだった。

「うっわー、操祈ちゃんえろーっ」

「なんか水着のときよりエッチぃ感じ」

 そちこちで嘆声がこぼれる中、レイも操祈の瑞々しいセックスアピールに魅了されていた。

 二年半前の操祈は、教師というよりもまだ女子学生そのもので、真夏に白いサマーシャツが眩しいくらいに清潔感があって良く似合っていた。その上で、本人に自覚が薄い分、無防備に肌を晒していて、メンタルな面での性的に未発達な部分とメリハリのある発達した肢体のアンバランスとが絶妙で新鮮なお色気をふりまいている。

「マコトくん、こんなのどこで撮ったの? ボク、全然気がつかなかったよ」

「夏休み中だったから、ほとんどの生徒は帰省してたりしたからね。密森氏も居なかったんじゃないかな。俺は寮の方が学園都市のサーバーが使えてネトゲが捗るから、盆が開けたらすぐにこっちに戻ってきてたのね、そしたら同じ部屋の先輩がいまウチにすっごい美人が来てるゾって教えてくれて、速攻、先輩と二人で校内を探しまわったら図書館にホントにスッゴイのが居て、あとはスマホのカメラを最大望遠にしてちょっと離れたところから気がつかれないようにして撮りまくったってワケ」

 マコトが言うように撮影場所は確かに常盤台の図書館だった。

 異性からの無遠慮な視線をあまり意識していなかったのか、豊かな胸の描く優しい曲線もくっきりと、ほっそりとしていながらももっちりと肉のついた二の腕の白さが目を惹いている。

 高い書棚に腕を伸ばしたときには腋の下の淡い翳りが露わになって、それは特別な女性だけが備えることのある実にドラマチックなエロティシズムを放っているようなのだった。

 レイはデートの度に興味津々にそこを間近にして、セックスにするのと同じくらいの情熱で舐めたり吸ったりをしていて、まるで熱帯果実のような濃厚な甘酸っぱい香り、フルーティでありながらそれでいて肉を感じさせずにはおかない(なまめ)いたにおいまでも良く知っている筈なのだが、他人の写真に捉えられたものにはまた別の趣きがあって好奇を惹かれるのだ。

「綺麗だね、先生は肌が白いから白い服を着てると一瞬全裸に見えてとてもエロティックになるから……いい写真だと思うな……」

 レイは撮影者であるマコトに素直に賞讃の言葉を贈った。

 このころの彼女は自分と出逢う前で、まだオーラルセックスどころか、いかなるキスも知らない生まれたままの無垢であったことを考えると写真がとても貴重なものに思えてくる。表情も今よりもどこか堅くて女のコっぽかった。

「オマエ、なんで今まで隠してたんだよ、こんないーもんをコッソリ独り占めしてやがって」

「いや実はソレ、撮影はしたものの、なぜかずっと暗号ロックの掛かったファイルになっていて、撮った俺でも開けなかったんだよ。アルマにも接続して鍵の解除を試みたんだけど何度やってもダメで、結局、諦めて廃棄するつもりだったんだけど……ところがこの間、廃棄前にもう一度だけ試してみようと適当にパスワードを入れてたら何故か急に解除できてサ」

「ホントかよ?」

「ウソじゃないってば」

 恐らくそれは操祈の、当時はまだ微弱ながらも残っていた“能力”によるものだったのだろうとレイは想った。無意識的に発現された、元レベル5の精神系能力者としての自己防衛反応だと。

 相手の意識に遠隔作用して盗聴や盗撮などの操作に干渉する、というのはレベル3クラスの能力者であれば使うことのある護身法だった。マコトは自分でも気づかないうちに暗号を入力してファイルにロックを掛けていて、撮影終了と同時にそのことを忘れてしまったのだろう。

 それを今になって取り戻した、というのは操祈の力がさらに弱まり、恐らく完全に消滅したことを示しているのではないのかとも思う。

 実際のところレイも、以前に較べて操祈はいろいろな意味で身を守る術を失っているように感じていたのだ。低位の能力者からの透視など、少し前の彼女であれば敏感に反応して対応できたように思うのだが、このところ危険に対しても無防備で無能力者と変らなくなっていた。

 たぶんそこには自分にも責任の一端があると思う。

 女子の能力者の場合、力を失う要因の一つにセックスがあることは、プライバシーとの兼ね合いで公式には認められてはいなかったが今も密かに囁かれていて、恐らくそれは事実なのだ。

 そして操祈はまだヴァージンかもしれないが、実際にはそれ以上の経験を自分とともに重ねてきている。

 その影響がでているのだとしたら……?

 だから、責任を果たさなければ……絶対に先生のことを守らなければ、とレイは思うのだった。

「なんか、初々しいって感じな、この操祈ちゃん……」

「コイツの話だと二年以上前っていうことだからね」

「やっぱ、いーよなー、操祈ちゃんは」

「これだと胸のボリュームの凄さがよくわかるな」

「今もこんな格好を見せてくれるといいのに」

「純平、さすがにそりゃマズいっしょ」

「どして?」

「操祈ちゃんのことが気になって、授業になんなくなっちまう」

「まぁ、そりゃそうだな」

「本当にきれいな女の人は裸に近いほど美しくなるんだっていうけど、先生も薄着の方がより綺麗に見えるよね」

 家庭訪問したときのように、黒いコートに身を包んたシックな装いであるときは息を呑むほどゴージャスで素晴らしかったし、またふわふわのリストカフとノースリーブの組み合わせもセクシーで可愛らしかった。逆に体の線がかくれるたっぷりしたセーター姿も大人の女性のたおやかさを感じて大好きだったし、トレンチコートに中折れ帽でスマートにキマッてるのも、さすがーと感心するほどカッコが良かった。

 でもレイは操祈がいちばん美しく、可愛らしく見えるのは、やっぱり全裸のときだと思う。それも歓びに堪えて、ついには屈していく時の崩れていく瞬間が何よりも魅力的だと。

 美しさと愛らしさ、強さと儚さ、やさしさ、艶かしさ、彼女の魅力の全てを一度に堪能できるのは、その一瞬だった。

 そして生々しい女体のリアルも――。

 美しい女教師に対する憧れと尊敬は、関係を結んでからも少しも変わらないどころか、彼女の体のなりたちを知れば知るほど、この人はやっぱり女神なんだという感動に包まれてしまう。

 たしかに人間くささは彼女もまた一人の女であることを教えていた。けれども密やかな肉芽や花襞、窄まりが悩ましげにふるえるのを間近にしたときの感動は、一瞬で目と心を奪い敬虔な気持ちにさせるのだ。

 この人のことを大切にしなければ、との決意を新たにして、男の勇気を奮い立たせてくれる。それは言葉にならないほどの歓びなのだった。

「女神ってね、自分を飾らないんだよ」

「え、なんだそれ、レイ?」

「以前に誰かからそんな話を聞いたことがあってね、神話の中で女神が全裸で描かれることが多いのは、何も隠す必要がなくて全てが完全で美しいからなんだって。宝石で飾りたてたり、豪華な衣装に身を包んだりしなくても、たとえ粗末な衣を纏っていたとしても、人の心をとらえて気づきを与えてくれる、それが本当の女神なんだってさ。その反対に魔女は醜い本性を偽るために煌びやかに自身を飾り立てるんだ。だからショービズっていう虚飾の世界は先生には最も縁遠い場所だと思うよ。映画スターなんかにならなくて本当に良かった」

「そうだな……やっぱ操祈ちゃん、女神なのかもな、本当に……」

「学園都市の女神か……コースケ、おまえそんなのに惚れたってどうしようもねぇだろ、身のほどをわきまえて憧れてるだけにしといた方が楽だぜ」

「うっせぇ、ヤスにオレの気持ちがわかってたまるかってんだっ、オレの操祈ちゃんへの思いは何があったってゆるがねぇんだっ」

「まーガンバレよ、どんなことにだって可能性はゼロじゃねぇから」

 隣に居た純平がヤレヤレというような顔つきになって友を宥めた。

「おまえはそう思うのか?」

 応援が得られたと勘違いしたのか、コースケは縋るような目で純平を見ている。

「ああ、可能性といえばオメーの身長がこれから六十メートルになって、両目から怪光線を放つようにだってなるかもしれねぇだろ」

 みんな純平が何を言い出すものかと黙っていたが、その答えを聞くやナイナイとばかりに手を振っている。

「いや、ここ学園都市なら何が起こるかもわからないだろ、未来なんて誰にもわからねぇんだからさ」

「まあ、いまはそういうことにしといてやろうぜ、じゃないとコースケもおさまりがつかないしな」

 勇作はここでもオトナな態度を示して、レイは彼がガールフレンドとの交際を順調に進めているのを感じるのだった。

「つうかさ、今週末はバレンタインデーだかんな、とりあえず操祈ちゃんからチョコレートを貰えるかどうか、そこが当面の課題っしょ」

 少年たちの悩ましい感情に火をつけたマコトが、現実的な問題へと巧みにスリ変えて場面を引き継いだ。

「ああ、そうか、そうだったっけな、ゴタゴタしててすっかり忘れてたぜ……土曜日だっけ?」

「ガッコは休みだからなぁ……」

「逆にその日、もし操祈ちゃんがお外にお出かけだったりすると、夏上氏の片思いもゲームセットってことかと……現実を受け止める覚悟はできてる?」

 操祈が学園都市の外に恋人が居て、密かにデートを重ねているらしい、という噂は女子たちの間で拡がっていて、一時、一部の間では操祈の相手候補として囁かれていたこともあったというレイではあったが、幸い、いまは対象からすっかり外されていたようである。

 マコトがそのあたりの事情にどこまで迫っているかはわからなかったが、目下の女子たちの噂については彼の耳にも届いているようだった。

「うっせぇなマコトぉ、そんなことはねぇよっ、その日は操祈ちゃんは学園都市から出るどころか、ガッコの外、教員室の外にだって一歩も出やしねぇからっ」

「そういうことなら俺、今週の操祈ちゃんのスケジュールにさぐりを入れてみることにしまつね」

 マコトはでっぷりしたにきび面に不敵な笑みをつくると、もう何杯目かという山盛りのご飯の上に青椒肉絲の残り汁をドロッとかけて盛大にかきこみはじめた。

 残り一同は巨漢の旺盛な食欲に呆れたように顔を見合わせるのだった。

 

 

            ◇            ◇

 

 

 日曜日の夜、操祈はベッドの上でうつ伏せになって、枕に細っこい(おとがい)を埋めながら枕元に置いた雑誌のページを拡げていた。夕ご飯を独りで食べて、洗いものをして、まだ入浴前だったが部屋着からパジャマに着替えてのんびりしている。

「うーん……どうしようかなぁ……」

 悩ましげに眉根を翳らせていながら、口許には幸せそうな笑みも泛かんでいた。

「レイくんがいけないだゾ……お手製のブラウニーなんて持ってくるんだもん……」

 去年のホワイトデーには彼女からのバレンタインチョコのお返しに、レイは手作りだという実に本格的なチョコブラウニーを贈ってくれたのだ。チョコレートがたっぷりのずっしりと重たいブラウニーケーキは、国内では滅多に見られないもので、大昔、子供の頃にボストンで曾祖父に日曜日の午后に連れて行ってもらったカフェで食べたものに良く似ていた。

 こってりとした甘さと深い苦みがちょっとオトナな感じで、背伸びをしたい年頃の少女の舌と心をとろけさせてくれたのだ。

 彼がそのことを知る由もないが、その味を思い出して懐かしさと、失われた子供時代を思う一抹の寂しさとが操祈の心の琴線に触れて、それを大好きな人から貰ったことが嬉しかったのだった。

 だから、今度はそのお返しをしてレイを驚かせたかったのだが、お手製のチョコレートケーキはレシピを読んだだけで絶望的な気持ちにさせられている。とても独りで再現できそうには思えないものばかりだった。

 仕方なく雑誌のページを捲って、何とか自分の手に負えそうなものを探しているのだが、作れそうな物を選ぶと今度は貧相なものになって気持ちが萎えてしまう。

 

 “彼の♡をゲットするバレンタインチョコレートレシピ28(2×14)選”

 

 特集記事につられて久しぶりに女性雑誌を買ってはみたものの、お風呂に入るのも忘れて、さっきから同じ記事を行ったり来たりの堂々巡りが続いているのだった。

 さすがに去年のように既製品で済ませたくはなかった。二度も同じ手抜きをするのは女の沽券に関わる気がする。だからといってカッコいいものを手作りするとなると上手くやれる自信がない。

「もう、レイくんがいけないんだからねっ、女の子よりもお料理が上手って、それだけでプレッシャーなんだからぁ」

 ぶつぶつと八つ当たりの愚痴をひとくさり。それが済むと今度はそんな情けない自分に自己嫌悪。

「あいたいな……レイくんに……いま、どうしてるのかなぁ……」

 先週はいろいろあって逢えずにいたことで、独りっきりで迎えた週末は余計に恋人の温もりが恋しかったのだ。

「今週末は……あえるかな……あえるといいなぁ……」

 もしあえるのなら……やっぱりとっておきの手作り生チョコケーキを出してびっくりさせたかった。レイが歓ぶ顔を想うと、雑誌の写真にあるようなハート型のケーキを作ってみたくなる。

 下ごしらえやステップの多さを思うと、いたるところにトラップがあって失敗しそうで不安になるが……。

 でも、まだ一週間ちかくあるから……。

 トライ&エラーの余裕はあった。

 だから――。

「……うん……大丈夫、きっとあたしにだってできるわよぉ……」

 操祈は自分を鼓舞するように言葉に力を込めるとベッドの上でころんっと仰向けになった。テディベアの縫ぐるみにするように枕をしっかり胸に抱いて、

「明日、学校の帰りに紅音さんのお店でお買い物しなくちゃ……」

 目を閉じて買い物リストを頭の中で反芻する。

 ビターチョコレートに……チョコレートは二種類、必要よね……それとは別にホワイトチョコレートも……玉子にバターはお家にあるからぁ……飾り付け用にココアパウダーが要るわね、パウダーシュガーももうなくなっちゃったわよね……それにケーキの型は無いから買わないといけないわ……それと……それと……。

 覚えたばかりのレシピを振り返っているうちに、瞼が重たくなってきていつしか眠りに堕ちてしまっていた。

 夢の中で操祈は、白い厨房服姿のカッコいいパティシエになっていてレイにケーキを振る舞って、彼が嬉しそうに頬張るのを満足げに見守っているのだった。

 

 


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