「……。」
セシリアと鈴は治療のために医務室に居たが、セシリアは疲れのため眠っており、鈴は窓から見える夕日を見ていた。
「怪我は大丈夫か?」
医務室に夏己が入ってきて具合を聞いてきた。
「一夏…。」
「だから、夏己だって言ってるだろ。…残念だったな。試合が中止になって。」
「そうよ…。勝てばあんたが名前を捨てた理由を聞けたのに…どうしてよ…。」
鈴は悔しさから涙を流し始めた。
「鈴。今の俺が言える事は一つだけだ。過去じゃなくて明日を求めろ。」
「明日…?」
「そうだ。弾も過去をもう振り返ってない。あいつは覚悟して俺と一緒に明日を求めて戦ってくれてる。鈴、時間は全然あるんだ。少しずつ受け入れていってくれ。」
「じゃあ約束は…?」
「約束?」
「私の酢豚を毎日食べてくれるって約束したでしょ…?その約束はどうなるの…?」
鈴は昔、一夏にした約束の事を一夏に聞いた。
「……。鈴。その約束は織斑ー夏にした約束であって、俺にはしてないだろ。」
「…何でよ…何でそんな事言えるのよ…!」
鈴は夏己の言葉で大泣きしてしまう。
「辛いけど、これが現実だ。織斑ー夏はもう死んだ人間。いつまでも亡霊に囚われるな。」
夏己は織斑ー夏はもう死んだ人間と言って、医務室から出た。
「何でよ…何でこんな事に…あたしはただ一夏に会いたかっただけなのに…」
鈴はどう受け入れていいか分からなかった。自分は親の離婚で中国に帰る事になり、一夏と離れ離れになってしまったが、一夏がI Sを動かしたと知り、必死になって中国代表候補生になりI S学園に来たが、一夏は一夏じゃないと言われ、挙句に一夏は死んだ人間とまで言われたから。
「コソコソしなくていいですよ。居るのは分かってるんですから。」
廊下を歩いていた夏己は突き当たり部分の場所を見ながら言った。
「気付いてたなんて凄いね。」
突き当たり廊下から水色髪の生徒が出てきた。
「…誰ですか?」
「私はこの学園で最強って呼ばれてる生徒会長の更織楯無よ。よろしくね。大道夏己君。」
生徒はI S学園の生徒会長、更織楯無だった。
「更織。簪と関係があるんですか?」
「簪ちゃんは私の妹。ありがとうね、簪ちゃんを助けてくれて。」
「あの時の。あの女どもに腹が立っただけですよ。それで、用件はそれだけですか?」
「用件というか、さっきの事で物申すわ。女の子を泣かせるなんてひどいわよ。」
「盗み見してたんですか。趣味の悪い人だ。」
夏己は楯無を睨みつけた。
「ちょっと、いきなりひどい事言うわね。」
「なら余計な干渉はしないでください。俺は鈴のためを思ってああいう風に言ったんです。」
「いやいや、言い方があるでしょ。例えば、俺がずっとそばに居るとか。」
「考えが甘いんですよ。ましてや今の時代、ちょっとした事で女は偉そうになる。鈴にはそんな奴になってほしくない。だから辛い現実を突きつけたんですよ。」
「……。」
「人は死ぬよりも辛い地獄を見なきゃ変わる事は出来ない。ただそれだけですよ。」
夏己は楯無にそう言い残して歩き出した。
「私も一応地獄は見てるんだけどね。」
楯無も一言呟いていた。
「よお。鈴の所に行ってたのか。」
部屋に戻ると、弾がエンジンブレードの手入れをしながら聞いてきた。
「ああ。あいつには辛いけど、織斑一夏は死んだって言ってきたよ。」
「…仕方ねえよ。これが現実なんだから。」
弾は夏己の言葉に納得していると、部屋のドアがノックされた。
「誰だ?」
夏己はドアまで行き、ドアを開けた。
「鈴。」
ドアを開けると、そこには鈴が居た。
「何の用だ?」
「話したい事があるのよ。」
鈴はズカズカと部屋に入った。
「鈴。怪我は大丈夫なのかよ?」
「大丈夫よ。それより弾、聞きたい事があるの。」
「聞きたい事?」
「何で弾は受け入れられたの?一夏が名前を変えた事を。」
鈴は弾が何故、一夏が名前を変えて生きている事を受け入れられたのかを聞いてきた。
「俺はな、こいつが幸せならそれでいいと思ったからな。」
「幸せ?」
「鈴も知ってるよな。一夏がどんな酷い目にあってきたか?」
「まあ…」
「だからこそ、俺は一夏がもう辛い目に遭わないなら名前を変えて死んだ事になってもいいと思ったんだ。俺はあいつの友達だったからな。」
「弾…」
「今すぐ受け入れろ。何て言われて受け入れられる奴は早々いねえよ。」
弾は立ち上がった。
「夏己。メシ食いに行こうぜ。鈴も一緒でな。」
「ああ。鈴、俺と弾が奢る。好きな物を好きなだけ食え。」
「食事でチャラとか、変わらない部分もあるのね。」
「?」
「何でもない。ほら早く行くよ。食べないとやってられないし、それにあのおっさんにチビって言われるのも嫌だから!」
「そういや、堂本さんと鈴が並ぶと猿回しに見えるよな!」
「そうだな!この間も鈴、堂本さんに猿扱いされてたし!」
「あんたたち…あたしは猿じゃないわよッ!」
鈴は二人の言葉に激怒した。
「ヤッベ!」
二人は逃げ、鈴も二人を追いかけながらも三人は食堂に向かった。その姿は中学の頃のような光景だった。
「山田先生。この無人機について何か分かりましたか?」
「いえ、コアも未登録のが使用されていたみたいです。けど、大道君が原型も分からないくらい破壊してしまったのでこれ以上は…」
ある部屋で無人機の事を調べていた千冬と真耶だが、エターナルが原型も留めないくらい破壊してしまったためコアが未登録以外の事が何も分からなかった。
「大道の奴。派手にやってくれたな。」
「…織斑先生。大道君の事で一つ気になる事があるんです。」
「気になる事?」
「これを見てください。」
真耶は映像を出すと、映像はエターナルがローブを脱ぎ捨てゾーンメモリを起動させる映像だった。
「何が起きるんだ?」
千冬はエターナルを見ていると、エターナルはゾーンメモリを腰のマキシマムスロットに挿れた。
「ゾーン・マキシマムドライブ!」
「これは!?」
エターナルがゾーンのマキシマムを発動させた事でエターナルの周りに24個のメモリが現れ、エターナルの胸、右腕、左足に挿入された。
「あのベルトに挿さってるのを入れて計26個あります。」
「26個。あいつ、そんなに隠し持ってたのか?」
千冬は真耶から夏己が26個のメモリを持ってると聞かされ驚きを隠せなかった。
「それで、大道君が使ってるエターナルメモリなんですが、エターナルは日本語にすると「永遠」という意味なんですが…」
「永遠。何を意味してるんだ?」
「私にも…大道君や五反田君に聞いても、二人揃って社長に聞いてくれとしか答えてくれませんでした。」
「大道克己か。一体何者なんだ?いや、会わなければ分かるはずないか。」
千冬はスマホを出して、どこかに電話をかけた。