ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~ 作:真夜中のミネルヴァ
LⅩⅩⅢ
「……ボクは強盗なんかじゃない、贈り物を届けに来たんだってことを判ってもらえるまで彼女の体をやさしくノックし続けたら、ある時ついに扉が開かれて、中に入れて貰えたんだ。そのときはもう死んでも構わないっていうくらい嬉しかった……彼女の凄いニオイにびっくりしたのはほんの一瞬で、すぐにこれがこの可愛い女の人の秘密の匂いなのかと思うと、胸がキュンとなるくらい愛おしくなって、いちばん好きなにおいになっていたから……だから、いくら時間をかけても飽きるなんてことはなかったよ。それは今もそう……」
レイはごくりと喉を鳴らした。
「いけない、また興奮してきちゃった……大好きな女の人のダイジなところのにおいは、男にとっていちばんの元気の素になるから……やっぱり抜いておかないと眠れそうにないね……ボクは時間がかかると思うから、ヒサオくん、先にトイレに行っておいでよ……」
◇ ◇
「ヒサオくんも眠れないのかな?」
「はい……なんだか今日は頭がもやついて……」
「そういう時ってあるよね、誰にでも……」
「先輩も……ですか……?」
暗に問われているのは、そのこと――だと察する。下段ベッドがきしんで、少年が身を起こしたのが判った。
「トイレ――?」
「あ、いえ……」
「マスターベーションは別に恥ずかしいことじゃないから」
「そう、かもしれないですけど……」
「放精も排尿と同じただの生理だからって、頭ではわかってるつもりでも、やっぱりセックスに絡むと、とたんに隠しごとになっちゃうよね……」
「ですね……」
「まぁそれだからセックスは面白いんだけど……」
照明の消えた寮の一室、二段ベッドの上下で深夜らしい言葉が行き交っている。
「先輩は、こういうとき、いつもどうしてるんですか……?」
「みんなと同じだよ、夜中にそっとベッドを抜け出して、トイレに行って……さすがにここじゃできないから」
「え、そうなんですか? 僕、全然、気がつきませんでした。それでずっと不思議で……」
「キミが寝てるところを見計らって、こっそりとだよ」
半分は真実だった。
「やっぱりそうだったんですか」
「いったいキミはボクをなんだと思ってるんだい? これでも普通の男子だよ、食欲も性欲も旺盛な中学三年の」
「それは判るんですけど、先輩がフツーっていうのはどうなんですか? 時々、得体の知れないオーラを感じたりもしますから」
「得体の知れないオーラ?……あれ、ヒサオくんはなにか能力をもっていたんだっけ?」
「ないですけど、でも感じます……だからって別に悪い意味じゃないですよっ、スゴい人だなって思うだけで」
「ボクはなにも凄くなんかないよ、成績がまぁまぁである以外は凡庸な、まさに絵に描いたような凡夫だから」
「密森先輩っ、あまり僕をバカにしないでくださいね、先輩が凡夫なんかじゃないってことぐらい、もう僕にだってわかりますからっ」
「莫迦にするだなんて、そんなつもりはないけど……だってボクは入学時の検査ではレベル0の無能力者だし、背は高くないし、容姿はせいぜい人並み程度、それに運動部でもない帰宅部だし、スクールカーストは下位だし……ヒサオくんは特殊能力はないのかもしれないけど、でもカッコイイっていうのも立派な能力だからね」
「そんなこと言って、先輩だって結構、女子ウケ良いみたいじゃないですか。こないだなんか同じクラスの
「ナカガワさんって、秋になって外から特例で転校してきた、あの那珂川さん?」
「ええ、今では学年一の美人と言われている那珂川瞳です。彼女、僕が栃織先輩とはそういうんじゃないと思うよって言ったら、明らかにホッとした顔してましたよ」
「それは光栄だな……あの子はじきに凄い美人になりそうだよね、でもその話、なんかオチがありそうでね……どうせ、いつでも便利に使えそうな先輩をキープっとか、試験の過去問とかの調達先に最適っ! とかの話なんでしょ?」
「そんなんじゃないですよ、オチなんてないですっ、彼女、普通に先輩のこと、気にしてる感じでしたから」
「本当かなぁ? ボクは……あの子とは別に接点は無かったと思うんだけどな……」
「先輩のことを密かに見てる女子は、思っている以上に居るってことですよ」
ヒサオは那珂川瞳の他にも、自身が直接耳にしたこと以外、伝え聞いたことも含めて、他にも何名かの実名を挙げてレイが一年生の少女たちの間では、それなりに関心を寄せられていることを話したのだった。
「それなら、できれば密かにではなくて、もっとわかりやすく行動で示してくれるといいんだけどね」
軽くさばいたつもりだったが、後輩の話を聞きながら別の意味で注意をしなければならないとも感じていた。
万事大雑把で能天気な男子どもとは違い、良い意味でも悪い意味でも女子のネットワークは侮れないのだ。上下左右に拡がって、手強いヒューミントにもなりかねないからだった。その中には数こそ少ないとはいえ能力者も含まれているに違いない。
碧子のような精神系の能力者も――。
「それと先輩の年上の彼女のことは、誰にも言ってませんのでご安心下さい」
「それも大げさだよ、ボクが勝手に片思いしてるだなんだから」
「ハイハイ、クリスマスに婚約指輪を受け取ってもらえて、どこが片思いなんだか僕にはさっぱりですけど」
「その話も、そんな大したことじゃなくて……」
「まぁ、そういうことにしておきますよ。先輩の片思いの定義は普通とはかなり違うみたいですから。しっかりセックスしてても片思いって言い張るのなら、それも片思いなんでしょうね」
「そりゃないよ、ヒサオくん……」
「先輩が、そっち方面でも僕より経験者だってことも、もうわかってますから」
このあたりのやりとりはレイに分が悪いのだ。もちろん相手が操祈であるとは言っていない。しかしガールフレンドと既に親密な間柄であることは、ヒサオには悟られてしまっていた。
「そんなこと、どうしてわかるの……?」
「勘です――」
「勘って、いわれてもね……」
「だって猥談になったりすると、他の先輩と比べて密森先輩の反応だけが違ってたりしますから」
「違う……?」
「なんていうか……他の人たちは、どこか先輩風吹かせなくちゃっていうのか、気負った雰囲気になるんですけど、でも先輩は全然そうじゃなくて……それがもうずっと前からそうだったことに気がついて……」
「そんなことを言われたって、よくわからないよ……」
「僕もよくわかりません、でもわかるんですっ」
「………」
「それに僕が童貞ロストした話の時も、なんだか過去の自分を振り返るような目をしていたし……」
「それは……ヒサオくんが後輩だから……」
「どうしてそんなに隠そうとするんですか? 普通ならむしろ仲間や後輩に吹聴したくなる話じゃないかと思うんですけど……恋人が居るんだからセックスしてたって別にいいじゃないですか……僕だって話したんですから、正直に打ち明けて話してくれても……」
後輩からはまた強烈なリターンが返ってきていた。さっきから言葉のラリーで振り回されている。こちらの足が止まるのは時間の問題のようである。
「あの時は……キミが話したそうにしていたし、ボクも幸せのおすそ分けにあずかろうかなって思っただけだよ」
「そんな、先輩は僕のことを知っているのに、僕は先輩のことを何も知らないなんて、バランスが悪いですよ」
「だから話した通りだよ、ヒサオくん同様にボクにも年上の彼女が居るって、ただそれだけの……」
「でもまだ一線は越えていないだなんて言われると、さすがにエーって思います。それとも肉食系男子だってことを隠しておきたいからそうしてるんですか?」
「別に装ってるつもりはないんだけど……」
今夜のヒサオはいつにない調子で絡んできていて、何かあったのだろうかとも思うのだった。
「自分は口が固いと思ってますし、先輩のこともそう思ってるから打ち明けたので……先輩も僕のことを信じて欲しいんです……」
後輩の少年はベッドを軋ませて立ち上がった。薄暗い部屋の中でスラリと背の高いシルエットが上段ベッドに居るレイの方を伺っている。
「(トイレに)行くの?」
「いいえ、なんだかもうすっかり冷めてしまいました」
「………」
「もっと話せる先輩だと思ってたのに……ちょっと残念です……」
気まずい沈黙になってきて、音を上げざるをえなくなったのはレイの方だった。
「わかった、降参だ……認めるよ、認めるからもう勘弁してくれないか?」
「本当に――?」
「どうしたんだい、今日のヒサオくんはちょっと変だよ」
「だって……」
「何かあったの……?」
「別に……そういうわけじゃ……」
言葉では否定しても、容子からはありありとそれが伺えた。
「じゃあ、伺います、先輩が童貞を捨てたのはいつですか? 誰にも話したりはしませんので」
「捨てるって言い方は良くないね、相手に失礼になるから、キミだって捨てたわけじゃないでしょ?」
「そう、ですね。言い直します……先輩が童貞を卒業したのはいつごろだったんですか?」
ここで迂闊に否定すると話がドツボにハマるのを紅音で経験済みだったので、そこは避けざるをえなかった。
「ファーストキスをしたのは一昨年の冬休みごろ……それで察してくれないか?」
実際に操祈と本気のキスをしたのは休み明け、図書館でのことだったが、それを言うと学校と結びつけられる懸念があったので暈すことにした。
そのころの図書館は物や人の出入りは厳密にチェックされる一方で、館内の監視カメラの数は校舎内よりもむしろ少なくて死角も多く、わりとデートのしやすい恋人たちにとっては隠れた人気スポットだったのだ。
それに気づいたのか学校側が、今では各フロアーに何台もカメラを設置するようになったばかりか、個人識別IDのトレースまで行うようになっているので、自分を含め以前のように
「じゃあ、もう
「そういうことに、なるね……」
「だとすると、いろんなことを経験してますよね……」
実のところ、操祈と夜を共に過ごせるようになったのは、紅音のペントハウスを使えるようになって以降のことで、それ以前はほんの一時のデートのためにも、他人目をかいくぐるために知恵を巡らさなければならないという、とても不便なものなのだった。
ただ、その不自由さの所為もあって互いの気持ちを育むことに繋がったのだとしたら、今はそれも良かったのかもしれないとも思う。
「さあ……どうかなぁ……」
その後もヒサオの尋問が続いた。デートの頻度やお気に入りのデートスポットなどについて、情報交換という名目の情報開示請求だった。
レイは答えられる範囲で応じていたが、話の内容が次第にコアに近づくにつれ、はぐらかさざるをえなくなる。なるべく操祈とは違うプロフィールを頭に描いての架空の“彼女”についての問答を続けるのは、虚言を重ねている罪障感もあってそれなりに神経を使うものなのだ。
そして、また沈黙となった。ただ今度の沈黙は、さいぜんのような気まずいものではなく、寧ろヒサオからは迷いの気配を感じる。
暗い部屋で相手の表情はわからなかったが、何か言いだそうとして逡巡している様子であるのが伺えた。
「なにかな――?」
「いえ……なんでもないです……」
レイは枕元のスマホの時刻を確かめた。
「おっと、もう三時じゃないか、さすがにもう寝ないといけないね。じゃあ、ボクはそろそろトイレに行くとするかな、おかげですっかり冷めちゃったよ、これでようやく眠れそうだ」
棍棒のように猛々しかった股間は、縁側で長閑に日向ぼっこをしている子猫のように大人しくなっていた。
レイは身を起こすと二段ベッドの梯子に足をかけた。その背中に、
「先輩――」
心を決めたのか、声音に覚悟を響かせている。
「なに――?」
「……べつにおかしなことじゃないですよね、誰でもすることだから……」
床に立つと顔半分ほども背の高い少年が、レイの目の前で自分を鼓舞するように独り言を呟いて言い聞かせている。
「どうかしたの?」
「あの……実はお伺いしたいことがあって……」
「いいけど、まだ訊きたいことがあるのかい?」
「先輩のプライバシーに立ち入るつもりはないんです」
「でもセックスの話はおもいっきりプライバシーだよ」
「そうですよね……」
「まぁ、もういいけど……」
「先輩はその……」
よほど障りを感じていることなのか、スマートな少年がまた口淀んでいた。
「言いにくいこと?」
「ええまぁ……でも言いますっ……先輩は、その……ク◯ニとかってしたことあるますよね……?」
「えっ――!?」
レイは、と胸を衝かれて、一瞬、絶句した。
「参ったなぁ……ヒサオくんとそんな話をする日がくるなんて……」
ため息をつくが、相手の気を悪くさせないように呼吸を整えている風に体裁を整えた。
「うん……あるよ……あるけど……それがどうかしたの……?」
正直に認める。話がややこしい方向へと向かいそうだったので
「座ってもいいかな……?」
「ええ、どうぞ……」
差し障りのある会話をする時の常で、向き合うよりも並んでする方がお互いに楽になるのだ。下段ベッドの縁に座ると、ヒサオにも隣に座るように促した。
「ボクに訊きたかったのはそのこと……?」
傍のシルエットが頼りなげに頷いている。
「はじめに言っておくけど、ボクはク◯ニって言葉、あまり好きじゃないんだ。とても大事な行為を陳腐化させているみたいで……」
「じゃあ、先輩は……」
「ク◯ニリ◯グスって言うこともあるけど、ボクたちはふつうにキスって呼んでるよ。でもシチュエーションで彼女にはそれが伝わるから……」
大柄な後輩の少年は、心もとなげな容子で首を縦に振った。
「彼女となにかあったの? 彼女のニオイが気になってできなかったとか?」
「そうじゃないんですっ」
「じゃあニオイは嫌じゃないんだね?」
「もちろんですっ」
心外だとばかりにヒサオが語気を強めたので、レイは後輩の背中に手を添えた。
「全然、嫌なものなんかじゃありませんでした。ネットとかでいろいろ言われていたので、初めはこわごわだったんですけど……でも、大丈夫です」
「それなら何の心配もいらないと思うよ、キミが彼女のセックスの匂いを気に入ってるのなら、二人の体の相性はとてもいいってことだから」
「そうなんですか?……でも彼女が嫌みたいで……僕はしたいのに……」
「彼女が、させてくれない……?」
「最初はできたんです……でもこの前、二度目のデートの時には強く拒まれて……それでちょっと気まずくなっちゃったりして……」
「相手の子も初めてだったんでしょ? 最初のデートでいきなりするなんて、それはちょっとひどいと思うな」
「そうなんですか!?」
「いや、他の人がどうかなんて知らないけど、ボクはそうしなかったから……」
「だって、手や指を使ったりするよりも丁寧かなって……」
「考えてごらんよ、下着を見られただけでも大騒ぎになるんだよ、女の子にとっていちばん自信のない部分を、それを異性の顔の前に全部見せなくちゃならないんだから、排泄器官だって丸見えになるし……その上、臭いを知られたり味を見られたりもする、その心理的負担を考えると……とりわけ初めての女の子にはとてもショックなことだよね……」
「だから、気持ちよくしてあげたくて……」
「いきなりベロベロしちゃったりしたのかっ? そりゃますます可哀そうだよ、だってク◯ト◯スは人体では眼球に次いでデリケートなところなんだから、そういう愛撫に慣れてる子ならともかく、経験の無い子にとっては刺激が強すぎて痛みを与えているのかもしれないよ」
「………」
「アダルトサイトの情報を真に受けるのはどうしたものかな……そんなふうにセックスを一般化してマニュアル化するのはもったいないと思わないかい? だってキミの腕の中に居るのは、キミにとっていちばん大切な人なんだよ、この世で唯ひとりの人に、そんなインスタントなクッキングマニュアルを使うなんて、それでいいのかな?」
「――!――」
「ボクたちのセックスは、ボクたちだけのセックスなんだ……ボクたちだけの体を使った秘密の会話、コミュニケーション……だから言葉と同じで、語られる内容は人によってみんな違うし、ボクが彼女とする“会話”だっていつも違う。共通しているのは、彼女のことが可愛くて、大事にしたくて、その気持ちを伝えたいって思っていることだけなんだ……そうしていると、やがて彼女も他人には見せない顔をボクには見せてくれるようになる……それって、とても素敵なことだとは思わないかい?」
レイは、傍でまるで魔法に触れて凝固してでもいるような後輩の少年の背中を、ポンポンと軽く叩くと術を解いてやった。
「ただ、体の基本的な仕組みは同じだから、それについては知っておいたほうが良いことはあるかもしれないけど……」
女性特有の器官の特徴について知るところを、後輩にはなるべく簡潔に具体的に伝えることにした。女体の取り扱いについての自身の心得のエッセンスのようなものを含めて。
「今のは、ボクが彼女を通して学んだことのほんの一端だけど……だって彼女と逢うたびにいつでも素敵な学びがあって……女の子の体はあまりにも豊かで深遠な甘美な謎そのもの……体の表情も肌の色も、味もにおいも常に微妙に変化して、男の五感と心を慰めてくれる永遠の万華鏡なんだ……その神秘に間近で触れることを許されているんだから、与えられた幸運に感謝しないといけないよね……実際、女の子の魅力は、汲めども尽きることのない果てのない夢のようなものなんだよ……」
「スゴい……やっぱり密森先輩はスゴい人です……」
「全然凄くないよ。凄いのは、そういう人と巡り会えたことの方。ただ、これはボクの学びだから、あくまでも参考にとどめて、ヒサオくんはヒサオくんなりの言葉を持たないといけないんだ。大好きなひとにかける特別な言葉を……いま、もしその言葉が見つからないのなら、時間をかけて探せばいい……もう彼女はキミに心を開いてくれているんだから、焦ったり慌てたりしないでできるはずでしょ。ゆっくり彼女のペースに合わせて……試してごらんよ、とっても楽しいから。だから、いきなり逝かせてやろうだなんて気負い込んじゃダメだよ、まして苛立って性急にならないこと、それじゃ彼女が可哀そう」
「先輩は……そうやってきたんですか……?」
「ボクの彼女も年上だけどヴァージンだったから……振り返ると随分、手がかかったかもしれないね……ク◯ニリ◯グスもね、最初は脚を開こうとすると力を入れて拒まれたり、寝返りをうたれて逃げられたりして、なかなか許してはもらえなかったんだ……むりやりはしたくなかったから我慢していたけど、でもそれもとても楽しかったし、嬉しかった……だって恥じらってる女の子って凄く可愛いじゃない?」
「そうですっ、そうですよねっ、わかりますっ」
「年上で、憧れていた人が、すっかり女の子になってるのを目の当たりにすると、どんなことがあってもこの人のことを大切にしたい、って思うようになるから。キミもその気持ちを大切にすると、彼女には必ず伝わるし、キミたちだけの言葉が見つかると思うよ」
「僕たちの言葉……ですか……」
「そう……時間を惜しまずに探してごらんよ……」
「僕、ひどいことしてたんですね……独りよがりで、自分のことしか考えてなくて……」
「ヒサオくんたちは、いま始まったばかりなんだから、これからだよ。楽しいこと、素敵なことがいっぱいあるから。ボクから言えるのは、彼女をいちばんに考えること。簡単だよね、大好きな人なんだから」
「わかります……僕も……」
「それとね、ボクがまだ童貞なのは、嘘なんかじゃなくて本当のことだよ」
「――えっ――!」
「だって、射精なんてマスターベーションで済むことのために、大事な人に痛い思いをさせるのが可哀想で……それに、彼女を可愛がる時間が減っちゃうのももったいないじゃないか……だから結婚するまで、おあずけにしてるんだ」
「先輩の彼女はそれで不満は言われないんですか……?」
「そこはわからないな……でも、不満を持たれないように、いつもたっぷり愛してるつもりだよ。まぁそれはボクが愉しくてやってるだけなのかもしれないけど……ク◯ニリ◯グスはね、男と女の間で交わされるもっとも愛情深い親密ないとなみだと思うんだ……ボクたちにとってはとても神聖な誓いの儀式でもある……だってボクは彼女にしかそれをしたいと思わないし、彼女のにおいにしか興味がないから……そしてそのことを今は彼女もわかってくれている……だからボクが望めば、みんな見せてくれるし、恥ずかしいのを堪えてボクの言うことを聞いてくれるようになってる……数ヶ月前にはとても受け容れては貰えそうもないことでも、してくれるようになっているんだ……ヒサオくんも急げばまわれだよ、まずは彼女の信頼を勝ち得るための思いやりを示すことだと思うな、優しくしてもしすぎることはないんだから」
二人とも厨房ですが、天才たちです
許してあげてください