ハロに転生したからバナージ導くわUC   作:呼び水の主

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#4 もしかして:戦争

『搬入中断!搬入中断!』

 

『RX-0を渡すな!ウルフ隊は陣形を組め!』

 

 港湾ブロックにドッキングしている緑の貨物船が間も無く見えてきた、という頃。モビルスーツトレーラーを守るように随伴していたビスト財団の機体に向けて、突如として複数のビームが襲い掛かった。それらをシールドで弾きながら、護衛部隊の隊長機は無線に怒鳴りつけた。

 

「こちらウルフ1!管制室どうなっている!?」

 

『粒子ビーム!?連邦軍か!』

 

 僚機のバイザーが閉じていく隔壁の向こう側に緑と青の機体群を捉えていた。

 

「ザッ…を許可す…!各…、応…せよ!』

 

「ちっ、ミノフスキー粒子かい!」

 

 それも戦闘濃度だ。かつての大戦を生き抜いた身としては、懐かしいものではあるが。

 

 分厚い隔壁をみるみる押し破って、連邦の機体が雪崩飲んでくる。どこか見慣れたそのバイザー顔を撃つ日がくるとは。しかし、今の自分はビスト財団──否、カーディアス・ビストに恩を受けた一人の男だ。

 

「呼び鈴がうるせぇってんだよ……!」

 

 機体の双眸を瞬かせ、白銀の守護者達は己の主の為に戦いを開始した。

 

 

 

 

 インダストリアル7、未だ建造途中にあるこのコロニーの港口は、混迷を極めていた。ミノフスキー濃度が急激に上昇し通信機は意味をなさない。

 

 そんな中でも、ビスト財団子飼いの私兵が操る白い重モビルスーツ5機がハンドサインを駆使して巧みに陣形を組んでいるのには感心するばかりである。かなり練度の高い部隊であることが窺える。その内の一機、隊長機と思わしきガンダムヘッドを眺めながら、マリーダには見せられんな、と男はどこか緊張感のない感想を抱いていた。

 

「嗅ぎ付けられたな」

 

「くそっ、やっぱり嵌められたんだ!」

 

 コロニーから間一髪逃げおおせ、どうにか辿り着いた母艦の艦長席にどっかりと腰を下ろして、売られた訳では無さそうだったがな、と独りごちる。カーディアスなる人物は筋を通す男と思えた。ならば、間が悪かったということなのだろう。頬についた仲間の血を拭いながら、ジンネマンは決断を下した。

 

「マリーダはいつでも出られるようにしておけ。ガランシェールはコロニーから離脱する」

 

「箱はどうするんです?」

 

 操艦席に座る人の良さそうな顔がこちらを振り返って尋ねた。

 

「得体の知れんモノにこれ以上命をくれてやる必要はない」

 

 ちげぇねえや、というフラストの言葉を聞き流して、ジンネマンは号令をかけた。船のエンジンが唸り声を上げ、緑色の巨躯がゆっくりと前進を始めた。

 

「ガランシェール、発進!」

 

 

 

 

 その少女は、どこか浮世離れした存在感を放っていた。人目を引く美貌もさることながら、その気品のある立ち振る舞いが、より一層彼女の存在を見る者に印象付けるのである。

 

 少女の名を、ミネバ・ラオ・ザビという。かつてのジオン公国が遺した亡国の姫の名である。そんな立場の人間がなぜ辺境に近いコロニーにいるのか。身分を偽って一般民衆として生きているにしては、彼女は目立ち過ぎていた。

 

「はぁ……はぁ……何処かしら、ここ……?」

 

 彼女は方向音痴であった。無理もない。出歩く時は必ずお付きの者がいたし、歩き回れる場所は限られていた。街を出歩くという経験自体、彼女にとっては物語の中でしか知らない冒険に等しいものだったのである。であるから期待半分不安半分──否、使命感に満ち溢れた気持ちで居城と呼ぶべきパラオを抜け出し、ここまでやってきた。ちなみにここが何処かはわからない。

 

 彼女はやたらと高い隠密技能を発揮しガランシェールに密航。連邦からはテロリスト呼ばわりとは言え、乗組員は一応軍属である。それらの目を掻い潜り忍び込むのだから、なんらかの「素質」はあるのかもしれないが、本人にとってはどうでもよいことだった。

 

 己には為すべきことがある。ビスト財団の当主と直接面会し、ラプラスの箱をネオ・ジオンに渡すことを阻止するのだ。開かれれば連邦の支配を覆すという触れ込みで持ちかけられた今回の取引は、八方塞がりで四面楚歌、閉塞感に喘いでいた彼らにとって願ってもない都合の良い話だった。

 

 今更戦争なんて、と思う。父も、母も戦争で死んだという。そしてハマーンも。身近な人間はみんな戦争が奪ってきた。ミネバはジオンの姫として相応の教育を受けてきたし、そこに様々な譲れない主義主張があったことは十分に理解しているつもりである。

 

 しかし、やはり年相応の彼女個人の視点で、大切な人を失ってきた少女の視点で見てしまえば、箱はただただ迷惑な存在でしかなかった。

 

 ネオ・ジオンは行き場を失った憎しみの受け皿なのだ。テロ組織と呼ばれようとも、受け皿が無ければ待っているのは無秩序な暴走である。それを統率し、いずれは自然消滅させる。それを導くのが、自分の生涯の役割だと、彼女は密かに覚悟を決めているのである。

 

 よし!と気合を入れ直して足を踏み出したミネバだったが、すぐに立ち止まってしまった。

 

「コロニーの重力なら、慣れているはずだけれど……」

 

 パラオからここまで、備蓄されていた戦闘糧食を口にしたくらいで、ロクな食事も休息も取っていないのであるから、掛かる負担は相応に大きかったようだ。

 

 そんな彼女が立ち往生していたのは、商業ブロックにほど近い学園ブロックであった。年のほど近い者達から好奇の目線に晒されながらも、ミネバはとても感慨深い気持ちになっていた。自分と同じ歳の人間など、身の周りにはほとんどいなかったのだから、当然である。

 

 首をもたげつつある好奇心を必死に押し殺し、目的地である工業ブロック(の反対側)へと再び足を踏み出したのと、コロニー全体を揺るがす大地震が発生したのはほとんど同時であった。

 

「な、なにっ?きゃぁぁぁぁぁ!」

 

 周囲の建造物があっという間に耐震強度の限界値を迎え、倒壊していく。ミネバの姿が瓦礫の山に消えたのは、それから間もなくのことだった。




ちょっとポンコツ成分入ってる姫様
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