ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~   作:真夜中のミネルヴァ

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密森黎太郎

 

 食峰操祈……。

 もしも彼女に巡り逢わなければ、きっと今もたった一人で凍りついた闇の中を彷徨っていたことだろうと少年は思う。

 常盤台での一年生の秋、実習生として彼女が教室に現れるまで――。

 そしてその姿を目にした瞬間に少年は心を奪われていた。

 こんなにも美しい女性が、本当にこの世界に、居た――なんて!

 つぶらな瞳のやさしい顔立ちの美貌、聖母像を思わせる長い睫毛の細面の白い横顔。

 あまりにも現実離れしているその完璧なまでの美しさは、自分がまだ幻覚を見ているのではないかと目を疑わせるほどだった。

 でも、彼女は確かにそこに居て自分たちと同じ空気を吸っていた。

 やさしいお姉さんそのものの声で語りかけてきて、時に悪戯っぽい視線を送って生き生きとした生身の存在感を示していた。

 サラサラの長い金髪は甘やかなシャンプーの香りを放ち、優雅なしぐさとともに身にまとった清潔感にあふれた体臭が匂って鼻腔をくすぐる。スーツに隠されたブラウスの胸許は豊かさを暗示する柔らかな曲線を描いて悩ましく、長い足はかたちよくしなやかで目を惹きつけずにはおかないのだった。

 とりわけスカートの裾から覗く内腿の蒼白さは眩しいほどで、まだ十二歳とはいえ雄の心をかき乱さずにはいられない鮮烈な印象を刻みつけて、もっと彼女のことを知りたい、という強烈な欲望を目覚めさせていた。

 それはまさに性の覚醒といえるものなのだった。

 思春期を迎えた少年にとって美しい年上の女性の登場は、ただ憧れの対象に留まる筈もなく、尽きることのない性的な興味の対象となっていったのだ。

 操祈の纏う清浄な雰囲気が、冒しがたい清潔感がそっくりそのまま強い性衝動をもたらすという嬉しい驚き。教師という禁忌の恋愛対象が、逆に雄の征服欲を掻き立てている。

 そして今年の春、母校の教員として正式に採用された彼女が日々教壇に立って指導にあたるようになってからは、少年は本心をひた隠しにしてしおらしい生徒として敬意を払いつつ、罪の意識を抱きながらも想像の中で操祈の服を剥ぎ取り、放恣なイメージを弄んでは男の精を放つ、というのが日常になっていったのだった。

 何より少年が悩ましく思い描いたのは、彼女に自分の顔の上に(またが)ってもらうこと――。

 妄想の中で操祈先生専用の秘密の自転車があって、そいつはサドルの部分が眼鏡を外した自分の顔になっているのだ。そして彼女が乗るにはそれを跨ぐしかないのだった。

 レイの顔を見て先生はほとほと困り果てた表情になるのだが、想像の中で彼女は、

「ごめんなさい、もしも息ができなくなったら教えてちょうだい……」

 と、恥じらいに顔を赧らめつつも素直に応じてくれて、レイの方も「大好きな先生のなら平気です、安心してお乗りになってください」と、口を開いて舌を伸ばして待ち構えている。

 すると彼女は躊躇いながらもハンドルを握ると、ついに待ちこがれたこの上ない歓喜の瞬間を迎えることになるというわけである。

 

 




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