「ふぅ…お疲れ様オクト、ナイスショットだったぜ」
「アァ…ローラーモ…ヨカッタワヨ…」
ローラーと色々あった後、最初は茹で上がったままだったけど、相手のトルネードを直撃したのがいい刺激だったのか、すっかり元通りに。
「そういえばローラーさん、1つ聞きたい事があるんですけど…」
「茹で上がっていた事に関しては聞かないでくれ…」
「あっはい」
「そんじゃ、今日は解散って事で」
「お疲れ…」
現在時刻は10時半、流行の街ハイカラシティも徐々に賑わい始め、イカ達の姿も増えてきていた。
このハイカラシティに、14 15の歳になりたての若者たちが大勢来るのにも理由がある。
日々ナワバリバトルに明け暮れ、流行に敏感なイカ達は、この街にあるファッションビルに足を運び、常に最新のファッションを模索しているのだ。
そのファッションビルの名は「ブイヤベース」
ブイヤベースは4つの異なる店が連なり、それぞれの店にイカとは違う海洋生物が店員をしている。
ブキ屋である「カンブリアームズ」を除く3つの店舗の品は日替わりで品が入れ替わっていき、もし今日このギアを買わなかったら二度と買えないかも知れない。
イカ達は期間限定や時限的な商品に弱く、イカによってはそのギアを持っているだけでステータスになる程らしい。
そんなイカ達の中には、珍しいギアがあればそのイカから無理矢理奪うようなやつもたまにいるらしい。
簡単に言えばヤンキーのカツアゲのような事をする不良イカもこの世界にはいるようだ。
(まぁ、私のも非売品だから何時狙われるか分かんないだけどね…)
そう思いながらもヒラメが丘団地に向かっていると、何やら路地裏から何やら騒がしい。
何かあったんだろうかと、バトル道場近くの橋から覗いてみると、3人の不良らしい服装のイカ達が行き止まりで立ち止まっている1人のイカに迫っていた。
話をすればなんとやら、どうやらこれがギアを奪っているヤンキーらしい。
それなら被害者のイカは何を着ているのかを見てみる。
紫の生地に緑色の和風な模様が描かれた和服に、靴は普通の下駄、そして頭には将軍が被るような兜を身に付けていた。
「おら、酷い目に遭いたくないないならその珍しいギアをさっさと寄越すんだな!」
「3対1でかなうわけないんだからさっさと渡しちゃいなよw」
「それでも嫌なら、気絶するまで相手してやって身ぐるみ全部奪ってやるけどな」
(これはマズイ…私ですら見た事のない服装してる…こんなギア攻略本には載ってなかったわよ…)
そんな事を考えていると、ヤンキーが徐々に詰めていき、追い詰められたイカは後退り出来なくなってしまった。
「俺達は優しいからな、スリーカウントしてやるから、それまでにどうするか決めてもらおうか」
そしてヤンキーの1人が無情にもスリーカウントを始めるが、追い詰められたイカは顔を下げたまま動かない。
「さ〜ん…に〜…いーち……」
「ヤメタラ…ドウカシラ…ミットモナイ…」
私は思わず橋から飛び降り、めんどくさい事に手を出してしまった。
「あぁ?なんか言ったかこの野郎…」
「ミットモナイ…聞コエナカッタ…カシラ?」
「っ!テメェ…どうやらコイツと同じように痛い目に逢いたいらしいな…」
「あーあ…エリートを怒らしちゃったよ」
「これは2人とも終わったw」
エリートと呼ばれている1人のボーイがラピッドブラスターエリートを取り出し
「お前のギアも見た事ねぇ物ばかりだからな…お前のギアを身ぐるみ剥がしてやる…」
そして銃口をこちらに向けると、赤く茹で上がったような顔をしながらトリガーに指を掛けた。
そんな時だった。
「ナワバリバトルの試合を、イカ共3人に申し込む」
終始無言だったイカがいきなり声を出したのだ。
「な!?」
あまりの唐突さに、エリートが持っていたラピッドブラスターの銃口をイカに向けると、イカはホクサイを肩に背負いながらエリートの元へと歩いて行く。
「イカ達の間ではナワバリバトルが流行っているようじゃないか。それならお前ら3人に対してオレとその部下、後ろに居るガールのチームで勝負するのはどうだ?」
「ほぉ…俺達に勝負を仕掛けるとはな…いい度胸してんじゃねぇか…それなら、俺達が勝ったらお前らのギアを全部寄越せ」
「良いだろう、もしも俺達が勝ったら……そこのガールの言う事に従うことだな」
そう言いながら私に指を刺すと、エリートは「決まりだ」と言いながらブキをしまい始め、
「今夜20時、ネギトロ炭鉱に来い。もし怖気付いて逃げるようなことをしたら…覚悟しろよ」
と言って、仲間のイカ2人を連れて何処かへ去って行った。
「……ナントカ…去ッテ行ッタ…アナタ…大丈夫カシラ…?」
ヤンキー3人が去って行くのを見て溜め息をすると、追い詰められていたイカの心配をすると、さっきのように普通に話し始めた。
「あぁ…あんなイカ共、イカソーメンにしてやっても良かったが、あの状況なら穏便にことを進められなかったからな…借りができたな、イカのガール…いや…」
すると、ズレていた帽子を直すように兜を動かし、濁らせた言葉を言い直すように再び話し始めると、予想だにしていなかった返事が返ってきたのだった。
「我ラオクタリアンノ突撃兵、タコゾネスヨ…」
動かした兜から髪が生えてきたと思ったら、生えてきたのはイカ足ではなく、赤紫のタコ足だった。
しかしそんな事は気にしてはいなかった。
私はあのイカ…いや、イカの姿をした何かが私に話した言葉に気を取られたのだった。
「何故……アナタガ『タコノ言葉』ヲ話セルンダ…!」
あまりに急な出来事で、イカの言葉ではなく、タコの言葉で話してしまうと、私の言葉が通じるように返事をしてきたのだった。
「ギギ…簡単ナ事ダ……何故ナラコノオレガ…オクタリアンヲ束ネル者デアリ、イカノ世界カラオオデンチナマズヲ奪ッタ張本人デアル、DJタコワサ将軍ダカラダ…!」
時が過ぎてお昼時、私はコンビニで買ったお昼ご飯をデカライン高架下でナワバリバトルをしてるイカ達を眺めながら食べていた…隣にいるラスボスと共に…
正確に言えば、コンビニで(ラスボスに奢ってもらって)買ったお昼ご飯である。
「ソレニシテモ…ドウシテ将軍様ガイカノ居ル地上世界ニ居ルノデスカ…?」
「ソレヲ言ウナラオ前モドウシテコンナ地上ニ居ルノダ、タコゾネスヨ」
「私ノ事ハオクトデイイデスヨ、ソレニツイテハカクカクシカジカデシテネ…敵情視察トデモ思ッテオイテクダサイ」
そう言いながらフルーツサンドを口の中に頬張ると、タコワサ将軍はベンチにもたれかかりながら答えた。
「オレモ最初ハタダノ敵情視察ダッタ…オオデンチナマズヲ奪ワレテイテ、一体イカ達ハドンナ状況ニナッテイルカヲ確認シニナ…」
「アッ……」
私はその時点で何となく察してしまった。
「古来ヨリ貴重ナエネルギー源トシテ重宝サレテキタオオデンチナマズヲ奪ッタノニモ関ワラズ、何ノ関心モ抱カナイデナワバリバトルヲシテイル…ナンデ今マデアンナイカ達ニ負ケテキタノカ、疑問ニ思ッテナ…」
「100年前ノイカ達トハ違ウノデスヨ…今ノ若イイカ達ニハタコノ存在ガ忘レサラレテイマスカラネ…」
「ナルホド、ダカラアンナ調子ニ乗ッタイカ達ガイルノカ……ソレナラ、俄然アノイカ共ヲ完封ナキマデニ叩キ潰ス気ニナルッテモノダ。腑抜ケタイカ共ニオ灸ヲ据エテヤラントナ」
そう言って食べていたおにぎりを全て食べると、ベンチから立ち上がった。
「オクトヨ、今カラネギトロ炭鉱ニ向カウゾ。アイツラヲ二度トナワバリバトルヲ出来ナイ体ニシテヤル」
「ワ…ワカリマシタ……」
急いでサンドイッチを食べ終えると、将軍の後を追い掛けて行った。
「サテ、部下ニハ既ニネギトロ炭鉱ニ来ルヨウニ伝エテオイタ。即興ノチームニナルガ大丈夫ダロウナ?」
「エェ…ソレハ大丈夫デスケド、将軍様ハネギトロ炭鉱ノ場所ッテ分カルンデスカ?」
「マァナ、昼ノネギトロ炭鉱ニ来ルノハ久シブリダガナ…」
「昼ノ?ソノ言イ方ダト、夜ニハ良ク来テルミタイナ意味ニ聞コエマスケド…」
「アァ、ソノ通リダガ?」
この時私は思い出してしまった…大ナワバリバトルが終わった後も、ネギトロ炭鉱への立ち入り禁止が続いている理由を…
続く
いやはや…まさか新年になっても、新作発表されても投稿出来ないとは…
今まで待ってくださった読者様、大変お待たせしました。
これからもダイナモ並に執筆スピードが遅いですが、気ままに待っていただけると幸いです。