~悟side~
光が収まるのを感じた俺はまず、抱き寄せた二人の安否を確認した。
「恵里、八重樫、無事か?」
「う、うん。大丈夫だよ」///
「……」///
何故か頬を赤らめていたが俺は二人の無事だと知るとすぐに周囲の状況を確認した。どうやらハジメや白崎、教室にいた全員はここにいるようだ。自分達がいる場所は何かの儀式に使うような広間でその台座の上にいるようだ。それを取り囲むかのように周りには祈りのポーズをしている大勢の人がいた。やがて一人の老人が近づいてきて
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会の教皇の地位に就いております。イシュタル・ランゴバルトと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
そう言いながら優しく微笑むのだった。
~~~~~~
現在、我々は長さ十メートルもありそうなテーブルが幾つも並んである大広間まで案内された。全員が用意された椅子に座るとまるでタイミングを見計らったかのようにカートを押しながらメイド達が入ってきた。地球では見られない本物のメイドの姿に男子達は大興奮だ。
(なるほど、ハニートラップで俺達を籠絡させるつもりか。どうやらあのイシュタルという老人には警戒がひつよ(クイッ)いっ!?)
俺がメイドを見つめながら思考に耽っていると急に痛みが走った。横をみると隣に座っている恵里が頬を膨らませながら俺の脇腹をつねっていた。
「何をするんだ?恵里」
「…だってメイドさん達に見惚てたじゃん」
「誤解だ。俺は観察していただけだ。だから放してくれ」
「………わかった」
恵里は不服そうにしながらも放してくれた。全員が落ち着くのを確認するとイシュタルは事情を説明した。
要約するとトータスには人間族、魔人族、亜人族の3つの種族がいて、この内人間族は魔人族と何百年もの間戦争を続けている。
魔人族は個の力が強いが数が少ないため、人間は数の多さを活かしてなんとか魔人族と戦力の均衡を保っていたが最近になって魔人達が魔物を使役するようになり数のアドバンテージが崩れたそうだ。そのため、人間族は危機的状況に追い込まれている。故に、救いを求めるため神に祈りを捧げたとの事。
「あなた方を召喚したのは"エヒト様"です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方は喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される前にエヒト様から神託があったのですよ。あなた方という"救い"を送ると。あなた方には是非その力を発揮し"エヒト様"の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救っていただきたい」
「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は許しませんよ!私達を早く帰して下さい!きっとご家族も心配してるはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
説明をするイシュタルに反論したのはあの場にいた社会科教師の
彼女は今年で25歳になる年齢で150cmという低身長に童顔、それでいて生徒のことを誰よりも一番に考えている。そんな姿から生徒達から親しみを込めて「愛ちゃん」と呼ばれている。(本人は威厳のある教師を目指しているのでその名で呼ぶと怒るのだが)
「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」
「ふ、不可能って……ど、どういう事ですか!?喚べたのなら帰せるでしょう!?」
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間には異世界に干渉する魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意志次第ということですな」
「そ、そんな……」
愛子先生は脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達が騒ぎ出す。
(なるほどな、
俺がなるべく傍観に撤していると安易に返事をするバカがいた。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだそれを知って、放っておくなんて俺はできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない……イシュタルさん?どうですか?」
「そうですな、エヒト様も救世主の願いは無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね?ここに 来てから妙に力が漲ってくる感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者の比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
「ハァ、それしか方法がないんなら……しゃあねぇ、俺も戦うぜ」
「龍太郎……」
「今のところ、それしかないわよね。……気にくわないけど……私もやるわ」
「雫……」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織……」
いつものメンバーが賛同したことにより他のクラスメイト達(俺と恵里、ハジメを除く)も賛同した。愛子先生はオロオロしながら「ダメですよ~」と涙目で訴えているが誰も聞いてはくれなかった。この状況を見た俺は
(……くだらん、なんてくだらない茶番劇だ)
イラついていた。それはそうだろう、いきなり別世界に連れてこられて「この世界のために戦ってくれ」と言われて素直に従えるわけがない。それなのにクラスメイト達は天之河に先導されて戦争への参加を表明している。これを茶番劇と言わず何という。
(しかも、こいつらは分かっているのか?俺達は戦争、すなわち人殺しを強要させられてるのだぞ。それをさせないために畑山先生は必死に止めようとしているのに、なぜわからない!?)
俺は現実逃避しているこいつらの目を醒まさせるために意見をする
「俺は、反対だな」
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~ハジメside~
天之河君が戦争への参加を表明しクラスメイト達が賛同したその時
「俺は、反対だな」
反対意見が出た。その声は特別大きく言ったわけでもないのにこの大広間に響き渡った。全員がそれを言った悟に注目する。
「……鈴木、話を聞いていたのか?このままではこの世界の人達が滅亡するかもしれないんだぞ!?」
「もちろん、聞いていたさ。…だがこれはあくまでもこの世界の人々の問題だ。俺達が関与していい問題ではない」
「なっ!?それはこの世界の人達を見捨てると言うのか!?」
「そうだ」
天之河君は激昂しながら話すも悟は涼しい顔で対応する。
「この人殺しめ!お前は人を助けたいと思わないのか!?」
「助けてやりたい気持ちはわかるが、別世界の人達を救うほど俺は善人ではない。それに人殺しと言っているが天之河、お前やクラスメイト達もいつかはそのレッテルを張ることになるんだぞ?」
「な、何を言って……」
「戦争とは殺しあいだ。武器を持って相手を殺さなければならない、そうしなければ自分が生き残ることができない。……お前達にその覚悟はあるのか?」
するとさっきまで活気に満ちていた生徒達の顔が一気に青ざめる。今ので気づいたのだろう戦争の恐ろしさを。それでも天之河君は皆を鼓舞する。
「皆、安心してくれ!俺がいる限りそんなことはさせない!」
「……どうやら、お前の意志が固いようだな?」
「当たり前だ!」
「ハァ……仕方ない、これしかないか」
悟はため息をしながらイシュタルの方に視線を向ける。
「イシュタル殿、我々はこの世界の戦争に参加しましょう。ただし、条件があります。」
「……ほう?」
「なっ!?待て、鈴木!何を勝手に……」
「いいから黙っていなさい!光輝」
「今は悟に任せようぜ」
天之河君が悟を止めようとしたが八重樫さんと龍太郎君がそれを必死に抑える。
「…先ほども畑山先生が述べた通り我々はあなた方のせいで誘拐された、いわば被害者だ。それなのに無条件で戦争に参加しろとは虫が良すぎではないですか?無論、今から出す条件は双方が納得するものなのでご安心を」
「……まぁ、良いでしょう」
「ありがとうございます。……では、そこの君」
すると悟は近くにいたメイドに声をかける。
「今すぐに紙とペン、それからインクに……あとはナイフを持ってきてくれ」
メイドはイシュタルがコクリと頷くのを確認すると悟の指示に従った。
…しばらくしてからメイドがカートに紙とペン、インクとナイフを乗せながら戻ってきた。
「君には代筆をお願いしよう……イシュタル殿、よろしいですかな?」
「ええ、かまいません」
「では、始めます。俺が出す条件は3つ。
・一つ目は衣食住の保障
・二つ目はこの世界のことについての地理、歴史などの資料、情報の提示
・三つ目は戦争に意欲的でない者は後方支援にまわしてもらう
これが条件です。」
「……まぁ、これなら良いでしょう」
イシュタルがペンを持ちその紙にサインをしようとした時
「ああ、それからサインをした後は血判もしてくださいね」
「……何故でしょうか?」
「確かにサインをしたなら血判なんてする必要はありませんがサインだけではあなたがこの条件を守るともかぎりませんからね。だから本人のものだとわかる血判をするんですよ」
「・・・」
イシュタルはその言葉に黙ってナイフで自分の指を切り血判を押した。
「どうやら、これで契約は成立ですね」
悟は満足そうにしながら紙を懐にしまいイシュタルに右手を差し出す。
「これからは共に魔人族を倒すために
「……ええ、こちらこそ」
「「フフフ・・・」」
二人は笑いながら握手をしていたが決して目は笑っていなかった。
というわけで主人公達は条件付きで戦争に参加するという話にしてみました。なんかただ黙っているのも主人公の性格には合わないかなと思いつきで書きました。すみません。
次回はハイリヒ王国の話を書いていこうと思います。