ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~ 作:真夜中のミネルヴァ
LⅦ
ラッピングを解くと包みの中からは黒い指輪ケースが現れて目を
「これって……」
操祈は傍らに座る少年の顔をまんじりと見つめた。驚き半分、期待半分に気持ちが揺れている。
「あの、そんな大したものではないので……」
少年は珍しく不安げな表情を覗かせていて逆に興味が惹かれるのだった。
ケースを開けると、シンプルなデザインのリングが二つ目に入る。
「あらペアリングね」
「高級品にはとても手が届かなくて、それで銀製品を扱っている工房で作ってみたんですけど……」
「レイくんが作ったのぉ――?」
「ボクがやったのは素材の加工だけです……同じものを二つ作って、ひとつはボク用に、もうひとつを先生にって……受けとって戴ければ嬉しいのですが……」
操祈は、こくん、と頷いて提案に同意する。彼の気持がわかって胸が歓びにときめくのだ。思いのこめられたリングは、何にも代え難い貴重な贈り物なのだった。
少年に自分の左手を委ねようと差し出して、
「じゃあ、つけてくれる?」
と、
するとレイは操祈のほっそりした手を取ると、その白い薬指にリングを嵌める。ピタリと合って好ましい位置におさまった。
「ありがとう……うれしいわ、とってもステキよ」
操祈は顔の前で何度も掌を返しては、
「でも、やっぱり先生には、似合いませんね……」
自分の意に反して沈んだ声音で言う少年に操祈は逆に驚いた。
「あら、どうして!?」
「なんだかボクと先生の関係みたい……」
「……?……」
「先生みたいに綺麗な女の人の手には、銀の鈍い光沢は無粋で……やっぱり不釣り合いだなって……」
「そんなことないわ、わたし好きよ……なによりレイくんが私に作ってくれたってことが嬉しいの……ねぇ、あなたの左手を貸して、もうひとつのリングは私に付けさせてちょうだい」
言いながら半ば強引に少年の手を自分の膝の上に引き寄せると、ペアリングのもう一方を迷わずに薬指に嵌めさせた。
「あはっ、ぴったりだわっ、これでお揃いよっ……ねっ」
望外の操祈のご満悦ぶりには少年も相好を崩し、軽く唇を重ねて互いに感謝の気持ちを伝えあう。
「でも外では外して下さい……一緒に居るときだけに……」
「うん……」
仮にエンゲージリングをしている、などと噂になれば、それはそれで厄介なことになることは判っていた。
「ねぇ、わたしの指輪のサイズ、どうして知ってたの?」
「それは……昨夜、先生がお休みになっていた時に、そっと計っておいたんです……破いたメモ用紙を指に巻き付けて……」
「全然、気がつかなかった……」
「ぐっすりお休みでしたから……きっとお疲れだったんですね」
少年はクッと、口角をあげて言外にエロティックなニュアンスを含めて笑い、操祈はポッと頬を染めながら肘で少年を軽く突ついた。
「もう、すぐそっちの方に話を持っていこうとするんだからぁっ」
昨夜の操祈は、恋人からの濃密な愛撫に充実した白い肉をわななかせて、体の中に溜め込んでいた温かい愛の涙をなんども溢れさせながら歓びのなかに沈んでいた。そのあげく遊び疲れた子供のように、くたっとなって無邪気に恋人の腕の中で眠りに堕ちていたのだ。
「でも先生はご存知ないんですよね……」
「知らないって、何のこと――?」
「ご自身の寝顔……どんなに綺麗で可愛いかってこと……」
直裁に言われると、さすがに反応に戸惑う。
「そんなこと……」
「でも、ボクは知ってます――」
「わたしは知らないわよ、レイくんの寝顔……これって不公平じゃない?」
操祈は恋人の寝顔を見たことがないことを思い出して、不満げに唇を尖らせた。こんなふうに拗ねた顔をすると少年との年齢差が一気に解消されて、同い年くらいのような感じにもなる。教師としても女としても、部屋の外では絶対に見せることがないものだった。
心のガードを取り払って、安心しきっているからこその素顔の愛らしさである。
そんな操祈の様子に少年は一瞬、驚いた顔をしたが、幸せそうに頬笑むと片手を伸ばしてきて、操祈の胸の肉の実りのひとつにやわやわと触れながら続けるのだった。
「寝顔だけじゃなくて、どんなにカワイクて、ステキかも……先生が知らないことまで、いっぱい知ってますよ……」
「ずるいな……わたしのことばっかり……」
ペッティングが始まって、後戻りの利かない坂道を操祈は、またゆっくりと下り始めた。胸を庇おうとする間もなく、男の手が白いモケットセーターの中にまで忍んできて、手慣れたようすでブラのホックを外すと解き放たれた乳房をじかに包むようにする。
乾いた指先が乳先にも触れ始めて、くすぐったくも心地のいいタッチに操祈の瞳が潤み始めた。
「こっちの情報ばっかり持っていって、自分の情報はひた隠しにしてるなんて、ずるいんだぞっ」
「ボク、べつに隠してるつもりなんてないですけど……でも、どうあっても不公平感は解消されることはないと思いますよ。だって先生とボクとじゃ人としての価値に差があり過ぎますから」
「そんな言い方しないで……」
自虐的な物言いにをするレイに、操祈は声を切なくしてうったえた。
「だって先生はいま“世界の恋人”っていうのももの足りない素敵な女の人で……ボクはただの中学生だから……」
「ねぇレイくん……私にとって、あなたはかけがえのない人だってこと、わかって欲しいし、信じて欲しいのっ……あっ」
乳房と腋の下の間の敏感なラインを指でなぞられると、思わず声が漏れてしまった。
「くすぐったい……」
「先生のことは信じてます……自分自身よりも――」
「うん……でもあなたのことは、もっとずっと大切よ……」
たちまちセーターの裾をまくられて脱がされると、ブラも奪われて上半身を裸に剥かれてしまっていた。
まっ白な肌に豊かな肉の果実がふたつ、あらわになっている。ゆっさりとした量感に見合って存在感のある
少年は操祈の両腕に腕を絡めて背中にまわし、たわわな胸許を無防備にさせると顔を寄せ、しくしくと嗅ぎまわりはじめた。
「……やさしいにおい……ボクにとって、先生は女神そのものだから……」
「わたしをそんなに買いかぶらないでちょうだい……お酒飲んで恨みごとを言う女神が、どこにいるのよっ」
「ここに居ますよ――」
「ん――」
乳飲み子がするよりもやさしく乳先を含まれて、整った形の鼻腔から、スンっと甘い呼気がこぼれた。
「レイくんっ――」
「こんなにきれいな女の人……」
胸のあちこちにボディキスの雨をおとしながら、そのとりしきる範囲が次第に下方へと降りていった。
長椅子の上に身を横たえた操祈は、スカートも奪われて、ついには肌着にまで恋人の指がかかっている。
「男にとって、大好きで尊敬する女の人の下着を脱がせる時にまさる歓びって、無いと思いますけど……でも、きっとこの気持ちは女の人にはわからないでしょうね」
不安と期待とがないまぜになった瞳が、足元に座る若い恋人の顔を見つめていた。両腕を伸ばして迎え入れようとしても、少年は意のままになってはくれないのだ。さらに濃厚な刺戟を求めて、みごとな女体の上を新鮮なにおいを嗅ぎとろうとして這い回っている。
「それ、ダメぇっ――」
お臍にまでキスをされて、舌で中をさぐられて身をよじって逃れようとした。と、腰を浮かせた瞬間に、肌着がいっきにズリ下ろされて、とうとう全裸にされてしまうのだった。
「いやああんっ!」
嬌声とも悲鳴ともつかない声で啼いた操祈の体は、リビングの照明を浴びて、まあるい二つの桜色と小麦色のしげみが白い肌の上で映えている。
「きれい……」
少年は女の
「服を着ているときよりも、生まれたままの姿がいちばん美しいのは……やっぱり先生が女神だからですよ……」
長い脚を分け、左右の肩に担ぐように体位を取った。
それから、またいつもの恥ずかしい愛撫がはじまって、操祈はきつく目を閉じるのだった。
きつねさんまで書けませんでした