ハロに転生したからバナージ導くわUC   作:呼び水の主

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#3 もしかして:サイコフレーム

 ビーム・マシンガンを乱射しながら一つ目の巨人がブースターの尾を引いて飛ぶ。ジオンのザクを彷彿とさせるその機体は、ネオ・ジオンのギラ・ドーガに代わる量産機であるギラ・ズールである。

 

 もはや1テロ組織でしかないネオ・ジオンの懐事情で、新型の量産機とは全く不可解ではあるが、同時に理解の及ぶことでもあった。

 

 独立を勝ち取る。敵に居なくなってもらっては困る。戦争は儲かる。三者三様の思惑が絡み合い人類は未だ終わらない戦争に身を投じ続けている。

 

 多少なりとも政治をかじった身としては、理解はできても納得の出来ないことである。1パイロットとして戦場に生きる、リディ・マーセナスとしては。

 

「今更新型なんて持ち出してさ……!」

 

 巡航形態の機体を滑らせて宇宙を駆ける。機体下部にマウントされたビームライフルが火を吹き、極少出力に設定されたビーム粒子が敵機の脚部関節を射抜いた。

 

『コロニーが近過ぎる!接近戦で片付ける!』

 

 有翼の隊長機ともう一機がサーベルを奔らせて急加速した。ミノフスキー粒子が散布されて間もないこの宙域で接敵したからには、敵の母艦に自分達の存在が知れたのは明白であった。

 

『宇宙は、スペースノイドのもんだ……!』

 

 だから敵の無線を拾ってしまうこともあるし、味方の断末魔を聞いてしまうことにもなる。

 

『うぁぁぁあ!?』

 

 二機の連携は巧みだった。自分達は独立機動艦隊ロンド・ベルの所属である。シャアの反乱では最も前線で活躍した実力派集団である。それをギラ・ズールはビーム・マシンガンによる弾幕とハンドグレネードによる時間差攻撃で連携を崩し、先行した一機を接近戦で仕留めた。

 流れるような仕草だった。まるで吸い込まれるようにコックピットにビームが突き立ち、そして。

 

『よくも!』

 

 間も無くして、隊長機のサーベルが敵機のコックピットを焼いた。リディは肉の焼ける音と敵パイロットの断末魔を聞いた気がしたが、辺りはミノフスキー粒子の海で満たされて、無線はとっくに物言わぬ機械と化していた。静かになった宇宙で、自機であるリゼルのエンジンの唸り声だけがリディの鼓膜を震わせていた。

 

「ハァ……ハァ……くそっ」

 

『ロメオ8、作戦行動中だ。自分が堕とされるぞ』

 

 ゴン、という音に続いて、接触回線が隊長機の声を運んでくる。

 

「ノーム隊長……」

 

『結果を出せ。そうすれば誰も親の七光りとは言わん』

 

声は硬く厳かだったが、隊長機のグリーンのバイザーが自分を気遣っているような気がして、リディは平静を取り戻した。

 

「了解」

 

『それでいい』

 

 どこへ行っても付いて回るのは、議員の息子という肩書きだった。日々シミュレーターに籠もっていたのは、いつか来る今日という日に自分の存在証明を打ち建てるためだ。一人の男として、周りに認めさせてやるためだ。マーセナスの名前は関係ない。自分は軍人で、パイロットで、ただのリディなのだから。

 

 

 

 

「アッ!アッ!アッ!バナージッ!ヤメロッ!ヤメロッ!」

 

 工作室に合成音声の嬌声が鳴り響いている。同室の生徒たちの視線が凄まじい。バナージは滝汗を流しながらかつてない程の集中力と速度でハロのボディを分解していた。そうでもなければこの部屋の雰囲気に耐えられないというのが1番の理由なのは考えるまでもないことである。

 

「バ、バナージ。これ電源切った方がいいんじゃね?漏電も怖いしさ」

 

「絶縁シート噛ませてるから大丈夫だよ。それに故障箇所をリアルタイムで確認できるから……」

 

 隣に座るタクヤが同じく滝汗を流しながらバナージに助言するが、バナージは「これが一番速いから……」と返すばかりである。そう言われてはタクヤも反論できない。早々にここから退散したいのはタクヤも同じなのだが、これでもバナージの親友を自称する身である。なまじ付き合うと言った手前、自分だけ退室するのは気が引けた。

 

「アッ!アッ!ソコッ!」

 

 宇宙でのプチモビ運転の授業後に訪れた展示室で、突然人間のような声で話し出したハロ。ハロの音声出力装置なら確かに人間そっくりの合成音声を出すことは可能である。しかしバナージはそんなプログラムを組んだ覚えはないし、この丸みを帯びた、可愛らしいとも言える球体から人間の声が出てくるのが非常にミスマッチ(大変気持ち悪い)だったので、騒ぎ立てるこの玉野郎を速攻で工作室に連れ込んだ(意味深)のである。

 

 ハロの嬌声にドン引く周囲の視線にも慣れてきた頃、ハロの中枢部に学校でも習ったことのない金属が埋め込まれているのを見つけた。淡く発光しているようにも見えるそれは、容易に触れることすら躊躇われた。

 

「ん〜、何かの触媒、か?ウチの学校で習ったことのないモンが市販品に使われてるのって妙じゃね?」

 

 タクヤの言も肯ける。アナハイム工専では市販品に関する知識は基礎知識として初年度から叩き込まれるからだ。自社・他社を問わずである。そんな自分達が知らないというのだから、よっぽど勉学をサボっていたか(真面目に取り組んでいたと言い切る自信はない)、もしくは未知の金属である可能性が高い。

 

 意を決して、未知の金属に絶縁グローブ越しにそっと触れてみると、僅かに温かいような気がする。そして、

 

(──逃げろ!)

 

「!?」

 

 バナージは電流が走ったかのようにその金属からパッと手を離した。

 

「だ、大丈夫か!?バナージ!感電か!?」

 

「ち、違う……。頭に直接、声が」

 

 訝しむタクヤになんと説明しようかと口を開けた瞬間、コロニー全体を揺らしたんじゃないかと思えるような大きな地震が工作室を震わせた。続けて壁にヒビがはしる。メキメキ、ミシミシという嫌な音が建物全体から響いている。

 

「な、なんだよ……!?」

 

「タクヤ!外に出よう!ここは危ない!」

 

 タクヤとバナージはハロの部品を持っていたカバンに突っ込んで、校舎を飛び出した。

 

「アブナイ、ニゲロ!アブナイ、ニゲロ!」

 

 学校を飛び出した二人を待っていたのは、地獄だった。瓦礫と赤い染みがブチ撒かれた、かつて学校だったもの。戦史に見る一年戦争が生み出したかのような破壊と暴力の跡。初めて嗅いだ何かが焼けたような臭いが、自分の躯にまとわりつていく。

 

次回「もしかして:戦争」

来週もハロと地獄に付き合ってもらう。




オードリーどこ?……ここ?

誤字報告ありがとうございます。リゼル隊長機は翼付きですので有翼と書いてます。よろしくお願いします。
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