ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~   作:真夜中のミネルヴァ

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夢の正夢 1

 

 狭いキャレル(閲覧用個室)の机の上で両肘をついて四つん這いになった操祈は、うっかり声を発してしまいそうになって慌てて片手で口を押さえた。それでも「はうっ」と、くぐもった呻きが溢れてしまったのだが、とてもささやかなものになっていて仮に隣で誰かが聞き耳をてていたとしても、きっとクシャミを我慢したのだろうぐらいにしか思われなかったに違いない。

 ましてそれが女の感情発声だと気がつく者は居なかっただろう。

 いま彼女は追い詰められていて必死の綱渡りをしているような状態にあるのだった。恋人の性戯は二人だけの閨でいとなまれる時と同じように心のこもったもので、やさしく執拗に彼女の急所を次々に捉えては懇ろに可愛がってくれていたからだ。

 時刻は、午後の三時二十五分を少し過ぎたところ――。

 水曜日は図書の整理日で、閉館時間まであと十分あまりになっていた。

 目の前にある嵌め込み式の張り出し窓からは内庭を行き交うくつろいだ様子の放課後の生徒たちの姿が見えている。遮光ガラス越しになる向こう側からは見えにくいのだろう、操祈が不自然に身を乗り出すようにして外の容子を窺っていることにはまだ誰も気がつかずにいるようである。

 生徒を指導すべき立場である自分が誰よりも大胆にルールを破って禁忌を犯していた。

 おかしな声を上げてしまったら、すぐにも誰かがやってくるにちがいない。そうでなくても不審の目が向けられれば、たちまち背徳の関係が発覚してしまうような状況。

 見つかったら即、身の破滅につながってしまうだろう。

 とりわけ吹き抜けになった二階回廊の正面側、窓際に沿って配されたキャレルは、地下書庫にあるものとは違っていたって簡易な仕様になっているのだ。

 隣で本のページをめくる音さえ聞こえてきそうなほど、薄い壁に仕切られただけの狭いコンパートメント。あまつさえ、背にした鍵もかからない布製のアコーディオンドアの向こう側では、普通に廻り廊下を歩く生徒たちの足音が聞こえるのだ。

 そんな公共の只中に、刹那のエアポケットのように生まれた非日常の空間で、操祈は二人だけの寝室でいるときのようなあられもない姿になっている。真っ白く豊麗なお尻を剥き出しにされて、言葉にはいっさい頼らずに互いの気持ちを伝え合っていた。

 声も吐息もそして衣擦れの音さえも立てられない中、彼も吸ったり(すす)ったりして淫らな異音を立てないように口を大きく開けてくわえ、舌を長く伸ばして深く広く密着させてしっかり寄り添っている。それがシチュエーションもあってか、いつも以上の一体感をもたらしているようなのだった。

 一途な思いと必死な思いとが行き交い、刻々、愛に結晶していた。

 レイくんっ……あたしっ、あなたのことをっ……。

 操祈はいまにも(くずお)れそうになるのを懸命に(こら)えながら、口にする代わりに体でせつない女の思いを訴えているのだった。

 




間を空けてしまいました
その上ショートです
節がちょっと長くなりそうなので、この続きは明日に
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