箒を連れて旅館に戻った夏己と弾だが、箒は何かに怯えるように部屋に引きこもってしまった。
「何だったんだあの竜は?」
「分かんねえよ。けどかなりヤバいってのは分かる。」
夏己と弾は襲いかかってきた竜がかなり恐ろしい存在だと感じていた。
「みんな。」
そこに克己たちが来た。
「夏己さん、弾さん、お怪我はありませんか?」
「俺たちは大丈夫だ。でも箒が…。」
「何だったのよあの竜は?」
「軍用I Sをああも簡単に破壊するとは…。」
「大道さん。何かご存知ですか?」
「知っています。それについてお話があるので来てもらえますか?織斑先生。出来れば篠ノ之束も一緒に。」
克己は千冬に銀の福音を破壊した竜について話があるので来てくれと言い、さらに束も連れて来てくれと言った。
「束もですか。分かりました。」
克己と千冬は海岸まで行き、束は後から来た。
「さてと、銀の福音を破壊した竜ですが、あの竜はドーパントと呼ばれる存在が操ってる物です。」
「ドーパント?」
「夏己や弾が使ってるメモリの怪人です。」
「なあ!?」
「あのメモリって怪人にもなれるんだ!」
千冬は夏己たちが使ってるメモリが怪人にもなれると聞き驚きを見せるが束は興味を示していた。
「残念だったな篠ノ之束。せっかくてめえが作った第4世代のI Sのスペックを世界に見せる舞台がドーパントのヤバさを見せつける舞台になったんだからな。天才が利用される。いい笑いモンだな。」
「ぐぬぬ…!」
「大道さん、何の話ですか?」
「お前も気付いているだろうが。そいつの妹が専用機を手に入れた途端に軍用I Sが謎の暴走。こんな都合の良い話があるか?そのバカがシステムを乗っ取ってこっちに来るように仕向けたんだよ。」
「……。」
「全部知ってたお前は猿芝居に付き合った。そうだろ?白騎士。」
「!?」
千冬は克己が言い放った言葉に顔色を変えてしまう。
「この世界も本当に哀れだよな。たった二人のガキに振り回されて今に至るんだからな。けど、ここからはもうてめえらだけでどうする事も出来ない。ここから先は俺たちだけでやる。織斑千冬、お前は学園の連中に首輪を着けて大人しくしてろ。」
克己はドーパントに関して首を突っ込むなと言い、千冬には学園の人間を抑えろと言った。
「お前…言いたい放題言いやがって!それにいっ君を返せッ!」
「バカか?あいつは自分から織斑ー夏の名前を捨てたんだ。もうてめえらの道具じゃねえだよ…!」
「お前ッ!」
束は克己の言葉にキレてしまい、克己に殴りかかった。
「束!」
千冬が止めるも遅く、束の拳は克己に当たる直前だった。
「やっぱりガキの躾にはこれがいいのか?」
「!?」
だが、克己は束の拳を受け止めていた。
「クソガキ…てめえにも地獄を楽しんでもらおうか…!」
克己は束の拳を強く握り、束の拳から何かが折れる音がした。
「本当にバカなガキだなッ!」
克己は束の腹部に蹴りを入れ、束は吹き飛ばされた。
「束!」
千冬はすぐに束の元に行った。
「束、大丈夫か!」
「ゲホ!ちーちゃん…あいつ…何かヤバいよ。」
「大道さん!いくらなんでもやりすぎです!」
千冬はこっちに向かってくる克己に言うが。
「やりすぎ?これくらいでか…!」
克己は千冬も殴り、千冬は砂浜に転がった。
「大道さん…何を…?」
千冬は突然殴られた事で訳が分からなくなった。
「てめえの弟が味わった痛みはこんなモンじゃねえよッ!」
克己は千冬の服を引っ張って無理矢理立たせてまた殴っては蹴り飛ばした。
「一夏の痛み…」
波打ち際に倒れた千冬はこの痛みよりも一夏はもっと酷い痛みを味わっていたと克己に言われ、千冬は泣きそうになってしまう。
「どんな気分だ?今まで地に伏せた事がない奴が地に倒れる気分は?」
克己は砂に汚れ、海水でビショビショになった千冬を笑いながら見ていた。
「哀れな奴だな。地獄を見た途端にそんなツラをするとはな。…てめえの弟はずっとそんなツラをしてたんだよッ!」
克己はトドメの一撃のように千冬の腹部に蹴りを入れた。
「バカと関わるのも疲れる。俺はあいつらにドーパントの事を説明するから戻る。」
克己はこれ以上千冬たちに関わるのはバカらしいと感じ、旅館に戻ろうとする。
「織斑千冬。てめえは死ぬまで地獄を見ないと、あいつの苦しみや痛みは理解出来ねえよ。いやこれから先はその考えがなきゃ生きていけねえよ。」
克己はドーパントとの戦いには苦しみや痛みが必要だと千冬に言い残して旅館に戻った。
「苦しみや痛みか…。いやあの人の言う通りだ…一夏、すまない…。今までお前の苦しみに気づいてやれなくて…。」
千冬は泣きながら一夏に謝罪した。
「辛い現実は受け入れたわね。でもまだあなたには覚悟が足りないわよ。全てを敵に回す覚悟。それがこれから始まる地獄を耐え抜く力になるのよ。」
シュラウドが千冬の事を見ており、シュラウドは千冬に更なる覚悟を持って欲しいと願っていた。
旅館に戻った克己は夏己、弾、専用機持ちたちに竜が出した攻撃の事を説明していた。
「精神干渉波?」
「何それ?」
「相手の体ではなく精神を攻撃する特殊な攻撃だ。そして、あの竜が使ったのは相手の恐怖を増幅させるテラーフィールドと呼ばれている。」
「恐怖だと!?」
専用機持ちたちは竜の放った攻撃が恐怖を増幅させる攻撃だと知り、顔色を変えてしまう。
「篠ノ之箒はその恐怖に負けてあんな風になったんだ。」
「ですが、夏己さんと弾さんは何も起きなかったですわ!」
「それはあの二人が精神干渉波の耐性を持ってたから何ともなかったんだ。ごく稀にいるんだ。精神系の攻撃が全く効かない人間が。」
「耐性って何よ?」
「簡単に言えばウイルスの抗体だ。それにあの竜を操ってた奴がどこかにいたはずだ。」
「あんなのを操ってるのがいるの!?」
「あの竜は操ってる奴の体の一部だからな。奴の名はドーパント。ガイアメモリの怪人だ。」
「ガイアメモリって夏己さんと弾さんが使ってるメモリですよね!?」
「そうだ。しかもあの場所周辺には二体のドーパントが居たはずだ。竜を操ってたテラー・ドーパント、天気を操ってたウェザー・ドーパントが。」
「天気って、あれも操ってたの!?」
専用機持ちたちは天気も操って作られたものだと克己から聞かされさらに驚愕してしまう。
「まさかこんなに早く来るなんて。」
「いきなり奴らとの実戦だ。夏己、弾、シャルロット。いつでも行ける準備をしておけ。」
「分かってるよ。兄さん。」
「ちょっと!あたしたちは!」
「奴らにI Sは効かない。忘れたのか?軍用I Sをガラクタ同然に破壊したんだ。お前らじゃ即殺される。ましてや相手は恐怖と気象を操る奴だ。I Sの絶対防御が効くか?だからお前たちは手を出すな。」
克己は鈴たちにドーパントにはI Sは通用しない。まして相手は恐怖と気象を操る敵、尚更効くわけないから手を出すなと警告した。
「確かに恐怖や自然現象を防ぐ術はありません。ですがそれでも!」
「我々にも出来る事があるはずです!兄上!」
「それにシャルロットは何で弾たちと一緒なのよ!」
「シャルロットのI Sには夏己たちと同じタイプのT2ガイアメモリが組み込まれている。そのおかげでシャルロットはドーパントと戦える。」
「ならわたくしたちのI Sにもメモリを組み込めば!」
「兄上!我々のI Sにもメモリを!」
セシリアたちはドーパントには戦えるようにするためにガイアメモリを自分たちの専用機に組み込んでくれと頼み込むが。
「それは無理な話だ。」
「何でよ!」
「シャルロットは俺の会社に所属してるから出来たんだ。お前たちは国に所属してるだろ。国が支給した装備以外は取り付けられない決まりになってる。勝手な事をやったらお前らは代表候補生から外れるぞ。」
「しかし、あの怪物と戦うのに国など関係ありません!」
「上の連中はドーパントの存在は公にもしない、認めもしないだろ。I Sより強い存在が居てたまるかって事で。」
「何よ…それ…」
鈴たちは克己の言葉で悔しさを覚えると、雷が落ちたような大きな音がした。
「今のは!?」
「来やがったか。」
克己はすぐに外に向かい、夏己たちも外に向かった。