また次の日、夏己たちのクラスに転校生が来た。
「皆さん。今日も転校生を紹介します…。」
真耶は少し引いていた。
「ドイツのシュヴァルツ・ハーゲン所属のラウラ・ボーデヴィッヒだ。」
「ボーデヴィッヒ。ここは軍ではない。」
「ハッ!教官!」
「教官ではなく織斑先生だ。さっさと席に着け。」
ラウラは千冬の指示に従って席に向かうが、その途中、夏己の席の前で止まった。
「貴様が…!」
ラウラは夏己にビンタをしようとしたが。
「随分な挨拶だな。これがドイツ流の挨拶なのか?」
だが、夏己はラウラの手首を掴んでいた。
「ク…私は認めんぞ!貴様が教官の弟だという事を!」
「何の話だ?早く席に行け。」
夏己はラウラの手首を離した。
「クッ!」
ラウラは悔しそうな顔で席に向かった。
「あいつが兄さんの言ってたドイツの代表候補生か。面倒な奴が来たもんだ。」
夏己はラウラを見て、少しイラつきを覚えていた。
夏己たちのクラスはI S授業でアリーナに居たが、今回は専用機持ちたちが斑を持ち、I Sの事を教えていた。
「大道君!メモリを見せて!」
だが、夏己と弾の所はI Sよりメモリの事で質問攻めだった。
「今はそんなに持ってないよ。基本使ってるのはこの二本がメインだから。」
エターナルはトリガーとユニコーンのメモリを担当の斑の生徒たちに見せた。
「これを使うと何が起きるの?」
「トリガーは遠距離攻撃。ユニコーンは一撃必殺のパンチを打てる。ちなみにセシリアと山田先生の試合の時にも使ったよ。」
「じゃあ今見せて!」
「いや、今は使う必要はないよ。今日はI Sの事を教えてるんだから。ほら、話はここまでで操縦しよう。」
エターナルは生徒たちに指示を出していると。
「大道。少しいいか?」
「何ですか?織斑先生。」
「ボーデヴィッヒの斑がかなり遅れている。サポートに入ってくれるか?」
エターナルはラウラの斑を見ると、他の斑とは違い、かなり空気が重くこっちに伝わってくる程だった。
「空気が重いな。分かりました。サポートに入ります。」
「頼む。」
エターナルは遅れてるラウラの斑に行った。
「貴様、何の用だ?」
「織斑先生に頼まれたんだよ。お前の斑のサポートに入ってくれって。」
「そんなのは必要ない。遅れた奴が悪いんだからな。ここが戦場ならそいつはとっくに死んでる。」
「ここは戦場じゃなくて学園だ。お前が冷たい雰囲気放つせいでこっちまで空気が重くなる。」
「軍人とはそういう存在だ。余計な感情などいらん。」
「ダメだ。埒があかねえな。ボーデヴィッヒの斑のみんな!俺の斑で教えるからみんな来てくれ!」
「いいの!」
ラウラの斑の生徒たちは夏己が教えてくれると言って、顔色が一気に明るくなった。
「教官の汚点め…!」
ラウラはエターナルの事を睨みつけていたが、エターナルはそんなのは気にせずに生徒たちと一緒に自分の斑の所に向かっていた。
1日の授業が終わり、夏己と弾は寮に帰ってた。
「そういや夏己。シャルルと同部屋になったんだよな?」
「ああ。今は警戒してメモリとドライバーは常に隠してるけど。…あれは?」
「どうした?」
「ボーデヴィッヒと織斑先生だ。揉めてるのか?」
二人はその途中でラウラと千冬が話しているのが見えて、二人は隠れながら見ているとラウラは走っていった。
「…何かあったんですか?」
「大道たちか。いや、ボーデヴィッヒにドイツ軍に戻ってきてくれと言われてな。」
「ドイツ軍に?」
「私は前にドイツ軍で指導していた。あいつは軍の落ちこぼれだったが、私のおかげで再び軍に返り咲く事が出来てな。あいつはそれ以来、私に心酔してる。」
「なら、あの行動にも納得だな。」
夏己はラウラがいきなり自分を叩こうとした理由が分かった。ラウラは千冬に心酔してるからこそ織斑一夏という存在が邪魔だった。
「…それより大道。お前はメモリを26個も持ってるみたいだな。」
「調べたんですか?」
「無人機襲撃の映像を見てたら、お前のI Sにメモリが挿さるシーンがあったからな。一体何なんだ?お前たちが使ってるメモリは?パソコンに挿しただけでパソコンにそれと繋がってた機械を全て破壊する程の。」
「知りたかったら兄さんに聞いてください。」
夏己は千冬にガイアメモリの事を聞かれるも何も答えず、克己に聞いてくれとしか返さなかった。
「それがお前たちの返答か。…今週の金曜日の夜、大道社長と会う約束をした。メモリの事はその時に聞く。」
「克己さんと会う約束をした!?」
二人は千冬が克己と会う約束をしたと聞かされ驚愕してしまう。
「ダメ元で電話したら快くOKを貰えた。それにお前たちの担任である以上、お前たちが何を使ってるのかは知っておかないといけないからな。もう暗くなる。早く寮に帰れ。」
千冬は早く帰れと言ってその場を後にした。
「克己さん。何か考えがあるんだよな?」
「そうじゃなきゃ会う約束はしない人だからな。」
二人が克己の千冬に会う目的を考えていると、夏己のスマホに着信が入った。
「兄さんからだ!」
夏己はすぐに電話に出た。
「もしもし!兄さん!」
「いきなりデカい声を出すな。どうした?そんなに慌てて。」
「兄さん。織斑千冬と会う約束をしたって本当?」
「本人から聞いたのか?いや、向こうから喋った方がしっくりくるな。ああ今週の金曜日の夜にな。」
克己も千冬と会う約束は否定せずに予定も千冬が話してた曜日と一致していた。
「安心しろ。俺もそこまでバカじゃないからベラベラ喋らねえよ。それより調べモンはカタがついた。」
「シャルルの事だね。」
「ああ。まずはデュノアの線から調べたら簡単だったからな。奴の実家は量産型I S「ラファール・リヴァイブ」を作ってる有名企業、デュノア社。けど、今のデュノア社は相当ヤバい状態だ。」
「ヤバい?」
「デュノア社のは第2世代型。世界は第3世代に入ってるけど、デュノア社には第3世代に行くための情報に技術、資金も足りない。水面下はかなりガタガタだ。」
「倒産間近ってやつなんだね。」
「ああ。そしてここからが本題だ。…シャルル・デュノアなんて人物は存在しない。」
「え!?」
夏己は克己からシャルル・デュノアという人物が存在しないという声を聞かされ驚きを隠せなかった。
「けど、近い人物が一人だけ該当した。名前はシャルロット・デュノア。デュノア社長と愛人の娘だ。そこに弾は居るか?」
「いるけど。」
「弾の携帯にシャルロット・デュノアの写真を送る。それを見てシャルル・デュノアと見比べてみてくれ。」
弾のスマホにすぐにメールの通知が来て、弾はメールを開くと写真が添付されていた。
「夏己!」
弾はすぐに写真を夏己に見せた。
「シャルル…。」
写真にはシャルルと瓜二つの少女が写っていて、二人はただ唖然としていた。
「でも、何で男のフリを…?」
「簡単な事だ。デュノア社がスポンサーを得るため、そしてお前たちのメモリのデータが欲しいからだ。シャルロット・デュノアの母親は既に亡くなってる。生きるために酷い扱いを受けて、生きていくために地獄を見るしかなかったんだよ。」
「シャルル…お前…」
夏己はシャルルがやってる事は生きていくために、他に選択がなかったからやるしかなかったと克己に言われて、拳を握りしめた。
「それで夏己。これからどうするんだ?」
「どうするって?」
「シャルロット・デュノアに再び地獄を楽しませるか、デュノア社に地獄を楽しませる。お前はどっちを選ぶ?」
「それはシャルルの意思を聞いてから決めるよ。」
「分かった。」
克己は電話を切り、夏己は通話が切れたスマホを見ていた。
「夏己。どうするんだ?」
「シャルルから直接話を聞く。」
夏己は歩き出して、寮に帰った。
「あ、夏己。お疲れ様。」
夏己が部屋に戻ると、既にシャルルが居た。
「お疲れ。いや〜今日も疲れた。メシはシャワーを浴びてからでもいいか?」
「大丈夫だよ。僕はもう浴びたからゆっくり浴びてきなよ。」
「ああ。そうさせてもらうよ。」
夏己はワザとエターナルメモリとロストドライバーを机に置き、シャワールームに入った。
「……。」
シャルルは夏己がシャワールームに入ったのを見計らい、すぐにバックからノートパソコンを出して、机に置いてあるエターナルメモリを手に取った。
「ごめんね。夏己…。」
シャルルは夏己に謝り、エターナルメモリをパソコンに挿そうとした瞬間。
「そこまでだ。」
いつの間にか夏己はシャルルの後ろにおり、夏己はコンバットナイフをシャルルの首に向けた。