騎士王の影武者   作:sabu

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 マーリンが星だとするなら。
 彼女はその星を撃ち落とした人である。

 落ちた星が人だとするなら。
 彼は星の見方が分からぬ傍観者である。
 


第82話 故に剪定に誓いはなく 前編

 

 

 

 彼女が眠りに落ちるのを見届けた後、マーリンはその場に残ったままだった。

 一応念の為の見張り——ではない。もっと単純に、その場から動けなかった。もしもマーリンが彼女の夢を覗き込もうとしたり、その場から離れて一人にでもなろう瞬間、恐らく槍でも降り注いでいたかもしれない。

 

 

 

「——今更になってから人のフリでも?」

 

「うわぁ、辛辣だなぁ」

 

 

 

 マーリンの在り方を容赦なく貫くその言葉に対しても、彼自身は何処吹く風のように返しながら、内心マーリンは冷や汗を隠し切れなかった。

 音もなく風もなく——突如キャメロットの庭園に現れたモルガン。

 鴉による使い魔ではない。実体としてモルガンはこの場所に現れている。

 この瞬間、このタイミングで彼女に接触して来たという事実が、マーリンには恐ろしかった。

 

 

 

「何だい。彼女を取り返しに来たのかい」

 

「だからそうやって、針鼠のように周囲を威嚇して彼女を守っていると。

 執着心を自覚した傍観者め」

 

「いや別に。そう言うんじゃないさ。傍観を続けていたキミが今になって出て来たのが怖いだけ」

 

 

 

 自分自身では認めないだろうが、モルガンは撤退するのが極めて上手い。

 幾度となくアーサー王を邪魔しながら、ただの一度もアーサー王が捕捉出来なかったと言う事実。屈辱を味わいながらも、必ず目的を果たすと言わんばかりの執念を以って、モルガンは時に逃げ延びながらアーサー王へと立ち塞がって来た。

 決して玉砕を選ばなかったその魔女が、単独でキャメロットに潜入するなどという玉砕じみた行動をして来たのだ。

 

 

 

「…………」

 

「フン、何もかもがどうでも良い。興味もない。勿論マーリン、お前も」

 

 

 

 鼻で笑い、マーリンの事を冷たく見下ろした後、モルガンは彼女の下に近付いた。

 キャメロットの事はもう、至極どうでも良い。故に玉砕などではない。過去の己のように、何かに取り憑かれたこの国の騎士、民——アルトリアの事だ。ことを成した後、再び戻る事など容易いのだ。

 

 静かに眠る彼女を一瞬だけ見守った後、モルガンは新たなバイザーを彼女の横の地面にそっと置いた。幻惑はもう意味がないからと、今度は聖剣の一撃すら耐え切れる程の、強固な仮面を。

 

 

 

「……………」

 

 

 

 彼女は、モルガンは自制していると思っていたが、モルガンは特に何も自制していなかった。

 ただ、時が来るタイミングを、今までのようにじっと見計らっているだけだった。この白亜の壁を破壊してでも、彼女を掬い上げるその時を。

 成長した彼女の姿を充分な程に見届けた後、モルガンは踵を返す。

 

 

 

「おや。連れ帰ったりはしないんだ」

 

「……………」

 

 

 

 モルガンは立ち去る足を止める。

 

 

 

「囚われの姫を助ける白馬の王子様。

 なんて立ち回りをするのかと思ったのに」

 

「お前に語る言の葉などない」

 

 

 

 振り返る事なく、モルガンはその言葉でマーリンの言葉を封殺した。

 人の感情を真似、そして消費しているだけのマーリンに、感情を使う事そのものが無駄だとモルガンは断じていた。マーリンを相手に相互理解など無駄である。マーリンにとって、社会の常識は守っていた方が良いルールでしかない。

 何故そうした方が良いのか分からないが、そうした方が良いと人が言うからそうしよう。テーブルマナーの意味を知らず、ただそうする必要があるから行動しているだけのように。

 

 ——だからマーリン。お前はアルトリアの白馬の王子様にはなれないのでしょう?

 その言葉を、モルガンは心の中だけで、嘲笑うように呟いた。

 

 

 

「マーリン。お前に対し、今の内に宣戦布告をしておきましょう」

 

 

 

 故にモルガンは端的に告げた。

 マーリンを相手にするなら、テーブルマナーを語るように、行動に対する対価を決めるだけで良い。理解など要らない。言葉を許さず断じる。故に先程の嘲りすらマーリンには必要ない。それがモルガンの、マーリンに対する決定だった。

 

 

 

「もしもお前が、彼女から安らぎを奪うなら。彼女が望まない安寧すら奪い取るなら」

 

 

 

 たとえマーリンが、人が世に生きる限り消えない夢魔であろうとも。

 たとえマーリンが、老いず死ぬ事もない、半ば不老不死の存在でも。

 

 

 

「必ずお前を殺す」

 

 

 

 やはり振り返る事なく、モルガンはその場から立ち去っていった。

 その後ろ姿を、マーリンはいつに無く冷や汗をかき、苦笑いしながら見送るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………ん……」

 

 

 

 目覚めた時には、もう太陽が真上にあった。

 時間が巻き戻った、なんて事ではないだろう。ただあのまま夜まで眠り、夜が明けて真昼間になったという事。半日以上も眠っていたのか。こんなに眠っていたのは多分初めてだと思う。

 

 

 体を起こして、頭を振る。

 

 

 まだ頭が完全に覚醒していない。

 浅い呼吸を整えながら、毎朝の動作として額に装着しているバイザーを確認する。

 そうして——右手が空振った。

 

 

 

「……………………」

 

 

 

 そうだ。バイザーは既に壊されている。

 あぁ慣れない。私の素顔が晒されているという事に凄まじい違和感がする。

 隠したい私の表情。鏡で自分の顔を見たくなくなったのはいつからだっただろうか。

 

 

 

「気になるんだ、やっぱり」

 

 

 

 真上を見上げれば、マーリンが私を覗き込んでいた。

 

 

 

「それはそうに決まっているだろう。私が片時も離さず着けていたんだ。自分の素顔が衆目に晒されている事に違和感しかしない」

 

 

 

 彼女の影武者をやっていた時のように、獅子の兜を被って頭全体を覆いたい。もしくは黒い竜を象ったような、嵐の王としてあるあの兜か。

 

 

 

「それにあれは…………モルガンから貰った物だった」

 

 

 

 無くしてから気付く。

 あの仮面は私の素顔を隠してくれる以外にも、私の精神を安定させているのに役立っていた。まるで今の私は、お気に入りの毛布を手放してしまって安堵出来ない子供のようだ。

 

 

 

「あれ………これは」

 

 

 

 そうして、ようやく気付いた。

 体を起こした時、すぐ側に——いつも私が着けていたバイザーが地面に置かれていた。

 

 

 

「これは、どうして」

 

「あー……………」

 

「まさか……マーリン?」

 

「あぁぁーーーー……………」

 

 

 

 私が眠っている間にマーリンが作ってくれたのか。

 そう言う意味の視線を込めて、彼の方を向く。彼は何故か、私から思いっきり視線を逸らしながら唸っていた。

 

 

 

「まぁ………うんそう! 実はそれボクが作った物なんだ! 褒めてくれても良いんだよ!」

 

 

 

 照れ隠しか、ヤケになったようにマーリンは言う。

 これは……私の事を案じてマーリンが作ってくれた物……思わずおぉと驚嘆の声を漏らして、マーリンから貰ったバイザーを改めてマジマジと見る。私が普段から着けていたバイザーと全く同じ形だ。

 しかし、同じ形をしているだけで幻惑の効果はない。もう国中に知れ渡ってしまった以上、今更幻惑をかけてもという事だろう。

 

 額に装着した違和感は全くなかった。

 ——軽い。だと言うのに、本当に強固な感覚がする。これはかなり優れた物なのではないか。しかも黒鍵の刀身のように、半霊体。半実体。魔力の有無で霧散するし、再び現れる。つまりサーヴァントの武装みたいな事が出来るという事だった。

 マーリンはあまり道具作成の適性がないような気がしていたが………いや、恐らく選定の剣にも関与した彼の事だ。呪文は噛むから得意じゃないなんて言うように、道具作成に関しても凄まじい域に達してるのだろう。

 

 本当に凄いなマーリン。

 彼の態度もあってか思わず、笑みが溢れる。

 

 

 

「ありがとう。本当に、凄い助かる」

 

「あぁ、うん………褒めてくれるのは良いんだけど、少し手加減してくれても良いかなぁ……」

 

 

 

 私の賛美にそう返しながら、マーリンは再び目を逸らす。

 何なんだ一体。別に過剰でも何でもない、純粋にして直球の褒め言葉だった。何が悪いというのか。やはりマーリンは、捻くれた言葉以外に対する耐性がない純情だとでも言うのか。

 いや………もしかしたら本当にそうかもしれない。マーリンは美しいものが好きだから、捻くれた人間の純粋な言葉に弱い可能性がある。

 

 が、そんな(よこしま)な考えは口には出さなかった。

 単純に、このバイザーを作ってくれた事が、私は嬉しかった。

 

 

 

「うん。凄い。全然違和感がない。本当に落ち着く」

 

「………キミって、もしかして自分の顔が嫌いなの?」

 

 

 

 違和感の無さと、完璧な造形に私が感銘していると、ふとマーリンがそう聞いて来た。

 

 

 

「いや…………どうなんだろう。分からない。この顔は嫌いじゃない事だけは……確かだ」

 

 

 

 自分の顔。生まれた時から、私はこの顔。

 でも、この顔は他人の者。

 嫌いでは…………ない。自分ではない何かに塗り潰されていく恐怖とかはないから。最初から私は偽物だったなんて言う、恐怖は湧く。

 

 

 

 

「そうか。ごめんね変な事を聞いて」

 

「いや、別に」

 

「それともう一つ。キミを憂鬱にさせるようで申し訳ないが、円卓会議が始まった」

 

「—————……………そうか、分かった」

 

 

 

 遂にか。まぁ……当たり前だ。

 そもそも本来なら、私が起きた昨日の内にやっていなくてはおかしいのだ。温情を貰ったという事だろう。

 

 

 

「そこまで気にしなくていいと思うよ。

 少なくとも、キミがブリテンから追放される事だけはないと保証しよう」

 

 

 

 絞首台に近付くような足取りの中、マーリンは私の後ろ姿にそう告げて来た。

 マーリンからの後ろ立てか。一体どんな腹積もりなのだろう。多分信頼しても良いとは思う。

 

 

 

「分かった。ありがとう」

 

「いやいや、礼を言われる程じゃない」

 

「何をまさか。私はマーリンを信頼している」

 

 

 

 振り返らずマーリンに言い残して、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「信頼している、か」

 

 

 

 少女の後ろ姿を見送りながら、マーリンは小さく呟いた。

 鼻唄交じりに爽やかな笑みを浮かべるマーリンには、あまり相応しくない真剣な声で、そして噛み締めるような、風に紛れて消えてしまうような声。

 無論、あの少女には届いていない。ふとマーリンから溢れただけの言葉だ。

 

 

 

「信頼している、だってさキャスパリーグ」

 

 

 

 マーリンは足元に視線を向ける。

 そこにはマーリンの使い魔、キャスパリーグが駆け寄って来ていた。

 彼女が離れると途端に姿を現す『比較』の獣。彼女が近くにいると全速力で逃げ出す、美しいモノの近くでしか生きていけない生き物。

 

 

 

「どうしてだろうね。もう一つ、出来てしまった」

 

 

 

 もう、作る気はなかったというのに。

 もう、見届けなければならない責任を負う気なんてなかったのに。

 

 

 

「フォ」

 

「人間としての視点を得れて良かったな、だって?

 ………いやぁ、これはキツいよ、うん、本当に」

 

 

 

 世界を見通す眼。

 マーリンより更に古い世界に生きた者には、過去すらも見通せた者。未来すらも見通せた者もいた。

 識る事が魔術の基本にして最奥だと言うなら、彼ら千里眼の魔術師達は生まれながらにして真理に到達している。してしまっている。

 

 それは人間として生まれながら、人間としての価値観を得られない異端者。

 きっと、自らの眼を封印した者もいるだろう。

 そう確信する程に、マーリンは疎外感を感じて来た。種として疎外感。一人だけが人類社会に於ける異物なんだという感覚。

 生まれながらに全てが見える神の視点がどれ程につまらないものなのか。

 そんな愚痴を言える同胞がいれば話は別だったかもしれないが、ここは神代が終わりを迎える土地、ブリテン。

 いっそ自ら命を断ち切り霊体として座に上がって、先達に笑い飛ばしてでも貰おうか。なんて思った事もあった。

 

 しかしそれをしなかったのは、ひとえにマーリンは人という種族が好きだったからだ。夢魔という人間の精神に寄生する生き物からすれば、いっそ不自然な程。

 

 同胞である妖精や精霊、神秘の存在ではなく、人類に肩入れした。

 人間にとって良き時代を作る為、多くの王を育て、補佐した。

 常に笑顔を絶やさず、人の営みを楽しみ、花のような統治を目指した。

 

 

 でも、そこには人間への愛情はない。個人への執着もない。

 

 

 好青年に映るのは、マーリンがそう言う風に自分を定めているから。有り体に言えば演技しているから。分かる人には分かるだろう。マーリンの異端的な思考形式を。

 美しいモノは好きだが、その好きに理由はない。キレイなモノは楽しいが、その楽しいに意義はない。

 半分は人間だったからか、その形が偶然マーリンという存在の胸の空洞にピッタリと嵌ったから良しとしているだけ。

 本当にそれだけ。

 何で美しいのか理解できないのに、ただキレイだと感じている。

 

 人間の(のこ)した結果。

 千里眼を持つマーリンからすれば、人類の遺した絵。その絵がキレイに見えた。だから好きだった。

 だがその絵を遺した人間達も、その内容も、絵が作り上がるまでの悲哀や慟哭も全部興味はなかったし、共感も出来なかった。

 

 マーリン自身、その嗜好を酷いものだと理解してはいる。が、その生き方を変えられなかった。

 元より夢魔とはそう言う生き物。

 夢の内容より、その夢の栄養価だけを評価する生物。

 

 人間の食事と全く何も変わらない。

 ただそれが、マーリンという種族の在り方では、人類から忌避されてしまうというだけで。

 半分人間だったからなのか、バッドエンドという悪夢を栄養とする事が、何か嫌だなという理由で受け付けられなかっただけで。

 

 

 そう言う点で言えば、マーリンとキャスパリーグは似ていると言える。

 

 

 発生経緯から生き方、その在り方まで。

 美しいモノしかない環境でしか生きて行けないモノ同士。美しくないものには、酷い評価しか下せないモノ同士。

 

 

 ——だからマーリンにとって、あの少女はどうしようもない程に天敵だった。

 

 

 それはマーリンという存在を大きく揺らがす程。

 罪無き者とは即ち、地上に於いて自分だけを指すかもしれないと思う程に、罪の意識すらなかった存在を、罪人に変えてしまった程。

 人間という存在から一つ超越している非人間を——人間に堕とす程には、天敵だった。

 

 一体いつからだろう。

 ただ重ね合わせていただけの影を、影として見れなくなって来たのは。

 

 一体いつからだろう。

 投影先の鏡像として関わり始めただけの少女にも、執着し始めていたのは。

 

 罪悪感なんて感情は分からない。——じゃあこの、胸にぽっかりと穴が空いたような感覚は何なのか。

 執着心なんて感情は分からない。——じゃあこの、一輪の花を枯らしてしまったような喪失感は何なのか。

 

 

 上手く語れない。二度目だと言うのに、言葉に表す事が出来ない。

 

 

 一回目は、人間を愛せなかった自分が長い間求め続けて、一生手に入らないと思っていた輝きを、自分の手で壊していってる事に気付いた。

 二回目は、人間に執着出来なかった自分がようやく気付いて、何とかしたいと思っていた輝きを、自分の手では元に戻せない事に気付いた。

 

 

 

「…………まいったな。どうしてこうアルトリアと言い、あの少女と言い、このヒトデナシのボクに対してほぼ無条件の信頼を寄せて来るんだか。まだ真っ向からぶん殴られた方が痛くない」

 

 

 

 強がりながら、マーリンは大樹を背に腰を下ろす。

 空を見上げれば、そのまま世界の全てが見える。ブリテンという島の中の、騎士達や人々の営みが見える。それは、いつの間にかマーリンが思い描いていた結果とは遠い形となった国だ。

 

 本当ならとっくの昔に滅んでいるのを、何とかここまで持ち堪えた国。

 いや、もう滅んでいる。後百年持ち堪えたところで、この島の歴史に大した影響はないくらいには、どうしようもなく滅んでいる。

 この国は、マーリンが作り上げた物語だった。そして同時に、終わり際を明らかに間違えた御伽噺。非人間の魔術師が、人間だった者を人間ではないモノに変えて、作り上げた話でもある。

 先王ウーサーから始まり、アルトリアに続き、そして——あの少女できっとようやく終わる騎士達のお話。

 それが巡り巡って、誰にも行き先が分からなくなった運命の果てに…………ブリテンを滅ぼさんと顕現した卑王の力を受け継ぐ者が、最後を飾る。これが因果なのだろう、きっと。

 

 先王にして父ウーサーから裏切られた魔女が偶然掬い上げ、騎士王アルトリアによって倒された卑王ヴォーティガーンを心臓に納めた少女。ブリテンの最後を飾り、終幕を降ろすにはきっと相応しい。

 

 あの少女自身が、必ず何かの相応しい存在に成り変わり続けるのもそういうモノなのだろう。

 彼女が望む望まないにしろ、彼女の起源の名の下に、受け継いた力の礎故に、少女はブリテンを終わりに引き寄せる。

 いっそ、モルガンのように振り切れて大いに荒れるというのが、彼女にとってすれば楽だろうと思う。

 まぁあの少女はしないのだろうが。と言うかあの少女がもし振り切れたら、モルガン以上になりそうではあるが、さてそれは誰にも分からない。

 

 

 

「まあうん——」

 

 

 

 罪悪感を込めて、最後に口にする。

 だってマーリンは——

 

 

 

「ごめんね」

 

 

 

 ——あの少女ではなくアルトリアを選んだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 円卓の間に辿り着いた時、場が凍った。

 冷たい風が入り込んだ訳ではないというのに、円卓の間を開けた瞬間に体が小さく震えた。あぁ嫌だなぁ、という感覚がしてならない。

 

 

 どうやら円卓の間に着いたのは、私が最後だったようだ。

 

 

 私以外の全員が座っている。

 一週間近く眠っていた間にも、私を省いて会議はあったのだろう。空席となったトリスタン卿の第七席にはガレスが座っている。

 残る空席は、パーシヴァル卿の二席。パロミデス卿の九席。後は私の十三席。つまり、今いる全員がいる。ギャラハッドは、居ない。

 

 

 

「————————ッ」

 

「モードレッド、鎮まれ」

 

 

 

 私が円卓の間に現れた事に反応してか、モードレッド卿が席を吹き飛ばす程の勢いで立ち上がった。

 アーサー王から嗜められても、モードレッド卿は座らず私を睨んでいる。

 いや………正確には彼女が私を睨んでいるかどうかは、彼女の赤い兜で分からない。彼女が一体何の感情で私を見ているのかも。

 

 

 

「モードレッド」

 

「……………、…………」

 

「彼……いや、彼女を断罪する為の会議ではない」

 

 

 

 再三の言葉にもモードレッド卿は座らない。

 何かを堪えるような、抑えるような様子で、円卓に置いている手は肩から震えている。

 

 

 

「いいえ、私に問題があります。気にしなくて構いません」

 

「————————」

 

 

 

 諫めるようにアーサー王に告げた言葉だったが——全くの逆効果になったようだった。

 私の発言に対して、モードレッド卿はおろか、円卓の間にいるほとんど全員がざわつくか、反応を示した。

 正確には、私の発言の内容ではなく………声質か。

 それはそうだ。今も私に幻惑はかかってない。歳相応の少女の声である。これで半信半疑だった者も、私が男ではなく女性と気付いた訳だ。

 

 

 

「ルーク。それは? 貴方のその仮面は、ギャラハッドに壊された筈では」

 

「マーリンから、代わりの物と。

 この状況では、あまり意味はなかったかもしれませんが」

 

 

 

 アーサー王に続ける私の言葉に、更に円卓の間はざわついていく。

 普段から変わらぬ口調のまま、声だけは少女の物にしか聞こえないのだ。私を信頼していた人程、私と良く会話していた人程違和感は凄まじいだろう。

 

 

 

「…………それで、どうするのです。私はこの会議で自分をどうするのか知りません」

 

「変わらない。当初の予定通り、次代の王をここで決める」

 

 

 

 深い溜息。

 本当に進めるのかという呆れと、自分を落ち着かせる為の深呼吸。

 緊張には強いタイプだと思っていたが、今の私はどうやらそうじゃないらしい。ドクン、ドクンという鼓動の音がする。

 

 

 

「……本当にやるのですか? 私はブリテン追放。なんとかギリギリ免れても円卓追放だと思っていました」

 

「だから卿は、第十三席に座らないと?」

 

「そう言う意思の表れでもありますが、この惨状で今から私が自分の席に座って、じゃあはい会議を始めましょうとはならないでしょう」

 

「確かにそうだが、そうか。貴方は円卓を降りる気でいるのか」

 

 

 

 彼女の視線が私と交差する。

 かと言って私も怯めない。そもそもここで怯むなら、お前は今まで何をしていたと自分に問いをかける必要が出て来る。

 

 交差する視線。

 ふっ、と視線の圧力が消えて、彼女は口を開く。

 

 

 

「なら、このまま会議を始めよう。議題は最初から提示している」

 

「次代の王を…………再選定すると?」

 

「えぇ」

 

 

 

 すると、アーサー王は席から立ち上がり、ベルトで腰に携えていた剣を外し、鞘ごと取り出す。

 勿論その剣を——私は見覚えがある。実際この目で見るのは初めてだが、その特徴的な形を見間違う訳がない。

 青に金の、黄金の刀身。

 煌びやかな鞘に収まっている刀身からその波光は見えなくとも、その剣が聖剣としての力を秘めている事は分かる。

 

 もう一振りの、勝利を約束する聖剣。

 黄金の剣。選定の剣。勝利すべき黄金の剣(カリバーン)。本当なら永久に失われた筈の、幻想の剣。それが彼女の手に握られていた。

 

 

 

「下がれ」

 

 

 

 言葉と同時に、彼女は杖で地面を叩くようにカリバーンを地面に突き立てる。

 鞘に入った刀身。コンッと言う、木材と金属がぶつかり合う甲高い音。

 すると、広間の中央にあった円卓が光の粒子となって消えていく。

 

 神秘的な光景だった。

 まさか、円卓には実体はないのか……………いや、キャメロットは半分以上が土妖精が作り上げた物。それに円卓の作成にはマーリンが一枚噛んでいる。城塞都市に本来の神秘を取り戻した聖剣の主であるアルトリアなら、こういう事も出来るのだろう。

 

 遠き未来の、聖盾の少女の盾のような消え方みたいだ、なんて考えているとアルトリアは再び選定の剣を杖代わりに地面を叩く。

 すると、円卓のあった場所の中央に現れたのは——剣を突き刺せるくらいの穴が空いた大理石。実物を見た事のない私でも分かる。アレは、選定の剣が突き刺さっていた大理石だ。

 ざわつく周囲の騎士。

 私が生まれる一年前。十六年前に行われた選定が、再び行われようとしている事を理解する。

 一人だけ平静のまま、アルトリアは選定の剣を鞘から抜き、そして広間中央の台座に剣を突き刺した。

 

 

 

「この剣は血よりも確かな王の剣。王として相応しい者にしか抜けぬ光の聖剣」

 

「貴方が、貴方がまた抜けば良いでしょう」

 

「そうだな。確かに私はこの剣を抜ける。抜けるだけだ」

 

 

 

 剣の柄に手をかけ、彼女は言う。

 

 

 

「今の私がこの剣を握っても、この聖剣が輝く事はない。

 過去、私が一つの村を自らの手で犠牲にして以来、この剣が光を示す事はなくなった」

 

「…………………」

 

 

 

 台座に突き刺さった選定の剣には、輝きがなかった。

 黄金に輝く刀身に光はなく、ただの騎士剣同様の銀色。金属としての光沢を出すだけの刃。担い手を久しく失っている影響なのか、刀身の中央に刻まれた妖精文字は、少し………掠れている。

 

 

 

「ここ円卓には、元々一国の領主だった者や、国を預かるに相応しき者もいるだろう。私を順に剣に手をかけ、そして抜くと良い」

 

 

 

 ブリテンという国の頂点者達が集まる円卓。

 その者達なら、当然この剣に手をかける資格はある。十六年前に、一度国中の騎士達を選定したのだ。なら今回は、円卓の騎士達だけが選定の儀式を行えば良いという事だろう。

 

 

 だが、彼女の発言は明らかにある意図がある。

 

 

 円卓の席順から手をかける。

 私が、最後。

 

 

 

「なぁ。こんなバカみたいな事やめにしようぜ」

 

 

 

 一人、一人と席からとりあえずはと立ち上がる騎士達。

 そして円卓と同じく消えていく席。

 しかし、第三席のケイ卿が席から立ち上がらない。第二席のパーシヴァル卿が居ない以上、第三席の彼が剣に手をかけるべきだと言うのに、ケイ卿は軽薄な口調で喋り始める。

 

 

 

「次代の王の選定? 馬鹿らしい。どう考えてもコイツに剣を引き抜かせる為の都合の良い儀式だ。気持ち悪い。また繰り返すのかよ」

 

「違う。繰り返さぬ為に、再び選定を行う。ただそれだけです」

 

「これでか?

 ………何を一体。主君の綺麗さを神秘的だと崇めて祀り上げたように、今度はその強大さに陶酔しているだけの者が都合の良く祀り上げるだけだ。

 何も変わらない。どうせ上手くいっている時だけ認められる仮初めの王でしかない」

 

 

 

 断言するような口調。

 だが同時に、私も知る。ケイ卿は、名高い円卓の騎士がひしめくこの広間の中で誰もこの選定の剣を引き抜けないと確信している事。

 しかし唯一………私だけが例外であると考えている事を。

 

 

 

「ならば、貴方はここでやめると? これで諦めると?

 ならサー・ケイ。貴方はここで辞退するのだな?」

 

「……………フン」

 

「では、剣に手をかけなくても構わない。

 貴方は十六年前も、そうやって剣に手を触れませんでしたね」

 

「……………—————チッ」

 

 

 

 彼女の言葉が何かの琴線に触れたのか、ケイ卿は顔を顰めて、途端に歩き出して選定の剣に手をかけた。

 消える席。足音をたて、王に相応しい者なら力を込めずとも抜けるだろうとケイ卿は片手を剣の柄にかける。だがびくともしない。筋肉の動きから真上に力をかけていると分かるが、剣は僅かにも動かず、刀身が岩とぶつかり合う金属音すらもしない。

 

 

 

「あぁ抜けなかったな。オレには王の資格がないって事だ」

 

「では、次」

 

「は? これを続ける意味はあるか?

 そもそも次代の王を選ぶ必要はない。十六年前は先王の死に卑王が異民族を島に招き入れたから致し方なしとは言え、今はもうその前提はない。

 魔王は消え去った。聖剣の加護を受け、民には抗いようのない悪の象徴を倒す王はもう必要ない。王に頼り切る必要はない。何の意味がある」

 

「ケイ、控えよ」

 

「…………」

 

「ベディヴィエール。貴方は大丈夫か?」

 

 

 

 ケイ卿の言葉をアルトリアは考慮しない。

 第四席、ベディヴィエール。

 普段と同じ軽装な騎士甲冑姿だが、右肩を守る為のプレートはなくなっており、そして………右腕の甲冑はない。右腕がないからだ。

 でも………良かった。

 どうやら、こうして円卓の席に座って話しあえるくらいには回復してくれているのだ。

 

 

 

「いえ、私は。

 そもそも抜けたとしても、私に民はついて来ないでしょう」

 

「片腕の話なら貴公が憚る事はない。が………この話は今はやめよう。では次、ガウェイン」

 

 

 

 第五席、ガウェイン。

 アーサー王の甥に当たる彼。刷り込まれた知識や前提の状態がなければ、アーサー王の右腕として、アーサー王に次ぐ者として、彼なら選定の剣を引き抜けるんじゃないかと期待するかもしれない。

 

 ガウェイン卿は無言で歩みを進め、一瞬私を見た後選定の剣に手をかけた。

 だが、抜けない。ケイ卿と同じく数mmも動かず、選定の剣は不動のまま圧力を放っていた。

 この剣に挑むのは、大地を動かすのと同じくらい無謀なんじゃないかと思えて来る。突き刺さった剣からは、岩と擦れ合う音すらもしないのだから。

 

 

 

「ほら見ろ。誰にも抜けない」

 

 

 

 ガウェイン卿の姿に、壁を背に預けて佇むケイ卿が語る。

 

 

 

「最初から出来レースだったんだ、選定の剣は。

 何が血よりも確かな王の証なのか。最初は名前を伏せていただけで、結局選定の剣を引き抜いたのは、先王ウーサーの血を引き継いだ子供。卑王の目を逃れる為、魔女モルガンに王位を譲らない為、先王と花の魔術師が丁寧で悪辣に仕立て上げた、作り物の奇跡。

 アーサー王以外に抜ける訳がないんだよ、それは」

 

 

 

 腕を組み、顰めた表情で告げるケイ卿の表情、普段よりも更に苛立ちを表していた。

 王を選定する為の剣。王に相応しき者の剣。しかし最初から決められた運命。都合の良い、奇跡。

 

 

 

「時間の無駄だ。さっさとやめろよこんな茶番。

 今から、倒さなくてはならない敵を遂に倒した国として今後どのように復興させていくかを話しあった方が何十倍もましだ。

 そんな剣、抜ける訳がない。いや、抜かない方が良い」

 

 

 

 そう。その通り。だからアーサー王以外に抜ける訳がない。

 事実、国中の名高い騎士が集まったのに、アーサー王以外には抜けなかった。だからケイ卿が言う事は、何よりも正しいのだ。疑いどころなど、一体どこにあると言うのだろう。

 

 

 

「………………………」

 

 

 

 控えるように、ガウェイン卿は無言で手を離した。

 次に続く円卓の騎士達。席順に手をかけていく。分かりきったような表情で手をかけ、分かりきったように抜けない選定の剣。

 

 しかし、異様な雰囲気だった。

 誰もが何かを察している。全員がある光景を想像している。皆が、この儀式の雰囲気に呑まれている。きっとそうに違いない。

 私が女だとか、知る者なら私がモルガンと繋がっているんじゃないかとか、そんな事が頭に引っかかるだけになってしまっていた。

 騎士が歩く音。剣に手をかけて、そして諦めて戻る音。一回、また一回と繰り返される。一つ、また一つと近付いてくる——最後の私の席順。

 

 

 

「モードレッド」

 

「———————————」

 

 

 

 十一席、ランスロット。

 彼が剣を抜けずに諦め、次の者の番になる。

 

 十二席、モードレッド。

 本来の末席。封印するべしと言われた十三席を省けば、最後の席。

 

 彼女は、ゆっくりと選定の剣へと歩を進める。

 その後ろ姿、普段のそれと比べれば覇気がない。

 

 

 彼女は今、一体何を頭に浮かべているのだろう。

 

 

 分からない。兜の下の彼女の表情は分からない。

 私とは違い、本当にまだ兜の下を隠し切れている彼女。そして、まだ己の出生の秘密を知らぬモードレッド。

 彼女が知るのはモルガンの血を引いているという事だけ。だから彼女は、まだ父親がアーサー王である事を知らない。だから、彼女が選定の剣に拘る理由はない。

 でも…………今の彼女はどう考えても、選定の剣にただならぬナニかを抱いていた。

 

 

 彼女は選定の剣に手をかける。

 

 

 神々しく、偉大な剣を受け取るように、恭しく。両手で剣の柄に。

 響く音。金属音。

 だがその金属音は——彼女の鎧がガチャっと音を鳴らしただけの音。剣と岩がぶつかり合った音など何もない。

 彼女は——選定の剣を抜けなかった。

 

 

 

「———————————」

 

 

 

 モードレッド卿では剣を抜けない。

 周囲の騎士達は誰もが分かった。特別な感情はない。ただガウェイン卿達のように、今までの騎士達が抜けなかったからモードレッドも抜けなかったのだろうと言う認識で、その事実は流されていく。

 

 しかし、彼女は暫く剣に手をかけた姿勢で放心していた。

 それに誰かが疑問に思って言葉をかけるよりも早く、彼女は俯いた姿勢のまま、ゆっくりと自分の位置に戻っていく。

 

 そして、次。

 十三席……………最後の騎士。

 私の順番が来た。

 

 

 

「……………………———」

 

 

 

 何を。抜けない。抜ける訳がない。

 だっておかしい。あり得ない。

 さっきケイ卿が言った通りだ。アーサー王以外にこの剣は抜けない。だから私が選定の剣に選ばれるなんて、間違ってる。

 

 

 

「なぁ、もう良いだろ。やめようぜこれ」

 

 

 

 静まり返っている円卓の間に響いたのは、再びケイ卿の声だった。

 ケイ卿は私に話しかける。

 

 

 

「お前もアーサー王に言ってやってくれ。普段みたいによ。

 こんな事さっさとやめて、もう少し建設的な話をしましょう、と。アーサー王に忌憚なく物申してくれる円卓が少なすぎるんだ」

 

 

 

 呆れるような表情。白けている態度。

 だが、私が何か言うよりも早く、アルトリアが告げた。

 

 

 

「ではサー・ケイ。最後の選定が終わったら貴公の言う通り、建設的な話をしよう。卿ならスムーズに話が出来る故、今の内に議題をまとめていて欲しい」

 

「……………あ?」

 

 

 

 いっそ、今の彼女がここまで冷淡だと私でも恐怖と疑心を覚える。

 それとも………これが狙いなのか——?

 自分に不安を抱かせ、先王として騎士や民の不満を一点に纏めるだけ纏めて、集めて、そしてそれごと…………彼女は一線を退いて消えるのか…………?

 

 

 

「………………………」

 

 

 

 気付けば、周囲の視線が私に向いていた。

 何でもない。意味なんてない。さっきから、剣に手をかけた者を見守っていた視線が、次の順番だからと私に向いただけだから。

 気持ち悪い。耐え難い雰囲気。異様な雰囲気。いつもなら、皆の意思の宿った視線なんて別に何も思わないのに、今ばかりは本当に気持ち悪くて仕方がない。

 

 

 一体何の運命の悪戯か、私の目の前には選定の剣がある。

 

 

 野原の中央に突き刺さった岩にではなく、キャメロットの円卓の広間の、その中心の台座に突き刺さった岩。

 あぁ今のこれは、野原ではなく教会か聖堂の台座に突き刺さった選定の剣、なんて言う伝説の再現か。何も笑えない。死ぬほど面白くない。

 

 

 カラカラに口が渇いている中、ゆっくりと選定の剣へと歩く。

 

 

 間違っている。

   ——本当にそう思っているのか?

 私は相応しくない。

   ——何をまさか。

 絶対にあり得ない。

   ——お前は。

 私にはこの剣は抜けない。

   ——この剣を引き抜けると確信している癖に。

 

 

 剣の柄に、静かに手を置く。

 剣の柄は気味が悪いくらい——手に馴染んだ。

 

 

 

「—————ッ、————ぅ」

 

 

 

 クラレントに力を込めた時のように………いや、違う。今回はさらに違う。

 今まで持て余して滾り、内側から破裂しそうだった何かが剣に吸い込まれていくような感覚。勝手に。剣に触れただけで。

 岩に突き刺さった剣。大地を動かさせなければこの剣は動かせないなんて感覚が一体何だと言うのだろう。

 羽のように軽かった。体も——剣も。

 

 

 ——だから、手を離した。

 

 

 決して音など出さず。剣と岩がぶつかり合う音など出さないように、慎重に。

 きっと後は手を引くだけでこの剣は抜けてしまうだろうと、そう確信してしまったから。

 

 

 

「何を。剣から手を離してどうした?」

 

「…………アーサー王。一つ問わなければなりません。

 ——私は何ですか? 私は貴方の何ですか? 王は、私を一体誰だと認識しているのですか?」

 

 

 

 不明瞭な問い。

 一瞬の間を置いて、彼女は口を開く。

 

 

 

「史上最年少の騎士。円卓第十三席。もう一人の竜の化身。そして私の影武者。ルーク。鴉羽の騎士、サー・ルーク」

 

「違います。私はそうじゃありません。

 …………私は——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——私はルーナ。

 ルーナ・ル・フェイ。モルガンの娘です」

 

 

 

 バイザーを取り外して、そう告げた。

 

 

 

 

 


 

 

『真名解放』

 

【真名】ルーナ・デ・ハウトデザート
【真名】ルーナ・ル・フェイ

 

 

血の繋がりすら知らない、誰かの名前。       
人として、唯一その名前を継いだ魔女の子供の証。

 

 

 

 楽園の妖精としての称号と、それとは関係のない人間を定義する名としてここでは区別します。後は純粋に、口にした時の語呂の良さ。

 

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