恵里の衝撃的なカミングアウトを聞いてしまった俺は、現在【オルクス大迷宮】に来ている。迷宮の中は緑光石という特殊な鉱石が埋まっている鉱脈のおかふげで松明やランタンもいらないほどの明るさだった。
しばらく進んでいるとドーム状の広間に出た。七、八メートル位はありそうな場所だ。
その時、物珍しげに辺りを見渡していると我々の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が這い出てきた。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」
その言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物は結構な速度で飛びかかってきた。
灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はネズミっぽいが・・・二足歩行で上半身がムキムキだった。八つに割れた腹筋と膨れ上あがった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように──正直に言ってキモチワルイ。
正面に立つ天之河達──同じパーティーメンバーである恵里と雫はそのあまりの見た目に頬を引き攣らせている。
間合いに入ったラットマンを天之河、雫、龍太郎の三人で迎撃する。その間に、白崎と恵里、谷口が詠唱を開始し魔法を発動する準備に入る。
天之河は純白に輝くバスターソードを視認も難しい程の速度で振るって数体をまとめて葬っている。
龍太郎は、天職が“拳士,,であることから籠手と肘当てをつけている。どっしりと構え拳を放ったり、柔道部ということもあって相手を引き付けてその勢いを利用して地面に叩きつけてから頭蓋骨を粉砕するという正に“柔と剛,,を使った戦いをしている。
雫は“剣士,,の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬で敵を切り裂いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員を感嘆させるほどである。
しばらくその戦いぶりを見ていると、詠唱が響き渡った。
「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ──“螺炎,,」」」
三人同時に発動した螺施状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。「キィィィッ」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。
気がつけば、広間のラットマンは全滅していた。他の生徒の出番無しである。どうやら、天之河達召喚組の戦力では一階層の敵は弱すぎたらしい。
「ああ~、うん。よくやったぞ!次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」
生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないように注意するメルド団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。
「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」
メルド団長の言葉に恵里達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめる。
そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調に階層を下げて行った。
そうして十階層あたりでついに俺とハジメの番となった。
「よ~し、次はハジメとサトルの番だ!気合い入れていけ!」
メルド団長の気合いの入った言葉を聞きながら俺達は前に出る。
「ハジメ。援護はいるか?」
俺は念のために援護がいるか確認をとる。
「ううん。大丈夫」
ハジメはそう言いながら前に出る。
そうすると新たな獲物が来たと認識したラットマンが三体程ハジメに襲いかかる。ハジメは慌てることなく落ち着いた様子で地面に手を着く。
「“錬成,,」
ハジメは自分が唯一使える技能を発動させる。するとラットマンの足元の地面に穴が開く。突然の出来事に対処できるわけがなくラットマンは穴に落ちるー
ーっと思ったらハジメはもう一度錬成を発動させ穴を閉じる。完全に落ちる途中で閉じたためラットマンの体は上半身だけ動ける状態で下半身は身動きが全くとれていなかった。
ハジメは地面から手を離すとゆっくりと近づく。ラットマンは脱出しようと何度も腕を地面に振り下ろすがびくともしなかった。そうしてハジメはラットマンの側まで近づくと懐から武器を取り出す。
それを見たクラスメイト達は目を見開き、メルド団長達は疑問を浮かべる。そしてハジメはラットマンの頭に標準を合わせてから引き金を引く。
バン❗❗
その武器から発砲音がなるとラットマンの頭から血が流れ絶命する。
「銃⁉️何で南雲が持ってるんだ!?」
「銃?ハジメが持っているアーティファクトのことか?」
クラスメイト達は一部を除きざわつき、メルド団長を含めた騎士達は疑問の声が飛ぶ。
そう、ハジメが独自に創っていたのは“銃,,だ。形は警察官が使うような拳銃と似たような感じで、ハジメが持っている知識を使って構造や弾薬を創り何度も試運転をして何とか試作段階まで創ることができたのだ。
「はい、あの武器は俺達の世界で創られている武器で、弓矢以上の威力と飛距離を持ち、魔法のように詠唱も要らずの画期的な武器ですよ」
「そんなにか?」
「ええ、まだ試作の物ですが完成して量産することが出来れば一般の兵士でも魔物を簡単に倒せるようになるでしょう」
「ほぉ~、それは楽しみだな」
俺がメルドさんに銃の説明をすると後方ではクラスメイト達がハジメのことを「スゴイ!スゴイ!」と誉めまくっていた。だが、予想通り驚きつつも天之河と小悪党組はハジメが活躍したことに面白くなさそうな顔をしていた。
そんなことをしているうちにハジメは残り二体を片付けていた。さすがに生物を殺したことに精神的にきたのか少し疲れが見え始めていたのでそろそろ交代することにしよう。
「ハジメ。そろそろ交代だ」
「え、でも……」
「まだ、階層は下まで行くんだ。ここで弾を使いきってしまえば本末転倒だ。それに、帰るまでが今日の任務だ」
「そうだろう?」と優しく声を掛けながらハジメの肩に手を置く。ハジメは最初は渋っていたが少し考えてから「わかった」と言いながら後方に下がる。
するとハジメを警戒していたラットマン達はハジメが後方に下がるのを確認すると一斉に襲いかかる。その数は十体以上、後方から「お義兄ちゃん!?」と恵里の声が聞こえメルドさん達もさすがにマズイと感じたのかこちらに駆け寄ろうとする。それに俺は手で制止し落ち着いて魔法を放つ。
「〈
すると襲いかかってきたラットマン達は突然苦しみだしその場にうずくまる。
「い、いったい何がおこってるんだ?」
「この魔物達の体から水分をなくしたんですよ」
「水分を?」
メルド団長は目の前でおこっている出来事が理解できていないようなのでそれに答える。
「どんな生物もその体の中には水があります。それは生命活動をするうえで必要なものです。俺は魔法で体内の水分を蒸発させました。すると……」
「すると、どうなるんだ?」
「急激に水分が失われることで脱水症状に陥ります。めまい、頭痛や吐き気、筋肉の痙攣など身体に異常が起こります。また体の20%の水分がなくなった場合、生命維持活動ができなくなり死にいたります。」
そう説明するとメルド団長は若干冷や汗を掻いていた。恐らくこの魔法を自分達に使われた時のことでも想像したのだろう。まあ、俺はそんな事をする気など微塵もないが。
説明を終える頃には先ほどまで苦しそうな声をあげていたラットマン達は既に事切れていた。どうやら急激に水分がなくなった事に耐えられなかったのだろう。
「さて、行きましょう」
「あ、ああ全員出発だ!!」
俺が出発を促すとメルド団長は慌てながらも指示をする。
そして順調に魔物を倒しながら階層を降りていくと、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着く。
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在しており連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ!今日はこの二十階層で訓練して終了だ!気合い入れろ!」
メルド団長のかけ声がよく響く。
そして小休憩に入ると、ハジメは前方を見ていた。俺も同じ方向に目をやるとそこには白崎がいた。彼女はハジメの方を見て微笑んでいる。そして目をそらすハジメ。
昨夜は何もなかったと言うがどうにも気になるな。
「ハジメ。本当は昨夜、白崎と大人の階段を登ったんだろう?」
「だ、だから何もなかったって言ってるだろ!」
「ホントか~?」
俺がニヤニヤしながら質問するとハジメは顔を真っ赤にしながら全力で否定する。
その様子に白崎は拗ねたような表情をする。それを横目で見ていた雫が苦笑いし、小声で話しかけた。
「香織、何南雲君と見つめ合ってるのよ?迷宮でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」
「もう、雫ちゃん!変なこと言わないで!私はただ、南雲君大丈夫かなって、それだけだよ!」
「それがラブコメしてるってことでしょ?」
何やら、白崎は顔を赤くしながら否定しているみたいだがどう見てもハジメの事が気になっているのは確かなようだ。
「そう言う、雫ちゃんだって鈴木君の事チラチラと見てるじゃない!」
「バ、バカ!?そんな事してないわよ!」///
今度は雫が顔を真っ赤にしながらワーワーと騒いでいる。こんな場所でもあんなに騒げるとは相当仲が良いことが窺える。
すると隣にいるハジメが突然背筋を伸ばし、キョロキョロと周りを見回す。
「どうした?ハジメ」
「うん、何か嫌な視線を感じて」
「……またか」
どうやらハジメは今朝からねばつくような、負の感情がたっぷり乗った不快な視線を感じるそうだ。それも何度も。まぁ、その視線を向けている者が誰なのか、見当はついているが。
俺が視線を向けるとそいつはビクッと体を震わせる。
(あいつ……まさかとは思うがここでハジメを襲う気か?)
さすがに騎士達の前で銃を持っているハジメを襲うなど自殺行為に等しいのでそんなバカな事をするとは思えないが俺は警戒をすることにする。
休憩も終わり俺達は二十階層を探索する。
二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層の階段があるらしい。
そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。一応、俺は転移魔法が使えるのだがこの人数を一気に転移することはできないので地道に帰らなければならない。
すると、戦闘を行く天之河達やメルド団長が立ち止まった。訝かしむ生徒を余所に俺は“気配感知,,や“魔力感知,,を使い、そこに魔物がいるのに気づき天之河達と同じように戦闘態勢に入る。
「擬態しているぞ!周りをよ~く注意しておけ!」
その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。
「ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ!豪腕だぞ!」
メルド団長の声が響く。天之河達が相手するようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。天之河と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。
龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。
直後、
「グゥガガガァァァァアアアア────!!」
部屋全体を振動させるような強烈な咆哮が発せられた。
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる固有魔法“威圧の咆哮,,だ。
まんまと食らってしまった天之河達前衛組が一瞬硬直してしまった。
ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ白崎達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで!咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が白崎達へと迫る。
白崎達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。
しかし、発動しようとした瞬間、白崎達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。
なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて白崎達へと迫る。その姿は、さながらル○ンダイブだ。「か・お・り・ちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。白崎も恵里も谷口も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法を中断してしまった。
「〈
俺はすぐさま魔法を発動させ、指から発生した電撃はダイブ中のロックマウントの眉間を居抜き貫通した。その個体は絶命し白崎達の目の前で落ちた。
「無事か?恵里、白崎、谷口」
ロックマウントを倒した俺はすぐさま三人の安否を確認した。
「あ、ありがとう、鈴木君」
「いや~、助かったよ」
白崎と谷口は俺がロックマウントを倒したのだと気づくと感謝を述べた。
そして、恵里は
「いやぁ~ん♪ありがとう、お義兄ちゃん!」
俺の腰に抱きついてきた。
「うわぁ~!?く、くっつくな~!!」///
抱きついてきた瞬間、昨夜の事を一気に思い出した俺は余りの恥ずかしさに思わず大声で叫んだ。
俺の取り乱しが昨夜の事だと察したのか、恵里は嬉しそうな顔をしながら更に力を強めて俺の腰に抱きつく。
「いつもならエリリンのハグを素直に受け止めるのに今は何故か顔を赤くしながら拒絶し、そんなサトルンに対してエリリンは嬉しそうな顔を………まさか!?昨日の夜、帰りが遅かったのって遂に二人は大人の階段を登って…「フンッ!!」グエッ!?」
そんな俺達の状況を見て、またも誤解が生じかねない事を言っている谷口の頭に手を乗せアイアンクローを喰らわせた。
「谷口~?それ以上何か言うつもりならお前の只でさえ低い身長を更に低くしてもいいんだぞ?」
「ギブ!ギブ!ギブ!ギブ!ギブギブ!!!」
俺達のこんな様子を見て先ほどまで顔を青ざめていた二人は苦笑し、何故かクラスメイトの何名かは俺に生暖かい視線を向けてくる。
そんな中でキレる若者が一人。思い込みの塊、我らが勇者(笑)天之河光輝である。
「貴様・・・よくも香織達を・・・許さない!」
どうやら気持ち悪さで青ざめているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて!と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする天之河。それに呼応して聖剣が輝き出す・・・て、はぁ!!??
「万翔羽ばたき、天へと至れ──“天翔閃,,」
「あっ、こら、馬鹿者!」
メルド団長の声を無視して、天之河は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り落とした。
その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その斬撃となって放たれた。逃げ場などない。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。
パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで白崎達に振り返った天之河。その顔を見た瞬間、俺は谷口を離し天之河に近づき拳骨を喰らわせた。
「へぶぅ!?……な、何するんだ、鈴木!?」
「バカか、お前は!?こんな狭い所であんな大技を放つ必要があるか!?」
「でも、香織達が……」
「いや、サトルの言う通りだぞ光輝。お前の気持ちはわかるが、運が悪ければあの技で壁が崩落して生き埋めになっていたぞ!」
最初は俺の言葉に反論しようとした天之河だが、メルド団長から指摘され「うっ」と声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する。白崎と谷口が寄ってきて苦笑しながらも慰める。
(やれやれ、冷静的に状況判断もできないあんな奴が俺達のリーダーとは先が思いやられる)
「はぁ」と俺が天之河の無能っぷりに呆れていると、ふと白崎が崩れた壁の方に視線を向けた。
「……あれ、何かな?キラキラしてる……」
その言葉に、全員が 白崎の指差す方へ目を向けた。
そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようだ。白崎を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりとした表情になった。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、 その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。
(……嫌、どう見ても罠だろう……)
俺はそう結論した。そもそも、そんな貴重な鉱石がまだまだ深層とは呼べないこの階層に簡単に見つかるものなのか?それにここは迷宮だ。おそらくあれは人間の醜い欲求を刺激するために配置されている可能性もある。
ハジメの方に視線を向けると彼は首を振った。どうやら『鉱物鑑定』を使ったのだろう、ここにいる中で鉱物に詳しいハジメが否定するのだから間違いないだろう。俺は罠の可能性が高い事をメルド団長に伝えようとすると
「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁をよじ登っていく。
「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」
「あのバカ!」
しかし、檜山は聞こえない振りをする。俺は魔法で檜山の動きを止めようとするが既に遅く、とうとう鉱石の場所にたどり着いてしまった。
メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで、鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。
「団長!トラップです!」
「ッ!?」
しかし、俺も、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。
檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。
魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現のようだ。
「くっ、撤退だ!早くこの部屋から出ろ!」
メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが・・・間に合わなかった。
部屋の中に光が満ち、視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。
空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられる。
すぐに立ち上がり周囲を見渡し警戒する。
どうやらあの魔法陣によって転移されたらしい。その場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天上も高く三十メートルはあるだろう。橋の下は全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。
橋の横幅は二十メートルくらいはありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば真っ逆さまだ。俺達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上段への階段が見える。
それを確認したメルド団長が険しい顔をしながら指示を飛ばした。
「お前達、すぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」
雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。
しかし、階段側の橋の入り口に魔法陣が現れ大量の魔物が出現した。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そこからは
その時、現れた巨大な魔物二体を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きが明瞭に響いた。
「──まさか……ベヒモスと……
今回はオーバーロードの魔物を出して見ました。ベヒモスだけじゃ何か味気ないなと思いやってみました。また、スケリトル・ドラゴンを登場させるために原作より橋の横幅と高さを大きくしてみました。
次回も頑張って書いていこうと思うので楽しみにしてください。