ハロに転生したからバナージ導くわUC   作:呼び水の主

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長らくお待たせしました。
仕事の都合で突然の引越しやら引き継ぎやらでまだまだ忙しさから抜け出せない様子ですが、ぼちぼち再開していこうと思います。


第二章 赤い彗星
#13 亡霊きたる


「……つまり、君は偶然巻き込まれてあのMSに乗り込んだだけの被害者だと。そう言うわけなんだな」

 

 もう何時間経っただろうか。バナージはネェル・アーガマの何処かにある狭い一室で、何度も何度も同じ質問を繰り返されていた。

 

「ウソだ。ただの民間人がモビルスーツを、ユニコーンを動かせるわけがない」

 

 自分を尋問しているガタイのいい男、たしかダグザとか呼ばれていたか。その横で踏ん反り返っていたもう一人の男がバナージを睨め付けた。

 

「いい加減本当の事を言ったらどうだ!バナージ・リンクス!」

 

 ダンッ!男の手が簡素な机を叩く。振動で立派に張り出た腹を震わせながら、男がどんどんヒートアップしていく。

 

「学生という身分も隠れ蓑だな?カーディアス・ビストとどんな契約を交わした?ユニコーンは《鍵》と言ったな?では、《箱》は?どこに隠した!早く答えないか!さもないと……」

 

「そこまでだ」

 

 ダグザという男の静止に、アルベルトが怯んだように呻く。

 

 しまったな……。とバナージは思った。最初にうっかり口走ったことがよくなかった。ユニコーンの中でハロに聞かされた《箱》と《鍵》の話。使い方次第で世界を転覆させるほどの力を秘めた、新たな争いの火種。それを紐解くシステムがユニコーンに搭載されているらしい。

 

 なんて迷惑な話なのだろう。父、カーディアスは何を思って災厄の《箱》の《鍵》となるユニコーンをテロリストなんかに渡そうとしたんだろう。真意を問いただそうにもインダストリアル7は既に遥か後方だ。この艦は今、月面都市に向かっているらしい。よく喋る太った尋問官にダグザが渋面を作ってこめかみをひくつかせていたのを思い出して、バナージは思わず笑ってしまった。

 

「何がおかしい!」

 

 アルベルトが激昂し拳を振り上げたあたりで、艦内にけたたましい警報が響き渡った。

 

 

 

 

 「何事か!?」

 

 副長のレイアムが発した問いに、周囲の状況把握に努めていたセンサー長のサーセル・ミツケールが応える。

 

「わかりません!索敵範囲に反応なし!」

 

 センサー長の言葉に、レイアムの眉間が鋭くなっていく。

 

「艦の被害状況は!」

 

「──こちらブリッジ。応答してください。こちらブリッジ。……ダメです。右舷第二エンジンブロック応答ありません!」

 

 ネェル・アーガマは戦闘艦であり、通常速度での航行によるデブリとの接触程度での損傷などほぼありえない。

 

「狙撃された……?」

 

 ヒヤリとした感覚がレイアムの脊椎を走り抜けた。その直後、先より大きな揺れがブリッジを揺らした。

 

「左舷スラスター群脱落!ああっ!センサーに感あり!モビルスーツと推定!後方より近づく!」

 

「もう追いつかれたのか!?」

 

 モニターにかじつくようにしていたセンサー長が、呆然とした顔でレイアムを振り返った。

 

「せ、先頭の一機は……、通常の3倍の速度で接近中!」

 

 その言葉に、艦橋が一瞬凍りつく。艦長席から帽子が落ちる音がして、レイアムは振り返った。

 

「シャ、シャアだ……、シャアの亡霊だ!」

 

 艦長席で驚愕に目を見開くオットーを責める気には、とてもではないがなれなかった。シャアの亡霊。つい先日も民間の輸送船団を護衛していたクラップ級2隻がヤツ一人の為に撃破されている。

 

 逃げ出したくなる衝動に、どこへ逃げろというのか、と自嘲してレイアムは覚悟を決めた。

 

「ぼさっとするな!第1種戦闘配置!戦闘ブリッジへ移行!オットー艦長!」

 

「な、なにか!?」

 

 たじろぐオットーに、レイアムは喝を入れるべく問いかけた。生きるか、死ぬか。艦はクルー全員一丸となって一つの生き物。我々を生かすも殺すもこの男次第なのだから。

 

「よろしいですね?」

 

「ぬぅ!そ、総員!だっ第一種戦闘配置!」

 

 オットーの一言で、ブリッジが慌ただしく動き出した。

 

(今日で死ぬかもしれない)

 

 誰も声に出さずとも、みんなそう思っているだろう。軍人になってから、何度も覚えた嫌な感覚だ。だからこそ、ここで竦んでしまう者は誰一人としていない。どんなに相手が強大であろうと。

 

(今日も生き残ってやる)

 

 いまこの瞬間、ブリッジの心は一つだった。

 

「だ、誰か!私の帽子知らないか!?」

 

 ──艦長以外は。

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