デート・ア・ライブ イレギュラーブルー(凍結) 作:蒼京 龍騎
あれは嘘だ(嘘になってしまった)。
という訳で引き続き、蒼の話です。
お楽しみいただければ幸いです。
デート・ア・ライブ イレギュラーブルー 2
第2章 ラタトスク、回収。そして、対話。
気がつくと、見知らぬ所にいた。
周りにはビルが立ち並んでいる。
そのビルの中心に、『俺』がいた。
顔は無表情だった。両手には、チェーンソーを六つ無理やりにくっつけたようものが握られていた。
そして、あの少女に似た、士道が乱戦に巻き込まれている時にいた少女がいた。
その少女が俺と戦っている。
周囲を見ると、死んでいる人が何人もいた。
無惨に殺されていた。
千切られたように引き裂かれ、死んでいる死体。
四肢が砂になっている死体。
銃弾のあとが幾つも見られる死体。
内側から爆発四散したような死体。
その異様さに、吐き気がした。
そして、なぜかさっきまで見えなかったが、士道がいた。
『俺』が士道に向かって何かを振り下ろそうとする。
「やめろ!」
咄嗟に手を伸ばした。
そこで、意識が引き戻される。
「うわぁぁぁ!?」
目覚めると、知らない天井があった。
なぜか配線が配管が剥き出しになっていた。
そんなことより。
記憶があやふやだ。
頭が痛い。
とりあえず起き上がってみる。
周りを見ると、いかにも病室という雰囲気の所にいた。
「えー、、、何してたんだっけ?」
まだ寝ぼけているらしい。視界は鮮明になるが、記憶はモヤがかかっているようにぼんやりとしか思い出せない。
まず俺が飛来 蒼 という所までは覚えている。
高校に通っていること。
親友が二人いることも。
一人は殿町。
だがもう一人は?
思い出せない。
「目覚めたかな?」
女性の声がカーテン越しに聞こえた。
「誰だ?」
そう聞いてみる。
「まずカーテンを開けるがいいかな?」
「、、、、、分かった」
カーテンが勢いよく開かれる。
そこには妙に眠たげな顔をした女の人がいた。
軍服と思えるような服を纏った、二十歳くらいの女性であった。
無造作に纏められた髪に、体調の心配をせざるをえないような分厚い熊ができている目、あとなぜか軍服のポケットから顔を出している傷だらけのボロボロな熊のぬいぐるみが特徴的だった。
「、、、、ここで解析官をやっている、村雨 令音 (むらさめ れいね)だ。あいにく医務官が席を外していてね。、、、、まぁ安心してくれ。免許こそ持っていないが、簡単な看護くらいならできる」
「、、、、、、は?」
免許がない?おまけ付きに今にもぶっ倒れそうじゃないか、、、、、、、余計安心できんわ!と心の内で叫ぶ。
と、さっきの言葉が引っかかる。
「ーーーここ?こことは一体?」
「、、、、ああ、<フラクシナス>の医務室だ。君がここの施設の壁を何枚も突き破って気絶していたので勝手に運ばせてもらったよ」
「<フラクシナス>、、、?ってか気絶ってーーー」
思い出した。確か親友を助けようとして、そのまま壁に激突して、転がりまくって気絶したんだっけか、、、、だがその親友の名前が思い出せない。姿は思い出したのだが、、、、
「あーすまん質問いいか?わからんこと祭りで訳が分からん」
そう言ったが、令音は応じず、無言で俺に背を向けた。
「おーい、ちょっとー?」
「ついてきたまえ。君に紹介したい人がいる。気になることは色々あるだろうが、どうも私は説明下手でね。詳しい話はその人から聞くといい」
そう言って、出口のようなところまで歩を進めようとしていたのだろうが、足をもつれさせ壁に、ガン!と音を立てて頭をぶつけた。
「お、、、おいマジで大丈夫か、、、?」
あまりにも体調が悪そうだったのにさらに頭をぶつけたので、心配になったのでそう言い、令音の元までベッドから足を下ろし、歩く。
その最中、部屋の中全体が見えたのだが、ベッドが六つぐらい並び、部屋の奥には見慣れない機械があった。
「すまんね、、、最近寝不足なんだ」
「一体どれだけ寝なければそんなんになるんだよ、、、、、」
俺が質問すると、令音が考える仕草をした後、指を三本立ててきた。
「もしやと思うが、、、、三年、、?」
おそるおそる聞いてみた。まぁ流石に違うだろうと思っていたが、
「、、、三十年、かな?」
「もっと酷かった!?ってか普通そんだけ寝てなければ死ぬだろ!?」
まさか、、にわかには信じ難いが、、、、、
というか、外見を完全に超越していた。
「、、、まぁ、最後に睡眠をとった日が思い出せないことは本当だ。どうも不眠症気味でね」
「さっきのがマジなら不眠症ってレベルじゃないだろ、、、、、」
「とにかく、こっちだ。ついてきたまえ」
扉のようなものの前に来ると、扉が自動で開いた。
「あれそういや靴は、、、あったあった」
俺は急いで靴を履き、その後を追った。
「、、、、、、おいおいマジかよ、、、、、、」
部屋の外は、狭い廊下のような作りになっていた。
淡い色の機械的な壁に床。俺はなんとなく、SFチックな所だな、、、、、と思った。
ふらふらとおぼつかない令音の背を頼りに、映画のセットのような通路に足音を響かせていく。
そして、どれぐらい歩いたか分からなくなるほど歩いた頃に、
「、、、ここだ」
通路の突き当たりにあった、横に小さなパネルが付いた扉の前で足を止め、令音が言った。
次の瞬間、電子パネルが軽快な音を鳴らし、滑らかに扉がスライドする。
そして、扉の向こうの光景に、絶句する。
まるで船の艦橋のような場所だった。俺がくぐってきた扉から、半楕円の形に床が広がっており、その中心に艦長席と思えるような目立つ椅子が設えられている。
さらに左右両側から階段が伸びており、そこから降りた下には、複雑そうなコンソールを操作するクルーのような人達が見受けられた。全体的に薄暗く、あちこちに設えられたモニターの光が、いやに存在感を主張していた。
「、、、連れてきたよ」
令音が、ふらふらと頭を揺らしながら言う。
「ご苦労様です」
艦長席の隣に立っていた長身の男が、執事のような調子で軽く礼をする。ウェーブのかかった髪に、日本人離れした鼻梁。とにかくイケメンと思えるような風貌の青年だった。
「初めまして。私はここの副司令、神無月 恭平(かんなづき きょうへい)と申します。以後お見知り置きを」
「は、、はぁ、、、」
小さく礼を返す。
俺は一瞬、令音がこの男に話しかけたのだと思った。
だがーーー違った。
「司令、村雨解析官が戻りました」
神無月が声をかけると、こちらに背を向けていた艦長席が、低いうなりを上げながらゆっくりと回転した。
そして。
「ーーー歓迎するわ。ようこそ、<ラタトスク>へ」
『司令』と呼ばれるには少し可愛らしすぎる声を響かせながら、真紅の軍服を肩掛けにした少女が艦長席に座っていた。
大きな黒いリボンで二つに括られた髪。小柄な体躯。丸っこい目。そして何より特徴的だったのは、口にくわえたチュッパチャプス。
俺は唖然とした。
だってそこに居たのは。
「、、、、琴里ちゃん?」
思い出した。
忘れていた親友の名前が思い出される。
五河士道。その妹の五河琴里が、そこに居た。
「まずは、勝手にこんな所にいきなり運んできたことは謝るわ。士道を回収しようと思ったら、いきなりあなたが回収地点に突っ込んできた挙句、<フラクシナス>の壁を何枚も突き破りながら転がってきたから。」
「回収?あいつここでなんかやってたりすんの?」
「違うわ。士道にはさっきここの事を話して説明して家に帰ってもらってる」
「そうなのか、、、士道は無事か、、、、、良かった、、、、」
安堵のため息をつく。
「で、とりまここってどんなとこ?」
「その事を話す前に、まずあなたの天使と霊装について話してもらおうかしら。」
「は?天使?なんじゃそりゃ」
「とぼけても無駄よ。あの時、あなたからは確かに霊波が確認された。つまりあなたは精霊よ。だけど今は何故か霊波の一つも確認されてないんだけど。普通、精霊は常に霊波を出すのに、どういう原理?」
、、、は?話についていけん。天使ってなんだよ。精霊ってなんだよ。俺はただの一般高校生だぞ?
そう言ってやりたかったが、そう言われるのには、ひとつ心当たりがあった。
「もしかして、お前らが言ってる霊装やら天使やらって、あれか?」
気絶する前に自分の身に起きた、奇怪な現象。それが心当たりだ。
「それ以外に何があるのよ。」
外れていて欲しかったが、当たっていた。
「じゃあひとつ言わせてもらおう。俺はあの時初めてあんな感じになったんだよ!名前も知らん女の子に謎のナイフで刺されそうになって、それを変な箱が止めて、そっから出てきた銃を握った瞬間にあれだよ!だから俺はなんも知らねぇ!」
気が動転し、叫んでしまう。
途端、艦橋がざわめいた。
「そう、、、、、令音」
「心拍数などを見ていたのだが、彼は嘘をついていないらしい。つまり、」
「私たちの知らない未知の精霊の発生、ね、、、、」
「、、、、、?」
やっぱり話についていけん。
「とりあえず、一回メディカルチェックを受けてもらうわ。これで何か分かればいいんだけど、、、、、、、連れて行って。」
「分かりました、艦長。」
そうガタイのいい男たちが言うと、俺の腕を掴んできた。
「ちょっ!?なんだなんだなんだ!?離せ!!」
足と腕をばたつかせて抵抗するが、モヤシのようなこの体が、ガタイのいい男に勝てる訳がなかった。
どこかに引きずられながら移動させられる。
「なんか知らんが嫌だァァァァァァ!!!!」
そう叫ぶも虚しく響き、医務室に引きずり込まれた。
九時間後。
「お、、、、、、終わった、、、、、」
時刻を確認してみると、朝の三時。道理で眠いわけだ。
「お疲れ様。これいるかね?」
「助かる、、、、、、」
令音が水の入ったペットボトルを差し出してくる。
それを奪うようにして取り、その水を飲む。
この時間、ずっと人間ドッグの検査項目でやるような検査を一通りやった後、終わりかと思っていたら、体力測定のようなものをぶっ通しでやらされた。ちなみに検査が六時間、体力測定は三時間かかった。
「ぶ、、、ぶっ通しで運動三時間って、、、、殺す気か、、、、、」
ゼェゼェと息を切らしながら言う。
「すまないね。これだけしないと確実な数値が取れないんだ。」
「どうだった?令音」
琴里が医務室にやってきて、令音に言う。
「どの検査も一通りやってみたが、彼はれっきとした人間だね。この数値で精霊って言われても信じられないほどだよ」
そう言って、手元にあったデバイスを琴里に渡す。
「、、、、確かにこれは精霊とは言えないわね。いたって普通の高校生、いや、それ以下の身体能力だわ。」
「だがとある身体能力が以上に高かったんだよ」
「、、、、、!」
琴里がデバイスをなぞり、何かを注意深く見ている。
「これって、、、視覚関連?」
「そうだ。目が異常だった。動体視力は弾丸さえ見切っていたよ。おまけ付きに300メートル先にゴマ粒を用意したんだが、難なく答えていたよ。」
「、、、、なんで目だけなの?」
「さぁ。私も聞きたいぐらいだよ」
そう、なぜかあの後、異常すぎて気持ち悪いと思えるほど視力や動体視力が上がっていた。いや、上がったって次元じゃない。目がまるで機械に取り替えられたようになっていた。
現在の気温、気候、湿度や、半径100メートル以内の人の位置、自分の体調が、目に『表示』されていた。
冗談でも比喩でもない。本当に目に映っていた。
もちろん困惑した。だがそれを馬鹿正直に話すと余計めんどくさいことになりそうだったのでやめた。
まだこいつらを信用していない。
俺の正直な心境だった。
と。
いきなり艦内にアラートが響き渡る。
空間震警報のアラートに似ていた。
「精霊ね。誰が出現したの?」
琴里が冷静に近くにあったモニターで誰かに連絡する。
「はい、どうやら<ナハト>のようです。やはり夜に出現する頻度が高いようです。」
「今から向かうわ。それまで待機していて。」
「はっ」
会話が終了し、モニターの光が消える。
「悪いけどお客さんよ。令音、ついてきて。あなたは後で部屋を教えるからそこで待機してて。私たちでどうにかするから。」
「おい、<ナハト>って一体なんだよ?」
「それに答える暇は今はないわ。あなたはとりあえず私たちの指示に従って」
琴里がポケットからデバイスを取り出す。
そこには、<ナハト>と文字が入っている少女の写真があった。
そこに写っていたのは。
、、、、、、あの時の少女だった。
、、、、、、、もう一度話したい。
そう考えた。
行動に移すのは一瞬だった。
「悪い、あんたらの指示に従うのはちょっと無理になった。失礼!」
そう言ってその場から駆け出す。
アテはあった。
目に映っている情報の中で、『現在行きたい所に対してのルートを表示する』という内容のものがあったので、ここから出られる場所のルートを表示する。
「もっかい謝んねぇとな、あの時の事」
謝罪も含めて話したい。
話してあの目をどうにかしてあげたい。
そう目的地に向けて走りながら、考えていた。あんな目は初めて見た。絶望一色。暗い闇しか見えない瞳。そう言えるように暗かった。
俺は自分で自分の事は馬鹿なヤツだと自覚している。
友達だと思っているヤツは、死んでも助ける。
絶望している人に対してもそう考えていた。
あの少女は、あそこまで暗い眼をしている。
俺ではどうにも出来ないかもしれない。
だが、死んでもどうにかする。
そう結論づけた。
と、外へ出るための非常用ドアまで着いたのだが、開かない。
「クッソ!!ロックかかってんのかよ!」
こうなったら力づくで、、、、、、
そう考えた直後。
『進行針路上に電子機器の仕掛けを確認。ハッキングし、解除します』
一度死神の声かと思っていたその機械音声が、そう告げたかと思えば。
視界一面に数字の列が通る。
そこから抜き出された数字がドアに向かって駆け、ドアに入っていく。
瞬間、ドアがピピッという軽快な音を出し、開く。
「よし!なんかハッキングって言ってた気がするが、これで外に、、、、、!?」
下を見ると、街が一望できた。視界ひとつに収まる程度の大きさしかない。
もしや、、、、、
「そう、ここは空中艦よ。」
アナウンスで、琴里の声が響く。
「残念だったわね。今はあなたをここから出すわけにはいかない。どうやってそこまで行ったのかは知らないけど、大人しくしなさい。今なら乱暴な手段はとらないわよ?」
そういった途端、俺の周囲に銃のようなものが複数出現し、俺に向かって銃口を向ける。
そのうちの一つが、破裂音のような音と共に弾丸を発射する。
壁に傷がつく。本物の銃だ。
、、、、、しょうがない。
予定が早まったが、『呼ぶ』しかない。
初めてあの姿になった時、一部力の使い方が脳に直接流れてきた。
あの銃は、自分が窮地に陥ってる時に自動で来るが、自分で呼ぶことも可能だった。
だから。
あの少女を救い、謝罪するため。
「悪いが、そんなんで止まるほどビビりじゃないんでね!今の俺は!」
そう言い放ち。
「<要塞>(フェストゥング)!!」
その名を呼ぶ。
瞬間、差し出した右手の平にリボルバーが出現する。
それを強く握る。
前の時のように、体が淡く光り、その光が固まり、機械のような鎧となる。
「じゃ、一旦さらば!介抱してくれてサンキュ!」
そう言い残し、扉から飛び降りる。
強い風が体全体に当たる。
落下していると自覚できる。
前みたくできてくれよ、、、
そう願いながら、体の向きを直立状態にし、足に力を込める。
そうすると、空中で急停止できた。
落ちてきた空を見上げると、暗い夜空しか写っていなかった。
あの船はどこに行った?
そう考えたが、まずはあの少女の方が先だ。
「あの女の子の位置は?」
そう呟く。
『現在、南東三百メートル先に霊波反応を感知。至急、殲滅行動に移ることを推奨。』
は?殲滅?倒しに行くんじゃないぞ!?謝る&救うのが目的だよ!!
そう心の中で叫ぶ。
そして、目が指し示す方向に向かって、空を駆ける。
一瞬で、あの少女がいるであろう所に来た。
周りを見渡すと、大きくそびえ立つビルの真下に。
あの少女がいた。
一度地面に着陸し、少女の元まで駆け足で歩く。
「、、、、、、君か。わざわざ殺されに来たの?」
少女から少し離れた所で、そう聞かれた。
殺気を向けられている。
やはり、相当怒っているようだ。
「いや、違う。まず一つ目の目的は、謝罪だ」
「え?」
「昨日の事を、謝りに来た」
彼女が声を出していたが、続ける。
「本当にすまない。いくら事故とはいえ、回避できる手段はいくらでもあった。だが俺の注意不足のせいでこうなってしまった」
「、、、、、、、、、、」
少女が黙り込む。
「、、、言葉だけならどうとでも言えるよ」
そう言われた。
ごもっともだ。
だから。
「じゃあ俺をそのナイフで刺せ。この間刺しそこなっただろ?死なない程度なら何回でもいい。お前の俺に対する憎しみが発散されるまで刺せ」
少女が愕然と口を開いていた。
そして。
「、、、、、、、本気?だとしたら君、相当狂ってるね」
「なんなら試してみるか?俺が本気かどうか」
そう言い放つと、少女が手にナイフのようなものを握りしめ、俺の方に歩いてくる。
そして、そのナイフを構え、俺に向かって勢いよく突き刺そうとする。
目を閉じる。
これは謝罪だ。
俺がしたことへの、精一杯の。
そう考える。
、、、、、、だが、体に痛みは走らなかった。
目を開ける。
少女は、俺にナイフを刺さず、寸止めで止めていた。
「、、、、、、、、どうして避けないの」
悲しげな表情で聞いてくる。
「避けたら、ストレス発散できないだろ」
「、、、、、、、、狂ってるね。君は」
「昔は、よくそう言われたよ」
「、、、、、、ホント、狂ってるよ」
少女がそう言った後。
なぜか体をこちらに預けてきた。
「な!?」
思わず驚愕する。
「、、、、、、さっきの謝罪として、してほしいこと。しばらくこうさせて。」
俺は、少し理性が吹っ飛びそうになった。
少女の豊かな胸。それが胴体に当たっていた。
さらに、髪から漂ってくる、女性特有の甘い香り。
その両方が、脳を一方的に刺激する。
早く抜け出さないとまずい。
そう直感した。
「あ、、、あのー、、、」
「いいから少し黙って」
「あっはい、、、、、」
押し負けてしまった。
我慢するしかない。
そう考えていたのだが。
「ごめんね、もう大丈夫。」
そう言って俺から離れた。
顔を見てみると、頬が少し紅色に染まっていた。
「それで?二つ目は一体何?」
「あぁ、二つ目は、、、、、」
言いたかったが、言えなかった。
だっていきなり、お前を救う。
なんて、今の俺には言えるわけが無い。
少女のことを何も分かっていないから。
だから、俺は、それを解決させるための手段を考えた。
そして、ある手段を思いつく。
「俺と、デートしないか?」
考えただけなのだが、口からポロリとその言葉が漏れる。
「へぇー、デートか。いいね、、、、って!?」
瞬間、少女の顔が真っ赤になる。
「ちちちょっと君!?何考えてるの!?いきなりほぼ会ったことの無い人をデートに誘うなんて!?」
「ああいや違うこれは!口が滑った!誤解だぁ!」
お互いとも焦りに焦る。
しばらくして、お互いとも落ち着いた頃。
「それで、さっきので、デートのことなんだけど、、、、、」
「お、おう」
「ありがたくデートに付き合うよ。楽しいって思えるものがなくて暇だったんだ」
、、、マジか。
半ばヤケクソのプランだったが、成立してしまった。
「おう、そ、そう言って貰えて、な、何よりだよ」
緊張か恥ずかしさか。
そのせいですごくカタコトになっていた。
「それじゃあ何時にする?私はいつでもいいよ」
「じ、じゃあ、明日の午後四時、でいいか?」
「うん、いいよ。じゃあ次、どこ集合にする?」
「それは、、、、、俺の学校の校舎前でいいか?その方が学校から出て速攻で行けると思うし。あ、あとその服で来るのはやめてくれよ?」
「わかってるって、それぐらいは。じゃあ約束ね?」
「おう」
そう会釈し、時計を見る。
時刻は朝の四時。
「あ、やべそろそろ帰んなきゃ学校に遅れる、、、悪いがじゃあな!」
「うん!また明日!」
と、別れの挨拶をする。
別れ際に彼女の目に少し光が戻っていることに気づき、嬉しくなる。
そうして、自宅までの道中、並びにビルの真下では、
「やばい、、、、、人生初、女の子をデートに誘ってしまった、、、、どうすればいいんだ、、、」
「やばい、、、、、男の子に初めてデートに誘われちゃった、、、、、、どうすればいいんだろ、、、、、」
二人の少年少女が悩んでいた。
「俺、彼女のことなんも分かってないからな、、、、、、」
「私、彼のこと、全く分からないけど、、、、、」
「「どうすればいいんだよぉ!!!」」
二人同時に叫んだ。
、、、、、、、、
「ふぃいいい、、、、ただいま、、、、、」
家に着く。
、、、、女の子とデートの約束をしてしまった。
その事実が、俺を恥ずかしさの波に晒す。
「うーわ、今更ながら思ったんだが、あれ傍から見ればただの変態だよな、俺」
と、なぜか居間の電気が点いていた。
「あれ?もしかして点けっぱにしちまってたか?まあいい、後でどうせ消すし、、、、、!?」
居間に繋がる戸を開けると、そこに、琴里と令音がいた。
「あなた、勝手にフラクシナスから抜け出した挙句、精霊とデートの約束をするなんて、気は確か?下手すれば殺されてたわよ」
「悪いがこれで正気なんでね。あんな目は初めて見た。絶望一色、光が見えない。助けられる力があるなら、助けたいと思うのは至極真っ当だろ?」
「、、、、、、思考回路がどうかしてるわね。あなた」
「よく言われる」
そう会釈すると。
「行きましょう令音。こうなってしまったからには、一時的に抑止力として成り立ってもらうしかないわ。」
「確かに。今、彼女からいきなり彼を引き離すとなると、両者共に反転する恐れもあるからね。賛同しよう。」
「という事で、今回の事は不問にするわ。あなたは<ナハト>とデートを楽しんで来なさい。」
「言われなくとも楽しむぞ」
そう俺が告げると、二人とも玄関から外に出る。
「、、、、、明日、楽しみだなぁ、、、、、」
そう考えながら、二階へ上がり、自分の部屋のベッドに突っ伏す。
すると、ふっ、と何かが切れるように、俺は眠りについた。
はい、という訳で、次回は蒼と少女のデート編です。
なるべく早めに出せるよう、頑張りますので、楽しんで見ていただければ幸いです。