ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~   作:真夜中のミネルヴァ

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クリスマス・イヴ

 

          XLⅧ

 

「あなた、完全に会長からロックオンされてるわよ――」

「………」

「……私も調子を合わせるのに精一杯、もうあの人の目先を変えようとするのは諦めたわ……あんなヘンテコなモノを買ったばかりに……」

 紅音の指摘は耳が痛かった。

「さすがに、まさかあんな店にまで会長一家の影響が及んでるなんて思わなかったから……」

「山崎家はとても大きなファミリーなの、ウチなんかとは較べものにならないくらいに……」

「ボクは新参だから、この学園都市(まち)のことには明るくないし……反省してる……やり方も……ちょっと雑だった……」

 二階のファーストフード店の窓際隅のカウンターに並んで掛けて、窓の外の通りの賑わいに見るとはなしに目を遣りながら、レイと紅音はヒソヒソと話し込んでいる。

 店内はジングルベルやホワイトクリスマスなどのBGMが繰り返し流されていてお祭りムードを煽っていたが、クリスマス・イヴを迎えて浮かれる他の客たちとは違って二人に笑顔はなかった。

 紅音が、今しがたの碧子の部屋でのあらましをレイに伝えていたのだ。

 週刊誌の件での揉み消し工作が目論見通りに済んで、その後も波風なくほっとしていたところだったので、クリスマスを前にしてさすがにショックは大きかった。

「でもまだ貴男だという確証までは得られていない感じだったわ……あくまでも感触に過ぎないけど……」

「そういうのって、栃織さんならオーラを見ればわかるんじゃないの? ボクにするみたいに」

「あの人にそんなことができるわけないでしょっ」

「やっぱりそうか……」

「感情を読むなって、厳命されているのよ」

 レイは空になったコーラの紙コップに刺さったストローを銜えて、溶けた氷水をジュルッと吸った。

「それで、栃織さんのご意見は――?」

「当分っていうか、もう先生とは会ってはダメ。もちろん、この上を使うのを含めてね――」

 紅音は視線で天井を仰いで示し、暗にペントハウスの使用を認めない旨を通達した。

「やっぱりそうなるよね……」

「あたりまえでしょ、私があなたの手引きをしていることまで疑われているんだから、これ以上の協力は無理よ」

「ごめんね、栃織さんの立場まで悪くしてしまって……」

 レイは神妙な顔つきで紅音に頭を下げた。

「いいわよ、そんなこと、別に謝ってくれなくても……そもそも私が持ちかけた話だったから……でも、ホントに今夜はダメよ、絶対にっ、だって、先生とあなたの動きはマークされてるにきまってるんだから」

「うん……」

「クリスマスだからって、電話もメールもいっさいしないでっ、約束したわよっ」 

「うん……でも残念だな……せっかくのプレゼントも無駄になっちゃった……」

 少年がそう言うと、少女は細い目を大きくして唖然とした顔をする。

「あんなののナニがプレゼントになるのよっ、普通、女のコに贈るプレゼントって、指輪とかネックレスとかのアクセサリーが定番でしょ? 卑猥な大人のオモチャなんか見せられたらびっくりするだけじゃないっ、きっととても落胆もされる筈よっ、あなたの非常識な変態ぶりにはっ」

「そうかもしれないけど……でもクリスマス休暇には、先生のことをいっぱい可愛がるって約束していたから……」

「呆れた、よくもそんなことをヌケヌケと……」

「操祈先生は本当にすごく可愛い人なんだ……年上だけど、でも一緒のときには少しもそんな感じがしなくて……だからいろんなことをしてかわいがってあげたくなる……もちろん痛いことや傷つくようなことはけっしてしないけど……」

 少年の打ち明け話を耳にして紅音はため息を吐いた。

「先生が可哀想……」

「そうか……そう思うよね……」

「違うわ、そういう意味じゃなくてよ……」

「………」

「先生が密森くんのことをとても愛しているのは、もう良く判っているから……だから……」

「ボクもだよ……先生のためならボクはどうなったってかまわないから……」

「私、いざとなったら真っ先にあなたを斬り捨てるわよ」

「わかってる。むしろそうして欲しい……栃織さんに先生を守ることを第一にしてもらえると、とても心強いし、嬉しいよ。そのときボクに捨て駒としての使い道があればいいんだけど……」

 少女は肩で大きく息を吐くと、

「ったく、クリスマスイブに他人からアテられるこっちの身にもなってよね」

「ゴメン――」

「今夜のキャンセルの件は、先生にはお伝えしておくから……何か伝えておきたいことがあるのなら、今のうちに言っておいて」

「じゃあ、ボクからも先生に、約束が守れなくてゴメンナサイってお伝えして……それから……先生に逢いたいってことも……」

「わかったわ……ホント、世話のやける人たちよね」

 少女は苦笑を滲ませながら、ヤレヤレといった様子で椅子から立上がった。

 




拙文をいつも閲覧、ありがとうございます
読み手があって書こうと思うもので・・・


今日は少し短めです

このあとしばらくはクリスマス休暇のエピソードが続きます

普通、障害なんてものは煽られてるのも一緒だったりするのかもしれません
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