タッグトーナメント当日、夏己とシャルルは対戦相手が発表されるまで待合室で待機していた。
「けどこのタッグトーナメントは凄いな。各国の企業の人たちが来てるんだから。」
「この試合でスカウトされる事もあるからね。」
「でもまさか、兄さんまで来てるとは。」
タッグトーナメントを観に来た来賓の中には克己も居た。
「克己さんは夏己や僕が所属してる会社の社長だからね。立場上は来ないといけないんだよ。」
「そういや、弾。簪と組んでたんだな。」
待合室には弾と簪もおり、弾のペアは簪だった。
「いや大変だった。みんな、ペア組んで!って頼み込んできて。簪が通りかからなかったらどうなってたか。」
「私、弾の足を引っ張らないように頑張るね!」
「頼りにしてるぞ!」
弾と簪が話してる中、トーナメントの対戦相手が発表された。
「マジか。」
「いきなり当たるなんてね。しかもペアは篠ノ之さんか。」
夏己たちの一回戦の相手はラウラと箒のペアだった。
「ちょうどいい。あいつは少し痛めつけないと気が済まなかったからな!」
夏己はラウラと当たった事にむしろ喜びを感じていた。
「夏己、シャルル。頑張れよ!」
「ああ!」
「うん!」
夏己とシャルルはラウラとの対戦のためアリーナに向かった。
「大道社長。男性操縦者を一人くらい我が社に所属させても。」
「いいや!私の企業だ!大道社長。望んだ額の倍出します。是非我が社に男性操縦者を一人だけでも!」
来賓用の観客席に居た克己は他の企業の代表たちから夏己たちを自分の会社に所属させてくれと頼まれていた。
「お断りします。それに彼らが使ってるI Sは我が社特製のI S。他の企業では扱う事は出来ませんよ。どうしてもと言うならお宅らの企業に所属しているI S使いと試合させます。勝ったら全員連れて行っても構いません。」
「本当か!なら早速!」
「だからこそ。これから始まる試合をしっかり観ていてください。我が社自慢の操縦者の実力を。」
克己はアリーナを見ると、エターナル、ナスカを展開したシャルル。シュヴァルツァ・レーゲンを展開したラウラに打鉄を展開した箒が居た。
「まさか一回戦から当たるとはな。」
「それはこちらの台詞だ。貴様を潰すッ!」
「やれるもんなら…やってみろッ!」
エターナルがエッジを構えたのと同時に試合開始のブザーが鳴った。
「シャルル!箒は任せたぞ!」
「任せて!」
エターナルはラウラに向かって一直線に走り出した。
「私を忘れるなッ!」
箒は瞬時加速を使って打鉄のブレードをエターナルに振るが。
「僕がいるのを忘れたの?」
シャルルは超高速を使って箒の前に現れ、ナスカブレードでガードした。
「ボーデヴィッヒ。地獄を楽しみな!」
エターナルはトリガーメモリを起動させた。
「トリガー・マキシマムドライブ!」
エターナルはエッジから光弾を撃ち、光弾はラウラの周りの地面に当たって土煙を起こした。
「こんな事をしてどうするつもりだ!」
「言っただろ!地獄を楽しみなってッ!」
「サイクロン!」
土煙の中から疾風がラウラに襲いかかり、シュヴァルツァー・レーゲンは疾風の刃でダメージを負っていく。
「な、何だこの速さは!?」
シャルルと戦ってる箒だが、ナスカの超高速に翻弄されダメージを負っていた。
「夏己と弾の特訓の成果はこんなものじゃないよ!」
シャルルは箒の前に現れ、ナスカブレードを大きく振った。
「何なんだ?デュノアのI Sが出すあの異常な速さは?」
管制室から試合を見ていた千冬と真耶はナスカの超高速に唖然としていた。
「NEVERで改良したという報告は受けてますが…。」
「だが、あれだけの速さならエネルギーの消費も早いはずだ。山田先生、デュノアのI Sのエネルギー消費率は?」
「全く消費されていません…。」
「はあ?」
千冬は真耶の言葉に最早何を言ったらいいのか分からなかった。
「どうですか?あれが私の元で訓練を重ねた成果です。他の企業であれ以上伸ばす事は出来ますか?」
試合を見ていた克己は他の企業の代表たちにエターナルの強さを見せつけて、代表たちは言葉が出なかった。
「シャルロットもメモリの力をあそこまで引き出すとは、やはりナスカとはかなり相性がいいみたいだな。」
克己はシャルルがナスカメモリの力を最大限に発揮している事に感心していた。
「そろそろ終わりにするね!」
シャルルはナスカメモリをナスカブレードに挿した。
「ナスカ・マキシマムドライブ!」
ナスカブレードにオレンジ色の雷撃が纏われ、さらにナスカのスラスターにハチドリの地上絵を模した翼「ナスカウイング」が纏われた。
「!!」
ナスカは超高速から繰り出される斬撃を打鉄に放ち、打鉄は戦闘不能に陥った。
「ここまでか…」
「ユニコーン・マキシマムドライブ!」
「喰らいやがれッ!」
ラウラと戦ってるエターナルもユニコーンのマキシマムでシュヴァルツァー・レーゲンを殴り、シールドエネルギーをゼロ近くまで減らした。
「私が…負けるのか…?」
ラウラはエターナルに手も足も出ずに負けるのかと考えてしまう。
「いや…私は、負ける訳にはいかないのだッ!」
それでもラウラは認めなかった。自分がエターナルに負けるなどあってはならないと。
″ドックン“
「!?」
その瞬間、ラウラの頭の中から声が聞こえてきた。
「力が欲しいか?」
「誰だ…?」
ラウラは突然問いかけてきた声に質問した。
「貴様は力が欲しいか?」
「誰だっていい…あの男を倒せるなら…力を寄越せッ!」
ラウラはエターナルを倒すために決めた。力を得る事を。
「何だ!?」
その瞬間、ラウラに異変が起き、エターナルはすぐに離れた。
「うわぁぁぁーーーー!!」
シュバルツァー・レーゲンから突然電流が起きて、ラウラはドス黒い液状の物に包み込まれていった。
「あの姿は!?」
そして、ドス黒い液状の物は形になった。その姿は雪片を持った織斑千冬の姿だった。
「何でボーデヴィッヒがあの女の姿に!?」
「夏己!」
来賓席から試合を見ていた克己が来賓席から飛び降りてきてアリーナに来た。
「兄さん!」
「まさかあの黒兎の嬢ちゃんのI Sにあんなモンが仕組まれていたとはな。」
「あれを知ってるの!?」
「VTシステム。ヴァルキリー・トレース・システムの略でモンド・グロッソ優勝者の動きをまんまコピーしちまう最悪のシステムだ。条約で使用も開発も禁止されてるシステムをここで見るとはな。」
「そんな物がボーデヴィッヒのI Sに。」
「けど、あれを使ってる時は使ってる奴にかなり負担がかかる。下手すれば黒兎の嬢ちゃんは死ぬ。」
「!?」
エターナルは克己からこのままだとラウラは死ぬと聞かされ、一瞬迷いが生じるが。
「いや、あいつは織斑千冬に心酔してる。なら…!」
エターナルは何を考えたのかゾーンメモリを出したが。
「兄さん?」
克己がゾーンメモリを持った手の腕を掴み、エターナルを止めた。
「夏己。よく聞け。黒兎の嬢ちゃんはな、俺やお前と同じなんだ。」
「同じ?」
「あいつも自分が求めた明日が欲しくて今を足掻いているんだ。けど、求めてる明日が間違ってるだけだ。」
克己は黒い千冬を見た。
「あいつは織斑千冬になりたい。そんな明日が欲しいんだ。でも無理な話だ。自分は自分。他の誰でもないんだからな。お前が目を覚まさせてやれ。」
「兄さん。どうしてそこまで?」
エターナルは克己が何故ラウラに肩を持つのか聞いた。
「似た者同士。だからかな。」
克己は少し濁すような言い方で答えを言った。
「何か分からないけど、あいつを助ければいいんだろ?」
「ああ。今のお前なら出来るさ。それと生徒たちの避難は俺と弾たちに任せろ。弾は既に行っている。夏己、過去と決着をつけてこい。」
「…分かった!」
克己は被害の事を考え、弾たちと一緒に生徒たちの避難をしに行き、エターナルはエッジを構えた。
「シャルル。ボーデヴィッヒを救うために力を貸してくれ。」
「分かってる。それで作戦は?」
「超高速で奴を無力化させる。無力化した所で俺がボーデヴィッヒを引っ張り出す。行くぞ!」
エターナルはナスカメモリを出した。
「ナスカ・マキシマムドライブ!」
エターナルたちは超高速を使い、黒い塊を斬っていく。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。お前がどうしてそんな明日を求めてるかは知らねえけど、お前は織斑千冬にはなれねえんだよッ!」
エターナルは拳に青い炎を纏わせて塊を殴った。
「シャルル!下がれッ!」
塊が怯んだ隙を逃さずにエターナルはジョーカーメモリを挿した。
「ジョーカー・マキシマムドライブ!」
エターナルは塊にライダーキックを放ち、塊は液状化して中からラウラが出てきた。
「!!」
エターナルはすぐにラウラの手を引っ張り助けだした。
「ここは…?」
ラウラはどこかの精神世界におり、目の前にはエターナルが居た。
「お前は…何故強いのだ…?」
ラウラはエターナルに聞いた。何故強いのかと。
「俺は強くねえよ。俺はただ足掻いているだけだ。」
「足掻いている、だと…?」
「自分が求めた明日が欲しい。そのためだけに足掻いてるんだ。」
「それは私も同じだ!私も!」
「お前は織斑千冬になりたい。けどそんなのは無理な話だ。」
「何だと!」
「自分は自分。他の誰でもない。お前は過去を消したいから織斑千冬になりたいんだろ?でもな、人はみんな消せない過去を持ってるんだ。だからもう織斑千冬になるなんて明日は求めるな。」
「今更私にどんな明日を求めて足掻けと言うんだ!」
ラウラはエターナルに言い返した。自分が織斑千冬になるという明日を求めて足掻くのをやめたら、どんな明日を求めて足掻けばいいのか分からなかったから。
「そんなの簡単だ。お前がお前として生きるための明日を求めて足掻け。」
「私が私として…だと?」
「そうだ。他の誰でもない。ラウラ・ボーデヴィッヒという一人の人間として生きるための明日を。俺も一緒に足掻いてやるから大丈夫だ。」
「私が私として生きるための…明日か…。」
ラウラは何か安心したような気持ちになり、ラウラの意識はそこで途絶えた。