ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~   作:真夜中のミネルヴァ

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悪夢の教室

 

          LⅩⅩⅤ

 

 食峰操祈には、自分がなぜこうしたことになっているのか解らなかった。

 教室の壁、床から一メートルほどの高さのあたりに丸い穴が空いていて、上半身だけを外の廊下側に出しているのだ。何より悩ましいのは、豊かに拡がった腰骨が引っかかって穴から出られないのだった。さりとて体を引き抜こうにも今度は肋骨が邪魔になる。

 要するに進むことも退くこともままならず、不自然な体勢のまま、もうかれこれ十五分以上――? 悪戦苦闘していた。もうじき始業ベルが鳴るだろうというのに、いつまでもこうしてはいられないと焦れるのだが事態はいっこうに改善する気配を見せないのだった。

 

 いったい誰よっ、教室の壁に穴を開けるなんておかしなことをしたのはっ――!

 

 苛立ちまぎれに胸の中で呪詛を唱えるが、問題の本質はそこではなかった。

 何かが恐ろしく間違っていた――。

 だいたい、操祈には壁の穴をくぐるなどという愚かしいことをした記憶はないし、第一、穴の大きさも彼女の引き締まった腰のくびれに丁度合うサイズで、そもそも到底、くぐり抜けられるような代物ではないのだ。

 おかしいのはそれだけではない。

 教師がこんな状態であるのにもかかわらず、誰一人として不審に思うものがいないのだ。

 廊下を行き交う女子生徒たちは、いつもどおりにニコニコと笑顔で挨拶をして通り過ぎていくばかりで、女教師を苦境から救おうと手を差し伸べるものはいなかった。

 困り果てた操祈が「あの――」と、声をかけると、

「操祈先生、おはようございま~すっ」

 と、普通に元気な声が返ってくるのだが、それだけ。みな何事もないかのようにすぐに彼らの日常へと戻っていってしまう。

 

 どうしたのみんなっ、なんで誰も私を助けようとはしてくれないのぉ? 酷いじゃないのよぉっ――!

 

 非難しようと口を開くのだが、操祈の方からも出てくる言葉は「おはよう――」と、普段通りの挨拶になっているのだった。

 

 どういうことっ――!?

 

 理不尽な奇異なことばかりが続いていたが、隣の教室に担任の村脇静繪が現れた時は、ついに救いの神が現れた! と、期待に胸を高鳴らせて手をさし上げて合図を送ろうとした。が、次の瞬間、いきなり視界に入ってきた自身の剥き出しの白い腕に驚いて、ぎょっとして言葉を失ってしまう。

 季節はまだ1月中旬の真冬、それなのに彼女は、まるで真夏のような白ニットの大胆なノースリーブでいた。

 薄着でいるのもおかしいが、それ以上に操祈は校内にいる時には常にスーツなど上に羽織るものを身につけていて、努めて女の部分を他人目にさらすことのないように気を配っていたのだ。

 それなのに――。

 まるで恋人といるときのように無防備に体の線をくっきりとさせて、女であることをアピールするような教師らしからぬ格好をしていた。

 だから、てっきり村脇女史からは注意を受けると思ったのだが、

「おはようございます、食峰先生、今日もしっかりおねがいしますよ」

 そう言っただけで、彼女もまた何事もなく自分の教室に入っていってしまってそれっきりなのだった。

 女史ならすぐに施設課などに連絡をして適切な指示をしてくれるに違いないと思っていたのだが、操祈の願いはまたしてもあっけなくスルーされてしまっている。

 

 わたし……いったいどうしたら……。

 

 そんな途方にくれる彼女に、さらに追い打ちをかけるように、壁の向こう側では一層、不穏な事態が始まろうとしていたのだ。スカートがいきなりめくり返されて、お尻がすっかり外気にされされてしまった。そればかりか肌着の両側に何者かの指がかかっていて、あろうことか脱がそうという意思を感じる。

 

 ちょっと! やめてっ――!

 

 声にならない悲鳴をあげて背後を振り返るが、そこには白い漆喰の壁があるばかりで、無情にも身を守りたくても両手は届かない。

 認めたくはなかったが、体の自由を奪われた教師に対して悪戯心を抱く不心得な生徒が現れることは、この常盤台においても否定しきれないことなのだった。

 

 ヤダっ、誰か止めてっ、おねがいっ、誰かっ――!

 

 諫止の声も虚しく、そのまま為すすべもなく穿いていた純白のショーツは一気に下までおろされて、下半身をすっかり露出されてしまうのだった。きっと教室には、ホームルームを前に、もう生徒達が揃っているに違いないのだが、いったい教え子たちの目に今の自分の姿がどのように映っていることか、考えるだけでも恐ろしかった。

 だが、悪ふざけはこれだけでは終わらない。

 裸に剥かれたお尻を、誰かがゆっくりと手触りを愉しむように撫でまわし始めたからだ。操祈はお尻の肉を堅くして拒むが、揃えた指が谷あいをさっとかすめると、ひっ、と思わず官能的な悲鳴を発して乱れてしまうのだった。そればかりか、そこを無理やり左右に広げようとしていて、相手がふざけているのではなく本気なのだと分かると、にわかに恐慌が来してくる。

 

 ああ、おねがいっ! 誰か、助けてっ! ねぇっ――!

 

 レイの名を呼ぼうと思ってから、言葉をのみこんだ。それだけは口にしてはいけないと思うからだった。彼との関係を公にするわけにはいかないのだ。代わりに悔しさに視界が涙で滲んでくる。

 愛する人以外にはけっして許してはいけないこと、見せてはならない場所を晒してしまっている。

 理由はともあれ、これは恋人への背信に違いなかった。

 レイくん……たすけて……。

 操祈は心の中で必死に最愛の人の名を呼び続けた。きっと最後には彼が何とかしてくれる、そんな思いが、少年への揺るぎない信頼があるからだった。

 けれども現実は彼女にとって、さらに過酷なものとなっていく。

 そもそも女の体は前面以上に背後を突かれるととても脆いもの。操祈の張りのある美しいお尻はキュートな逆ハート型を描いていて、その谷間にあたる部分には差し障りのある女の弱みが集められている。それはどんなにきつく脚を閉じ合わせても、陵辱者の手指からは逃れられないものなのだった。

 今やむっちりとやわらかな肉は無慈悲に左右に分けられて、冷たい外気と冷酷な視線を感じるようになっている。他人にはいちばん触れられたくない場所に指先がペトリと貼りついてきて、操祈はありえないことに当惑しながらも身に降りかかった辱めに堪えるしかなかったのだった。その上、酷い指は明らかにそこを侵そうというおぞましい意図を示して、きつく結んだ操祈とのせめぎあいとなっている。だが、それは初めから勝ち目のない儚い抵抗にすぎない。実際、八の字を描く内緒の筋肉の交点――操祈本人は存在を知らない自身の体の急所――を、腰にある情欲のツボとともに押されると、下半身にある女性特有の器官、組織が鳴動をはじめて、たちまち女の体は綻んでしまうのだ。

 あっ――と、思った時には既に指先が潜ってきていて、絶望に唇を噛む。こんなにも易々と体を犯されてしまったことが恋人への裏切りに思えて情けなかった。

 もっとひどいことをされる前に、自ら命を断たねばと、そう思ったとき、不意に身に覚えのある感覚がして驚きに目を大きく見開いた。

 それは、懐かしくも愛しいもの――。

 そして憎らしいもの……だ。

 

 あなた……レイくん――なのっ!?

 

 恋人と褥をともにするようになって身に受けた様々な愛撫の中、操祈を悩ませたものの一つが、少年の指にあった、ペン胼胝(ダコ)――だった。

 勉強家で、お絵描きも得意な少年は、きっと幼い頃から鉛筆などの筆記具を握る機会が多かったのだろう、中指の左側に、その年頃の少年の指にしてはやや大きめの胼胝ができていて、それが折に触れて操祈の体に、えも言われぬ微妙な刺激を与えてくれるのだった。ある時はさりげなく、ある時ははっきりと意思をのせて女の体に思い知らせてくる。

 とりわけデリケートな部分を指の背を渡らせるようにして擦られると、カサっと乾いた突起を乗り越えるたびにのたうちまわるほどの快感に痺れてしまうのだ。

 その小癪にも恋しい小さな突起物の存在を感じて、操祈は安堵交じりのせつないため息を吐いた。いま自分のお尻を触っているのが恋人であるのなら、それならば仕方がないと諦めもつく。

 それとともに、

 

 どうして――?

 

 と、思う。

 二人の関係は秘密にしていた筈なのに、みんなの目があるところで、どうしてこんなことをするのかしら、と。

 方や指で無慈悲に犯しながら、他方、やさしい温もりの手のひらがお尻を励ますように撫でている。レイだとわかると、抵抗感は一気に薄らいで操祈は従順に愛撫を受け容れていた。

 男の手に促されるままに体を開いた。そこ――に、吐息がかかっても、もう逃れようとはしないのだった。

 (つい)ばむような軽いキスの洗礼はすぐに待ちかねていた愛撫になって、大好きな舌と唇の訪問受けた体は大歓びで身肉をひるがえしてご褒美をねだっていた。

 彼にしかできないやさしさで操祈の体を慰めていく。

 どんなに大切にされているか、愛されているかを教えてくれる、心のこもった口づけ。

 それは最前までの操祈の懸念など、一瞬でなぎ払ってしまうほど眩いものなのだった。

 壁の向こう側の教室で、自分の体がいまどのような状態にされているのか、今しがたまで心を乱していたものが、もはやそんなことはどうでもいい些細なことになっていた。

 彼がそばに居てくれるのなら、もう何も心配することはないと無条件で思えるからだった。

 大好きな人、最愛の人、心からの友――。

 愛してるわ……レイくん……。

 操祈も体で思いをうったえていた。誰よりも愛する男への女の愛し方とは、恋人から望まれるままに体をひらいて、求められるものを全て捧げることだ。

 そして恥ずかしさの先にある甘露な果実を、彼が与えてくれるままに頬張ること、それが女であることの幸せであり、恋の歓びだった。

 みんな、大好きな彼が教えてくれたことなのだ。

 女にとって愛する人から体を触れられるのがどんなに嬉しいことか、可愛がられるとはどういうことなのかをひとつひとつ、ためらう彼女のペースに合わせて倦むこともなく、少しも逸ることもなく、丁寧に丹念に、手取り足取り導いてくれた心やさしい男の人。

 それが、どんなにありがたかったか……。

 舘野唯香が言っていたように、年の差や立場の違いの前に、恋をすると人は自然に男と女になるのだ。

 肌と肌を接して、温もりを感じて、愛しているからこそできることをして、他人にはけして見せない姿を見せ合い、秘密と罪とを分かち合って強い絆を結んでいく。

 操祈のからだの成り立ちを心得た舌と唇が、詰将棋のように王手を連発して退路を断っていった。女は必死に逃げ惑いながら屈服される時を待っている。

 愛してる……愛してる……愛してる……。

 胸の中で恋人への愛情が膨らむとともに、体の中にあった情熱の塊もどんどん膨張していき、解き放たれる時を目指して舞い上がっていった。

 はぁっ、はぁっ、はぁっ――。

 熱い吐息が溢れて、肩を(せわ)しく揺すっての荒い息遣い。

 操祈の視界にはもうひと気の絶えた無機質な廊下などではなく、輝くばかりに眩い星辰の瞬きが目の前にまで迫ってきていた。

 彼の舌と唇も、そして指と手も、操祈のか弱い部分をいたわりながら、容赦のない責めとなって女の肉から歓びを吸い上げようとしているのだ。そのままクライマックスを目指して一気に駆け上ろうとしていた操祈だったが――。

「どうなさったんですか、先生」

 突然、彼女の目の前に人影が立って、冷ややかな声音を浴びせかけられた。

「ひぇっ――!?」

 驚きと狼狽と当惑に、喉の奥から奇妙な声を発して顔を上げる。

「食峰先生、とてもお顔が赤いですよ」

 美少女の顔が間近にあって、不思議そうに見下ろしていた。

「せ、生徒会長――っ」

「いいえ、もう生徒会長ではありません、去年、退任したので、お忘れですか?」

「……や……山崎……さん……」

「はい、どうされたんですか? 壁に挟まったりして」

「みっ、見えるのっ!? あなたにこれがっ」

「ええ、壁から体を出して、何をされてるのかと不思議でした。なんだかとても余裕のないご容子だったので声をかけるべきかどうか迷っていたのですが、でも、だんだんが変な感じになってきて、それで心配になって……」

 操祈の苦境を誰ひとりとして気づいたものがいなかったことから、もしかするとこれは人の目には映らないのかしらと思っていたのだが、この美少女だけは気がついていたらしい。

「いったい、どうされたんですか?」

 背後ではレイが愛撫にさらに情熱をこめてきて意識を刈ろうとしていて、操祈は気をヤリそうになりながら犀利な美少女と対峙することになっている。

「なんだかまるで、セックスの最中にお邪魔してしまったみたいで」

「いっ、いいえっ、そんなはずっ、ないでしょっ……だって、ここっ、学校なんだからあっ……ああっ」

 恋人の愛撫はあまりにも甘美なのだ。疎ましい会話にさえ妨げられなければと思い、少女の勿体つけた態度が憎らしくなってくる。

「そうですよね、先生が学校でそんなイケナイことをなさるはず、ないですものね……でも、それじゃあどうして、そんなに息遣いが乱れているのですか? お顔だって真っ赤になってますし……あら、壁の向こう側はどうなっているのかしら?」

 壁の向こう側――と、言われて操祈は焦った。

 もしも碧子に今の自分の姿が見えるのなら、もしかしたら恋人と演じていることも見えてしまうのかもしれないと、理由なくそう思ったからだ。

「ち、違うのっ、なんでもないのよっ、ちょ、ちょっと風邪気味でっ……それでよっ……そのせいっ……だからあっ、ああっ、あなたもぉっ、うっ感染ってはいけないからっ、お部屋にっ、お戻りなさいっ……もうすぐ授業が始まるわよぉっ」

「授業? 先生、何をおっしゃられているんです? 今日はお休みですよ、日曜日じゃないですか」

「えっ――?」

「寝ぼけていらっしゃるみたいですね。それとも、恋は盲目ということなのでしょうか? ますます壁の向こう側が気になってきました……きっと誰か居るんですよね、いったどなたなんです? お美しい食峰先生にこんなに可愛い顔をさせるワルい人って」

 碧子はワケ知りの意地悪な笑みを向けている。

「先生はいま、いったいどんなことをされているんですか?」

「なにもっ、されてなんかいないわよぉっ」

「とてもそうは見えませんよ、とってもイケナイことをされてる真っ最中にしか」

「そんなことっ……ああっ……イヤぁっ!……」

 いよいよ愛撫のラストスパートになって、デリケートな場所の全ておさえられて、こらえきれずに声をあげて乱れてしまった。

「あら、ナニがおイヤなんです?」

「ちがうのぉっ」

「ちがいませんよ、女がそんな声を出すときっていうのは、きまってるんです。いったい今、彼から何をされてるんですか?……たしか密森黎太郎さん、ですよね、壁の向こうに居るのは」

「――!――」

 その瞬間、少女の冷ややかな目が見つめる中、情熱のはけ口を奪われていた操祈の体は、生殺しにされたようにただ虚しく崩れていったのだった。

「……ああっ……はぁっ……ああ……」

 燃え切らないオルガスムスの後、繰り返し幾度も波が寄せてきて体はその都度、小刻みにわななくが、心は恐れに寒々としたままなのだった。

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

 乱れた吐息を整える。

「あらあら、どうやらイっちゃったみたいですね……食峰せんせいっ、イケナイんだっ……あははっ」

「………」

 中途半端な終わりかたをして、欲求が満たされなかった体は不満を別の形で噴き出していて、すっかりしどけないことになっているようである。

「碧子さん……あなた……なにを言いたいの……」

「わたし、知ってるんですよ、密森くんがあなたのダイジなところが大好きだってこと、彼、凄いヘンタイさんみたいですから」

「………」

「お綺麗な先生ですから仕方がないと思いますけど、でもあんなハシタナイことを先生がしていると知ったら、みんなはどう思うでしょう……後ろまでしっかり開発されてるなんてねぇ、イヤらしいっ、それにク◯ニもいろいろな体位でお楽しみのようですけど……マンぐり返しとか顔面騎乗なんて、私だってやったことないのに、やっぱり大人の女の人はサスガですね」

 美少女は、まるで自分たちのセックスライフを見てきたように言うのだ。刹那、舘野唯香が告げ口でもしたのかとも疑ったが、さすがに体位のような立ち入ったことまで話したことはなかったのだった。

「さあ、今度は密森くんに話を聞かなくては――」

 女教師が達したのを見届けた美少女の関心は、今度は教室内に向かっていて操祈はうろたえた。

 そこでは下半身をむき出しにされて、とても情けないことになっている。そんな姿を彼女にだけは知られてはいけない、そのことははっきりと感じるのだった。

「ダメっ! 行かないでっ!」

「いいえ、そうはいきません」

 操祈の言葉を無視して、教室の引き戸のある方へと足を向けた。

 ガラガラガラ――。

 美少女は無造作に扉を開けると操祈に勝ち誇った笑みを向けながら、教室内に入っていくのだった。

「見ないでっ!」

 操祈は声を上げて制止した――。

 その瞬間、ハッと目が醒めた。

 ――?!――。

 全身に気味の悪い脂汗が浮いていて、ハアハアと息を乱している。胎児のように身を丸くして。

 夢――!?

 それが判ってほっと安堵する。

 胸はまだドキドキと亢鳴(たかな)ってはいるが、意識が鮮明になってくるにつれて、あらためて自身の哀れな状態に気がつくのだった。

 温かかった股間が時が経つにつれて冷え冷えとしていった。それはお尻の方にまで達しているようでうんざりする。

 操祈は汗と分泌物とで()えた匂いのするベッドで、体に貼りついた肌着を疎ましく思いながら身を起こした。そうしながら、まだ余韻の残る頭をうちふって、どうしてあんな夢を見たのかしらと不思議に思うのだった。

 イヤな夢だった――。

 夢の中に出てくる碧子は意地悪な少女だった。だが操祈の知る彼女はとても愛らしい生徒なのだ。優秀で性格も良く、人を思いやることのできる気立ての良い美少女だ。

「不条理なのは、夢だからよね……」

 ひとりごちながら、サイドテーブルに手を伸ばしてスタンドを点けた。掛け布団を恐る恐るめくって、パジャマの下をすっかり汚してしまっているのを確認すると、レイからは「量が多い」と言われたことを思い出してシュンとなる。

 操祈の若い情熱のほとばしりは、薄いライナーなどではとても受け止めきれずに、パジャマだけでなくシーツにまでオトナのオンナのおねしょのしみを作っていたのだ。

「……なにやってるんだろう……ホントに……こんなの……」

 レイに見られたら、死にたくなるほどのみっともない粗相。

「でも……もうレイくんは知っているのよね……わたしのからだのこと……」

 それが恥ずかしくもあり、嬉しくもあるのだった。

 だらしないオンナだと知っていても、レイの愛と忠誠には少しも変わりがないばかりか、かえって愛情深くなったように感じているからだった。

 操祈は気怠げにベッドから起き上がると、濡らしてしまったシーツを手繰り寄せて丸めていった。

 幸いベッドにまで沁みが移っていないのを確かめて少しだけホッとすると、汚れ物を抱えてそのまま寝室を出ていくのだった。

 




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