騎士王の影武者   作:sabu

69 / 122
 
 2021/8/20-追記-

 花水樹様より歪み果てたクラレントのイラストを貰いました。
 
【挿絵表示】

 また同じく、前話のマーリンとルーナの語り合いの風景のイラストを貰いました。まだクラレントが息をしていた頃……
 
【挿絵表示】

 


滅びの流伝
第66話 いずれ誉れ高き雪花の盾


 

 

 

 

 昔の夢を見た。

 

 この世界の何もかもが無色に見えていた……筈の頃。

 あらゆるモノに冷めた思考をしていて、しかしそれが一瞬で崩れ去り、己を追い詰めるように武者修行をし始めようとする前の日。

 やはりこの世界はどうあっても醜いモノだと理解しながら、しかしそれでも失われない希望と笑顔があるのだと気付き始めた時。

 あの、血塗られながら人々の希望であり続けた、浄化される前の雪花の盾に出会う前の話。

 

 

 

「…………なんだあれ」

 

 

 

 キャメロットに繋がる街道を歩いていると、道に沿う様に流れる川の先にて膨らむ湖の中に何か目を引く物があった。

 湖の中央にてその場で鎮座している大岩。巨大な大理石の岩。

 湖が浅瀬であるのもあってか、川の流れに呑み込まれるという感覚もなく、地面から露出したハンノキの根っこに挟まっているのもあって動きそうにない。

 

 しかし、それだけなら珍しい自然の一部として流せただろう。

 だが、その大理石には余りにも目を引く物があった。自然では絶対にあり得ない異物から目を離せない。

 

 

 そこにあったのは、大理石の岩に突き刺さった——端麗な一振りの剣。

 

 

 遠目から一眼見ただけで分かる。アレは聖剣や魔剣と呼ばれる類の物であると。

 今腰に着けている、どこにでもある様な騎士剣と盾では、あの剣の前では一振りで両断されるに違いない。そんなものが、無造作に突き刺さった状態で野晒しにされているのだ。

 

 

 

「………………」

 

 

 

 川の土手に下がり、水の流れに沿って湖にまで近付く。

 近付けば近付く程分かる、その力の奔流。

 太陽や溶岩に近付くとはこういう感覚なのかもしれないと思いながら、膝下にまで浸かる浅瀬の水の冷たさが体を冷やしていった。

 

 

 そして辿り着いた湖の中心。

 

 

 すぐ目の前には、恐らく聖剣と思われる剣がある。

 黄金と純銀という、星の聖剣(エクスカリバー)白銀の王剣(クラレント)に似た美しさを持つ剣。

 しかしその熱量は太陽の聖剣(ガラティーン)に良く似ていて、しかも湖の聖剣(アロンダイト)のような流麗さと底しれなさを持っていた。

 もしかしたら、この聖剣は魔剣としての属性すら持っているのかもしれない。

 思わず生唾を呑み込んでしまうのを抑えられなかった。

 

 

 しかし、次の瞬間にはその後ろ向きな感情を捩じ伏せる。

 

 

 瞳を閉じ、呼吸を整え、それでもう心は落ち着いた。

 好奇心や興味というよりも、なんでこんな物騒な物が野晒しにされて居るんだという意識を以って、その剣に手をかける。

 

 

 

「…………ッ」

 

 

 

 刹那、その剣から溢れる光と炎。

 目を開けているのすら難しい程の光量が剣から周囲へと走り、油に火種を垂らして広がるかのように、炎の波紋が周辺へと伝わって湖を瞬時に蒸発させていく。

 そして、その炎は無論自分すらも包んでいて———

 

 

 

「—————ッは………ッはぁ……」

 

 

 

 思わず剣を離して呼吸を乱した。

 先程の光の熱量はなかった。慌てて自らの体を確認するが自らの体も燃えていないし、周りを見渡しても湖は蒸発などしていない。辺りは静寂のままだった。

 幻覚か……精神に作用する魔剣か…………もしくはそれ程の力を秘めた聖剣か。

 

 

 

「………………」

 

 

 

 岩から一歩引いて、その剣と岩を睨む。

 そして今更になって気付く。大理石の岩には言葉が刻まれていた。

 

 

 

「『この剣を引き抜けるのはこの世で最高の騎士のみ』……か」 

 

 

 

 呟いて、一体何をと意識が冷める。

 自分がこの世で最高の騎士だと傲る訳ではない。自らに流れる血故に自らは選ばれた者だと考える事も出来るが、その考えは愚かだ。

 そうじゃない。

 この剣は選ばれし者が抜けるのではなく、抜いた者は選ばれし者であると後天的に召し上げる為の、体の良い御旗なのだ。

 

 

 

「選定の剣と言い、適当な岩に聖遺物を突き刺すのが好きなんですか? 貴方は」

 

 

 

 責めるような口調で問いながら後ろを向く。

 振り向いて、視界に映るのは流れるように小さく吹く風と——舞い散る花びら。

 花びらに隠れて、川辺の先に消える誰かの人影がある。

 それは最上級の繊維で編まれたローブで、その後ろ姿は陽射しを透かして虹色に淡く輝く長髪を鼻歌交じりに靡かせていた人物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢から目を覚まし、ギャラハッドの視界に映ったのは茶色の天幕だった。

 体を起こして周りを見渡せば、同じく湖のサー・ランスロットの下に就く同僚の騎士達がいる。しかし立場上同僚なだけで全員が歳上だ。そもそも自分より歳下の騎士はローマとの会戦を控えているこの軍隊にはたった一人しかいない。

 いや、ブリテン島全員の騎士を含めてもたった一人か。もしかしたら世界を含めてもただ一人かもしれない。

 

 

 

「……………………」

 

 

 

 ギャラハッドは立ち上がって、騎士達の簡易宿所となっている天幕から出る。

 空を見上げれば、空は薄墨に染まっていた。黎明か黄昏か。恐らく黎明だろう。こんな早くに目覚める騎士は少ない。

 

 

 

「まさかアレを夢に見るとは……」

 

 

 

 余り気分が良くなる夢ではなかった。

 恐らく花の魔術師に初めて目をつけられた日の事。

 いや、最初に目をつけられたのは、あのキャメロットの花の庭園だから、捕捉されたのがあの日という事だろう。

 

 

 空を見ながら、そっと腰に携える騎士剣に触れた。

 

 

 触れればすぐに分かる、魔力の流れ。力というそのものの蠢き。今は鞘で覆い隠して外套で封印しているから傍目には良く分からないだろうが、手に触れればこの剣が円卓の騎士達の聖剣すら超えかねない魔剣である事が分かるだろう。

 

 いや、今は聖剣か。

 あの日あの後引き抜いた聖剣であり魔剣。

 この剣を使う気はなかったし、今もこの剣を鞘から抜いた事はない。

 他者を圧倒する力を既に持っている以上、誰かを殺戮する為の剣はギャラハッドには要らない。故に抜かない。

 ただこの剣を放って置いていて、他者の誰かに渡ったら危険だからと持っているだけだ。

 

 そもそもこの剣を使える気がしなかった。

 自分が得意とする魔力防御だって、あの雪花の盾から魔力を引き出しているお陰であり、騎士王やあの少女のような攻撃をする為の魔力はないのだ。

 湖の加護はあれど、生命としての格に大きな差がある。それに自分はどちらかと言うと技量系である。

 

 

 

「はぁ…………」

 

 

 

 ………と、色々言い訳するが、雪花の盾を手に入れるまで役に立った事に変わりはなく、この剣がなかったら危ない場面は何度かあった。

 何だかマーリンの手の平の上にいるみたいで嫌だ。意味深に目を向けられた事もある。

 

 しかし、それはそれとして、反抗心とこの剣を人に向けるには過剰であるというギャラハッド本来の優しさが重なって、この剣は本当に一度足りとも抜いていない。

 この剣は持っているだけで所有者を勝利に導き、そして敗北から遠ざける剣だった。

 技量が足りないなら所有者に最適な技量を与え、振り回すだけでそれが最適な斬撃となり、運命力が足りないなら運命力を引き上げる。

 鞘からこの剣を抜いたら、何人も逃れる事は出来ずに倒されるという逸話を持つのに、鞘から抜かなくてもこれだ。

 

 故にギャラハッドは鞘からこの剣を抜かず、鞘ごとこの剣を叩きつけて戦って来た。

 一度だけこの剣を抜こうと考えたのは……アイルランド島で死霊に劣勢に立たされた時だけだ。しかしそれでも抜かなかった。抜けなかった。いや、そんなのはただの言い訳——

 

 

 

「……………」

 

 

 

 あの島での嫌な事を思い出して、それを努めて考えないようにかぶりを振る。

 しかし目覚めてしまったものはしょうがない。ギャラハッドは騎士としての準備を始めた。

 

 天幕の裏に回り、自らの大盾を手に取り、甲冑や細かな武装も装着する。

 もはや疾うにその重さに慣れた己の武装。剣は無機質に軽いが、盾は実感的な重さが心地良い。剣を振るという感覚が慣れないのも少しある。

 

 ついでで朝食も簡素に済ましていく。

 誰かのを盗んだり、自分のを多めに取るという愚か者はいない。

 今この場と川を挟んだ先にいる騎士達の集団、合計1万の騎士達は、須く全てが粛正騎士隊レベルの士気と忠誠に包まれている。

 敵を殺すのに戸惑いはなく、己の手が汚れるのも厭わない、ただブリテンの勝利の為に邁進する部隊。機構そのもの。故に機構である彼ら達は無駄な感情も憂いも抱かない。

 側からこの軍を見ればいっそ恐怖すら抱けるだろう。

 

 

 何故なら……決して軍備に余裕も無駄もないからだ。

 

 

 少ない訳でも足りてない訳でもない。本当に、勝つ為だけの軍備しかない。

 水という重量が嵩む物は、ガリア地域からローマ地域までの地形と河をあり得ない精度で理解している最年少の騎士のあの子により、余り気にしていなくていい為、持ち運んで来た食料は当初の予定よりも多い。

 勿論、その食料は日持ちする堅パンや芋類。干物が大半を占めている。そして酒の類は——1つもない。一種の清涼剤になる筈の酒をだ。

 彼女の中で、士気と戦場での意識の引き締めを天秤にかけた結果なのだろう。もしくはそんな物よりも十全にしなければならない事があると考えた結果。

 

 

 だが恐ろしい事に、なんと不満を表す騎士は一人もいない。

 

 

 思わず身震いする程に士気は高かった。

 ローマ側からしたら、ブリテン島の騎士達は恐ろしい事この上ないだろう。凡そ同じ人間とは思えない殺戮者、殺人人形の集団となった1万が襲って来ているのだ。

 追い込まれた狼ほど恐ろしいモノはないと言うが、彼女は傷付いていない万全の状態でありながら、騎士達を死兵の如き存在に変貌させたのだ。

 

 以前、興奮しながら鼻息を荒くして語った、ボーメインという厨房の騎士の言う事を真髄から理解出来た気分だった。

 彼女の生き様。築き上げたモノ。魅せたモノ。身振り手振り。それら全てが彼女の声を通し、ひび割れた砂漠に水でも流しているかのように染み込んで来る。正に特級の劇物だ。一度彼女の何かに惚れ込めば、狂っていくかのように陶酔していく。理性的なまま。

 

 

 

「——————」

 

「——————」

 

 

 

 準備を終え、天幕が広がる大通りに出て、当の少女が視界に入った。

 簡易なテーブルを円卓代わりにして、己が量産した地図の一つを広げ、隣のアグラヴェイン卿とベディヴィエール卿と何かを話し合っている。

 

 この数日に見慣れた光景だ。

 彼女は円卓の騎士に主導される立場から、逆に彼女が円卓の騎士達を主導する立場へとなった。誰も不満に思わず相応しいと受け止めている。

 それが、まるでスイッチが切り替わって反転したようだと、彼らの心酔とは馴染めず、何処か冷めた考えを抱くのは自分が何かがおかしいからなのだろうか。彼女が相応しいからと分かっていても、あの光景に言い知れない違和感を感じるのはおかしいのか。

 分からない。円卓の騎士達も、それを当然の如く受け入れている。

 

 

 

「——あぁ……君も起きていたのか。早いな」

 

「……………………」

 

 

 

 目を細め、遠くのモノを眺めるような視線は瞬時に消える。

 自らに近付きながらその言葉を喋る人間。別に珍しくはない。何せ彼の部隊下にいるのだから。

 しかし、途端に雰囲気を引き締めた己の事に気付かなかったのか、もしくは血が繋がっているだけの父親も何かに意識を囚われているのか、ランスロット卿は自分と同じ虚空を見つめていた。ランスロット卿の視線の先にいる人物は——先程の己と同じ、あの少女だった。

 

 

 

「君も、あの子が気になるのかい?」

 

「あの子? 陛下に向かってあの子とは不敬の極みですねランスロット卿」

 

「ハハハ……そうだな。今のは良くなかった。今我らの上に立つ者は……卿だ。

 しかし、私にとって陛下はずっと子供のままなのだ」

 

「…………………」

 

「あぁ、いつの間にかあんな小さな子が成長したのだなと感慨に浸って、その事に空白を覚える程に動揺してしまったのだ」

 

 

 

 ギャラハッドは小さな歯軋りを抑えられなかった。

 その歯軋りは一体どんな感情を示したモノか。今の、この男の発言がイライラして仕方がない。

 

 何かもがズレていく。今更——子供の事を気にしているのかと不満気が立つ。

 直ぐに分かった。この男は重ねているのだ。この父親失格の男は、あの少女を通して、昔捨て去った息子への罪滅ぼしをしているのだ。

 

 イライラする。

 そして——この男が自分の本当の子供の事を、まだ心の何処かで思っているのだと分かるから余計にイライラする。

 

 

 

「………………」

 

「……何してるんですか?」

 

「いや、実はここ二日程睡眠を取っていなくてね」

 

「はい……?」

 

 

 

 少女から視線を外し、いきなりドサッとその場に座り込んだランスロット卿にそう問えば、彼は苦笑いしながら答えた。

 その後、バツが悪そうにしながら彼は問いを返して来た。

 

 

 

「君は、陛下が睡眠を取るところを見た事があるか?」

 

「それは…………」

 

 

 

 そう問われて、ブリテン島を発ってからの二週間を思い出す。

 あの少女が休んでいるとこを見た事がなかった。

 

 

 

「ないだろう。少なくとも私は見た事がない。横になってるところもない」

 

「…………で、貴方は陛下から隠れながらストーカーしていたという事ですか」

 

「人聞きが悪い………だがまぁ、そう言われても仕方がないか。

 それについ先程、陛下からやんわりと咎められた。"それ以上はアグラヴェイン卿にバレるぞ。今なら見逃してやるから私の背中を付け狙うのはやめろ"とな」

 

「そういう所がありますよね、ランスロット卿って。素直に聞けば良いのでは?」

 

「勿論考えたさ。しかしそれは既にベディヴィエール卿がやっていたようだ。それで返って来た言葉は何だと思う?

 "バイザーで隠しているだけで私は時々瞼を閉じている。精神統一も慣れている。僅かな時間でだ。故に卿の心配は不用でしかない。私以上に短い時間を使って効率良く休息を取れる者はいない"と、そう返って来たそうだ」

 

「それは……なんとまぁ。私達と同じ次元で括る方が正しくないと言われそうですね」

 

 

 

 最近は特にそれが顕著だ。

 人と、人ではない者。生命の格の違いはこういうところですら差をつけようとしている。

 

 

 

「君は、本当にそう思うのか」

 

「——まさか。陛下は人間だ。それ以外に何があると言うのですか。ここにいる者は須く、同じ島を故郷とする人間です」

 

 

 

 そう告げると、ランスロット卿は僅かに表情を硬直させた後、安心したように表情を和らげた。

 

 

 

「あぁそうだ——そうだとも。ここだけは絶対に思い違いをしてはいけない。陛下も、アーサー王も、同じ島を故郷として戦う人なのだ」

 

「何を今更言っているのですが。そんな事当たり前でしょう」

 

 

 

 今の言い分に思うところがあったのだろう。ランスロット卿は苦笑いをしながら答える。

 

 

 

「そうだな。私はそれを少し忘れていたようだ」

 

「はぁ、そうですか。貴方は人間以外の何かに見えているんですか?」

 

「…………そうだ。特に、陛下は」

 

 

 

 苦心を吐露するように、ランスロット卿は告げる。

 二人の間に走る僅かな静寂。二人の視線の先にいる、腕を組んで何かの思案をしている少女。

 その少女の頭の中に何が詰まっていて、それが一体何を目指しているかは分からない。

 

 ただ、彼女が示した事、成し遂げた事実だけがそこにある。

 白銀の王剣を血塗れの魔剣へと堕とし蹂躙した者。パリシウスの要塞を剣の一振りで破壊し、ローマ軍8万を一瞬で消し飛ばした者。

 騎士達を狂気的に鼓舞し、王の黒馬に乗りながら先陣を駆け、続く二射目の剣光でローマ軍を残り数千まで減らし、なんとブリテン軍の犠牲0というあり得ない戦果でパリシウスを陥落させた者。

 

 ほとんど彼女一人でローマ軍10万を殺害したのだ。

 既に、間接的なモノを除けば彼女以上に命を奪った者は居ないだろう。

 

 

 

「……………」

 

 

 

 それを成し得た人物が人間には見えないという意見も、まぁギャラハッドにも分からないでもない。ランスロット卿は他の騎士達と違い、彼女に陶酔や心酔している訳ではないと分かったから。

 だがその姿に違和感を感じるのではなく、人間に見えないと彼は恐れる。

 円卓の騎士たるランスロット卿がそれを言うのか。いや、円卓の騎士だからなのか。

 

 

 

「私は時々、あの子が怖く感じる」

 

 

 

 沈黙を破ったのはランスロット卿からだった。

 あの子と称した事は、ギャラハッドは聞かない事にした。

 

 

 

「だが……これも本来ならおかしい。私達の自業自得なのだから」

 

「は……?」

 

「私は実はな。あの子に負い目があるのだよ」

 

 

 

 項垂れ、己の両手を見つめながらランスロット卿は告げる。

 その行為が、血塗れになった己の手を見て恐怖する罪人のように見えたのは、果たしてギャラハッドの錯覚だったのだろうか。

 

 弱音を吐く父親が……しかもあの少女に向けた懺悔の感情を溢している姿が、どうしてかギャラハッドの心を揺らす。

 こういう風に弱った父親は見ていたくない。嫌いだ。ざまぁみろという昏い感情は湧かない。ただただ不愉快だった。

 

 

 

「取り返しの付かない事をした。償いようのない事を私達はした。

 だから私は恐ろしい。それが自分には相応しいのだと感じながら、私はあの子の事が恐ろしかった」

 

 

 

 許せないモノがあると少女は良く語る。

 今のこの国に生きる者なら、誰もが知るあの子の口癖。普段は感情を見せない筈の超越者じみた存在が、明確な嫌悪感を持って告げるその言葉。印象に残らない訳がない。

 

 

 

「だが……今あの子に感じているこの感情は何なのだろう。

 今でもあの子は恐ろしい。しかし、これは違う。自らにいつか訪れる宿命が恐ろしいのではない。そうだこれは、あの日あの場所で、あの子に感じたモノと同じ——私は今、何か取り返しの付かない事をしているのではないかという恐怖だ」

 

 

 

 光を見た。光に包まれた闇を見た。       

 余りにも暗く、昏い光。地より()で、天にまで昇る剣の光。

 白銀の光が、血染めの赤へと染まるその瞬間。染み出し侵食するかのように、底無しの穴のような黒が混ざった紫電の光。

 

 

 

「アレは……一体何を束ねている。

 あの黒い粒子は……あの、剣に具現化し得ずに霧散した息吹は一体何を表している………」

 

 

 

 星の光を束ねた訳でもない。栄光の束を集めた訳でもない。

 アレは決して光などではなかった。空に天高く上がる星からは程遠い、地の底で蠢く何かの波動。それが白銀の王剣を染め上げたのだ。

 

 

 

「——あの子は、一体何の担い手になっている」

 

 

 

 それがランスロットの本心だった。

 少女のカリスマに充てられても、ランスロットは考え続けた。いつの間にか、円卓の騎士達の想いも想定すらも振り切り、逸脱し、もはや円卓の騎士達では届かない地点に至り始めた彼女は。その彼女は、何かを背負っている。本来なら手にしてはいけないモノを手にしている。

 

 

 

「——で?」

 

「え………ぁあ、いや」

 

「だから、それで一体何なんですか? 結局貴方は何が言いたいんです? 陛下は何か間違えた事をしていると? というかランスロット卿は陛下の何を知っているんですか?」

 

「いや……………」

 

 

 

 途端に責めるような口調で雪花の青年が問いただして来て、ランスロット卿は困惑し、驚きながら返事をする。

 

 

 

「そうだな……君の言う通りだ。私は何も知らない」

 

「………………」

 

「これは私がブリテンを故郷としない者故の疎外感なのかもしれない。疑問に思うのだ。今のこれは果たして正しいのかと」

 

「では陛下は間違えていると言うのですか、貴方は」

 

 

 

 そうギャラハッドが返すと、ランスロットは再び少女に視線を向けた。

 秘書官アグラヴェインと、従者にして将軍のベディヴィエールとの話し合いが終わったのか、一人その場に佇む少女。

 

 

 

「君はどう思う」

 

 

 

 ランスロットは問いで返した。

 彼女の行為は、端的に云えば虐殺だ。

 それは、本来なら騎士達にとっては受け入れ難いモノである。悪を憎んで悪を為すなら、後に残るのも悪だけ。故に命のやり取りだろうと人の営みである以上、犯してはならない法と理念がある。それがブリテン島の騎士道の本懐だ。

 

 

 しかし、それでも尚、彼女は一方的にして無慈悲な虐殺を選んだ。

 

 

 残るのが悪だけであるというなら、自分を最も強大な悪として、その悪を己が担う。自ら以外の悪は残さない。一つも残さず、如何なる例外も許さず、無慈悲に殲滅する。

 あの剣光はそういうモノだった。

 

 

 

「——————…………」

 

 

 

 そして、そんな事ギャラハッドも分かっている。

 分かっているからこそ、ギャラハッドは父親の返して来た言葉に即答が出来ずに言い淀んだ。

 光を見た。その生涯を以って作り上げた光。

 泥に塗れた花のように、余りにも多くのモノで覆われて本来の色が分からなくなった、星の光を見た。

 あの光には、大地の熱量にも等しい怒りが溢れかえっている。

 ローマの会戦の前、あの時彼女はあそこに居た人間全てを含めて誰よりも冷静で騎士達を諭しながら、騎士達が誰も届かない程の震える怒りを胸に溜め込んでいた。

 

 

 故に、騎士達はその光で容易く狂う。

 

 

 本来なら受け入れられない虐殺を躊躇いなく受け入れ、彼女の在り方を賛歌した人間は騎士ではない…………その筈だ。その筈だった。

 だが、彼らは人間として堕ちながら騎士である。彼女が語ったのも、また紛れもない騎士道だったのだから。

 守る為に殺せという騎士道。虐殺しろという……騎士道。常に最悪を想定し続け、矜恃や信念を捨て去っても一番に掲げたモノは守れという騎士道。

 

 

 既に、この場にいる騎士達に理性はない。

 

 

 しかし、何処までも秩序だけはある。犯してはならない筈の法が切り替わったのだ。

 もはや今からの戦いに正義などはなく、罪の無い者すら虐殺する事を受け入れた騎士達の両腕は、罪人のように血塗れになっていくだろう。

 だが構う者はいない。己が汚れるだけ、誰かは汚れないと気付いたからだ。

 

 

 風が吹いている。

 

 

 余りにも強い風。

 今まで確かにあった筈の基盤を吹き飛ばし、強固な固定観念の悉くを破壊する風。今はまだ、この場にいる1万の騎士で済んでいる。

 ではこの精鋭達が、ローマからブリテン島へと、騎士の王の代わりとなって軍を率いた者と帰還したらどうなる。ブリテン島へと戻る時、騎士王と同じく十五歳を迎える騎士と帰還したら、一体どうなるだろうか。

 きっと、この風が更に強大となって、ブリテン島を襲うのだろう。

 

 あぁ、成る程。

 父親の言う事も分かる。その未来は恐ろしい。

 それは決して優しく柔らかな風などではないのだから。等しく全ての人に試練を与え、(ふるい)にかけるが如き暴風なのだから。

 

 

 

「君は、陛下の行いが正しいと思うか」

 

「貴方は………貴方は正しくないと言うのですか」

 

「——分からない。ただ、私は恐ろしいのだ…………」

 

 

 

 結局のところ、その言葉が全てであるのだとギャラハッドは理解した。

 父親が恐れているのは、少女と、少女が選んだ選択の行方。

 もはやこれからの戦いに正義はない。栄光もない——正しさなどはない。故に少女の行いに人としての正しさはなく、であるが故に、それは超越した騎士道の究極点。

 

 あるのは、ただ相応しいかどうかだけ。

 最後まで立ち続けた者が勝利する生存競走。敗北の代償が死へと繋がるイス取りゲーム。そしてその代償は個人では済まず、背中の罪なき大衆すらもがイス取りゲームの対価にかけられている。

 

 何たる地獄か。

 罪無き者を守る為、罪無き者を殺さなくてはならない。

 その選択に恐れを為して引けば、人として死ぬか、生命として死ぬかの二択を迫られる。

 

 

 

「そうですか。でも陛下は恐ろしくないみたいですよ」

 

「………………」

 

 

 

 そう言葉の意味をランスロットは理解した。彼女はその選択を恐れなかった。迷いなく自らの人の部分を殺す道を選んだ。

 あの少女は恐ろしい。だがそれは昔のとは違う。今は、己が恐怖する道を躊躇いなく選択して見せた"陛下"の選択が、身が竦む程に恐ろしい。その道の果てにあるモノが、ただただ怖い。

 

 いつからだろう。己も、円卓の騎士達も、騎士王ですらも、いつの間にかあの少女の背中ばかりを見るようになった。

 

 ケイ卿は滅多に告げない警告をした。絶対に目を逸らすなと。

 トリスタン卿は確信を以って言った。もはや彼女は我らでは追いつけないと。

 ベディヴィエール卿は憂いを秘めて告げた。彼女が見ているのは既に私達ではないと。

 アーサー王は最も端的かつ直球に示した。既に彼女こそが相応しいと。

 

 

 

「フ…………そうか。既に私達は遅いのだな。私達の罪は消えない。故にその責任は宙に浮かんだまま。そしてそれを背負ってしまったのがあの子だったのだ」

 

 

 

 名前を知らない少女は全ての騎士に剣を以って応えた——これが貴様らの贖いだと。

 

 

 

「…………————」

 

「なら、もう。私があの子に関わるのはやめた方が良いのかもしれない」

 

「—————————」

 

「あの子だって、既に割り切った人間が付き纏って来るのは鬱陶しいだろう」

 

 

 

 その場で俯き、項垂れ、身の程を弁えるように諦めてランスロットは告げる。

 故に、彼はその瞬間まで気付かない。

 隣の騎士が。己と同じ対象について会話していた隣の青年が——怒りの表情を浮かべていた事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

「——はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 会話には相応しくない異音。舌打ちと共に吐かれた、何をほざいているんだという怒りの言葉。それを発する者など、この場には一人しかいない。

 その音を聞いて、隣の青年を見上げて、ランスロットは気付く。

 浮かぶ怒りの表情。嫌悪感の入り混じった、本気で怒った表情と責めるような視線がランスロットの事を射抜いている。

 

 

 

「え………な、いや」

 

「いい加減にしてください。

 そこまで理解が進みながら、最後に選ぶ選択がまた逃避なのですか? 自分は身を引くべきだろうと?

 はぁ………本当に貴方は逃げるのが得意ですね。国から逃げ、息子から逃げ、騎士王の円卓の席に招かれながら未だに改善されていないとは。貴方は一体何の為に騎士王の威光を拝謁するに至ったんですか?

 次に何かの責任から逃げたら誰かに刺されますよ。既に貴方には失望していましたが、今まで向けていた僅かな信頼すら消し飛びました。最悪です」

 

「な…………は。逃げ、る………え? いや……——いや」

 

「それでも貴方は理想の騎士と謳われた、湖のサー・ランスロットなのですか? ならその責任を今からでも己が代替すると言う意思が皆無なんですか? 盾でぶん殴りますよ」

 

 

 

 困惑するランスロット卿を尻目に、ギャラハッドはブチ撒ける。

 控えめに言っても父親の発言が不愉快だった。

 少女とランスロット卿の確執は詳しくは知らない。

 しかし、天涯孤独な少女の実態や境遇を考えれば、凡その方向性は分かる。取り返しのない事をしたとこの男が語るなら、もうビンゴだ。

 それでいて、そこまで少女の事を想い、理解して、あまつさえ心の何処かで置いて来た息子と少女を重ね合わせておきながら、再び逃避と停滞の道を選んだ事に、腹が立って仕方がなかった。

 

 あぁ、本当にイライラする。

 このウジウジした姿をぶん殴りたい。中途半端な立ち位置にいる男の背中を蹴り飛ばしたい。

 でも——分かる。

 この父親の苦悩も言いたい事も分かるのだ。この男と同じ感情を共有出来た立場に立っていた事があるから。だから否応にも分かる。故に腹が立つ。これは同族嫌悪だ。

 

 

 負い目があった。

 

 

 この男が少女に負い目があるように、己自身も負い目があった。

 あの日守れなかった負い目。後ろ姿を見送った負い目。敵を斬り払う武器を持っていた筈なのに、神話に於いてその武器を抜き放った者達の宿命を恐れ、少女に責任を背負わせた負い目。

 

 だが、それはもう過去の事だ。今すべき事は懺悔などではない。

 あぁ、やはり腹が立つ。

 結局のところ、自分はこの男と同じだった。父親が国ではなく隣の人を選んだように、自分も国ではなくただ一人の人間を選ぶのだ。

 

 

 

「ランスロット卿。貴方の言い分も分かります。ですから僕はこう言いましょう。

 正しいか正しくないかなど関係ない。それでも戦うのが騎士だ。

 少なくとも陛下の選択は何よりも相応しかった。それに、正しくないからと言ってそれが間違えているとはならない。選ばない者に非難をする権利などない」

 

「………………」

 

「もし陛下が間違いの選択を選んだのなら、我らが正す。それまでは、陛下の責任を僕達が我らが代替する。それがせめてもの行いな筈だ。

 しかし貴方にそういう気概はないんですね。最低です。ですが——僕は貴方とは違う。僕は絶対に逃げないので」

 

 

 

 そう告げて、その場の父親を置き去りにしてギャラハッドは背を向けて歩き出す。

 

 

 

「待て……! 待つんだ待ちなさい! まさか——まさか君は………ギャラハ——」

 

「その名で呼ばないでください。不愉快です——お父さん」

 

 

 

 年齢。歳不相応な実力。ランスロット卿にだけ当たりが強いその性格。

 考えれば思い至るモノが確かにある筈なのに、今更かと、ギャラハッドは僅かに振り返って無表情のまま告げた。

 返される言葉で、今まで側にいた青年が誰であったのかを完全に理解して惚ける父親を無視して、ギャラハッドは歩を進める。

 

 心の中で、あぁ遂にやってしまった。これから父親との関係が面倒になりそうだ。と僅かに後悔しながらしかしもう遅い事だと決心をする。

 だがきっとこれで良い。今までの意趣返しと、自分はあの父親とは違うのだという反抗心だ。

 それに、これで追い立てた父親と、ランスロット卿との因縁を割り切った少女との確執が互いに僅かにでも改善されるならこの程度の事は別に安い。

 

 

 

「——先輩」

 

 

 

 少女の後ろ姿に、信頼と距離感に測り倦ねていたが故の呼び名……だったモノを告げる。

 その言葉に、彼女は疑いなく当たり前のように振り返った。

 花咲き乱れる白亜の城の庭にて最初に見た時から、見た目は成長しながら、精神は何処までも不変のままだった少女。

 穢れを誰よりも纏いながら腐り果てる事はなかった、泥の中に咲く白い花の様な少女。黒い薔薇の様に見える少女。

 

 

 

「ん……なんだどうした。私に何か用が…………いや待て、その呼び方はやめろ。それに今は陛下と呼べ」

 

「すみません先輩。一つ貴方に告げなければならない事があります」

 

「………はぁ……あのな、あんまり私は言いたくない、というか本当に私からは言いたくないんだが、私は円卓の騎士で、お前は立場上普通の騎士だ。

 今は周りに誰も居ないから良いし私も気にしないが、それを普段からやられたらお前が周りからどう思われるか——」

 

「あそこにランスロット卿がいるでしょう? 見えますか?」

 

 

 

 返される呼び名が治らないその事に不満気を表す少女の言葉を遮り、ギャラハッドは言葉を続ける。

 黄昏の光景で交わされた、騎士王と彼自身しか知らない、その願いを成就させる為に。

 

 

 

「あそこで動揺しながら惚けている、二日に渡って先輩の尻を追いかけ回していた最低の穀潰しが——僕の父親です」

 

 

 

 その言葉に少女が硬直するのが分かった。

 しかし止まらない。というか止まれない。

 今までそれなりに作り上げて来た関係とか立場とかが色々と木っ端微塵になるだろうし、何なら今自分自身、心の何処かで何やってるんだお前と自制心が叫んでいるが、あの男のように停滞するよりかはずっと良い。

 

 責任を取らなかった男とは違うから。

 これが自分自身の誓いだから。

 そうしないと、そもそも自分は——ずっと隣合えないのだから。

 

 

 

「ですからすみませんが、あの父親と同じ部隊から外して、貴方直属の近衛にして貰えないでしょうか。

 きっとこれからの戦い、僕と二人になるとあの男が機能しなくなります。

 それに貴方の足手纏いにはなりません。こと防御と受け流しに関しては円卓最強すら置き去りに出来ますので」

 

 

 

 背後で茫然としたままの父親と、口を僅かに開いたまま硬直する少女を置き去りにして、ギャラハッドは告げた。

 忌々しき名前だとしても隠してはいたくない、ただ一人の少女に向けて。

 嘘偽りもない、自らの本当の名前を。

 

 

 

「それと騙していて申し訳ありません。ガリアというのは僕の偽名です。

 ですのでこれから僕の事は——どうか、ギャラハッドと、そうお呼びください」

 

 

 

 ……え……? と完全に素を晒して言葉を溢した少女の姿が印象的だった。 

 

 

 

 


 

 

 

 

 灼熱耀う不敗の剣(■■■・■■■)

 

 ランク B (本来ならEX)

 

 種別  対人宝具

 

 詳細

 

 

 聖騎士ギャラハッドが生涯に於いて唯一手にした二つの剣。その一振り目。

 またその生涯で、彼が一度しか鞘から引き抜かなかったとされる聖剣、もしくは魔剣。

 

 その実体は、光輝く剣という存在を確立した、世界に存在する魔剣や聖剣の原典の一つ。

 戦神ヌァザが保有する4つの財宝の内の一つ、不敗の剣と同一視される神造兵器、もしくは神剣。その名前は■■■・■■■

 ただし■■■・■■■という武器は光り輝く剣という存在そのものを指す言葉であり、クー・フーリンが扱った光輝く剣の別名のように、神話に於いてこの剣は複数本存在する。

 

 その為、この剣も本物の神剣■■■・■■■ではなく、マーリンが発見した神話より流れた■■■・■■■と呼ばれた剣に、本物の名前と概念を付与した宝剣の一つ。

 ただし贋作の一振りであっても■■■・■■■である事に変わりはなく、円卓の騎士達が保有する聖剣と負けず劣らずの力を保有する魔剣であり聖剣。

 

 

 "この不敗の剣は一度抜かれれば何人も逃れる事は出来ずに倒される"

 

 

 という伝承の通り、この剣の真価は鞘から抜いた時にある。

 が、その代償も大きく、自らの魔力を加速させその力を示す円卓の騎士達の聖剣と違い、この剣は所有者の力が足りてなかろうと無理矢理力を引き出し、担い手が誰で在ろうと効果を示し、文字通り所有者を"不敗"の存在にさせる。勝利ではなく不敗。故に剣を振り抜いた後の生死は一切関与されない。

 

 

 しかしそれは、人類が使う事を想定していない本物の神剣の場合。

 

 

 マーリンによる贋作のこの魔剣は、同じ概念と名前故に同質の性質を保有はしているものの、かなり規模を縮小したスケールダウンの物であり、同時に封印拘束も掛けられている為人類で在ろうと比較的簡単に使用する事が可能である。

 

 しかしそれでも、ギャラハッドはこの剣をまだ鞘から抜いて使った事がない。

 鞘に納めてその真価を封印し、不敗の剣という概念保護を使用するに止めている。

 

 所有者に無窮の武練(対人) Dを付与。幸運のランクに+を付与。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。