戦争への参加を表明した以上、俺達は戦いの術を学ばなければならない。いくら規格外の力を潜在的に持っていると言っても元は平和に浸かりきっていた日本の高校生だ。いきなり魔物や魔人と戦うなど不可能である。
しかし、その辺の事情は把握しているのか。イシュタル曰く、この聖教教会本山がある【神山】の麓にある【ハイリヒ王国】にて受け入れ態勢が整っているらしい。
イシュタルの案内の元、聖教教会の正面門までやってきた。下山してハイリヒ王国に行くためだ。
ちなみに大広間から出てから俺の腕には恵里が抱きついている………そんなにメイドを見ていたことがダメだったのだろうか?
聖教教会は【神山】の頂上にあるらしく、凱旋門もかくやという荘厳な門を潜るとそこには雲海が広がっていた。
クラスメイト達は太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色に呆然と見惚れていた。
どこか自慢気なイシュタルに促されて先を進むと、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が見えてきた。美しい回廊を進みながら促されるままその台座に乗る。
台座には巨大な魔法陣が刻まれていた。柵の向こう側は雲海なので大多数の生徒が中央に身を寄せる。それでも興味が湧くのは止められないようでキョロキョロと周りを見渡していると、イシュタルが何やら唱えだした。
「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれんーー“天道,,」
その途端、足元の魔法陣が燦然と輝きだした。そして、まるでロープウェイのように滑らかに台座が動きだし、地上に向けて斜めに下っていく。
どうやら、先ほどの“詠唱,,で台座に刻まれた魔法陣を起動したようだ。この台座は正しくロープウェイなのだろう。ある意味、初めて見る“魔法,,に生徒達はキャッキャッと騒ぎ出す。雲海に突入する頃には大騒ぎだ。
そんな彼らを置いて俺は不思議な感じがした。
(なぜだろう………俺はこの“魔法,,というものを見たこと、いや、使ったことがあるようなそんな感じがする………)
俺がワケのわからない懐かしさを感じていると、やがて、雲海を抜けて地上が見えてきた。眼下には大きな町、否、国が見える。山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。ハイリヒ王国の王都だ。台座は王宮と空中回廊で繋がっている高い搭の屋上に続いているようだ。
(ブルブル………いかんな。今はそんなことよりもこの世界でどう生き延びるかを考えねば)
俺は頭を横に振り、思考を切り替えてから、この先待ち受ける試練に向けて覚悟を決めるのだった。
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王宮に着くと、俺達は真っ直ぐに王座の間に案内された。
教会に負けないくらい煌びやかな内装の廊下を歩く。道中、騎士っぽい装備を身につけた者、文官らしき者、メイド等の使用人とすれ違うのだが、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた視線を向けて来る。自分達が何者なのか、ある程度知っているようだ。
美しい意匠に凝らされた巨大な両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士の二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事を待たずに扉を開け放った。
イシュタルはそれが当然のように悠々と扉を通る。天之河等一部の者を除いて生徒達は恐る恐るといった感じで扉を潜った。
扉を潜った先には真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪奢な椅子ーー玉座があった。玉座の前で覇気と威厳を纏った男が立ち上がって待っている。
その隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪都眼の美少女が控えていた。更に、レッドカーペットの両サイドには左側には甲冑や軍服を纏った者達が、右側には文官らしき者達が三十人以上並んで佇んでいる。
玉座の手前に着くと、イシュタルは俺達をそこに止め置き、自分は国王の隣へと並んだ。
そこで、おもむろに手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度にキスをした。どうやらこの世界では、国王よりも教皇の方が立場は上のようだ。俺は内心呆れていた。
(やれやれ、国を動かすのは人ではなく“神,,の意思で決めているということか)
そこからはただの自己紹介だ。国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナという。
後は騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介がなされた。ちなみに、途中、ランデル王子がの目が白崎に吸い寄せられるようにチラチラ見ていたことから彼女の魅力は異世界でも通じるようだ。
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その後は異世界料理を振る舞われた。見た目は洋食と変わらないが、たまに出てくるピンク色のソースや虹色の飲み物に生徒達は興味深々のようだ。
ランデル王子はしきりに白崎に話しかけているのをクラスの男子はやきもきしながら見ていた。
また、この晩餐会には貴族等も参加しており、少しでも“神の使徒,,である自分達にお近づきになりたいのか、生徒達に積極的に話していた。彼らも悪い気がしないのか、男子は可愛い令嬢に言い寄られ鼻の下を伸ばしていたり、女子はイケメンの貴族がスマイルを見せると顔を赤くしていた。
俺は、そんな彼らの様子を少し離れたテラスから眺めていた。
(本当にわかっているのか?あいつらは、こんなことをしている暇があるなら、さっさと明日の訓練のために休むべきだ。それに………)
クラスメイト達に呆れた視線を注ぐとともに、俺は貴族達が嵌めている指輪やネックレスなどの宝石に注目していると
「パーティーには参加されないのですか?」
「!?」
急に声をかけられ少し驚いたが、俺は心を落ち着かせ声が聞こえた方向を見ていると先程、自己紹介されたリリアーナ王女がいた。
「…これはこれは、リリアーナ王女ではありませんか。初めまして、自分は鈴木悟と申します。気軽にサトルとお呼び下さい。」
俺は少しでも彼女に考えを悟られないように
「はい、初めましてサトル様。
「………よろしいのですか?」
「はい!親しい方にしか呼ばせませんが、これからは共に魔人族を倒すのですから、ぜひ呼んで欲しいのです」
いくら別世界の住人とはいえ王族に気安くするなど普通なら死刑に値するものだが、王族の願いを無下にするわけにもいかず俺は言う通りにした。
「……では、ありがたく呼ばせて貰いましょう」
「はい!」
彼女は何故か友好的に話してくれるが、こちらとしてもこの世界に住んでいる人と友好関係が築きたかったので正直助かる。
すると、先程まで明るい顔をしていた彼女の表情は暗くなっていた。俺は具合でも悪いのか?と思い声をかける。
「どうしましたか?リリィ」
彼女は恐る恐るといった感じで口を開く。
「その………サトル様は私達のことがお嫌いですか?」
予想もしなかった質問に内心驚いた。
「………どういうことでしょうか?」
「その………先程から私達を見る目が疑ってるような視線で…それに今も笑顔をつくられていますが目が笑っていないので………」
「・・・」
俺は内心、
「………あなたの言う通り、俺はあなた達を信じていない。……というよりも呆れている」
「………どうしてでしょうか?」
「あれをご覧ください」
俺はそう言いながら今も晩餐会で盛り上がっている会場を指差す。
「まず、俺達は神の使徒と呼ばれていますが、元は人も殺したことがない自分の将来のために勉強していただけの子供です。それなのに突然この世界に連れてこられて戦争を強要させるなど呆れて言葉が出ません」
「そ、それは………」
彼女が何か言おうとしたが俺は言葉を続ける。
「しかも彼らは我々を“選ばれた者,,と呼び持ち上げることで自分達は特別なんだと思わせようとしている。その証拠に見て下さい」
俺が続けて指を指した方向には貴族達に言い寄られて幸せそうな表情をしている生徒の姿だった。
「それに正直に言ってこの世界の人々は本当に存亡の危機にあるのかどうか信じられないんですよ」
「そんなことはありません!実際私達は魔人の脅威に晒されていて「ならば何故、貴族達はあんなにも心の底からパーティーを楽しんでいるのですか?」!!!それは………」
何故そんなことがわかるのか?って、それは彼の家族は、父は警察署長、母は敏腕弁護士を勤めており、自分も将来どちらかに就こうと思い時々父と母の仕事場を見学させてもらっているのだ。そこでは、犯罪をおかした者や冤罪で捕まった者、平気で嘘をつく者等様々な人がいた。そのせいか悟は相手の目、口、仕草などの動きだけでその者が何を考えているのかが分かるようになったのだ。
ちなみに今の貴族達の表情からは(これで自分達は魔人族と戦わなくてすむ)という完全に戦争を悟達に丸投げするき満々なのだ。
「あの貴族達は自分達の世界の問題だというのに我々に押し付ける気なんですよ。実際戦争をしているのにあんなにも宝石を着けている時点で不自然なんですよ」
「・・・」
彼女は反論の仕様がないのか黙っていた。
「つまり、この国の人達にとって我々は“神の使徒,,という名前の便利な戦争の道具ということで「申し訳ございません!」!!!」
続けて俺が自虐的に言おうとした瞬間、なんとリリアーナ王女が王族でありながら自分に頭を下げたのだ。
「………なぜ、頭を下げるのですか?」
俺は王族に頭を下げさせたことに、内心焦りながら質問をした。
「私達が不甲斐ないばかりに皆様をご家族から引き離してしまい、そればかりか私達の世界の事情に巻き込んでしまったからです」
「だが、あなたに責任があるわけでは「それでも、このトータスに生きる者として、ましてや王族として謝罪しなければならないのです!」………!!!」
そう言ってガバッと顔を上げた彼女の目には涙が溜まっていた。俺が感じたのは王女を泣かせてしまったという焦りではない、彼女の表情からは決して嘘をついていない。本当に自分達に申し訳ないと心の底からそう思っているのだ。
俺はリリィならば他の者達よりも自分達の手助けをしてくれる、確信めいた物を感じた。
「……リリィ、君が本当に申し訳ないと思っているならばお願いがあるんだ」
「私ができることであればなんなりと!」
俺のお願いを彼女は即答する。これならば安心だろうと考えた俺は頭を深く下げ彼女に言った。
「頼む!もしも戦争で心に傷ができた者がいればその子達には戦争には参加させないようにしてくれ!」
俺が彼女にこれを頼んだのには理由がある。戦争は人を殺すための場所だ、いくら自分達がこの世界の人の数倍、数十倍の力を持っているとはいえそれはあくまでも
では、魔人族が人族よりも数倍、数十倍の力を持っているとすれば戦ってもこちらにも恐らく死人がでるだろうクラスメイトが殺された光景を目にすれば心が壊れる者が出るだろう。普通ならばその者達には戦争に参加しなくてもいいのだがあのイシュタルやそれに従順している国王が素直に療養させるとは思えない。下手をすれば、無理矢理にでも戦争に参加させる恐れがある。
だが、自分の意思で謝罪してくれたリリィならばそんな者達を戦争に参加させることはないだろう。
俺がいきなり頭を下げたことに驚いたのか彼女は一瞬固まったがすぐに復活して慌てていた。
「あ、頭をお上げください!私でよければ全力でご支援いたします」
「本当かい?!」
彼女が了承してくれたのがよほど嬉しかったのか俺は無意識のうちに彼女の手を握ってしまった。
「!?……あ、あのできれば手を離して貰えないでしょうか」///
「えっ?…あっ!す、すまない」
「い、いえ大丈夫です」
俺は今更ながら気づき慌てて彼女の手を離した。しばらく、何とも言えない空気が続いたがそれをぶち壊してくれる者が現れた。
「お・
我が義妹、恵里だ。普段、自分には見せないそのあまりの迫力に背後には大きな鎌を持った死神のようなスタ○ド?のようなものを錯覚してしまった。
「パーティー会場にいなかったから探しに来てみれば、何この国のお姫様を口説いてるのよ!」
「ご、誤解だ。恵里、俺は彼女を口説いてなど「言い訳無用!」(クイッ)……イ、イテテテテテ!!!」
誤解を解こうとした俺を恵里は問答無用と切り捨て俺の耳を引っ張り会場まで引きずった。………待って!恵里ってここまで力は強くなかったはずだぞ!?
俺は会場に引きずり込まれる前にリリィに声をかけた。
「リリィ、さっきの約束忘れないでく「何、ちゃっかりお姫様の愛称呼んでるのよ!」(クイッ×2)……ギャーー!!」
ただでさえ片耳を引っ張られて痛いのに今度は両耳を引っ張られてしまい俺はもう叫ぶことしかできなかった。
その後は会場の中でクラスメイト達に正座して義妹から説教をくらうという恥ずかしいところを見られたがなんとか説得し許してもらえた。………今度から恵里を絶対に怒らせないようにしようと心に誓った。
晩餐が終わり解散になると、二人に一室ずつ与えられた部屋に案内された。同じ部屋になったハジメは
俺は明日行われる訓練のためにさっさとベッドに潜り込むと同時に意識を落とした。
はい、というわけで悟とリリアーナのちょっとした絡み回にしてみました。読んだ人のなかには、あれ?悟のキャラなんか崩壊してない?と思う方もいるでしょうが正直に言って書いていた時に自分もそう思いましたがそこのところ見逃して下さい。
それでは次回、ステータスプレート
ついに悟のステータスが明らかに!こうご期待下さい。