ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~ 作:真夜中のミネルヴァ
LⅧ
「……すごくきれい……先生のは、とても清潔だから……だから、恥ずかしがらないで下さい……」
後ろから聞こえる少年の嘆声に反応して、竦めた肩の間に伏せていた顔を上げた操祈は、頼りなげな視線を泳がせるしかないのだった。
「はぁっ――」
彼の唇が寄せられて、操祈は眉根を寄せて切ないため息をついた。乱れた前髪が顔にかかって、いつもは愛くるしい朗らかな美貌に今は濃い影を落としている。細かにふるえる長い睫に深い懊悩を宿していた。
午前三時――。
真夜中のリビングで食蜂操祈は年の離れた若い恋人から、またひとつ新しい自分と向き合うことを求められていた。
頭にキツネ耳のカチューシャをつけ、獣のように絨毯に両肘をついて、四つん這いになって――。
くっきりとした腰のくびれと、美しい弓を描く背中から高々と差し上げたお尻の二つの小山へと続くラインの優雅さ。ロングストレートの髪は金色の滝となって肩口から流れ落ちている。細くしなやかな二の腕の間で、ふたつの乳房がもっちりした肉の量感もみごとに垂れて、乳先も発情の徴をあらわに色づいて可憐な肉芽を尖らせている。
綾なす色と曲線の全てが甘くやわらかで、白い体は神秘を湛えて穢れも澱みもないのだった。
視線を誘い、惹きつけずにはおかないこのうえなく官能的な造形美。
男の側に立てば、こうした女体に対してはどのような愛撫もみな正統で、その探求に歓びを抱かずにはいられないものだった。それゆえに操祈は普通であれば経験しえないようなことさえも、恋人からは当然のように求められている。
たとえ相手が教え子で、ミドルティーンの男の子であったとしても――。
今もそうだった。
少年の両手は、それぞれ女の左右の脹ら脛の上に置かれていて、時に舌びらをもの言えぬお口にぺたりと貼りつかせては彼女をやりきれなくさせている。いずれでもない場所に長く留まっては、そこもまた急所であることを教えているのだ。
「それっ、だめぇ……」
他ならぬ自分の体の思いがけない反応に、操祈は甘啼きしてうったえた。声がうわずり長姉的な余裕のすべてを失っている。
「レイくんっ、あたしっ……ダメになっちゃうからっ……おねがいっ」
そのツボを指圧されると、体のどちら側もキュンと窄まって、心と体の奥の秘めやかな堰にまで届いて、意思を離れてどうしようもなく綻んでしまいそうになるのだ。さながら彼女の体に仕込まれていた禁断の種がとうとう芽吹いて、女体の運命を翻弄する隠しボタンに化けたような具合なのだった。
「ああっ、やだっ……あたしっ――!」
しどけない何かが流れ出して行くのを留められずに、哀しい声をあげて操祈は乱れた。
「スゴいっ……先生の体……」
けれども彼女がどんな粗相をしても、けっして絨毯を汚してしまうようなことにはならないものらしい。背後から届く水っぽい淫靡な音が、自分がどんなにみっともない状態になっているかを伝えていても、少年はあたかも自らをスポンジにして、温まったものの全てを拭い取っているようなのだ。
そんな情けない姿を他人目にさらして、操祈はまたひとつ、女の誇りを奪われてしまったように感じているのだった。
なにより非道いと思うのは、自分ひとりが裸にされていて、彼の方は今もトレーナーを着たままで居ること。
あまりにも一方的――と、思う。
もう愛しあうのではなくて、ただ愛玩されるだけの存在に成り果て、ペットとしての調教をされているのではないかとさえ思ってしまう。
それでも励ますように背中を丁寧に撫でられたり、乳房をやさしくあやされたりすると、心はすぐに挫けて愛撫にすなおに靡いてしまうのだ。
女の体の脆さが口惜しかった。
「じゃあ、とりつけますね、だいぶいい感じになってきたので……」
前に回り込んできた少年から、舌を絡めるようなディープキスをされて、操祈は目を閉じた。
たとえ自分の臭いは疎ましくても、そんなニオイを嬉々として纏おうとする恋人が愛おしくてならなかった。それとともに静かな諦めが心を占めていく。
もう拒んでも仕方がない――。
こんな自分を見せてしまっているのだから……。
操祈は若い主人に買い取られた奴隷女のように恭順の意思を示して頭を垂れると、高々とした優雅な肉の小山を恋人の手に委ねるのだった。