これを二章にする予定でしたがやめたことで短くなりました。
「ふふふっ…いいお天気ね。日向ぼっこでもしたい気分だわ」
「えーと、フランドールさん?」
「何?どうかしたの?」
確実にどうかしてしまったのはフランのほうである。
前世の記憶だとフランは無邪気で姉と同じく一応太陽光に弱い。
さらに「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」を持ち、好戦的で狂気じみた性格だったはずだ。
しかし目の前にいる少女フランはおしとやかで日向ぼっこが大好き。
しかも能力も結構変わっており、「太陽光を操る程度の能力」も手に入れ、しまいにはめちゃくちゃいい子である。
そしてそんな綺麗なフランに、僕は今、お茶に誘われたのである。
どうしてこうなった…………?
▽
時は三時間前………
「ルーミア……そろそろ食料が尽きてきたよ…」
お腹の減った僕はルーミアにそう告げた。
「私もお腹空いたー!でも食べるものなくない?」
その通りである。一応妖精と妖怪は人間よりしぶといので、少しくらい何も食べなくても大丈夫だが、前世の引きずりもあって、さすがに毎日何か食べたかった。
気持ち悪くなるほどにお腹が空いた僕は、
「この近くに、ご飯がありそうなところはあるかな…?」
と、ルーミアに聞いてみる。
ルーミアは少し考え、思い出したのかその場所の名前を僕に告げた。
「紅魔館は?くれるかわかんないけど」
「よし………今は昼だから主は寝ているはず」
紅魔館の前まで来た僕は、既に潜入することを考えていた。
ちなみに今回はお腹は空いてても大丈夫そうなルーミアは留守番である。
面識があるうえに仲がいいのかも分からない。
正面から貰いに行っても良かったのだが、普通に追い返されそうだったので、潜入することにした。
正直ここのメイド、十六夜咲夜は怖い。僕は弾幕も撃てない(撃ち方を知らない)ので、対抗手段はほぼないだろう。能力を使って眠くなっても嫌だ。
結論的に、咲夜さんに見つかったら終わりである。
「よーし………行くぞ」
意を決して門の前に立つ。相変わらず門番の美鈴は寝ている。
「いや、でもここで門を開けたら咲夜さんに気づかれる可能性があるなぁ。飛んでいくか」
飛んでも危ない気がするなんてツッコミはいらない。
よし…裏庭に着いた。
ここまで来れば、とりあえず一安心だ。この時間に誰かに出くわすことは
「…………誰?」
即見つかった。
まずい。メイド妖精くらいなら撒けるか……?
恐る恐る振り返ると、そこにいたのは、レミリアによく似た服、特徴的な翼…悪魔の妹・フランドール・スカーレットだった。
一番ヤバイ存在に遭遇した。これは弾幕不可避である。
「私はフランドール。あなたはだあれ?」
「えーーっと、僕は通りすがりの妖精です………弾幕は後ででいいですか?」
「弾幕はいいわ。お茶しましょ?」
「…………え?」
そして今に至る。
▽
フランのことについては本人に全て聞いた。赤い妖精…メルバに色々変えられてしまったこと、祭りに行けることになったこと、この姿には期限があるらしいこと…
聞けば聞くほどそのメルバという妖精の意図が分からない。この間霧の湖を襲ったやつと同じであるだろうから、余計分からない。
「妹様、お元気にお過ごしですか……あら?そちらの方は……」
突然後ろからひ人の気配がした。この話し方は恐らく……
「咲夜さん……」
口に出てしまった。
「……私とは初対面のはずですが……なぜ名前を?」
「えっと……フランさんから……」
見苦しい言い訳だった。頼む。フラン、察してくれ。
フランは何も言わなかった。良かった……。
「なるほど。妹様からですか。それでは、改めまして、私は十六夜咲夜。紅魔館のメイドです」
とても礼儀正しく名乗った咲夜さん。その姿は美しい通り越して神々しいまであった。
「ボクはクシーです。フランさんにさっき出会って話していたんです」
僕も名乗った。さすがに潜入してきたことは言えない。
「そうですか。何かあれば私に申してくださいね」
「あ、ありがとうごさいます。今は特に………」
ぐぎゅるるるるるーー…
盛大に僕のお腹が鳴った。
「あら。何か食べるものをお持ちしましょうか?」
フランと咲夜さんに腹の音を聞かれたのは恥ずかしいが、状況は好都合である。
とりあえずお願いすることにした。
「ありがとうごさいます……やっぱり食べ物はいいですね……癒される……」
「喜んでいただけて良かったです」
「いえいえ。外に出ていたのも食料探しだったので、助かりました」
この際食料のことは全部話そう。
「この食べ物……ボクの友達に持っていってもいいですかね?今食糧難で」
「ええ。それは大丈夫ですよ」
良かったー。侵入者に厳しい咲夜さんVSのミッションは、フランと出会ったおかげで戦わず済んだ。
僕とフランがくつろいでいると、上から声がした。
「あら。今日は客がいたのね。」
彼女は幼くもカリスマ性溢れる、紅魔館の主…レミリア・スカーレットである。
「初めまして。私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主よ」
「はい。ボクはクシーと言います。よろしくお願いします、レミリアさん」
ここの人はみんな礼儀正しい。レミリアもちゃんとカリスマであった。
「さて、せっかく来てくれたのだから、お話でもしましょうか」
▽
一時間後……
そろそろ日が暮れるので、僕はルーミアのもとに帰ることにした。
門の前で咲夜さんとレミリア、そしてフランに見送られながらである。
と、レミリアが突然僕に告げる。
「あなたの『運命』覗かせて貰ったわ。あなたになら、少しの間託しても良さそうね」
そしてレミリアはフランの頭を撫で、
「フランにこの幻想郷の各地を教えてあげて欲しいの。簡単に行って少しの間、フランを預かっててくれるかしら。」
それは唐突すぎて、返答が一拍遅れた。
「……え、フランさんを?」
「そうよ。今のフランは四六時中活動できるわ。それと私と咲夜にもやることがあるのよ。だから、フランを預かっててくれないかしら」
レミリアが初めて出会った僕にフランを頼むなんて、らしくない気がした。それとも、僕がフランに危害を加えないとあの短時間で察したのだろうか。過去の記憶、運命を見られた可能性はあるが。
でも、そんな重い頼みなら断るわけが無い。
「わかりました。しばらくフランを託されました」
「ええ、お願いね」
僕とフランは、笑顔でレミリアと咲夜と別れた。
「良かったのですか、レミリア様」
「あの子は……恐らく、本気で信用できるわ。そう思える『運命』だったのよ」
フラン編おわり。
さーて、第二章の内容どうしようかなー?
良ければキャラ出演リクエストとかお願いしたい。
活動報告からお願いします!
それでは、また!