精霊龍、ウギン。ぶらり幻想郷観光の旅   作:銅鑼銅鑼

67 / 68
ゼンディカーの夜明けのプレリリースが近付いてまいりました。
皆さんは注目のカードはあるでしょうか?
私は「当惑させる難題」を注目しております。
ランプデッキに対する回答にもなりますし、キャントリップが付いているのが偉いですよね。

あ、空白期間が空いたのは単に忙しかったからです。
ごめんなさい。

ちょっと急いで書いたので誤字あるかも!


忠誠度能力+66:貴方の死後と

デコピンの刑が処された後のこと。

三人は一様に額を抑えて悶えているのだが、気にしない。

よそ様に迷惑行為をしたのだ、この程度で済んでむしろ感謝して貰いたかった。

 

さて。

私が殺された後の事を聞こうとして、カワウソ霊の彼を見た。

彼は、呆然としていた。

口を大きく空けて。虚空を眺めていた。

何かショッキングな出来事でもあったのだろうか。

不安になった私は、彼に話しかけようとした。

 

「……あわわ」

 

ふむ、会話にならなさそうな雰囲気を感じて。

私は「ウルザの眼鏡」をかけた。これならば、思考を読み取る事が出来る。

ああ、このお話は、彼の記憶から見た私が死んだ後の追体験になる。

その事を許して欲しい。

 

 

 

――ウギンさんが死んだ。

身体を横たえて。ピクリとも動かない。

僕は、その一連の流れを見ていることしか出来なかった。

 

ウギンさんが自身を殺せと言った時、何かの冗談かと思った。

詫びで死ぬような馬鹿がどこにいるだろうか?いいや。目の前に居るとも。

そう言うかのように。

それほど自然に、ウギンさんは何でもない事のように言ったんだ。

驚く暇もなく、純狐と呼ばれる女性が、彼を。ウギンさんを、殺した。

僕には、とても信じられなかった。現実味がまるでありませんでした。

まるで夢の中にいるかのような出来事でした。

 

そして、それは唐突でした。

 

 

 

「ねえ、ねえ。なん で殺し たの?

 

 フランに教えて 欲しいな?

 

 ウギンは大切な 私の 親友で、大切な 仲間なのよ?

 

 それなのになんで 壊したの?

 

 もっと沢山の ことを一緒に 知りたかったんだよ?

 

 もっと楽しい ことを一緒に 経験したかったんだよ?

 

 それなのになんで殺した の?

 

 フランに教えて?ねえ、教えて?

 

 なあ、教えろよ」

 

 

「どうして 殺したんですか?

 

 ウギンさんの 事です、何か策があったのかと 思いましたが。

 

 貴方は ウギンさんを 殺しました。

 

 私は 彼の 味方です。

 

 彼のもと にいつか現れる敵を 倒さなければならない。

 

 敵を 倒して、もっと倒して、もっと楽しい 観光の 旅になるはずだったのです。

 

 味方を増やして、もっともっと、安全に行く はずだったのです。

 

 順調だったの です。これまでは。

 

 まさか、仲間に敵が紛れ込んでるとは。

 

 この射命丸、一生の不覚です」

 

 

 

あまりに唐突でした。

今までに感じた事のないほどの殺意が、敵意が、噴き出したのは。

支離滅裂な言葉の羅列が、私の耳を叩きました。

対する、純狐と呼ばれる女性は、まるでなんでもないような顔をしています。

気が触れている、狂っているのでしょうか。

どうして、そんな顔が出来るのでしょうか。

僕には、まるで見当がつきませんでした。

 

「あら、あらあら。

 私はあくまでもウギンの言う事を聞いただけ。

 それなのに――。ああ、いえ、いいえ。

 これ以上は言っても無粋かしら。

 もはや争う他にないのでしょうね。どうせ巻き戻るのだもの。

 ここは一つ、徹底的にやり合いましょうか?

 どちらかが倒れるまで、徹底的に。

 

 ――ああ、違うわ。

 違うのね。違ったわね。

 それじゃあ駄目ね、私達はもう仲間だったものね。

 仲間同士で争っても、ウギンは悲しむだけね。

 なら、私はその怒りを純化しましょう。その嘆きを純化しましょう。

 大いに悲しみましょう。大いに怒りましょう。私は、そのすべてを受け止めるわ。

 いらっしゃい。射命丸。フラン。こいし。彼の大切な仲間達よ。

 ウギンの死を。一緒に嘆きましょう。

 

 ――ねぇ。ウギン、これで良かったのよね?」

 

そう言うと、純狐さんはフフッと笑いました。

そして一言。

 

「純化」

 

その一言が切っ掛けだったのでしょうか。

まるで縄から放たれた獣のように。

フランさんと射命丸さんとが一斉に純狐さんに攻撃を仕掛けました。

いえ。いいえ、攻撃とは呼べないものでした。

余りに荒削りで純粋に相手を殺す事だけを考えたそれは。

僅かな防御をも取ろうともしないそれは、まさに不俱戴天の仇を見つけた際のそれ。

フランさんも射命丸さんも。両方が両方目が血走っています。

 

そして、無意識外からも攻撃が飛んできている辺り。こいしさんも攻撃に参加しているのでしょうか。

生憎と僕にはこいしさんの姿を見ることは出来ませんが、それでも放たれる殺意はバシバシと肌で感じる事が出来ます。

 

対する純狐さんは――。一切抵抗らしい抵抗をしようともしませんでした。

嵐のような突風に身を任せ、身体のあちこちが爆発しても。

切り傷が身体中に走っても。何もしませんでした。

やっぱり彼女は狂っているのでしょう。

僕にはそうとしか考える事が出来ませんでした。

 

そうして、どのくらいの時間が経ったのでしょうか。

純狐さんはもう既に死に体で。無事である場所を見つけるのが困難なほどにボロボロになっていました。

身体のあちこちからは血が流れ出ていて。このままだと間違いなく死んでしまうことでしょう。

なのに。

 

「なぜ、わらって いる のです?」

 

「ねえ。どうして わらうの?」

 

顔だけは、どれだけ傷付こうとも、口を円弧状に広げていました。

 

「……くって」

 

不意に、純狐さんの口から言葉が漏れました。

聞き取れず。私は聞き耳を立てました。

 

「これをみている。うぎんのことをかんがえると。おかしくって」

 

狂っています。彼女は。

だって、ウギンさんはもう――。

 

 

 

――そこまで見たところで。私は「ウルザの眼鏡」をそっと外した。

純狐め。ここまで考えて道化になったのか。頭が痛い。

カワウソ霊の彼が思っている通り、純狐は間違いなく狂っている。

だがそれと同時に頭が切れるのが非常に厄介なのだ。

 

不意に、純狐の方に顔を向けると「プフー」と吹き出しそうな顔をしていた。

めっちゃ苛ついたが、まあ良い。

純狐が思っている通り、私は仲間同士での喧嘩を良しとしない。したくない。

だからこそ、私は今もなお頭を抱えて痛がっている仲間達に罰を与えたのだが。

だからといってそれで純狐が傷つく理由にはなりはしない。

私はため息を一つ吐いて。

 

「純狐」

 

「なーに?ウギン?」

 

「すまん、迷惑をかけた」

 

「ええ、とーっても迷惑がかかったわ?」

 

「……」

 

「そうね。と~っても痛かったわ。

 それにあの後も大変だったのよ?

 理性を無くしたあの子達が暴走してね?」

 

「……うむ」

 

「そうねぇ? 何か、お詫びが欲しいわね~?」

 

んっもう!

ほらもうすぐこれだ!

分かってはいたが、純狐は狂人だ。

だがそれはそれとして変な所で計算ずくだ!

射命丸といい、私の仲間達は強欲が過ぎるような気がする!

 

私は再びため息を一つ吐いた。

 

「……分かった。一度だけなんでも言う事を聞こう」

 

「へぇ~?なんでも?」

 

「なんでもだ」

 

「へぇ~?」

 

ああもう凄い悪い笑顔してますよ奥さん。

これから埴安神袿姫にも詫びを入れてこないといけないって言うのに。

頭が痛くなってきた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。