「……」
箒は布団に包まり怯えていた。テラードラゴンが放った精神干渉波によって恐怖が増幅し、恐怖に飲み込まれてしまったから。
「怖いのかしら?」
「え…?」
箒は顔を上げるとそこにはいつの間にかシュラウドが居た。
「あなたは恐怖に負けて逃げた。けど、逃げれば逃げる程、最後には自分に返ってくるのよ。」
「私は…もう…。」
「そのまま行けば、あなたは最後何も出来ずに絶望感を持って死ぬわよ。それでもいいの?」
シュラウドは箒にこのままだと絶望感を持って死んでしまう事を伝えた。
「嫌だ…私は…死にたくない…。」
箒はシュラウドに言われた言葉で泣いてしまう。
「なら、逃げずに戦いなさい。そうすれば明日を生きれる可能性は上がる。今のあなたに出来る事はそれだけよ。奴らはもう来ている。いつここに来るのか分からない。…恐怖を克服するのは過酷よ。けど、それが人の運命なのよ。あなたはいずれ大切な人と敵になる。今からでも遅くない。彼らの元に早く行きなさい。」
シュラウドはそれだけ言い残して部屋から出た。
「私は…」
残された箒は震えている自分の手をただ見ていた。
「あそこか!」
雷らしきものが落ちた場所に着くとそこは海岸で砂浜から煙が出ていた。
「…誰か出てくるな。」
煙の中から足音が聞こえてきて克己たちは警戒した。
「久しぶりですね。大道克己。」
「お前は…財団Xの!?」
煙の中から一人の男が出てきたが、克己はその男を知っていた。その男は克己に倒され、仮面ライダーダブルに倒された男、加頭順だった。
「お前だったのか、この世界にガイアメモリを持ち込んだのは。」
「それはあなたも同じじゃないですか。しかしあなたとまた戦うとは、これも運命なのですかね。」
加頭はユートピアのメモリを出した。
「あのメモリは!」
「気をつけろ!あのメモリはヤバい!」
夏己たちは加頭の出したユートピアメモリに驚く中、加頭はガイアドライバーを着けて、メモリを起動させた。
「ユートピア!」
その瞬間メモリは意思を持ってるかのように勝手にガイアドライバーまで行き、ガイアドライバーに挿さった。
「!?」
ユートピアメモリがガイアドライバーに挿さったのと同時に夏己たちの体が勝手に浮き始めた。
「何よこれ!?」
「体が勝手に!」
セシリアたちは何が起きたのか分からず、ユートピアメモリは完全に挿さり、加頭の体から青炎、雷が放たれ加頭は姿を変えた。
「あれが…ドーパント…?」
加頭はユートピア・ドーパントに変身し、理想郷の杖を振った。
「やはり私はユートピアとは適合値が高い。久々に使わせてもらいますよ。」
「やるしかない。弾!シャル!」
「おう!」
「うん!」
夏己と弾はエターナル、アクセルに変身し、シャルもナスカを展開した。
「エターナルにアクセル。その姿をまた見るとは。…ですが、私一人で来た訳ではありませんよ。」
ユートピア・ドーパントは指パッチンすると、ユートピアの後ろからテラードラゴン、左右から雨と突風が起こった。
「!?」
「私は既にこの世界で協力者を手に入れたのですよ。」
「あいつらは!?」
ユートピア・ドーパントの左右からテラー・ドーパント、ウェザー・ドーパントが歩いてきて、二体はユートピアの左右に並び、テラードラゴンはテラー・ドーパントの頭部に戻っていった。
「よりにもよってこいつらが同時襲撃か…。」
「何なのよ…この怪物ども…」
「怪物とは失礼ですね。我々は地球に選ばれた存在なのですよ。」
「地球に…選ばれた存在だと…?」
ラウラはウェザー・ドーパントが言った言葉の意味が理解出来なかった。
「あなた方女性はI Sを使える事で自分は神になったと思いでしょうが、私たちは違う。進化した存在なのです!」
テラー・ドーパントは再びテラードラゴンを出し、ウェザー・ドーパントも雷や吹雪を起こした。
「ウェザーの多彩な力を思い知れッ!」
ウェザーはアクセルの周りに雷雲を発生させた。
「何だこれ…!?」
雷雲から雷が放たれアクセルは雷をまともに喰らってしまう。
「弾!」
「あなたの相手は私です。」
アクセルを助けに行こうとしたエターナルの前にユートピア・ドーパントが乱入した。
「邪魔するな!」
エターナルはユートピア・ドーパントに殴りかかるが、ユートピア・ドーパントの重力を操る力で触れる事が出来なかった。
「大道克己より全然ですね。」
「だから何だ!」
エターナルはエッジを巧みに使うも、理想郷の杖に上手く捌かれ、ユートピア・ドーパントは炎を纏った蹴りを放った。
「クソ!」
エターナルも負けじと腕に青い炎を纏わせてパンチとキックはぶつかりあった。
「あれがドーパントの力なのか…?」
「夏己さんが苦戦する程の存在…わたくしたちでどうにか出来るのですか…?」
「うわあぁぁぁぁーー!!」
「弾!?」
アクセルの悲鳴が聞こえると、アクセルは雷を食らった挙句にテラードラゴンに噛まれていた。
「早くしないと友達が死にますよ。」
「シャル!」
エターナルはテラー・ドーパントと戦ってるシャルロットを見るが、シャルロットもテラー・ドーパントに苦戦していた。
「大道克己。そろそろあなたも首を突っ込んだ方がいいのではないですか?」
「…かもな。」
克己はT1エターナルメモリ、ロストドライバーを出した。
「おや?また面白いものが見れますよ。加頭さん。」
テラー・ドーパントは何かを見ると攻撃をやめて、テラードラゴンもアクセルを離し、テラーの頭部に戻っていった。
「弾!」
アクセルは地面に放り出され変身が解除されてしまった。
「あの竜…マジで噛み砕こうと…」
弾の制服は血で真っ赤に染まっており、セシリアたちは弾の姿を見て、顔を真っ青にしてしまう。弾でさえこの状態。I Sを使ってるとはいえ、生身の肉体を出してる自分たちがテラードラゴンに噛まれれば間違いなく死は免れないと悟ったから。
「分かりましたか?世界最強と言われてるI Sも我々の前ではタダのガラクタ。いやこのウェザーの多彩な力の前にI Sなど意味がない!」
ウェザー・ドーパントは高笑いしながらセシリアたちに言い放った。
「やはり最後に頼れるのは己ですかね?」
ウェザー・ドーパントもテラー・ドーパントが興味を示したものを見た。
「ほう、恐怖に打ち勝ちましたか。」
ユートピアもテラーが見てるものを見て、それに興味を示していた。
「箒!?」
そこには箒がおり、箒はゆっくりとこっちに近づいた。
「怖い…死にたくない…けど、けど…!」
箒は喝を入れたかのような顔になり紅椿を展開した。
「私は…もう逃げない…!」
箒は刀を構えたが、その手はまだ震えていた。
「あんたに喝を入れられるなんてね…!」
鈴は何を考えたか、突然、両手で自分の頬を叩いた。
「セシリア!ラウラ!あたしたちも行くよ!」
「…はい!」
「ああ!」
鈴に言われ、セシリア、ラウラも喝を入れ、三人も専用機を展開した。
「…今日はこれくらいにしましょう。私たちは挨拶に来た程度ですから。」
「ウェザーの多彩な力を見て、少しは効果がありましたからね。」
「だが、いずれはここでの恐怖がまともに感じるくらいの恐怖が襲いかかる。その顔を拝むためにも。」
テラーとウェザーもユートピアの左右に並び、テラーはテラーフィールドを放ち、三体はテラーフィールドの中に消えて行った。
「一旦引いたみたいだな。夏己。弾を運ぶぞ。」
「…弾!!」
エターナルはすぐに変身を解き、夏己たちは弾を旅館まで運んだ。
「あの野郎、次は倒す。」
「弾、動くな。傷が結構ヤバいんだから。」
布団に横になっていた弾は次こそはドーパントを倒すと決意していた。
「普通なら死んでてもおかしくないのに、みんなビックリしてたわよ。弾の体の頑丈さに。」
「俺を殺せるのは夏己か克己さんだけだ。」
「それは自慢なのでしょうか?」
セシリアたちは弾の言葉に唖然としていた。
別室で克己は襲撃してきた加頭たちの事を千冬と真耶に説明していた。
「では、その加頭という男が銀の福音を破壊した。」
「そうです。そしてついさっきも奴は襲撃してきました。テラー・ドーパント、ウェザー・ドーパントを引き連れて。」
「まさか、本当に怪物の仕業なんて…信じられません。」
真耶は克己の言葉が未だに信じられなかった。本当に怪物が存在する事に。
「奴は既にメモリを渡していた。これから先奴はメモリを売る可能性があります。」
「売るって、怪物になるって分かって買う人がいるんですか!」
「今のご時世はカモで溢れてますよ。I Sのせいで人生を滅茶苦茶にされた男がわんさかいるんですから。いいですか?絶対にドーパントに関しては首を突っ込まないでくださいよ。」
「…分かりました。」
「織斑先生!」
「山田先生。大道さんの言う通りだ。我々でどうにか出来る存在ではない。大道さんたちを襲撃した奴らは気象に恐怖、重力まで操ったという報告を聞いてるからな。ただ多少の協力はいいですか?」
「構いません。では、自分はこれで。」
克己は別室から出て、別室には千冬と真耶だけが残った。
「織斑先生。その顔の傷はどうしたんですか?大道さんは何も聞かなかったのですが。」
真耶は千冬の顔にある克己に殴られて出来た傷や腫れの事を聞いた。
「…クラゲと野良猫にやられただけです。」
千冬は克己に殴られたとは言わずにクラゲと野良猫にやられたと嘘をついた。
「本当に素晴らしい物だ。これは。」
どこかの豪華な部屋に加頭たちがおり、ウェザー・ドーパントに変身していた研究者の男はウェザーメモリをまじまじと見ていた。
「ここからは実働部隊に動いてもらいます。あなたでは無駄に殺しかねませんから。」
「ですが、彼のおかげで私たちの事は揉み消される。とんでもないスポンサーをゲットしましたね。」
もう一人の研究者の男が目を向けた場所には机とプレートがあり、プレートには国家防衛局長官という文字が書かれていた。
「あなたには感謝してます。参議院でありながら国家防衛局長官まで務める真影壮一さん。」
加頭がそう言うと椅子が動いて、紳士的な男性が座っていた。
「私はね。君が来る10年前からこの世界に居たんだ。君の言う理想郷とやらに興味を持った。そして、あの短時間で篠ノ之束まで攫った。だからスポンサーになったんだよ。」
「では引き続きあなたには影から色々と動いてもらいます。真影さん、いえ、ロイミュード001。」
加頭が真影にそう言うと真影の体が機械人形みたいな姿になり、胸のプレートには001という数字が刻まれていた。