サバサバしてるけど乙女なのが良い。
突如としてマンションの屋上に現れた金髪の少女。
鑑原は童話ヒーローと自ら名乗った通り、いかにも童話のアリスのような格好をしている。
しかし、問題はさっきまで気だるげな表情を浮かべていた留年生とは思えない変貌ぶりに全員が誰テメエ状態である。
「オールマイト先生、今はミラリスです。余計なことは言わないでくださーい!」
「HAHHAHA! そうだったね。ともかくそこから降りてきなさい。これから授業の説明をするから」
失敬とばかりにオールマイトは豪快に笑って流す。
鑑原もといミラリスは鏡を屋上から地上に向けて階段のように出現させるとその上をピョンピョンと跳ねてクラスの傍へと降りる。
「派手な登場すみません。ほら、印象って大事だから」
確かに一理はあるが教室での地味っぽい女の子の印象はどこへやらである。
クラス全員が呆気にとられる。
「……?」
どうしたのと、ばかりに小首を傾げるその姿に、
(ぐっ……あざといがカワイイ)
(……イイ!)
既に若干2名が反応しているがそれは誰も知らない。
「確かにヒーローとしてのイメージというのは大事なものだ。色々と勝手が分かっているようだからミラリスくんには、手本と補助を頼みたい。そういう風に君を活用してくれと言われている。『留年してるとは言え、経験はゼロじゃない。復習と反省も兼ねてやれ、ディスアドバンテージをどうアドバンテージにするか考えた方が合理的だ』と相澤くんに伝言を頼まれてね」
「じゃあミラリス張り切って頑張ります。みんなの役に立てるように色々と教えてあげるね♪」
オールマイトの言葉にきゃは、と片足を上げてミラリスはポーズを決める。
「あほくせえキャラしやがって」
「コホン。生徒の身ではあるが手本になれる先達者がいる。と言うわけで今回やるのは入試でやったようなロボ相手の市街地戦闘じゃあないぞ!!」
爆豪の罵倒を遮るようにワザとらしい咳払いと共にオールマイトは進行を続ける。
「
いきなりの屋内戦闘訓練。
立ち回りなどもよく分からない新入生にはいきなりの実戦で疑問も多い。
「勝敗はどのように決めるのでしょうか?「ブッ飛ばしていいんスか?」「また相澤先生みたいに除籍とかありますか……?」「分かれるとはどのように分かれるのでしょうか?」「このマントヤバくない?」
「んんん~、聖徳太子ィ!!」
最後におかしい発言があったが一辺の質問にオールマイトは悶える。
そこで紙を1枚出して改めて説明をする。
「いいかい!? 状況設定は"
(カンペ……)
心の中で緑谷がツッコむ。
「"ヒーロー"は制限時間内に"
(設定アメリカンだな)
と、再び思った事を緑谷は心の中で吐き出す。
「ちなみに組むコンビと対戦相手は、"くじ"だ」
オールマイトがどこからか出したのか、くじ箱が出てくる。
「適当なのですか?!」
「先生、ミラリスが補足します!」
「うむ、良いぞ。飯田くんに説明してくれたまえ!」
ミラリスが元気よく答える。
「ヒーロー同士では突然、知らない人と組むこともあります。これをチームアップって言うんだけど、それは今後の授業で習うから覚えておいてね。それに
無個性ーーその言葉に緑谷は反応するが同時にミラリスの言葉に感銘も受けた。
自分なりに考えることがヒーローの第一歩。
その言葉に少し救われた気がした。
「落ちこぼれの言葉が参考になんのかよ」
爆豪はそれを一笑に伏す。
「舐めてると痛い目見ちゃうぞ♪ どうですか、先生」
しかし、ミラリスは笑顔で流した。
「うむ、良い答えだったよミラリスくん。どうかな飯田くん?」
「はい、勉強になります。ありがとうございました!!」
「いいよ!! はやくやろう!! あ、ちなみにミラリスくんは今回の訓練で最後に戦ってもらう。これは基礎を作るための実践。最初に見本となりそうな動きを見せたらみんなマネしちゃうからね。ミラリスくんの言うとおり、自分なりに考えることがヒーローの第一歩だからさ」
オールマイトはにっかりと笑ってそう付け加える。
新入生同士での初めての実践。
初めてだからこそ荒い部分もあったし、反省点も色々とあった。
そして多少のトラブルも。
ミラリスは背伸びをして、自分の番に備える。
そこでオールマイトははっと気付く。
「一応は全員終わった訳だが、ミラリスくんは誰と戦うか決めていなかったね」
「ならミラリスが選んじゃいますね。飯田くんと耳朗ちゃん、ヒーロー側でどうぞ」
「む、ぼ……俺か?」「え、ウチ?!」
いきなりのご指名に戸惑う2人。
「飯田くんはイイ動きしてたし、ヒーロー側での活躍も少し見てみたい。耳朗ちゃんは……名前の読みが同じだから親近感ってだけ♪」
「選んだ理由がソコ?!」
「ミラリスくんは誰と組むんだい?」
そのオールマイトの言葉にミラリスはにっこり笑って人差し指を立てる。
「留年してるからこそ、ちょっとやれるところを魅せちゃいます」
配置に付き、
"1人"で。
その光景を地下のモニタールームで1年A組が見ていた。
「1人で2人を相手、本来なら不利な状況」
八百万は状況を冷静に分析する。
「けろ。でも相手はこの雄英で1年を既に経験してる。実戦経験は私達以上に豊富な筈よ」
蛙の個性を持つ蛙吹梅雨が同じく分析をする。
そして、状況はすぐ動いた。
待機しているヒーロー側である飯田・耳朗のチーム。
こちらはこちらでミーティングをしていた。
「ふむ、耳朗くんと言ったね。君の個性は索敵にかなり向いているのは映像で見ていた。任せられるかね?」
「うん、任せて。しっかし複雑だよね……留年生だなんてどう接して良いんだか」
「確かに戸惑うが、それは後で考えよう。今は訓練中だ。指名を貰ったからには少しでも皆より多く経験を積める良い機会でもある」
「あっははは……堅いね。そういうキャラか……。でも、飯田がいるなら目標を見つければ一気に"奪取"出来るね」
「ああ! "ダッシュ"は得意だ」
「そういう意味じゃないんだけど……ま、いっちょよろしく!」
ーー最後の対人戦闘訓練開始。
一棟の5階建てのビル。
それが今回の訓練の舞台。
イヤホンジャックの個性を持つ耳朗響香は壁や床にイヤホンジャックを刺すことで、わずかな音でも聞き分けることが出来る。
当然ながら2人は注意深く索敵しながら進んでいたが、途中で耳朗が気付く。
「静かすぎる……」
「どうかしたのかい? 耳朗くん」
「さっきから聞き逃さないように注意深く聞いてるんだけど……足音も、呼吸の音すらも聞こえない」
「ふむ。確かかい?」
「今は3階だけど、それでも2階くらいの差なら小さくとも足音なら拾える。ここは5階建て、だから多少は何か聞こえてもいいんだけど何もなさすぎる気がする」
「待ち伏せ……という可能性は?」
「ありえるかも」
「ならば、最後の5階では注意した方が良さそうだ」
少しでも考えて可能性を話し合う。
そして、ついに来た5階。
一応は個性で耳朗は部屋の音を聞いてみるが、耳朗は飯田に対して首を振った。
意を決して2人は扉を開け放ち、同時に部屋へと飛び込む。
しかし、そこには確保の対象である核兵器のミサイルのハリボテが部屋の中央にあるのみ。
「本当に何もない……不気味だな」
「それは同感。いくら素人でも怪しいって分かるくらいには」
飯田の言葉に耳朗は共感する。
「ともかく、どうする?」
「無作為に飛び込むのは危険すぎる。流石に近付けば何かしらの罠か、行動を起こしてくるだろう」
そしてすぐにその罠が2人を襲う。
部屋の中ーーいや、窓の外からものすごい量の光が入ってくる。
「な、なにこれ……!?」
「目眩ましか?! しかし、この距離……罠がこれだけなら行ける! 耳朗くん、僕は確保のために飛び込む! 目がダメなら耳だ、警戒を頼む!」
「オッケー!」
耳朗は飯田の言葉に頷き、床にイヤホンジャックを刺して部屋の音を聞けるように準備する。
「行くぞ!」
飯田の個性であるエンジン。
直線で彼のスピードについていける者は多くない。
(核兵器の場所は分かっている。少し呆気ない気もするがこれでこちらの勝利だ!)
目指すは確保対象。
飯田は真っ直ぐに飛び込んだ。
DRRRRRR!
しかしーー
Clink!!Clink!!
ガチャガチャーン!! とすぐに幾重ものガラスのような何かを突き破る音が聞こえた。
しかし、全身を鎧のようなヒーロースーツを纏っている飯田は少し驚いたがそのまま直進する。
だがすぐに違和感に気付く。
進行上にあるはずの確保対象の感触が一切ない。
そろそろだと思って両手を広げたが、いつまでも空を切る。
もう1つガラスを突き破る音が聞こえた瞬間に光は収まった。
そして、耳朗の目に飛び込んだ光景は飯田が窓から落ちようとしていた瞬間だった。
「飯田ぁ!?」
「うおおおぁぁぁ!?」
声を上げた瞬間に、そのまま飯田は絶叫と共に落ちていった。
流石に5階から転落すれば無事ではすまない。
耳朗も思わず飯田が落ちた窓へと駆け寄る。
その途中でガチャン、とまたしてもガラスが割れる音がした。
耳朗が窓から下を覗くと、何かが光っている。
そして地面を見ているのに何故か空の青と雲が見えた。
「これは……」
よく見ていると、鏡が滑り台のようになっていた。
どうやら飯田はこれを滑って3階に落ちたらしい。
「はあ……ビックリした」
一先ずは安心した。
だがすぐに、
「知ってる? 童話って意外と残酷なんだよ♪」
背後から声がーー
落ちてしまった飯田は仰向けになって間抜けな格好で3階の床に倒れていた。
すぐに起き上がり、少しだけふらつく意識を首を振って覚醒させる。
「ぐぅ……まんまとしてやられた。おのれ
役に入るあたり真面目である。
ーーいやあああああぁ!
「耳朗くん!?」
5階からの絶叫に飯田はすぐに駆け出した。
数秒で5階へと駆けつけた飯田が核兵器の部屋へ飛び込むと、部屋の中央には耳朗がいた。
しかし、まるでパントマイムでもしてるような感じで壁の中にいるような、絵のような……そんな雰囲気である。
その彼女の隣にミラリスは姿を見せた。
お決まりようなセリフを飯田は放つ。
「彼女に何をした!?」
「訓練とは言え堂に入ってるね。簡単に言えば彼女は既に人質。鏡の中の住人になったの♪」
「人質、だと?」
「そう、彼女は鏡の中。私は鏡の中を自由に動けるからこうして捕らえることも出来る。ちなみに私が触れてないと鏡の中で自由には動けない。今の耳朗ちゃんはただの彫刻と同じ状態」
「鏡を操作するだけではないのか!?」
「それが"個性"の全てってミラリスは言ってないよ~♪ 思い込みは油断を招くし、凶悪な
その言葉に飯田は反論できない。
卑怯とは言えない。
同じような手を使われるかもしれないので反省点として言葉を飲み込む。
「ちなみに耳朗ちゃんのこの鏡が割れたらーーフフフ♪」
音は聞こえてるのか耳朗はその言葉に不安と恐怖で涙目になる。
その思わせぶりな言動に飯田もたじろぐ。
「な、なんだと言うんだ!?」
「さあ? ミラリス分かんな~い♪ どうするヒーロー?」
「ぐ……」
絶対絶命のピンチ。
だが……
「諦めないぞ、俺はーー」
「はい、確保♪」
意気込もうとしている飯田の隣にいつの間にかミラリスがいた。
そして腕にテープが巻き付けられている。
声の主であるミラリスを見て、再び飯田は自分の腕に目を落とす。
「なあああああああああ!?」
本日2度目の敗北に飯田は絶叫。
『
「バ、バカな……ヒーローが負けるとは」
オールマイトの放送と共に飯田は膝を折り、四つん這いになる。
相当にショックなのだろう。
そんな飯田を余所にミラリスは鏡の中に手をいれて耳朗を引きずり出す。
「こ、怖かった。後ろから捕まれた瞬間、心臓がパンクするかと……」
「ロックな体験だった?」
「ぜんっぜん違うよ?! パンクでもロックでもないただのホラーだったから!」
「あっはは♪ 恐怖を覚えてくれたなら嬉しいな。
その言葉に耳朗は少しだけ何を伝えたかったか分かった気がした。
「そうか……人質って心細いんだね」
「その気持ち、忘れないでね」
モニタールームでオールマイトは、少しだけ鑑原という少女について思い出していた。
ある日雄英に赴任する際に校長の応接室で、
『留年生? 雄英も高校だからなくはないだろうが、そんなことあるのかい? 追試を受けさせていない訳じゃあないんだろう?』
痩せ姿のヒョロガリなオールマイト。
トゥルーフォームと呼ばれる状態で、校長である見たまんまネズミでありながら人の言葉を話す根津校長。
そして、1年A組の担任である相澤先生。
オールマイトは教師としてある生徒の話を聞かされていた。
『10月から彼女は休学してる。そして、ようやく復帰出来る状態まで回復した。本来留年したなら容赦なく見込みナシで自主退学をさせるところだ。変に希望を持たせるのも残酷になる。ヒーローになるのに雄英を出てないといけない、なんて制約はない。だが……このまま退学させても危険。雄英の元生徒が問題を起こしたなんて報道されて学校の評判を落としたくはない』
『体裁も大事なのさ! だけど教師として、大人として、間違ったまま子供を世に送り出したくはないんだよ』
根津校長は相澤先生の言葉の裏側を語る。
『して、その鑑原少女の問題とはーー』
オールマイトの問いかけに対して、相澤先生の答えはーー
(ううむ……そんな風には微塵も見えない。ヒーロー活動時とそれ以外とのギャップはあるが、それでもおかしな行動をする感じは見受けられない。それどころか的確なアドバイス……)
戻ってモニタールーム。
オールマイトは鑑原について思案していた。
しかし……
(いかん、活動限界だ)
マッスルフォームと呼ばれる、筋骨粒々のアメリカンなヒーローを体現したような外見。
これがオールマイトのヒーローとしての普段の姿ではあるが、限界があった。
No.1ヒーローとして不安にさせるような姿を見せるわけにはいかない。
かなりの情報統制が取られており、このことは市民やマスコミには一切知られていない。
「ふむ、彼らの講評を行いたいところだが……授業時間的に厳しそうだ。改めて後日、聞かせるとしよう。次の授業に遅れてはいけないからね」
オールマイトは話題逸らしと同時に実際問題的に授業時間の終わりギリギリであることを語る。
ミラリスがちょうど飯田と耳朗を引き連れて戻ってきた。
「戻りました~♪」
「おお、戻ったか3人とも。緑谷少年以外に大きなケガをした者はいないね?」
『はい!』
「うむ、よろしい。ミラリスくんとの戦いでの講評はまた後日聞かせるとするよ。みんな
そのままオールマイトは風のように走り去った。
教室へと戻り、放課後となったところでやはり鑑原は元の気だるそうな雰囲気に戻った。
だが、耳朗はその雰囲気に負けずに机へ向かい話し掛ける。
「えっと、鑑原先輩……」
「鑑原でいい……」
「じゃあ、鑑原さん。ウチの個性、イヤホンジャックで小さな音も聞けるんだけど……どうやって足音を消してたの?」
その言葉に飯田も食いつく。
「俺も1つ気になっていた。確かに部屋の真ん中に核兵器はあった筈で、俺は確かに真っ直ぐに目標に進んでいた。どうやって守ったんですか?」
2人は自分たちの疑問を聞きに来たようだ。
「……単純に鏡の中にいた。鏡の外の音は拾うけど、中の音は外にでない。核兵器は鏡の角度を調整して部屋の真ん中にあるように見せただけ」
(思ったより単純だった……)
(く、眼前の光景に囚われていたのか……!)
耳朗、飯田はそれぞれ違う感想を持つ。
それから鑑原は補足する。
「飯田くんは直線なら突っ込んでくると思った……だから外に鏡を出して光で距離感を見誤らせた。それで外に落ちたところで耳朗ちゃんと分断。背後から奇襲……人質にして注目を集めたところで鏡で角度を調整しながら私が部屋の中央にーーzzzz」
《寝た!?》
説明の途中で鑑原は寝息をたて始める。
「お、おい……ここは学校だ。寝るなら自分の家で寝た方が良いのでは!?」
「ん……部屋の中央にいるように見せかけて飯田くんの横に近付いてーー」
「説明続けるんだ……」
飯田に言われて起きたと思ったら再び説明を始めた鑑原。
そのマイペースさに耳朗はツッコむ。
「……そんな感じ」
途中で面倒になったので鑑原は雑に終わらせた。
しかし今の立ち回りに飯田は唸る。
「むう、参考になる。立ち回りをよく考えている」
「……じゃないと弱いから。鏡を武器に出来るけど強度も火力もない。……疲れたから帰る」
「あ、ああ……また明日」「ありがとうございました」
耳朗と飯田に見送られて鑑原は帰路へ。
すっかり日も落ちて街の中で本を読みながら歩く鑑原。
雄英の生徒であるため民衆の好奇の視線を少し浴びるが、すぐに彼らは自分たちの興味へと意識を向ける。
そんな時だったーー
「どけえ!!」
「ああ!? 私のバッグ!」
この超人社会。
力をもて余して、自分は何でも出来ると勘違いする者は当然に出てくる。
鑑原がいる歩道の道路の向かい側で、婦人から高級そうなブランドバッグを背後から取り上げたニット帽の青年。
(……引ったくり。無作為じゃなく金を持ってそうだと当たりをつけて狙ってた)
瞬時にそう判断して鑑原は本を閉じて路地裏へ、自分を囲むように鏡を展開。
10秒も経たない内に鏡がなくなってヒーロー姿へ。
路地裏を出てすぐさま引ったくり犯の進行方向に鏡を展開。
自身は鏡の中へ入って向かい側へ出した鏡へーー
(ウサギの抜け道ーーラピットホール)
ワープした。
"個性"である鏡。
鑑原自身は鏡の中を移動ができる。そして、鏡の中に鏡が映っているならワープみたいな移動ができるのだ。
もちろん映っているのが条件。
鏡の中では鏡を作り出す能力は使用できない。
それは中から外へは干渉できないという意味でもある。
「邪魔だどけえ!」
青年の腕がバネのように縮んだと思ったら伸びた。
(身体増強系……なら大丈夫)
鑑原は鏡の中から手を出すと、そのまま腕を掴んで青年を鏡の中へ引きずる。
「な、なんだこれええ?!」
走っていたのも相まって勢いのまま青年は鏡の中へ。
入れ替わるように引ったくられたバッグを掴んで鑑原は鏡の中を出る。
すると青年は時間が止まったように鏡の中で動かなくなった。
鑑原はそのまま被害にあった婦人のところへ。
「婦人さん、大丈夫ですか?」
「ああ……ありがとうございます。主人から頂いた大切なバックを。なんと言うヒーロー何ですか?」
「童話ヒーロー、ミラリスです♪ 役に立てて良かった」
「まるで童話のアリスね。こんなカワイイヒーローさんがいたなんて」
「モチーフですから。すみませんが、警察に引き渡しますので事情聴取に協力をお願いします」
淡々と事後処理を進めて、すぐに警察は来た。
婦人と鑑原の話を聞いた後に、犯人は鏡の中から出されて身柄を確保された。
「お手柄だったね。君は、雄英生かい?」
「はい、仮免持ちです♪ 華麗に解決、大勝利! あは♪」
「学校にも活躍を報告しておくよ。学校帰りだろう? 事後処理はこれで終わりだから気を付けて帰ってね」
「どうもどうも~」
と、警察に感謝されて妙なテンションで彼女はその場を去る。
すぐに人々の視線から外れて着替えて、元の地味な少女に。
(上手くいった……ちゃんと体は動く)
と、表情は気だるげだが内心は安心していた。
(私は"死んでも"誰かの役に立ちたい)
『して、その鑑原少女の問題とはーー』
『破滅願望にも似た自己犠牲の精神。オールマイトさん、あなたによく似てますよ』
何が彼女をそこまで駆り立てるのか……それはまた後のお話。
今宵の話しはここまで。
私の描く女性キャラっていつも闇深い気がする……
ラピットホールーーウサギのラビットと素早い的な意味のラピットを微妙に語呂合わせした移動技。
鏡同士が映ってたらワープできる。
ちなみにガラス張りのビルとか家の窓とか鏡みたいに映ってるのならなんでもおk。