ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~   作:真夜中のミネルヴァ

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クリスマス・イヴ 2

          XLⅨ

 

「ミツぅ、なんだ結局オマエも居残り組かよぉ、紅音ちゃんとのデートはどうしたんだよ?」

 夜の八時を廻って、コースケが廊下から部屋の中を覗きこみながら言った。

「ボクは先週、ウチに帰ったばっかりだし、年末まではこっちだよ。それに栃織さんとは生徒会の件でちょっとお茶しただけだってば」

「えー、そうなのかぁ、フラレて早々に帰って来ちまったんじゃねぇのかぁ?」

「うーん、まぁちょっとはそんな感じなのかもしれないけど」

 コースケから煽られてレイも調子を合わせた。

「そうかそうか、わかった、俺にまかしとけっ、慰めてやるからっ」

「ありがとう、ねぇ、他のみんなはどうしたの?」

「ヤスの奴は夕飯食った後、さっき長野に帰っていったけど、マコトは例によってバーチャルデートの真っ最中、あとはみんな実家が東京か神奈川だしな、オマエと一緒で年末までこっちにいるよ。市ノ関と杉浦は女子たちとの合コンで今夜は居ねぇみてぇだけどな、ま、あいつらはどうでもいいんだが……それとな、(ゆう)のヤツはデートなんだと、ゆっるせねぇよなぁ、アイツがリア充なんてよぉっ」

「えーっ、ゆうちゃん誰とデートしてるのっ?!」

「美術部の奈津天(なつぞら)とだよっ、夕飯前に二人して、いそいそとお出かけあそばされたぜ」

「ああ、そう言えば、漫研や美術部の人たちには学祭の時に、ボクらもずいぶんお世話になってたよね……ソコつながりかな? そうかぁ、それは良かった……奈津天さんて二年生? どんな子だったっけ?」

「髪を短く刈った元気なヤツ、二年三組の」

「ああ、あの子か……さっぱりした感じのいい子だよね、そうだったんだ……卒業が近づいてきて、ここでの最後のクリスマスだから、やっぱり動きのある人にはあるんだね」

「オマエ、他人事みたいに言って……おい、あのひょろっとした後輩はどうした?」

 コースケはレイの部屋を見回して、誰も居ないと判ると苦々しげな顔をして訊く。

「ヒサオくんならデートに出かけていったよ」

 恬淡(てんたん)とレイは言った。

 ルームメイトの那智陽佐雄(なちひさお)は、男子寮まで迎えにきたクラスメートの女子数名を引き連れて、午後も早々に出かけていたのだ。

「あのなー、オマエぇ……まぁいいか……」

 コースケは何か言いたそうにしていたが、拘らない友人の様子にそのまま言葉を飲み込んだ。

「ヒサオくんはお姉さんが新会長だから女子からも一目置かれてるし、バスケ部だし背も高いからモテるのはわかるよ。でも泊まりじゃないって言ってたから今夜遅くには帰ってくるんじゃないかな?」

「あったりめぇだろっ! 部屋っ子に朝帰りなんてされてたまっかよっ! ったく、ウチのもなんだよなー、十二時前には帰りますからって、言いやがって……クリスマスだからってどいつもこいつも(さか)ってんじゃねえよっ」

 男女を問わず、こういう問題で後輩に先を越されるのは、同級生にされたときよりもダメージが大きいのだった。まして部屋長としては後輩の部屋っ子に対して示しがつかないように感じてしまう。

 コースケが不機嫌になるのも解らないわけではなかった。

「純平くんは?」

「アイツんとこには今から行くところだ、アレも間違いなくアブレ組だから」

「じゃあ、ボクも行ってもいい?」

「いーにきまってんだろうがよぉっ、オマエってヤツはぁっ!」

 コースケに抱きつかれてレイはタジタジとなりながら、

「ボク、フライドチキンの残りがあるから持っていくよ」

 デスクの上に置いてあった紙バーレルを指差すと、不景気な顔をしていたコースケも相好をくずした。

 それは紅音が去った後、操祈とのデートが流れて――実のところ少年にはそんなつもりは全くなかった――仕方なく夕食用にとオーダーしたものだったが、二ピース食べただけでお腹が膨れてしまい、大量に余っていたのだ。

「おい、スゴいじゃん、豪勢だなぁ、よしっ、俺もとっときのを持ってくるから、オマエ、先に行っててくれっ」

 その後、常盤台中学三年のイケてない男子三人と、松之崎純平のルームメイトの後輩を加えた四名は、夜が更けるまでコーラにフライドチキン、黒蜜羊羹とカップ麺というとっちらかったフードのラインナップで、ゲームとマンガ、テレビを掛け持ちするという有意義な時を過ごしたのだった。

 その間、ただの一度も女子からの誘いはなく、あたかも無線封鎖されているかのようにメールも電話もウンともスンともいわずに沈黙を守っていたのだが、実際にはその時間、一階の学生食堂では居残り女子の有志が(つど)ってクリスマスパーティーが開かれていて、少なからぬ数の男子も招待されていたのだが、そのような重要な情報が彼らにもたらされることはついに無かった。

 コースケたちのスマホが鳴いたのは、帰省中の新幹線の中からヤっさんこと堀田靖明が発信したメールが三人同時に届いた時だけなのだった。

「12時か……ボク、そろそろ部屋に帰るね。ヒサオくんも、もう帰って来ていると思うから……」

 壁の時計を見上げてレイが言った。

「まだ早いじゃないか」

 スチール製の粗末な二段ベッドの上段でマンガを読みながら純平がひきとめる。

「うん、でもちょっとこのところ寝不足で、眠くなってきちゃった」

「そうか――」

「じゃ、また明日な……なんか明日の朝食は寂しそうだなあ……食堂には八時ごろ集合でいいか?」

「うん、いいよそれで……純平くん、部屋を荒らしたままでゴメンね」

 純平は気にすんなというように、大きく手を振って応えた。

「フラチキ、悪かったな、散財させたみたいで。美味かったぜ」

「残り物でゴメンね。コースケくんの高級羊羹も美味しかったよ、ごちそうさま」

「おう、じゃあな」

 レイが純平の部屋を出た時には十二時を少し廻っていた。

 操祈のアパートまでは歩いて五分あまり――。

 “一時に行くと伝えておいた”のでまだ時間に余裕はあったが、その前にしっかりとシャワーを浴びておきたかったのだった。

 




次話のタイトルは
サンタクロースを待つ少女 の予定です
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