ありふれた魔王と死の支配者   作:せんせん

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長らくお待たせいたしました。
今回はかなり長い文字数を書いたためかなり遅れました。
また、この作品のユーザーアクセス数が1万を突破しました。読者の皆様が見てくれるので励みになっております。


イジメと愚か者

 ~ハジメside~

 

 悟が目を覚ましてから約二週間が過ぎた。

 

 悟の眼が赤くなっていたことに最初はクラスメイト達も驚いていたが悟の様子がいつもと変わらないことに皆、ほっとしていた。

 

 目を覚ました悟は次の日には国お抱えの魔法師達に指導を受けに行ったのだが、最初は全員、悟が自分達より魔力があることが信じられず邪険に扱っていたが、悟が全員にプレートと位階魔法の一つ、「〈龍雷(ドラゴンライトニング)〉」の威力を見て愕然とし、次の瞬間、魔法師達全員が一斉に謝罪をし「弟子にしてください!」と頼み込んできた。これには悟も面食らい、珍しく狼狽えていた。

 

 また、そんな自分にはメルドさんが派遣してくれた錬成師の人達や悟が何かとアドバイスをしてくれるおかげでステータス自体はそこまでの成長はなかったものの錬成師としての腕はかなり伸びた。

 

 そんな、僕は先ほどまで図書館で本を読んでいたのだが、そろそろ訓練をする時間が迫っていたので訓練施設に向かっている。同じように、悟と恵里ちゃんも図書館にいたのだがまだ調べたい事があるらしく少し遅れてやって来るそうだ。

 

 訓練施設に到着すると既に何人もの生徒達がやって来て談笑したり自主練したりしていた。自分は二人が到着するまで待っていようと思った。

 

 と、その時、唐突に後ろから衝撃を受けてたたらを踏んだ。顔をしかめながら背後を振り返ると予想通りの面子に心底うんざりした表情をした。

 

 そこにいたのは、檜山大介率いる小悪党四人組である。訓練が始まってからというもの、悟がいない時に ちょっかいをかけてくるのだ。

 

「よぉ、南雲。なにしてんの?お前が訓練しても意味ないたろが。無能なんだしよ~」

 

「ちょっ!檜山言い過ぎ!いくら本当のだからってさ~、ギャハハハ」

 

「なんで毎回訓練に出てくるわけ?俺なら恥ずかしくて無理だわ!ヒヒヒ」

 

「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」

 

 一体なにがそんなに面白いのかニヤニヤ、ゲラゲラと笑う檜山達。

 

「あぁ、おいおい、信治、お前マジ優し過ぎじゃね?まぁ、俺も 優しいし?稽古つけてやってもいいけどさ~」

 

「おお、いいじゃん。俺ら超優しいじゃん。無能のために時間使ってやるとかさ~。南雲~感謝しろよ?」

 

 そんなことを言いながら馴れ馴れしく肩を組み人目につかない方へ連行していく檜山達。それにクラスメイト達は気がついたようで女子の何人かが檜山達を止めようとする。それを僕は首を振って制し、「ダメだ」と目で伝える。自分のせいで彼女達が傷つくわけにはいかないからだ。

 

「いや、この後は悟と一緒に訓練をやる予定だから大丈夫だって。僕のこと放っておいてくれていいからさ」

 

 一応、やんわりと断ってみる。

 

「はぁ?俺らがわざわざ無能のお前を鍛えてやろうってのに何言ってんの?マジ有り得ないんだけど。お前はただ、ありがとうございますって言ってればいいんだよ!」

 

 そう言って、脇腹を殴る檜山。「ぐっ」と顔をしかめながら呻く。

 

 檜山達も段々暴力にためらいを覚えなくなってきているようだ。思春期男子がいきなり大きな力を得れば溺れるのは仕方ないとはいえ、その矛先を向けられては堪ったものではない。かと言って反抗できるほどの力もない。

 

 やがて、訓練施設からは死角になっている人気のない場所に来ると、檜山は自分を突き飛ばした。

 

「ほら、さっさと立てよ。楽しい訓練の時間だぞ?」

 

 檜山、中野、斎藤、近藤の四人が周りを取り囲む。自分は悔しさに唇を噛み締めながら立ち上がった。

 

「ぐぁ!?」

 

 その瞬間、背後から背中を強打された。近藤が剣の鞘で殴ったのだ。悲鳴を上げ前のめりに倒れると、更に追撃が加わる。

 

「ほら、なに寝てんだよ?焦げるぞ~。ここに焼撃を望むーー“火球,,」

 

 中野が火属性魔法“火球,,を放つ。倒れた直後であることと背中の痛みで直ぐに起き上がることができないので、ゴロゴロと必死に転がりなんとか避ける。だがそれを見計らったように、今度は斎藤が魔法を放った。

 

「ここに風撃を望むーー“風撃,,」

 

 風の塊が立ち上がりかけた自分の腹部に直撃し、仰向けに吹き飛ばされた。「オェッ」と胃液を吐きながら蹲る。

 

 魔法自体は一小節の火球魔法だ。それでもプロボクサーに殴られるくらいの威力はある。それは、彼等の適性の高さと魔法陣が刻み込まれた媒介が国から支給されたアーティファクトであることが原因だ。

 

「ちょ、マジ弱すぎ。南雲さ~。マジやる気あんの?」

 

 そう言って、蹲る自分の腹に蹴りを入れる檜山。込み上げる嘔吐感を抑えるので精一杯だった。

 

 その後もしばらく、稽古という名のリンチが続く。痛みに耐えながらなぜ自分だけ弱いのかと悔しさに奥歯を噛み締める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前等…………なにをしている?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると、この場に重圧(プレッシャー)がかかるような声がかかる。檜山達がビクッとなりながら振り向くとそこには悟がいた。

 ただし、今は全ての感情が抜け落ちたような表情で檜山達のことをその赤い瞳を輝かせながら冷めた目で見ていた…………

 

 ~~~~~~~~~~

 ~悟side~

 時は少し遡り~

 

 図書館での調べものを終えた俺と恵里は訓練施設まで向かっていた。

 

「結局、その杖に関する文献とか見つからなかったね」

 

「そうだな」

 

 俺は、そう言いながら手に持っている黄金の杖を見つめる。俺達が先ほどまで調べていたのはこの杖に関する情報だ。だが何百年も宝物庫にあるはずなのにこの杖についての情報が一つも無かったのだ。(無論この国の上層部が情報を隠している可能性があるが)

 

 まぁ、瞳の色が赤くなっていること以外は体に影響はないし、この杖で魔法を放つとかなりの威力が上がることは上がったので特に不満はなかった。また、この二週間で俺のステータスにも変化や発見もあった。

 

 ==============================

 鈴木悟(◼️◼️◼️◼️・◼️◼️◼️・◼️◼️◼️)

 17歳 男 レベル:10

 天職:魔導師(死の◼️◼️◼️)

 筋力:130

 体力:130

 耐性:170

 敏捷:140

 魔力:2000

 魔耐:1000

 技能:第1、2、3、4、5、6、7、◼️、

 ◼️、◼️位階魔法・◼️位魔法・全属性適性・精神

 異常耐性・全属性耐性・物理耐性・詠唱省略・高

 速魔力回復・気配感知・魔力感知・アンデット創

 造[+下位]・◼️◼️のオーラ・魔道具作成・

 巻物(スクロール)作成・言語理解

 ==============================

 

 まずは、位階魔法が第7まで使えるようになった。どうやら魔力が上がれば使えない魔法が解放されるようになるようだ。

 また、この魔法は段階ごとに魔法の威力が上がりその分必要な魔力量が増えるようだ。威力で言えば第1~3までが下級、第4~6までが中級、第7までが上級くらいの魔法であることがわかった。第7位階魔法は魔力のほとんどを使うため連続で使うことはまだ不可能のようだ。

 

 次に〈アンデット創造〉という技能は言葉の通りアンデットを造ることが可能のようで試しにスケルトンを喚ぶと12体ほど出てきた。だがどうやら自分よりもレベルが高いのは喚べないようで今のところはレベル8が限界のようだ。

 しかし、メルド団長からは今後使うのは控えるように言われた。何せ俺がしていることは魔人族がしている魔物を操るのと同じことなのだ。下手をすれば聖教教会から「魔人族と繋がっている」などと冤罪を突き付けられるからだ。あの糞ジジイ(イシュタル)なら躊躇いなくやるな。

 

 後は〈魔道具作成〉や〈巻物作成〉は魔力を通した道具が造ることが可能なようでメルド団長に頼んで魔力が通っていない使わない武器や道具、紙などがあれば使わせてもらっている。無論、無事につくることができれば騎士団に渡すと条件を付けたのでメルドさんも快く了承してくれた。

 

 それよりも………

 

「恵里……そろそろ離れてくれないか?」

 

「えぇ~?いいじゃん、別に」

 

 そう、俺が目を覚ましてから恵里は俺から離れようとしないのだ。今も俺の腕にしがみついている。訓練や食事をするときもそうなのだが、ひどい時には俺がベッ ドに眠っている時に部屋に侵入しいつの間にか隣で眠っていることもあるので何度驚いたことか。

 

「いや……歩きづらいのだが」

 

「えぇ~。一人になるのは嫌なんでしょ?」

 

 すると、恵里はニヤリとしながら二週間前のことを口にする。

 

「い、いや、あれは!………何と言うか……言葉の綾と言うか……」

 

 あの時はかなり冷静さを欠いていたため、本音を言ってしまったのだ。だが、思い返してみても自分がどれだけ恥ずかしいセリフを言ったことかと後悔していた。

 

 恵里にからかわれながら歩いていると訓練施設についた。皆それぞれが自主練をおこなっているようだ。だが何故かクラスメイト達は俺の姿を目にすると一斉に訓練を止めた。不思議に思い周りを見渡すと先に訓練施設にいるはずのハジメの姿がなかった。

 

「あれ?ハジメ君、いないね?」

 

 恵里もハジメがいないことに気づいたようだ。するとクラスメイトの一人、園部(そのべ) 優花(ゆうか)や複数の女子生徒が慌てた様子で声をかけた。

 

「鈴木!実は南雲が檜山達に……」

 

 その言葉だけでハジメがいない理由がわかった。

 

「園部、君達は檜山達を止めようと思わなかったのか?」

 

 俺は黙って見ていたかもしれない彼女達を責めるような言い方で質問をする。

 

「したよ!でも南雲の奴、止めようとしたら首を振って……」

 

 園部は声を荒げながら意見をする。他の女子生徒達もウンウンと首を振る。

 

(……なるほどな。優しいあいつのことだ、彼女達に被害が及ばないようにしたんだな)

 

 俺はハジメの不器用な優しさに嬉しさを感じながら、彼女達に謝罪をする。

 

「すまなかったな。責め立てるような言い方をして、ところでハジメ達はどこに?」

 

 園部は訓練施設から死角になっている場所に指を差した。するとそこから「ドカーン!」と爆発音がなった。どうやらあいつらは魔法まで使っているようだ。

 

「……恵里。すまないがメルド団長を呼んで来てくれ。それから、白崎も」

 

「わかった」

 

 俺が指示を出すと恵里はすぐさま走っていく。

 

「鈴木。私達はなにをすればいい」

 

 園部達も手伝えることがないか聞いてくる。

 

「園部達はこのまま待機してくれ。メルド団長が来たら案内してやってくれ。」

 

 俺は園部達にそう指示すると急いで死角になっている場所に向かう。一応、檜山達が言い逃れできないようにするための()は用意しているが下手をすればハジメの命の危機があるからだ。

 

「〈下級筋力増大(レッサー・ストレングス)〉〈鎧強化(リーン・フォースアーマー)〉」

 

 俺は念のため筋力と耐性を上げる強化(バフ)魔法をかけておく小悪党組のことだ、このまま平穏に事を解決できるとは思えないからだ。

 死角となっている場所に着くと、そこには檜山達にリンチされているハジメの姿があった腹を殴られたのか近くに吐瀉物(としゃぶつ)が落ちていた。ハジメにゲラゲラ笑いながら暴力を振るっている檜山達の姿を目にしたとき、ブチッとなにかが切れた。

 そして、自分でも驚くぐらいの低い声を発する。

 

「お前等…………なにをしている?」

 

 すると、檜山達はビクッとなりながらこちらを振り向く。俺の存在に気づくと檜山が弁明する。

 

「いや、誤解しないで欲しいんだけど、俺達、南雲の訓練に付き合ってたたけで……」

 

「黙れ!お前達の醜い言い訳など聞きたくもない!!!」

 

 俺はそれを一蹴する。当たり前だ一人に対して複数でいたぶる訓練なんて聞いたこともない。俺は檜山達を押し退けハジメの側による。

 

「ハジメ、立てるか?」

 

「うん、……大…丈夫……だよ、グッ!」

 

 そう言いながら、ハジメは立とうとするが骨の何本かは折れているのか痛みで立てないようだ。俺はすぐさま回復魔法で治そうとすると

 

「てめえ~、いつも俺達をバカにしやがって!」

 

 檜山が声をあげながら手に持っている剣の鞘で俺の頭を背後から殴ろうとしていた。それを見ていたハジメが「あっ」と声をあげようとするがもう遅い。

 

 ガコン!!!

 

 俺の頭からなってはいけない音がなる。すると檜山は声をあげながら笑う。

 

「ギャハハ!ざまぁみろ!」

 

「お、おい!檜山、さすがにこれはやり過ぎじゃ……」

 

「ハッ!いいんだよ。いつも俺達をバカにした罰だ!」

 

 取り巻きの一人の斎藤が怯えながら声をかけるが檜山がそれを笑いながら一蹴する。すると他の取り巻き達も同意する。

 

「……やれやれ、これがお前達が俺に対する罰ならば、俺もお前等に対して罰を与えていいんだな?」

 

「「「「!?」」」」

 

 俺が振り向くと頭を殴られたのにが平然と声をかけたのに驚いたのかギョッとした顔をしながら檜山達は離れる。物理耐性を持っているうえ、念のために防御力を上げていたので余り効かなかったのだ。もちろん、全く効かなかったわけではないので頭からは少しばかり血は出ていた。

 

「ふむ……俺はお前達と違い弱いものイジメをするのは嫌いだからな」

 

 俺はそう言いながら手を上げながら手の甲を檜山達に向け、クイクイっと手招きをする。

 

「全員でかかってこい。そうしたら、攻撃が当たるかもしれないぞ?当たればの話だが」

 

 俺の挑発的な態度に檜山達は最初はポカンとしていたが癪に触ったのか、すぐに顔を赤くし、怒りの表情となる。

 

「なめんじゃねぇぞ!ここに焼撃を生むーー火球」

 

 まずは中野が魔法を使い攻撃をしてくる。俺は杖を掲げて魔法を唱える。

 

「〈石壁(ウォール・オブ・ストーン)〉!!」

 

 すると、地面から巨大な石壁が現れ、中野の火球を防いだ。

 

「なっ!?」

 

 中野は俺が一瞬で魔法を防いだ事に驚いていた。そして、石壁がなくなると

 

「なんだ?こんなものか、俺が本当の“火球,,を見せてやるーー〈火球(ファイアーボール)〉!!」

 

 俺は反撃として魔法を放つ。俺の火球は手のひらに乗るぐらいのサイズだが元々魔力が高いこともあってか、杖を使いながら放つことでバスケットボールと同じ大きさで中野に向かった。

 

 ドカーン!

 

「ギャーー!!」

 

 火球は見事に直撃して爆発をおこし、中野は全身に火傷を負いながら気絶した。

 

「てめぇ!よくも中野を!」

 

 中野をやられた瞬間、先ほどまで怯えていた斎藤が剣を振りかぶりながら俺に近づいてくる。どうやら、俺に魔法攻撃が通じないと判断したのだろう。その判断は正しいのだが……

 

「もう少し、鍛えてからするんだったな」

 

 俺はそう言いながら杖で応戦する。斎藤はそれにニヤリと笑みを浮かべるが……

 

 ガキン……!

 

 俺の杖と斎藤の剣が当たると火花が飛び散った。そして、斎藤の剣は手元から弾かれてしまった。

 

「な、なんで!?」

 

 斎藤は自分の剣が弾かれた事に驚愕していた。確かに素の筋力ではこいつの方が上だが、俺は魔法で筋力を上げているため天之河に匹敵する位になっているのだ。

 そして、俺はそのまま杖を振り斎藤の身体に叩きつける。バキバキと骨が砕ける音が聞こえたが振り切った。

 

「ぎゃ!!」

 

 斎藤は壁にぶつかり頭をぶつけたのか、そのまま意識を失った。

 

「ヒィ!た、助けてくれーー!?」

 

 仲間が二人やられたのに怖じ気づいたのか、近藤は情けない声をあげながら走って逃げようとする。

 

「……俺が大人しく逃がしてやると思っているのか?」

 

 こいつらに慈悲をやる気などない俺は近藤の足に向かって人差し指を差す。

 

「〈雷撃(ライトニング)〉!!」

 

 俺の指から発生した電撃は目にも止まらぬスピードで近藤の足に命中し、その足を貫通した。

 

「ギャー!?お、俺の足がーーー!?」

 

 突然、自分の足に穴ができたのに悲鳴をあげながら、近藤は足を抑えてその場にうずくまる。

 

「な、何なんだよ!お前!?」

 

 取り巻き三人が呆気なくやられたのに、檜山はひどく狼狽し腰を抜かしたのか、尻餅をつきながらズルズルと後ずさっていた。俺はゆっくりと檜山に近づく。

 

「く、来るなー!?化け物!」

 

 檜山は必死に俺との距離をとろうとしていたが、距離はどんどん縮まっていた。

 そして、ついに俺の腕が届く距離まで縮まった時、魔法を放とうとしたが、俺は檜山にあることを聞く。

 

「……檜山、なんでお前達はそこまでハジメを目の敵にする?」

 

 そう、いくら白崎がハジメに構っているから嫉妬しているとはいえ、こいつらは暴力をするなど普通ならそんな事をしなくても積極的に白崎と話をするなど白崎に好印象を与えれば良いものを何でそんな愚かな行いをするのか理解できなかった。

 すると、檜山はヨロヨロになりながらも立ち上がった。

 

「ああ、言ってやるよ!」

 

 檜山は俺の後ろにいるハジメを指をさしながら

 

「そいつはキモオタのくせにいつも白崎に構って貰いやがって、ふざけんな!キモオタはキモオタらしく教室で惨めに縮こまっていればいいんだよ!だから俺達がそれをわからせるためにやってんだよ!むしろ感謝してほしいね!」

 

 吐き捨てるかのように自分の思いを叫んだ。実に醜い理由だった。

 

(……そんな、くだらない理由でハジメを傷つけているのかこいつらは!)

 

 俺の心は、これを聞きどす黒い感情になった。そして、どうすればハジメがこれ以上傷つかないようにどうすればいいのか考える。

 

(……ああ、そうだ。ハジメを守るためにこいつらを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せばいいんだ

 

「ガッ!?」

 

 俺は気づけば檜山の首を絞めていた。そして、そのまま上へと持ち上げる。

 

「ヤメ……カヒュ……ハナ……セ」

 

 虫けら(檜山)が必死にジタバタと抵抗していたが筋力が上がっている俺には無意味だった。

 

「ヒュー……ヒュー……」

 

 どんどん首を絞める力を強くしていくと先ほどまで顔を赤くしていた虫けらは青白い顔になっていき息もまともにできないようだ。俺がそのまま首をへし折ろうとした時

 

「ダメ…だよ、悟」

 

 俺の服の裾を引っ張りながら声をかける者がいた。視線をそこに向けると先ほどまで倒れていたハジメが傷ついた身体を這いずらせながら俺の下まで来たようだ。

 

「……離せ。ハジメ」

 

 

 俺は虫けらから手を離さず、視線をハジメに向けながら話す。

 

「いや……だ」

 

「なぜだ?こいつらを殺せばお前がイジメられることはないんだぞ?」

 

「それ以上やったら、悟が悟でなくなる!」

 

 ハジメは傷ついた身体で大きな声を出した。

 

(………俺が俺でなくなる?…………………ハッ!?)

 

 俺はその言葉を聞き我に返ると檜山を離した。余程苦しかったのか「ゴハッ……ガハッ……」と息を吐いているが俺は自分の手を震えながら見つめていた。

 俺は檜山を躊躇いもなく殺そうとしていた。しかも、まるで虫のように簡単に 殺そうとしていた。自分がそんなことをしていたことに恐怖を覚えたのだ。

 

「よかった。正気に戻ったんだね……さと……る…」

 

「ハジメ!?」

 

 傷ついた身体を無理に動かしたせいかハジメは気を失った。

 

「まずい!早く治さなくてはーー〈重症治療(ヘビーリカバー)〉」

 

 魔法を唱え俺の手から緑色の光が発生するとハジメの火傷や打撲などの傷はすぐに消えた。

 

「………うっ」

 

「ハジメ!しっかりしろ、おい!」

 

 なんとか治療は終わりハジメは少しずつ意識を取り戻していった。俺はハジメをすぐにでも安静にできる場所に運ぼうとしていると

 

「何をやっているんだ!!」

 

 すると訓練場から叫び声をあげる天之河を筆頭に龍太郎や八重樫、恵里と白崎そしてメルドさんが駆け寄ってきた。

 

「おい!鈴木お前何を……」

 

「すまない、白崎。ハジメを治してくれないか?俺も魔法を使って治したが念のために君の回復魔法で治してくれ」

 

 天之河が何か喚こうとしたが俺はそれを無視し、白崎に頼んだ。

 

「えっ!?……な、南雲君、大丈夫!?」

 

 するとハジメが倒れている事に気づいた白崎がハジメに近づき魔法で治療を始めた。

 

「……何があったんだ?」

 

 メルドさんは周囲を見渡し、魔法が使われた形跡や檜山達が倒れていることから何かあったのかを聞いてくる。

 

「そこの檜山達(バカ共)がハジメをリンチしてたので、俺が傷ついたハジメを介抱しようとしたら襲いかかってきたから応戦しました」

 

 俺はシンプルに起こったことを事実として喋った。だがここで我らが勇者(笑)が噛みついてきた。

 

「嘘をつくな!どうせ、またお前と南雲が共謀して檜山達を陥れようとしたんだろ!二度も同じ手に引っ掛かると思うな!」

 

(俺は事実無根を話しただけなのにコイツはどれだけ俺とハジメを悪者にしたいんだ?)

 

「どうした!どうせ図星をつかれて何も言えないんだろ!」

 

 俺が黙っていると天之河は容赦なく言ってくる。これ以上聞くのもバカらしくなった俺は意見をする。

 

「……天之河。つまりお前は檜山達には何にも非はなく、全て俺とハジメが悪いと言いたいんだな?」

 

「そうだ!」

 

 俺が質問すると天之河は間を置くことなく返事をした。俺はこれに「ハァ~」とため息をするのと同時に「パチン」と指を鳴らした。

 すると俺の肩に一匹の鳥が止まる。

 

「「「「???」」」」

 

 俺が指を鳴らしたと同時に鳥が止まったことに不思議に思って皆が首を傾げていると

 

「ねぇ、あれって……」

 

「ただの鳥……じゃない?」

 

 八重樫と龍太郎はこの鳥が普通ではないことに気づいたようだ。

 そう、普通の鳥ならその体を羽毛で覆われているのだがこの鳥は違う。この鳥は羽毛、いや、体全てが結晶でできているのだ。何せこの鳥は俺が作った自立型の魔道具なのだ。この体には俺の様々な魔法を付与している。

 

「天之河。お前に真実を見せてやる。……お前達もよく見ておけ」

 

 俺は天之河とついでに白崎に治療してもらったのか回復した檜山達に声をかける。

 そして鳥は俺の肩から地面に降りると「パリン!」と砕け、一つの魔法陣が現れた。そこから映像のようなものが出て、するとそこには……

 

「え、これって?」

 

「南雲君!?」

 

 そう、そこにはハジメの姿が映っていたのだ。これには元々知っている恵里とハジメ以外は驚いていた。これは云わば異世界版監視カメラなのだ。檜山達がこのままハジメに何もしないとは限らないと思い作ったのだ。

 すると映像の中のハジメが突然倒れる。後ろには檜山達が映っていた。これに檜山達はこの後起こる出来事を察知し瞬時に顔を青くする。

 

 その後は予想通り、檜山達がハジメをここに連れていき囲んで不意打ちからの魔法による攻撃と集団暴行をしていた。これを見ていた天之河以外は檜山達を軽蔑の目で見ていた。特に白崎はどす黒いものを垂れ流していた。そして、そこに俺が現れハジメを介抱しようとした時に檜山が俺を剣の鞘で殴った所で映像は終わった。

 映像が終わる頃には檜山達の顔は青から完全な白に変わっていた。まるでこの世の終わりとでも言いたい顔で。だが、そんなこいつらを置きメルドさんは烈火のごとき顔で震えていた。

 

「貴様ら、どうやらかなり体力が有り余っているらしいな?」

 

 するとメルドさんは地面を思いっきり蹴ると

 

「こんなことをしている暇があるなら、さっさと訓練してこい!こんの、バカタレども!!!」

 

「「「「ひぃっ!!??」」」」

 

 メルドさんの余りの迫力に檜山達は逃げるように訓練施設に戻った。だが、ここでも天之河が食いつく。

 

「待ってください、メルドさん。これには南雲にも非があります。いつも図書館に籠っている南雲を檜山達は何とかしようとしたんですよ」

 

「「「「「はぁ?」」」」」

 

 さすがの俺も言葉を失った。あの映像を見て何でそんな考えを思い浮かぶとは、コイツ、ついには頭だけでなく目までおかしくなったのではないかと疑ってしまった。現に龍太郎は何言ってるんだコイツといった目で、恵里と白崎は信じられないといった感じで、八重樫は手で目を押さえながら天を仰いでいた。

 

「ただ、殴りたかっただけだろう」

 

 さすがのメルドさんも天之河に呆れていた。

 天之河の醜態をこれ以上見たくないのと、コイツの勘違いを正すために俺は意見をする。

 

「天之河。お前は何を勘違いしてるのか知らんがハジメはちゃんと努力しているんだぞ」

 

「なにがだ?実際に南雲は訓練の時以外は図書館か部屋に引きこもってるらしいじゃないか」

 

「ハァ~。仕方ないな。ハジメ、プレートを」

 

 ハジメからプレートを受け取り、今のハジメのステータスを表示する。すると………

 

 ==============================

 南雲ハジメ 17歳 男 レベル:5

 筋力:15

 体力:15

 耐性:15

 敏捷:15

 魔力:15

 魔耐:15

 技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱

 物分離][+高速錬成]・言語理解

 ==============================

 

 一見ステータスはそこまで上がっていないがある変化が起きていた。

 

「あっ!技能の数が増えてる!」

 

 そう、白崎が指摘した通りハジメはこの二週間で派生技能を4つも得ているのだ。これには指導を行っていた錬成師も驚いていたほどだ。

 

「ほぉ~。一気に4つも派生技能を得ているとはやるな!」

 

「へっ!さすがはハジメだぜ!」

 

 メルドさんは感心し、龍太郎もハジメを誉めていた。恵里や八重樫もハジメの努力が実を結んでいることに喜んでいた。

 

「で、でもそんな技能じゃ戦闘には何の役にもたたないじゃないか!」

 

 天之河はそれでもハジメを否定していた。

 

「当たり前だ。ハジメには後方支援にまわってもらうんだからな」

 

「なっ!?皆が前線で戦っている時に一人だけ安全圏に入れるつもりなのか!?」

 

「無論だ。無理に不慣れな戦場にいるよりも自分ができる範囲でサポートに徹してもらう方がいい」

 

 俺はこれ以上、天之河と口論になるのは時間の無駄と判断し訓練施設に向かう。

 

「白崎、ハジメを治してくれたこと、感謝する。行こうかハジメ、恵里」

 

「う、うん」「わかった」

 

 俺は二人を連れその場を去ろうとすると

 

「待て!話しはまだ終わって「〈麻痺(パラライズ)〉!!」ガッ!?」

 

 天之河が俺の肩を掴もうとしたため、反射的に弱体化(デバフ)魔法をかけて動きを封じた。そのおかげで天之河は倒れた。

 そのまま立ち去ろうとすると「ガシッ」と足を掴まれた。そこに視線を向けると

 

「ま…て………はな……しは…おわ……………って」

 

 何と天之河は身体が痺れて動けないはずなのに必死に俺の足を掴んでいるのだ。これはコイツが持っている“全属性耐性,,のおかげか、それともコイツの執念がゴキブリ並みにしつこいだけなのか、少なくてもうんざりするほどの事なのは確かだ。

 俺は足に力を入れて天之河を引き剥がした。

 

「龍太郎、このゴキブリ(天之河)の始末は任せた」

 

「……ああ、さすがにこれは光輝が悪い。すまねぇな、ハジメ」

 

 龍太郎はハジメに謝罪をし、天之河の身体を担ぐ。八重樫もハジメに謝罪をし、ハジメはそんな二人に「気にしないで」と言った。

 その後の訓練では小悪党組はメルドさんや他の騎士の人達から罵詈雑言を浴びせられながらいつもの十倍の訓練メニューを泣きながらおこなっていた……………ざまぁみろ。

 

 ~~~~~~~~~~

 訓練が終わった後は、いつもなら夕食の時間まで自由なのだが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。何事かと注目する生徒達にメルド団長は野太い声で告げる。

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要な物はこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ!まぁ、要は気合いを入れろってことだ!今日はゆっくり休めよ!では、解散!」

 

 そう言って伝えることだけ伝えてさっさと行ってしまった。ざわざわと喧騒に包まれる生徒達。

 

(………ついに、きたか!)

 

 俺はついに訪れた試練に気合いを入れるために、手に力を込めて握り締めるのだった。




はい、今回は戦闘?回にしてみました。
やっぱり戦闘の描写って書きにくいですね。最初は書いてるうちにどこ書いてるかわからなくなりました。それでも自分なりに書けていたと思います。
これからも応援、よろしくお願いします。
また、ハジメの派生技能数を少しだけ原作より増やしてみました。少し修正も入っています。
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