ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~ 作:真夜中のミネルヴァ
深夜――。
操祈はリビングの絨毯の上で恋人である教え子のレイに背後から抱かれて、また悩ましくも甘美な愛と性の冒険に身を投げ出そうとしていた。
彼に触れられて慰められて体の方はとっくに屈してしまっていたが、気持ちだけはまだはかない抵抗を続けていて、女の矜持と見栄とが男の誘惑をただ諾として受け容れてしまうことを良しとせずに我儘を通そうと
でもそれも今となってはただのいつもの定まりごとのようで、自身をより高みへと解き放つためのプレリュード、恋人の優しさを試して甘えているだけなのかもしれない……そんな自覚も
じっさい少年は操祈が拒んでも、苛立ったり不機嫌になったりすることなんて一度としてなかったのだ。いつでもこちらの思いに寄り添って、女の歩幅に合わせようとしてくれる、ますます大切にして、手をかけるのを惜しまずに愛そうとしてくれている。
だから――。
最後には彼の言いなりになるしかなかったのだ。
裸にされ抱かれてしまえば時は女の味方をしてはくれないもの。
さすがにそんなことには応じられない、あるいはたとえ未経験ではなかっとしても、やっぱりそれはイヤ、いくらなんでももう二度とあのようなことを繰り返したくはない――。
そう思って拒んでも、抵抗は一時の
彼が思いを遂げて、操祈は逸楽の淵にどこまでも堕ちていく。
羞しい姿をさらして、女の誇りをかなぐり捨てて――。
どんな秘め事も彼に対してだけはそうではなくなっていた。
男と褥を共にするということは、体の隅々まで
けれども、もう逃れられないと思うことがまた新たな歓びに繋がっているようで、今宵も抱かれて、いろんなところを
アンビバレントな心と体、躊躇いと
女ってズルい生きものだ……。
本当は自分こそが背徳の行為をのぞんでいても、男の所為にしようとするのだから。
まして年端もいかない男の子にその
彼は教え子なのに……自分は先生なのに……。
互いに一糸まとわぬ生まれたままの姿になって肌と肌とを接するようになってからも、少年の繰り出す懇切な愛撫からうわべでは逃れようとしながら、内心ではもっと――と感じている自分の貪欲さに女であることの罪深さを思う。
でも、仕方ないじゃない……。
じゃあ、どうすればいいっていうのよ……。
力まかせにこの子の手を払いのけて、突き放せばいいのっ?
そんなこと……できるはずがないわっ!
きっと彼をひどく傷つけてしまうことになるから……。
この子のため……あたしが我慢することで済むのなら……それでいいじゃない……?
そう考えてから、それが自らを欺くための偽りの思いやりだとすぐに気がつく。
本当はみんなあたしがいけないのよね――。
一線を越えてしまったのは、ひとえに自分がだらしなかったからだ。
教師として折り目正しい接し方をしてさえいれば、こうしたことにはならなかった……。
でも……。
レイを愛する気持ちには一点の曇りもない、それだけは確かなのだと信じたいのだった。
最愛の人から愛されて、可愛がられることほど女にとって幸せなことはない。それを教えてくれたのは彼なのだ。だからといって二人の関係をセックスだけが目的だとはけして思わない。
これがあたしの愛し方……愛してるから……愛してるの……レイくんのことを……誰よりも……。
“あらぁ、愛を言いわけにすれば、なんでも許されるだなんて思わないことねぇ――”
不意に彼女――インナーセルフ――の声が耳元で囁いて、操祈は唇を噛んだ。
“あなたが教え子のオーラルプレイに溺れる恥知らずなセックスジャンキーであることには少しもかわりがないんだから。クンニみたいなひどいこと、よくも大人の女が子供を相手にできるものだわぁ、あはっ、デートのたびにあの子にペロペロしてもらいたくて股間を疼かせているなんて、この恥知らずっ! ナニが学園都市の女神さまぁ、なものよ、ただのショタコンの淫乱女のくせにっ”
誰よりも自分のことを良く知るもう一人の自分から看破されて、返す言葉も見つからなかった。
“ホーラみなさい、今だってもう待ちきれなくなって、アソコがトロトロになってるくせにぃ。賢いこの子がそれに気がついていないとでも思うのぉ? アバズレさん、ああ恥ずかしい、我ながら情けないったらないわっ”
屈折する操祈の代わりに応えたのはレイが以前に自分に語ってくれたことだった。
『クンニリングスはね、いちばん尊い愛の形だと思うな。愛そのもの、神々のキスなんだって……先生みたいな身持ちのいい女の子が恥ずかしいと感じるのは当然だけど……でもワルいこと、イケナイことなんかではあるはずがないんだ……なによりキミはボクを幸せにしてくれるんだから』
愛された後に慰められて、泣きたくなるくらい嬉しい記憶の宝物。
愛撫以上に彼の思いやりが肌にも心にも深く沁み入って、瞬間、後ろめたさも罪の意識も浄化されるような気がしていた。
その時のレイはもはや子供でも教え子でもなくて、全てを委ねることのできる大人の男だった。
甘えても、駄々をこねても許してくれる男の人。
ありのままの自分をみんな受け容れてくれる……。
彼と過ごした二人だけの時間は、振り返るとどれも宝石のように光り輝いていた。
かけがえのない経験、思い出。
みんな彼から贈られたものだ。
ステキだったな……。
母校の教壇に立つようになって二年半。
数学者になる正規のルートから外れることに屈折がなかったわけではなかったが、学ぶことと同様に前途のある子供達に教えることにもやりがいを感じていた。
受け持ったのが一年生のクラスだったのも良かったと思う。
生徒たちの成長を通して自分自身の、そして教師としての成長も重ね合わせて感じることができたのだから。
レイくん、ちっちゃい男の子だったっけ……。
最初に気づいた時の彼は、教室のいちばん後ろの席で体の大きな女の子の影に隠れて、まるでお家に連れてこられたばかりの子犬のようだった。
それもそのはず、出逢ったときの彼はまだ十二歳で、ほんの数ヶ月前までランドセルを背負っていた小学児童だったのだ。
ほんとうにまだ子ども子どもしていたのに……。
そんな男の子と挨拶代わりにキスを交わしたのは些細な思いつき、ちょっとした悪戯心からだった。
可愛い子が恥ずかしそうに顔を真っ赤にするところに胸をうたれてしまったから、それをもっと見たいと思ってしまったから。
きっと油断をしていたのだと思う。
教師としては迂闊だったし、公平にみても明らかにバイオレーションだ。
でも……。
その後のことは振り返っても、自分にはきっと他にどうしようもなかったと思う。
彼は大人しそうな外見とは裏腹に実に大胆で巧みだったからだ。
そんなの想像できるはずないわ、今だって驚かされることばっかりなんだから……。
軽い気持ちのファーストキスから始まって半年余り、“キス――”で恥ずかしさに真っ赤になって身も心もとろけてしまいそうにされていたのは彼女の方だった。
そして今では、そのためにデートを重ねているといってもいいような状態になっている。
思ってもいなかったのに……。
どうしてこんなことを知ってるの――?
どうしてこんなことをするの――?
どうしてこんなことができるの――?
果たして初心な男の子とばかり思いこんでいた彼は、実際の経験はともかく女体に関して実に豊富な知識を持っていただけでなく、とても積極的で彼女を驚かせるばかりなのだった。
そしてたくさんのびっくりは、たちまち心ときめく冒険に、そしてかけがえのない経験になるとともに欠くべからざるものへと育まれていった。
これが恋なのね……。
実際に、いまの操祈は恋い焦がれている。デートを重ねるたびに次のデートが待ち遠しくなって、その日が近づくと指折り数えて胸を踊らせていた。
彼とめぐり合うことで知った初めての恋、初恋。
それは性の歓びと分かちがたく結び合った愛のかたちなのだった。
肉欲と愛情はコインの表裏のようで、互いの肌のにおいを知ることでますます相手を愛おしく感じるようになる、許しあえるようになる。
性のいとなみの不思議……。
恥ずかしいのに、とってもいけないことだと思うのに、身も心も幸せになれるなんて。
それにも増して嬉しかったのは、彼も歓びを感じてくれていること。
それをレイは言葉だけでなく行為で、態度でうったえかけてくれるのだ。
教師と教え子ではなく、男と女という新しい関係となってから、あの子から蔑ろにされたことなんてあっただろうか?
問いかけて、
ないわ――。
と、胸の裡で首を横に振った。
見上げるような眼差しをくすぐったく感じることはあっても、傷つけられたり貶められたりしたことはなかった。
他人に見せられない酷い姿を知られてもなお、彼からネガティブな気配を感じたことはなくて、いつも瞳をキラキラと憧れに輝かせて幸せそうな顔を向けてくれる、優しい笑顔で。
それは彼を自分にとって特別な存在であると信じさせずにはいられないものなのだった。
好きよ、レイくん……。
大好き――。
いつしかインナーセルフの気配が消えて操祈は閉じていた瞼を開いた。
情欲の愁いに
片方の乳房をあやす手の動きは、まるでそれが一個の愛玩動物ででもあるかのようにいたわりと愛情を感じるもの。下から上へ、外側から内側へと繰り返される甘やかなくすぐったさが視界からの刺激と相まって彼女の心と体にさらなる感動を呼び起こしている。
目線が重なって微笑みかけられて、操祈も今できる精一杯の笑顔になってお返しをした。
「脚を開いて……先生……」
また少年の手が膝頭にかかって操祈の揃えられた膝を割るように促していた。
「キミのいちばんきれいなところを見せて……」
いちばんきれいですって――?
そんなはずないのに……。
男の子ってどうしてあんなところばかりに興味があるのかな……?
恥ずかしくて隠しておきたいと思うとかえってそれに関心を向けてくるんだから……。
イヤな子ぉ……。
でも、そんな少年に自分は夢中になっている。
彼の手がスルリと内腿へとすべり降りてきて、こそばゆくも悩ましい感覚についに彼女の心は折れてしまうのだった。前から後ろの方まで障わりのある部分の全てをすっかり包まれて歓びに身を委ねる覚悟を決める。
「……ん……」
「キモチいい? 先生」
「……くすぐったい……」
Mの字を描くように開いた左右の太腿に少年の足が引っ掛けられて大胆な姿を強いられていて、彼は中指の腹を使って未だ慎ましく閉ざされたままの白い唇の合わせ目の上をゆっくり上下させて撫ではじめた。
自分のことをどんなに大切に思っているのかを感じずにはいられない、神さまのように思いやりのあるタッチで。
「とてもステキでしたよ……先生が作ってくれたチョコレートケーキ……」
そうしながら、夕食後のデザートに出した操祈のお手製のチョコレートケーキの感想を伝えているらしいのだが、彼女は半ば上の空で応じているのだった。
指をくぐらせたり深く差し入れてきて中を探られたりされているわけではなかったが、くすぐったさのすぐ先には目もくらむような世界があることを知っていて、彼がいつ本気になるかもわからずにそれに備えて意識をそこに集中させているからだった。
「え、ええ……ありがとう……あン……レイくん……」
「でも、ボクが欲しいのはもっとずっとステキなチョコレート……」
「……もっとずっとって……そんな……あれだって、作るの、大変だったんだからぁ……それ以上を求められたら……あたし……どこかの、パティシエさんにっ……弟子入りするしかなくなって……しまうわっ……ひっ――」
敏感なところが、ペンダコの指の上をコソッと辿らされて、しびれるような快感に身を仰け反らせる。
もともと感じやすいたちであった上に、デートのたびに舌や唇で磨きをかけられて、さらに感じやすくなった体はほんのわずかな刺戟にもすぐにめざましい反応をしてしまうのだ。
「レイくんっ……ソコっ……」
堪えきれなくなったように、気高い鼻梁の小鼻から、スンっと呼気が溢れる。
「大丈夫ですよ、先生……心配しないで下さい……」
操祈は「うん」と啼いてすなおにこっくり頷いた。
「いい子だな、先生は……カワイイくて胸がつぶれてしまいそうなくらい……だから欲しくなるんです、最高のチョコレートが……」
「……最高の、チョコレート……?」
「先生が作ってくれたチョコレートもとってもステキだったけど、でもボク、今夜は
「あたしにしか作れないって……あのケーキ、みんなあたしが作ったのよぉ……そりゃ原材料は買ったものだけど……でもチョコレートのスポンジ生地だってぇ……ちょうどいい厚さに揃えるの、とっても大変だったんだからぁ……既製品を使えばもっとずっと簡単だったんだけどぉ……」
「ええ、わかってますよ、すごいなって感心しました。ボクのためにいっぱい時間を使わせてしまって申し訳なくて……だから、来年からはもっとずっと簡単に、もっとずっとステキなバレンタインチョコレートの作り方を教えてあげないといけないなと思って……」
「あら、簡単レシピね……」
「そうですね――」
レイはいつの間に持ち込んだのか、皿盛りをした大小まちまちのサイズの異なるビターチョコレートとホワイトチョコレートの粒の中から、大きさの違う二つをつまんで掌にのせて示している。
「先生が学校でみんなに配ったのは、中にイチゴやオレンジのクリームのフィリングを入れたものでしたけれど、ボクのレシピなら、こんななんの変哲もない普通のチョコレートだって、簡単に、そして最高に美味しくできると思います」
「……そうね……きっとレイくんなら……そういうこともできるのよね……」
肌に馴染んだやさしい指で頭巾の上から妖精の頭を撫でられて、その疼くような甘美な刺戟に操祈はつぶらな瞳を潤ませていく。
彼女の体を知り尽くした年若い恋人による愛情に溢れたペッティング、指との戯れ。
操祈は恋人の愛がもっと欲しくなってきて、無意識に腰を蠢かせて男の指の動きを追っていた。
ほんの少し、もうあとほんの少しだけ、指を伸ばしてそこに触れてくれれば……そうすれば、あのすばらしい感覚に身を慄わせることができるのに、彼の指は唇の谷間を行き来はしても、肝心なところにだけは触れずに通り過ぎていってしまう。
それがじれったくてならない。
「ねぇ……レイくん……」
「なんですか……?」
「……おねがい……いじわる……しないで……」
「いじわるですか? ボクが?」
「うん……そうよ……レイくんはいじわるよ……とっても……」
「そうかな……こんなにかわいい女のコにはやさしくしたいなとは思っても、いじわるなんてできないものだけどな」
「……そんなこと言って……もう、わかってるくせにぃ……」
少年から体をしきりに煽りたてられて、逃れようとしている間は攻めかかってくるのに、こちらがいざその気になると、今度は内腿やお腹などののんきな愛撫へと戻って行ってしまうのだ。
いつものことながら焦らされ翻弄されて操祈はせつないため息をついた。華奢な鎖骨が浮き上がって女の哀感がにじむ。けれども膨らんだ二つの乳房は束の間の緊張から解き放たれて心なしか安堵しているようでもあるのだった。
すぐ傍で自分の横顔を興味深げに見つめる目と視線が重なって
「なぁに、レイくん……?」
「きれいだな、先生は……キミはどんなときも、どんな表情のときも、どんな姿になっても……誰よりもきれいで可愛いと思うよ……」
真顔になって言われると気恥ずかしさを通りこして、もはや諦めにも似た心境になってくる。
今の操祈は鏡の前でみっともなく股を開いて、女体のいちばん見苦しい部分を晒して、偽ることのできない女の業と向き合わされていた。
ご馳走を前に、待ちきれなくてヨダレを垂らしてしまいそうな具合になって。
こんな自分のどこがステキなものかと思うのだが、少年にはそうは見えないものらしい。
レイには巧みに足を絡められて脚を閉じられなくされていたが、彼女にはもう逃れようとする意思も気力も残されてはいないのだった。
小さな肉芽に指がそえられるのを固唾をのんで見守る。でも彼がしてくれるのはそれだけ。指の腹からの温もりだけがジュワン、と伝わってくる。だが我を失いそうになるほどの刺戟になる寸前のギリギリのところで留まって、ただ悩ましいばかりだった。
「……レイ、くんっ……?」
「キミは、ここが……いちばん、感じますよね……」
身をこわばらせて差し迫った操祈をよそに少年はまた彼女を置き去りにすると、鏡の中で濡れた指先の匂いを嗅いで女心を掻き乱すのだ。
「いいにおい……なんていいにおいがするんだろうな、先生は……」
「……もー、へんなことしないでよぉ……レイくん、エッチなんだからぁ……」
恥ずかしいけれど嬉しくてイヤな筈なのにイヤじゃない、そんなおかしな気持ちになって自然、声音にも甘えるような蜜がのってしまうのだ。
女の口からは言いにくいことだが、愛する人から体臭を好まれるのは女にとってどんな褒め言葉にも優るなによりも嬉しいことだった。
これもレイが教えてくれたことだ。
“男が女の子に、キミのセックスのにおいが好きって言うのは、キミのことが大好きって言う以上のことなんですよ――”
あの時のことを思い出すとまた泣きだしそうなってくる。奈落の底に突き落とされたような激しいショックと、その後の天にも舞い上がるような感動によって彼の言葉が真実であることを思い知らされていた。
「中を……見せてくださいね……先生のはいつもお行儀良くお口を閉ざしているから……」
目の前でレイの両手が降りていくと、操祈がどう答えたものかと案じる間に左右から指が伸びてきてふっくらとした肉を
プリッと爆ぜて隠されていた一対の秘密の襞が露わにされて、それが既にしとどに潤いをまとっていて、戯れる指との間に糸を引いているのが判るといたたまれなくなる。
「あ、ヤダぁっ」
「スゴぉい、やっぱり先生はスゴいなぁ……」
「すごいってなによぉっ、バカにしてぇ……もう、あんまり見ないでってばぁ」
両手で股間を庇って隠そうとするが彼はそれを許してはくれないのだ。
「どうして? こんなにステキなのに」
両腕に腕を絡めてきて背中に縛められると、無防備にされたそこに再び手を伸ばしてきて、指先が
くすぐったくて情けなくて、それなのに恭しげな指の運びに心も体も、そして視線さえも奪われてしまっていた。
彼がいつもどのように自分を愛してくれているのか、片時も目を離せずにいる。
脆くて壊れやすいものを扱うようにして、どんなに大切に、だいじにされているのが窺えるのだ。
「いいコだね……いいコ、いいコ……」
口づけとは違う感触で、丹念に、それはそれは丹念に行きつ戻りつしている指。
一方で刺戟を受けて色づきを増し、全体にポテッと肉厚な感じになって、我が身の女の谷間はますます卑しい正体を隠さなくなっていた。
ろくに触れられてもいないのに勝手に目覚めた蕾がフードを払いのけて顔を覗かせている。蜜を帯びてきらきらとなめらかな真珠の輝きを放って存在を主張するようになっている。
感動は体の深奥にまで及んできていて、そこがあのときのように綻んで情熱を迸らせそうになっているのがわかると、
「おねがいっ、あたし……おかしくなってしまいそうなのっ」
訴えたが、自分でももう何を望んでいるのかわからなくなってしまっていた。止めてほしいのか、もっとして欲しいのか、どうしたらいいのか、どうしたいのか、迷子になって親を探す子供のように何度も彼の名を呼んでいた。
「ボクならここに居ますよ」
背中からひしっと抱きすくめられて意識が、フッと遠のきそうになる。女の弱みを心得た少年の愛撫のなんと心憎いことか。
鏡の中で演じられているのは男と女の間で交わされるとても繊細で情熱的ないとなみ、命の会話。寄せては返す波のように、レイは彼女が気をやりそうになると遠ざかり、一息つくとまた操祈の手を引いて温かい逸楽の沖へと連れ出そうとする。
そんなことを何度も繰り返されて操祈の体はもうダメになってしまいそう。
体の奥で情熱がどんどん膨らんでいき、女の固有の器官、組織がぐっしょりと重たくなっていくのがわかるのだ。もしも我慢ができなくなってしまったら――と、思いながら、目の前に迫る光の塊はあまりにも眩しくて魅力的なのだった。
ああ、なんて呪わしいの、この体はっ……。
レイくん、もうこれ以上あたしにやさしくしないで……。
ほんとにいけないことになってしまうからっ――。
そう思う間にも指の刺戟はさらに巧みに的を外さず彼女を追い詰めていた。
「……じゅっ、絨毯をっ……汚しちゃうっ……」
腰のあたりを懸命に、身体をぐっとしならせて必死に堪える。子供がおねしょをするような粗相だけはしたくなかった。
それなのに相手は
「それはいけませんね」
ますます切迫していく操祈をよそに、実にのんびりとした言葉が返ってくるばかりなのだ。
「がまん、できないんですね?」
「う、うん……おねがいっ……だから勘忍っ……」
口惜しいけど認めるしかなかった。
「じゃあ……立ちましょうか……もったいないですから」
「え……?!」
「立ってください、先生」
「た、立つの……?」
「ええ、立つんです」
彼が両腋に手を添えて立ち上がらせようとしていて、操祈は官能の熱に頭を呆っとさせたまま物憂げな動作で身を起こしていった。所在無げに姿見の前で佇む。
鏡に映る自身の姿に目をやって、股間から今にもヌメッとしたものが垂れ落ちそうになっているのが判ると慌てて脚を閉じ合わせて受け止めたが、すぐにべたつきが内腿の間に余るほど広く拡がっていって我が身のしまりの悪さがやりきれなかった。
「開いて……」
足もとに座る少年の手が膝にかかってそこを分けようとしていた。彼の目はしっかり股間に注がれている。
「ふわふわしていて、なんて可愛らしい、きれいな毛並み……」
「………」
お尻に回した手に抱き寄せられて賛美するようなソフトなキスが落ちてくる。二度、三度……。
「いいにおい……やさしいにおいがする……やさしい先生の、やさしいにおい……大好きだ……」
操祈が感じているのは生ぐさいリアルな女の臭いだったが、今だけは彼の言葉を信じたかった。ヘアを通してのくすぐったくも悩ましい甘美な刺戟は我慢できるのにも限度がある。
「レイくん……あたし……」
何を望まれているかはわかっていた。
操祈は彼の手に倣うかたちで脚の間を開いていった。と、すぐに顔が寄せられて二つの体が一つになるのだった。いきなり温かくて柔らかく、少しザラついた感触のものが広くそこを舐っていき、しどけない潤いが巧みに清め取られていくのが感じられるようになっている。
ただちに欲望の源に襲い掛かるような濃いタッチではない。でも深い愛情を感じる動きは体だけではなくて気持ちまでも挫けさせてしまうもの。
みっともなくべたつく内腿に愛おしげに頰をすり寄せて、恋人が積極的に自分の臭いを纏おうとしている姿には彼の愛情の深さを感じて心うたれてしまうのだった。
愛してる……レイくん……。
これがあたしの、この子を愛しているときの姿なのね……。
鏡の中に居たのは、恥ずかしげもなく男の子の顔に跨がって愛撫をねだっている肉欲に負けた愚かな女だった。
瞳を切なげにした懸命な容子で、黒い髪の毛の中に両手の指を絡ませてそこに止めようとしている。
淫らで……ぶざまで……。
でも、もういいわ……。
これでいいの……。
これがあたしなんだから……。
操祈は自ら情熱の高みを求めて視線を上げた。長い金髪がふっさりと優美なアーチを描いた背中にかかる。上気した肌、白い喉元をさらしてすなおに歓びに浸る姿になっていった。
クリーニングを終えて、彼の舌と唇の動きは彼女が愛して欲しいと思う部分に、時をおかず的確に攻めかかるようになっているのだ。
チュッと軽く吸われただけで視界に星々が瞬き、それに応えるように太腿をぎゅっと締めて堪えた。なんて甘美な、なんてすてきな感覚。
言葉に頼らなくても互いの気持ちは伝わっている。相手が何を求めているか、刻々、絆を確かめ合っていた。
執拗に追い詰めていきながら肝心なところになると彼がわざとポイントを外して焦らすのは、きっとこの濃密な時間を、男と女にとってもっとも尊い瞬間をより長くより深く味わおうとしているからだ。
実際に操祈はお口の中に含まれて愛されている部分だけでなく全身で愛を感じていた。赤子が乳を求めるように一途に顔を寄せる少年が愛おしくてたまらなくなっている。
この子のためならどんなことだって平気、なんでもしてあげたいと思うように。
それが伝わったのか、
「先生……」
レイが顔を上げてこちらを見ていた。
「
「入れるって……?」
瞬間、操祈は別のことを想って期待してしまったのだが、
「チョコレート」
と、言われてなんのことかピンとこなかった。
「……チョコ、レート……?」
「おいしいチョコレートが食べたいから」
少年がまた意味ありげな容子で舌を長く伸ばしていて、
「そう……そういうことだったのね……」
ようやく相手の企みが判って、大きく肩で息をついた。
「いけませんか?」
股間で不安げな顔をされていては無下にするわけにもいかず
「……また……食べものでおイタをするなんて……」
と、つい曖昧な態度になってしまう。
「おイタだなんて、ボクはいちばん美味しく食べたいだけなのに」
「……バカ……」
「だって先生より美味しい食べものなんてあるはずがないから」
またペロリっと舐られて「あん――」と、か弱い声を発して腰をひきつらせた。
もうすっかりかたく締まっているところのなくなった体から温かいものがギュッと絞りだされる感覚に慌てる、が、粗相になる前に彼は顔を寄せてきれいに受け止めてくれて、情けなくて操祈は泣き笑いの表情になるのだった。
こんな状態にされて「イヤ――」だなんて言えるはずもなく、ただ口をつぐみ、黙したまま察して欲しいと目を伏せた。
だがそれはなし崩しに同意したものと取られても仕方のない反応だったのだ。
「それなら、ベッドに行きましょう」
次の瞬間には操祈の体はふわりと持ち上げられていて少年の腕に抱き抱えられていた。
彼は期待に顔をほころばせて、まるでお気に入りのプレゼントの約束をしてもらえた子供のような無邪気な喜びようでいる。
その容子に胸がきゅんとなる一方で、いつの間にかすっかり逞しくなっていることにも心を動かされていた。
判ってはいるつもりでも、いざ体感すると自分の中にある女の部分が強く揺さぶられるのだ。
昨日の彼は今日の彼とは違い、明日の彼は今日の彼とも違う。
共に過ごす今この時、一瞬一瞬がどれほど大切なものか。
操祈は、すぐ間近にした少年の顔が他ならぬ自分自身のニオイを纏っていることにもかまわずに、抱かれたまま彼の首に腕をまわして口づけを求めてしまうのだった。
ディープキスになって舌をからめて、そのちょっと
「レイくん……」
大きな瞳をまんじりとさせて少年の顔を見つめる。
「なんですか? 先生」
「責任、とって下さいね……あたしをこんなにしちゃったのは、みんなあなたなんだから……」
精一杯の憎まれ口をきいて甘える。
「それなら、先生こそ責任とって下さい。ボクをこんなふうにしたのは先生なんですからね」
「ずるいわ……そういうのって、ずるいんだゾ」
自身の放った渾身のプロポーズをあっさりプロポーズで返されて嬉しさに目頭が熱くなる。
「ずるい? こんなにカワイイ顔をしてそれを言いますか?」
「だってそうじゃない……レイくん、いつも、あたしばっかりいじめるんだもん……あたしはキミの先生なんだゾ……」
「ボクの先生であることと愛しい女の子であることは背反しませんよ」
「………」
「キミがもしもただ綺麗なだけの女の人だったら、ボクがこんなに本気になることなんて絶対になかったんですから」
こういう場面での言い合いには、いつも操祈の方が分が悪かった。
恋い焦がれている相手から自身の魅力を褒められて嬉しくない女はいない。
「くやしいな……レイくんには勝てないんだもん……」
寝室に運ばれて、大事そうにそっとベッドの上に置かれる。
彼の優しい言葉やふるまいと、それにそぐわない感じで股間に猛々しくそそり立つものが目に入ると、いつの日か自分の中に導くときを想って陶然としてくるのだった。
きっとすてきだろうな……。
初めての、そして永遠の契りを結ぶことになるのだとしたら……。
「愛してる……先生……」
「あたしもよ……」
レイがベッドの足元に跪くのがわかると、操祈は自ら立膝を大きく割ってまた口づけに身をまかせるのだった。実にレイらしく生真面目に、そして熱心に取り組まれてはもう全てをゆだねて従うしかなかったのだった。立位のときとは違ってリラックスをして官能の海に漂う。
鏡で見せつけられたように彼のお口と手の動きのすべてが彼女を愛するために働いていた。そして自分の体が彼にとっての歓びとなっていることも深い感動をもたらしていて、言葉にならないくらい嬉しかったのだ。
体の中に何かを挿入れられる感覚が起きても、もう抗わずにされるままになっていた。
はじめは形のあるものを入れたり出したり、くぐらされたりしていたようだったのが、それがやがて粘膜に塗り込められるような感じになっていって……。
その時々にじっくりと味をみられて、少年の欲望は尽きることがないようなのだ。
「すごいや、想った通りです、やっぱり美味しいっ……先生のお味のするチョコレートは……」
生クリームを使われた時もそうだったが、食べ物を男女の寝所に持ち込むということには一段と倒錯的で禁忌感があって、それがまためくるめく官能の歓びをもたらしていた。
(……あたし……また、食べられちゃってるのね……この子から……)
「……こんなことが……したいなんて……」
「ボクにとってなにより嬉しいステキな贈り物です。先生のバレンタインチョコ」
その言葉には嘘も誇張もないのが分かる。どこまでもマメな舌の動きからも彼の歓びの大きさを感じていた。
スリリングなひとつのイベントが終わると、今度はまた別のイベントが始まって……。
「えっ!? レイくんっ、あのっ……そっちもなのぉっ?」
身をまかせた時から半ば覚悟はしていたが、やっぱり彼はどんなことも蔑ろにはしてくれないのだ。
「ええ、だってボクは先生の全てが大好きだから……前の方ばっかりだと、依怙贔屓してるみたいでかわいそうじゃないですか」
是非もなくそちらにも何かが挿入れられる感覚があって、諦めに操祈は目を閉じた。
よく動く彼の舌が貼りついてしつこく舐っていたかと思うと、今度は唇が重ねられて入れたものを吸い出そうとしている。とてもひどいことのはずなのに、彼は何の迷いもためらいもなく、飽くことなく幾度もそれを繰り返していた。
けして逃すまいというように脚にしっかり腕をまわされて、彼の強い思いを感じずにはいられない。
少年は愛情表現する際には妥協してくれないし、どんな誇張も厭わなかった。
その気持ちがレイの言葉通りに自分にだけ向けられている――。
(やっぱり、あたしの所為なのかな……)
そう思うのには自責の念もあったが、自尊心をくすぐられている部分もたしかにあるのだ。
(……でも、ほんとうにへんな子ね……いけないことばっかりするんだから……うふっ……)
少年が“特製”のチョコレートを貪っている間、彼女は途惑いと陶酔の間を行ったり来たりしていた。
ある時はやわらかな肉を波うたせて声を上げて慈悲を願い、またある時は感謝の涙を流して愛を誓っていた。
とても敏感で味にも香りにもこだわりのある男の子から等身大のスイーツにされて、操祈のバレンタインナイトはまだ始まったばかりなのだった。
二ヶ月も開けてしまうとは・・・
久しぶりの更新です
もっと短くして更新間隔も刻んだ方がいいのかもとも思うのですが