騎士王の影武者   作:sabu

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第93話 Lost Night Luna(ロスト・ナイト・ルーナ)

 

 

 

 それは遠い、遠い昔話である。

 元々この惑星(ほし)には神がいた。

 太陽。月。風。地震。雷。光。あらゆる自然現象は元々は神であり、惑星の一部であり、惑星を適切に運用する為のシステムだった。

 元々、この惑星は人間が生きるのに最適化していない。

 惑星の運営には人ではなく神が見出されており、故に人類は、古代より神に星を見出していた。

 

 それが神代と呼ぼれた時代。

 人と神が別たれておらず、自然現象へと堕ちる前のそれが権能と呼ばれていた時代。

 人が定めた物理法則ではなく、神秘によって惑星(ほし)が運営されていた、最も根源に近かった時代。

 

 

 それが唐突に終わったのは、紀元前1万2千年(B.C.12000)の事だ。

 

 

 突如、何の前触れもなく、戦線布告もなく、彼方より飛来した白き巨神。

 その白き巨神は、当時の人類圏に対し侵略を開始。あらゆる文明が滅び、神々と人類は等しく、知性あるモノは隷属すら許されず蹂躙され、破壊された。

 やがて、この惑星が全て蹂躙されようかという時、惑星(ほし)の触覚の末端によって鍛造された神造兵器——星の聖剣エクスカリバーにより辛うじて撃退された。

 しかしその被害は凄まじく、白き巨神による大災害によって、神代は衰退の一途を辿る事を余儀無くされた。

 

 

 更に月日が流れる。

 次に神々と人が訣別を余儀無くされた時代が来た。

 

 

 それは紀元前2千6百年(B.C.2600)の頃の話。

 衰退の一途を辿り続け、多くの神々がその力を失い、権能が自然現象へと堕ち始める兆しを見せ始めた時代。

 人の生存本能が人自らの法則を作り出し、神々を上回り始めた時代。

 故に惑星(ほし)は、神々という自然現象から人格を奪う人類を諌め、そして纏める者として——神と人を繋ぐ天の楔を作り上げた。

 神と人。その間に生まれた、人類を束ねる王。星の抑止力によって生み出され、故に全うな営みによって生まれなかった、人類最古の王。ギルガメッシュ。

 

 しかしその王は、神々の当初の思惑から外れ暴君となり、神にも制御出来ぬ王となった。

 その事態に神々は動かざるを得なく、天の楔を諌め天に引き戻す役割を持つ、天の鎖——エルキドゥを神々は遣わした。

 

 しかし、その天の鎖すら神々の思惑から外れ、英雄王と唯一の盟友を結ぶ。

 神でも人でもない独立した視点を有していた天の楔は、それ故に強大で、それ故に孤独だった。

 そして、その孤独を理解出来たのが、ただ一人天の鎖であった。

 

 二人は互いに互いを認め、抑止力の意思と神の使命に叛く。

 二人は互いに互いを友と呼び、多くを駆け抜けた。

 その後、多くの英雄譚があり多くの嘆きもあり、天の楔は完全に神の思惑を外れる。

 

 神と人を繋ぎ止める為に計画された楔によって、神と人は訣別の時を果たした。人による創世の刻。神と人が別たれた刻。

 それを機に、神々は今度こそ力を失った。

 この星に於ける理は、根源より刻まれた神々の、最初からそうであるという権能ではなく、人が築き、作り、照らし上げた、そのようにしたという歴史——即ち人理へと移行していった。

 

 そして更に時は流れ——

 

 

 

 ——西暦535年(A.D.535)

 

 

 

 神と人は訣別を果たし、人が星の支配者となってから千年以上。

 霊長が星を蹂躙する程の力を手に入れてから長い時間が流れた。

 

 そしてその場所は、既に神代が終わり、その名残すら世界から無くなった中、唯一その名残を残す島。

 人間が生きるに最適化した法則、という名のテクスチャを惑星(ほし)に貼り付ける星の錨がある故に、すぐ裏側に妖精郷がある唯一の島。

 その島には、世界を救った星の聖剣が、星の触覚の末端により貸し渡されており、また、力を失い精霊へと堕ちたある神霊の権能が、成れの果てとして残っている。

 

 その国で、星は天に届く叫びを聞いた。

 暗い昏い底無しの穴から響く、魂の産声を確かに聞いた。

 故に星は叫ぶ。

 

 北欧で神々の世を終わらせる為に、仕組まれたとしか言えない数奇な運命の果てに発生した、ラグナロクのように。

 星に生きながら星の理を脅かす程の存在となった霊長。人類種の繁栄を阻止せんと顕現した終末装置——ヴォーティガーンを倒した人類に対し、星は叫ぶ。

 人類の破滅回避の祈りに対し、星は生存本能を叫ぶ。

 

 故に星は定めた。

 人に、星を見出した。

 空洞の隙間を、星は見逃さなかった。

 

 その日。その瞬間。

 "星"を救う聖剣の、次の担い手として。人類に対する究極の抑止力(カウンター)として。

 星の抑止力は、その空洞の隙間に——否、人に楔を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月の綺麗な夜だった。

 

 もはや廃墟に等しい様を晒していた城は、ギャラハッドが振り抜いた剣の一撃を受け、天井が完全に消失した。

 天に淡く輝く星の光が、天井なき王座を照らしている。

 辺りは一変していた。

 ギャラハッドが振り抜いた一撃は、光の奔流ではなく——光そのもの。神霊が神霊を屠る為に奮われた、神の権能の一撃。

 即ちその結果は、城を呑み込もうとしていた泥の"全て"を両断し、霧散させた。ギャラハッドは今、彼の父親でも成し遂げられない、海そのものを断ち切って見せた。

 

 

 

「—————こ………ふ」

 

 

 

 だがその代償を払わなければならない時が来た。

 それは当然の代償。本来なら出来ぬ事を、あらゆる封印を解いて成し遂げたその代償であり、人が人の身で神霊の権能を一時的に再現したその不遜。

 視界が眩む。剣を振り抜いた右手が動かない。剣が手から溢れて地面に落ちる。今のギャラハッドは、もう治らない死病が——後もうすぐという状態まで進行したに等しかった。

 

 

 

「………二重拘束……解除」

 

 

 

 だが、まだ成すべき使命が終わっていない。

 霞んだ目の中でもしきりに映る黄金の輝き。聖杯。辺りを染め上げていた黒い泥は存在しない。今なら届く。

 ギャラハッドは動かない右手の代わりに、左手だけを使って槍を掲げる。

 

 

 

「天より降ろされたこの聖槍…………ここに返上致す——」

 

 

 

 あの杯に神聖さはない。清らかさはない。

 この槍が生まれた時もそうだった。故に、救世主が天より遣わされた、と呼ばれている。

 故にこの槍で果たそう。

 あの聖杯の泥を受け止め、そして浄化し——砕け。

 その果てにこの槍が天と地の加護を失おうと、その罰を受け、嘆きの一撃が降り掛かろうと構わない。

 ギャラハッドは拘束を外し、赤い光となったロンギヌスの槍を掲げ、振り放つ。

 

 

 

「——光さす運命の槍(ロンギヌス・カウントゼロ)

 

 

 

 投擲された赤い槍。人に赦された物ではない呪いの槍。

 しかし、その赤い槍から染み出すように溢れた黄金の光が夜を照らし上げ、そして光の刃となった槍は聖杯を貫き通す。

 その瞬間、聖杯すら包んで天へと昇る光の柱。その黄金の光の柱は、騎士王が放つ聖剣の光が如く、粒子となって辺りを包む。

 

 気付けば、全てが終わっていた。

 跡形もなく消え去った聖杯。先程まで聖杯があった場所にはもう、何もない。

 

 ギャラハッドが自らの胸に安堵を感じた瞬間、付近で何かが突き刺さった音がした。

 聖杯を砕き切ったロンギヌスの槍。それが跳ね返って宙を舞い、ギャラハッドの付近に突き刺さる。

 ロンの槍からは、赤い雷光が周囲へと散っていた。

 黄金の刀身は光沢が剥げるように所々が欠け、抜き身となっている場所は血のように赤い。

 聖槍。そして魔槍。その両方の格を持つ聖杯の槍は、聖騎士の手から離れ、拘束も解け、そして汚染された聖杯へとぶつかり、壊れてしまっていた。

 

 それが理由か、もしくは聖槍を正しく使わなかったからなのか。

 どうやら、ロンの槍が内包する癒しの奇跡は己にかからなかったらしい。

 いや、嘆きの一撃が下らなかっただけでも、まだ赦されたのか。分からない。答えは出ないだろう。

 

 

 その思案を最後に——ギャラハッドはその場に倒れた。

 

 

 もう、体が動かない。

 手足が萎え、目は霞み、肉体の機能が少しずつ停止していく。漠然とした、あぁここで死ぬんだな、という感覚のみがある。

 

 

 

「……………………」

 

 

 

 ギャラハッドは空を見上げた。

 天に浮かぶ星々。その中で最も輝きを放つのは、ただ一つの宵闇の星。

 消え行く意識と感覚に反して、星の光だけは良く瞳に映る。

 天に浮かぶその星を見ていられるのは、後どれくらいだろう。

 深い底に沈んでいくように意識が薄れる。

 その中、その最後に。

 

 

 

「——ギャラハッドッ!」

 

 

 

 彼女の声を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルーナはその場に辿り着いた瞬間全てを悟った。

 元よりここに来る寸前から、脳裏に最悪の予感を届け続ける直感にずっと恐怖していたから、良く分かった。

 何か不気味で、おぞましいモノが空間から消え去ったような感覚がその空間からしていたから、すぐに分かった。

 

 彼が一度も鞘から抜かなかった、一振り目の剣。

 壊れてショートしたように雷を流しているロンの槍。

 ——もはや死体同然の有り様を晒しているギャラハッド。

 

 

 

「——ギャラハッドッ!」

 

 

 

 ルーナはギャラハッドに駆け寄る。

 抱き寄せたギャラハッドの体が酷く軽い。その事実が、胸に穴を穿たれたような衝撃を以って彼女を襲った。

 膝が震えて、喉元が詰まる。彼女の脳裏にあるのは、最悪の確信だけ。

 人ならざるモノの直感ではない。もう、数え切れない程に人の死を見届けて来たからこその経験だった。

 それは奴らが近付いている気配。人から生命が抜け落ちる瞬間、必ず隣にいる——死神の気配。

 

 

 

「そんな、そんな——」

 

 

 

 大きな血を流してる訳でもない。傷を負っている訳でもない。

 でも——でもこのままでは死ぬ。ギャラハッドが、死ぬ。

 必死になってギャラハッドを揺さぶる。それがあまりにも軽過ぎて、揺さぶる手が震える。

 

 

 

「………ぁ………ぁあ、よかった、先輩。ちゃんと………聖杯は破壊しました」

 

 

 

 ようやくになって彼は返事をした。

 しかし聞きたいのはそんな言葉ではない。

 聖杯を破壊した——そんな事は分かってる。そんな事、今はどうでも良い。だがギャラハッドは、ただ彼女を安心させるように答えるばかりだった。

 

 

 

「だから………もう、大丈夫です」

 

「なんだよ、それ。

 そんな事で、あんな程度で———お前は……」

 

 

 

 陽に炙られているような苦痛。

 別にあの程度耐えられた。あんな苦痛など大した苦でもなかった。

 聖杯が原因だからとかも、関係ない。それは自分だけに関わっていたのだから、自分が解決するべきモノだったのに。

 仮にそれが命に関わったとしても、それでも——何故ギャラハッドが死ななくてはならないのか。

 

 

 

「——いやだ、いやだ……そんな…………なんで、なんでお前が、私の代わりに……私の為に」

 

 

 

 立場が逆ならどれほど良かっただろう。

 己のせいで聖杯が狂った。自分が居なければ、きっと聖杯は狂わなかった。なのにどうして、その代償をギャラハッドが払う。支払う必要があった。

 聖杯に愛されている者と、呪われている者。その罪と罰。罪価を支払う必要があったのは、どう考えても明白だったのに。

 

 

 

「——頼む。頼むから……死ぬな、どうか死ぬな」

 

 

 

 だから彼女は、ただ懇願する事しか出来なかった。

 もし、もしもあらゆる願いが叶うと言うのなら、ギャラハッドの命を救う事を望む。ただ、彼女にあるのは血塗られた両手だけ。ギャラハッドを抱き寄せる両手は血に濡れている。

 そんな存在が、どうやって人など救えよう。人は導けても、救う事はどうやっても出来ない。

 ただ殺し、積み上げる事しか出来ないこの両手で、どうやって聖杯を掴めるのか。剣を握ったままでは、誰かを抱きしめる事すら出来ないのに。

 

 

 

「やめろ………やめろ———どうか、私を残して死なないでくれ……」

 

 

 

 だから、懇願するしかない。

 知っているのは看取り方だけだから。

 人が骸になる瞬間、待ち受けている奴らから、人の生命を取り返す手段など分からないから。

 尊厳は守れても、生命は守れないのを、嫌になるほど見て来たから。

 

 瞳から流れて、溢れ落ちる涙がギャラハッドに当たる。

 まるで懇願する子供のようにルーナは泣く。今までそうじゃなかったのに。涙を見せた事など、あの日のたった一回しかなかったのに。

 その姿を見て。己の為に涙する少女を見て——ギャラハッドは静かに笑った。

 

 

 

「——あぁ、よかった。貴方もそうやって、泣けるんですね」

 

 

 

 ギャラハッドは薄く瞼を上げる。

 虚ろな視線が、彷徨うようにしてようやくルーナを捉える。

 場違いな程、穏やかで、嬉しそうな声だった。

 その言葉になんて返せば良いのか分からず、ルーナは戸惑いに唇を噛む。

 口から出て来るのは、ギャラハッドを看取る言葉ではなく、ただの困惑しか出て来ない。

 

 

 

「なんだよ………なんだよ、それ——」

 

「だって先輩、ずっと無表情だから」

 

 

 

 もしかしたら疾うに枯れているかしれないと感じていた、彼女の面持ち。

 星に向かって手を伸ばすように、ギャラハッドは彼女に手を伸ばす。

 ゆっくりと、力なく伸ばされる手。その手がようやくルーナの頬に触れる。

 

 

 

「やっと、届いた。やっと、戻せた——」

 

 

 

 誰しもが彼女は人ではないと言う。

 多くが、彼女は逆鱗を踏み抜かれた竜だと言った

 でもやっぱり、彼女は人だった。だってそうだろう。彼女は、人の死を見て泣けるのだから。必死になって己を堪えながら、しかし目尻に涙を溢れさせている姿を見て、誰が怒り狂う竜だと言うのか。

 だからやっぱり、彼女は人だった。花は枯れてはいなかったのだ。

 

 

 ——あぁ、なんて美しい瞳なんだろう。

 

 

 ギャラハッドの真上には、森の輝きと蒼穹の空を混ぜ合わせたような、翡翠の瞳がある。

 陽の光に照らされて煌めく、海辺の金砂のような黄金の頭髪がある。

 彼女の本当の姿。竜のような金色ではなく、人間味のない陶器のような肌でもなく、錆び付いて掠れたような薄い金色の頭髪でもない。

 

 彼女はきっと、最初はこうだった。

 彼女の本当の姿は、誰にも染められないくらいに、白い花のような少女だったのだ。

 

 よかった。

 彼女のそんな姿を見れて。本当の素顔を見れて。

 だってきっと、ここで守れなかったら、彼女が死んでいたから。

 

 確信があった。もしも何かを間違えていたら。選択を間違えていたら。

 彼女は絶対に、自分の代わりに死んでしまっていた。お前が死ぬくらいならと、彼女は自らの命を差し出していた。

 

 

 

「あぁ———本当に、よかった」

 

 

 

 少しずつ光が失われていく双茫。

 儚く笑ったまま、力無く頬に添えられたギャラハッドの手。

 

 それを眺めている事しか出来ない己に、ただ彼女は理解した。

 

 何かを間違えた。決定的に間違えた。

 何の欲もなく、それ故に穢れなく、故にただ一人完璧な騎士と呼ばれた聖騎士。だから何の未練もなく、聖杯を天に還した騎士。

 だから己と気が合ったのだろうと、自分のように、心の何処かに空虚な穴が空いているから同調したのだと、そんな勝手な思い違いを、どうして今日まで信じていられたのか。

 きっとそうじゃなかった。そんな訳がなかった。

 

 こんな事を。ただ守れて良かったと口に出来る彼なら。

 もっと他に、違う生き方があって——ちゃんとした死に様があった筈なのに。

 

 

 

「———ッ、どうして、どうしてだ。

 お前が、お前が唯一聖杯に届いたのに…………私では取り溢しているだけだったのに、どうして——」

 

「何、を……………僕の願いはもう——」

 

 

 

 とっくに叶った。もう十分過ぎる程に叶った。

 でも更にそこから、もしも、望みがあるなら。醜い欲求を吐露するなら——最期に彼女の笑顔が見たかった。

 そしてその隣に、自分が居たかった。

 いつまでもずっと、彼女と生涯を共にしたかった。

 その願いをギャラハッドは呑み込む。ただの未練だから、言わなかった。

 

 

 

「先輩」

 

 

 

 手が滑り落ちる。

 彼女の頬に重ねていた手が落下する。

 視界から光が消えていく最期。

 彼女の姿はいつまでも陰る事なく映ったまま——

 

 

 

「貴方の事がずっと、好きでした——」

 

 

 

 ——最期に、ギャラハッドはそれを口にした。

 彼は目を閉じる。苦痛などはなく、彼女の腕に抱かれたまま彼は眠りに落ちる。

 

 

 

「ギャラハッド——?」

 

 

 

 揺さぶる。

 反応がない。

 声をかける。

 返事がない。

 瞳が開かない。

 

 

 

「ギャラ、ハッド」

 

 

 

 動かない。

 揺さぶる。

 動かない。

 更に揺さぶって、更に声をかけて、眠りに落ちたギャラハッドを起こそうとして、何の変化がない。

 

 

 

「——うそだ」

 

 

 

 今まで何度だってその光景を見て来た。幾度も見送って来た。

 だから今更、何も感じない筈だった。それが当然の筈だった。

 

 なのにどうして——体が震える。息が詰まる。呼吸が荒れる。

 抱き抱えたギャラハッドの体の、その軽さに。脳裏に叩き込まれる事実に体が誤作動を起こし、過呼吸になる。

 遂に口元にまで差し掛かったそれに、堪え切れぬ嗚咽が漏れる。

 

 

 

「うそだ、うそだ、そんな………そんな——」

 

 

 

 ギャラハッドはまだ死んでいない。眠っているだけ。

 ——冷たい。ギャラハッドの体がどうしようもなく冷たい。

 それは命が抜け落ちた肉体の温度。何度も理解して来た遺体の体温。

 もはや彼の体には生命の温もりなんて存在しない。

 命を繋ぎ止めるように、必死になって彼を抱き寄せる。自らの体温を彼にも伝えるように抱き締める。

 なのに、ルーナの体に伝わるのは冷たさだけ。

 ただどうしようもなく、ギャラハッドの体が冷たくなっていくという事実を、より徹底した理解するしかないという現実だけ。

 

 

 

「————ぅ、ぁ」

 

 

 

 だから理解した。

 何もかもが既に遅い。あらゆる全てに意味がない。

 自らの腕の中にあるのは、ただの亡骸にすぎなかった。

 

 体がその場に張り付けにされたように動かず、頭が回らない。

 心と肉体が切り離されていて、肉体に命令を送る心が誤作動を繰り返している。ギャラハッドという機能を欠いた瞬間、ルーナという機械は致命的な支障を起こし、稼働が出来なくなっていた。

 言葉にしようのない喪失感。胸の中の何かがゴソっと抜け落ちたような違和感。

 何なのだろう。こんな違和感を私は知らない。

 

 

 "あぁ、私はきっと"

 

 

 幾度と声を詰まらせ、嗚咽を漏らして、ひたすらに堪える。

 そして遂に、ようやく彼女はその違和感に気付いた。

 

 

 "——ギャラハッドの事が好きだった"

 

 

 唐突に理解した。

 理解した瞬間、彼女は壊れたように全てが停止する。全ての機能が故障する。

 彼の亡骸を抱いたまま、表情が変わる事なく、体が震えてる事もなく、ただ涙だけが彼女から溢れる。

 

 

 "私も、お前の事が好きだった"

 

 

 恋など知らない。

 劇的な出会いなど知らない。

 大きく心が動いた事なんて一度もない。

 だからきっと——

 

 

 "ギャラハッドの事が本当に好きだった"

 

 

 自覚した瞬間、己の空洞に気付く。

 いつの間に、どうしようなく、落ちるように深く深く、ただ好きだった。

 隣にギャラハッドがいるとドキドキするとか、顔が熱くなるとか、ギャラハッド以外の事を考えられないとか、そう言うモノじゃなかった。

 彼が隣にいて当然だった。彼が居るのが自分にとって当たり前の事だった。だから彼の全てが許せた。彼だけは、全てを許せた。

 心躍るとか、楽しいとか、そんなモノでギャラハッドを想っていた訳じゃない。

 

 安心出来た。

 

 言ってしまえばそれだけで——それは自身がずっと追い求めて来たモノで、今までずっと手に入れられなかったモノだった。

 亡くして、ようやく気付いた。

 ただ寂しい。彼がもう居ないという事が、どうしようもなく寂しい。

 

 好きだった。本当に好きだった。きっと全てが好きだった。

 きっとそれは恋ではなく、愛としか言い表せないそれ。

 何故今更になって気付いたんだろう。

 自覚した瞬間、何もかもが台無しになっていく。

 全てが溶けていく気がした 全てが抜け落ちていく気がした。全てが奈落に堕ちていく気がした。

 

 今の私に残っているのは、耐え難い喪失感ともう堪えられない程の寂しさ。

 隣に彼が居るというだけで満たされていたのに。

 自らの心の空洞を唯一満たす事が出来たのが、唯一この空虚な形に当て嵌まってくれたのが、ギャラハッドだったのに。

 寂しい。ギャラハッドに会いたい。このままだと、またいずれ——忘れていってしまう。あの声と表情は、記憶と一緒に錆び付いていってしまう。

 

 

 だが、ギャラハッドはもう動かない。ギャラハッドは、もういない。 

 

 

 死んだ。

 自分の代わりに彼が死んだ。

 ギャラハッドだけが、唯一自分の空洞に当て嵌まってくれた。

 ギャラハッド以上の存在なんて居ない。彼以上に、誰かを守れる人なんてこの国には居ない。

 私だけじゃない。あんなに清らかで、理不尽に対し正当な怒りを胸に宿せる人間なんて、私は知らない。のに。

 もう、彼はいない。

 もう、彼は動かない。

 彼が笑う事も、怒ってくれる事も、諭してくれる事も、私を守ってくれる事もない。

 それは、

 

 

 

 きっと

 

 

 

 

 

 

 全て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全て——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ——お前のせいだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女はとても慈悲深い性格をしていた。

 それは、そうであるよう育てられたのが大きな理由であり、彼女がそう言う環境で育ったからであり、理解者にも恵まれたからだった。

 家族。周囲の人。皆優しかった。だから彼女も、優しい人間だった。

 

 

 それは今でも変わらない。

 

 

 たとえ生涯の反動で錆び付こうとも、彼女はまだ慈悲深い方だった。

 立場があり、人それぞれの在り方があり、故に躊躇いもなく手にかけようとも彼女は極めて平等であり、事実それを心がけ続けた。

 その人にはその人の価値観がある。だから、それもありだと受け入れる。

 たとえそれが、他者を測り取る知識理解となり、この人間ならこう行動するだろうという冷酷無比な判断に繋がろうとも、それでも彼女は高潔であるように定めた。

 

 だから、彼女は慈悲深かった。

 それ故に彼女の心は深く、深く…………何処までも底無しの穴のように暗く、故に少しずつ、少しずつ——澱んでいった。

 どうしようもなく、致命的なモノに彼女の精神が至るまで、理想と現実の乖離に汚れるように、ナニかが溜まり続けた。

 いや。もうとっくに、溢れていた。

 

 

 故に端的に記す。

 

 

 その資格ありと解けた一つ目の封印。

 その怒り故に理由無しと壊れた二つの拘束。

 遂に残り二つとなった天秤の皿。どちらにも傾かず、故に平行を保ち、故に一切の私欲を無視して選定を行えた天秤の秤。

 

 今日、この日。この瞬間。

 ギャラハッドの死を以って。

 人を辞め、また人の身に戻り、そして人に戻る事の出来た鎖を亡くしたのを最大の理由として。

 

 

 

 ——傾いてはいけない天秤が傾いた(三番目の数字が壊れた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行動:凍結、解除』

「万物は皆、比較の天秤の前には等しく。選定の秤には区別もなく」

 

 

 グリフレットがその場にようやく辿り着いた瞬間、彼の足音に反応するように彼女の声が響き渡る。

 紺色の鎧を身に纏った騎士を抱き抱えた彼女。不気味な後ろ姿。紡ぐ言葉はまるで人形が話しているように。

 

 

『行動:検索、選出、解析』

「故に私の罪は貴様と同じく」

 

 

 ゆっくりと彼女は立ち上がった。

 腕に抱き上げたギャラハッドを下ろして、ゆっくりと。

 不気味に妖しく。何かが致命的に変わってしまっていると確信出来るだけの圧力を周囲に撒き散らして。

 

 

『行動:憑依、継承、投影』

「故に罪価も同じく」

 

 

 グリフレットはその場に磔にされたように動かない。

 ただ彼は見ていた。ルーナの体から、人間としての色が消えていく。半分だけ元に戻った頭髪。素肌。それが再び、人間味のない白に染まっていく。

 あまつさえ、彼女の傷すら塞がって再生していった。

 それは、彼女が傷付くなど有り得ない。彼女は人からダメージを受けない、とでも言うように、彼女に刻まれたダメージが全て否定され、キャンセルされていく。

 

 

『行動:空想、復元』

「故に悪も同じく」

 

 

 彼女の右手には剣が握られていた。

 その剣に光が集まる。あまりにも眩い光。束ねられた光の端に虹色の輝きが煌めく程の光量。光帯。

 それはもはや黄金ではなく、光そのものしか呼べない程の白。ただの白。人間にはその眩し過ぎる光は白銀にしか見えない。

 それが、彼女の黄金の剣に装填されている。収束し、加速し、一つの線となり、その線を束ね上げて更に加速される。

 

 その剣を構えなく握り、不気味な詠唱を告げる中——

 

 

『行動:封印、解除』

「——故に貴様の悪は、私の悪にも等しく」

 

 

 ゾッとする程の形相で彼女は振り返った。

 目尻には涙が浮かんだまま、瞳から壊れたように流れる涙が頬を伝ったまま、鬼の形相をした彼女は、振り返り様に剣の切先を向けた。

 それをグリフレットは防げない。磔にされたまま、口すら動かす事も出来ず、ただ見ている事しか出来ない。

 だから彼は、この土壇場で唯一気付いた。

 

 

『行動:権能、譲渡』

「故に——」

 

 

 彼女の瞳は澱んだ黄鉛色の金。人間味を取り戻した方の瞳だとしても、彼女は翡翠の瞳。その筈だった。

 しかし、凍える程の形相をしている今の彼女の瞳は——"澱んだ青紫色"をしていた。

 

 

『行動:人理、装填』

「"剪定の剣"よ、力を。邪悪を断て——」

 

 

 だがそんな変化など今の彼には関係がなく、それを理解出来た事すらただの些事でしかない。

 既にグリフレットの運命は決定していた。

 他ならぬ彼女が、今この瞬間、グリフレットの運命を決定した。

 向けられた剣の切先。輝きが頂点へと達し、光帯による輝きの濁流、その解放と爆発を待つだけになったカリバーン。

 彼女は抑える事もなく、その真名を以って光の奔流を解き放つ。

 

 

『解除:人理、接続』

「——殲滅すべき神記の剣(カリバーン)

 

 

 光帯による一撃を受け、瞬間的に灰すら残らず消滅する刹那。

 グリフレットはその光の先に、確かに見た。

 天へと伸びる暗い光。ソラの彼方の輝きのような、深い深い青紫の光。青と赤を足し合わせた紫の光。

 それが暗い紺色の陽炎を貫くように、天へと伸びていた。

 四つ、天へと伸びていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気付いた時には、何もかもが全て終わっていた。

 地平線の彼方まで飛んでいった光。抉れて崩壊した山々。廃城はある一方向から完全に消失している。

 

 何もかもが空虚だった。

 何も満たされない。何も変わらない。怒りと復讐。それでは心が晴れなかった。当然だ。もう、何もないのだから。

 心に空いた穴を風が吹いているような感覚がする。

 自分はもう、壊れてしまった。

 なのに、何故まだ自分は動いているのか。静かに機能が止まる事なく、壊れた機械が壊れたまま動いている。

 剣を握ったまま、彼女はその場で呼吸を続けていた。

 

 

 

「月が、綺麗………か」

 

 

 

 不意に彼女は真上を見た。

 空に浮かぶは、あの日と同じ輝きをした星がある。

 その日に言われた言葉。それは。

 "月が綺麗ですね——"

 

 

 

「——お前が死んでどうする………バカめ」

 

 

 

 そう呟いた後、空を見上げたまま、彼女は再び泣き続けた。

 たった一人で泣き続けた。

 

 

 


 

 

 

【WEAPON】

 

 サー・ギャラハッドの聖盾

 詳細

 

 ギャラハッドが使用していた雪花の盾。

 円卓の破片が埋め込まれていないだけで、マシュ・キリエライトが使用している盾と同質のモノ。

 元々は血塗られた赤十字の盾だったが、ギャラハッドが浄化した結果、青色をした十字の盾となった。

 性質はやや異なるが、所有者に対魔力A相当の力を授ける。

 

 この盾の真髄は、敵の攻撃を防ぐではなく自分の後ろにいる誰かを護る事である以上、彼女の手にある間、この盾に大した意味はない。

 

 

 

 サー・ギャラハッドの聖剣

 詳細

 

 クラウ・ソラス

 ギャラハッドが手にした聖剣の一振り目。クルージーン・カサド・ヒャンという、クー・フーリンが扱った光の剣のように別名や異名、同一とされる剣も多い。

 この剣も元々はそう言った剣の一振り。

 

 故に、もはやこの剣が神剣の一振りを放てる事はなく。

 また彼女もそれを再現して投影する事など出来ない。

 

 

 

 サー・パーシヴァルの聖槍

 詳細

 

 ロンギヌス。

 かの救世主を貫いたとされる聖槍。同時にかの救世主を刺し貫いた不浄の槍。

 あらゆる傷を癒す神秘と癒えない傷を相手に残す魔槍。この槍は常に血が滴っているとも、血よりも赤い槍とも呼ばれた。

 

 二つの拘束により白銀の槍となっているが、解除毎に元のロンの槍に近付き、黄金の刀身と赤い刀身に切り替わる。

 だが、ギャラハッドの手により聖槍は元ある場所に返上された。

 この世界に残るは、その抜け殻。聖槍としての格を天に返したその残滓。

 

 故に、この槍の真名は——

 

 

【宝具解放】

 

 

 天地別つ神殺しの槍(ロスト・ロンギヌス)

 

 ランク A+

 

 種別  対神宝具

 

 

 詳細

 

 世界で最も有名な槍。

 天と地の加護を失った、聖槍ロン。

 それが聖杯の力に触れ変質し、そして魂の真髄から呪われた人間の手に渡って相応しい形に反転した、呪いの魔槍。

 

 

 それはもはや聖槍ロンギヌスではなく、世界の伝承や認識が付随し、"神の御子を殺害し得た槍"という概念のみが強く押し出された物。

 槍の型をした無辜の怪物。父なる神を刺し貫いた不浄の槍。神に由来するモノならば必ず殺戮する概念礼装。

 

 この宝具には、聖槍としての格はもう一切存在しない。

 対城宝具として破壊力も癒しの力も全て無くなってなり、この槍を封印していた二つの拘束も砕けている。

 

 故に、この槍を使用すれば、ベイリン卿の死の原因となった嘆きの一撃が必ず所有者に降り掛かる。

 その嘆きの代償は、三つの国すら荒廃させる程のモノ。

 それ即ち——時間の加速。寿命の精算。

 

 もはやこの槍は人に赦されたモノに非ず。

 それでももしも、たった一度でも、ただの魔槍と化したこの槍を振えるモノがいるとするばそれは、人ではなく、また寿命のない不老のモノのみ。

 

 

 

【固有スキル■■】

 

 

 

 聖者の数字 EX

 詳細

 

 このスキルは彼女が後天的に獲得したとある固有スキルに塗り潰された。

 残るのはただの残滓だけであり、仮にこのスキルが起動したという事は、このスキルを塗り潰した固有スキルが目覚めたという事である。

 

 余談だが、三番目の数字と聖者は深い繋がりがある。

 時に愛を語る神。時に愛を受け入れる神。しかし彼女は三番目の数字を失った。

 

 故にもしも——歪んだ思考回路。躊躇いもなく人を殺し、時に隣人すらも手にかける為の心構えと思考論理——すら超越した精神に彼女が至った場合、彼女は三番目に対しカウンター権利を獲得する。

 

 愛を説く偽神には知性なき殺戮使命を。

 愛を受け入れる偽神には私欲なき殺戮使命を。

 

 愛を以って育てられ、愛を知り、その瞬間に全てを失った者として、彼女は愛を否定する。今はまだ、その残滓でしかなくとも。

 

 

 

 

 凍る鉄心
    
 

 詳細

 

 反転していようといなかろうと、生前の内から保有する固有スキル。

 固定された概念に自らを浸し、己を帳尻を合わせる為の天秤へと変える精神汚染の象徴。

 

 たとえるなら、彼女が歩んで来た生涯の反動。彼女が得た称号。

 彼女は生涯の中で狂った事はなくとも、幾度か精神を病んで来ている。

 その状態の再現とも言うべき、歪んだ思考回路。躊躇いもなく人を殺し、時に隣人すらも手にかける為の心構えと思考論理をこのスキルは裏付けする。

 が、彼女は特に疑いもなく、自分には必要だからとこのスキルを受け入れている。

 

 受け入れなくては、己が狂うと知っている為。

 受け入れ過ぎても、己は壊れると知りながら。

 

 

 だからこそ、彼女は特別だった。

 ただ彼女は、狂わず、また壊れなかったというだけで。

 故にこのスキルは最後の封印拘束にして、最大の起爆剤。

 とある固有スキルから生まれた派生スキル。

 

 

 


 

 

 

 殲滅すべき神記の剣(カリバーン)

      

 ランク B (条件付きでEX)

 

 種別  対悪宝具

 

 

 詳細

 

 アルトリアが引き抜いた次代の王を選定する為の剣、【勝利すべき黄金の剣】だった物。

 所有者のカリスマのランクを上昇させ、また所有者に不老の加護を授ける。

 王位の象徴としての性質が強かった為、剣としての格は現在エクスカリバーに劣る。

 エクスカリバーと同等の威力を発揮しようとした場合、剣が耐え斬れず崩壊する。

 

 

 元々は、王を選定する剣として所有者が王に相応しい存在だった時、聖剣として完成される対人宝具だったが、剣の定義が大きく変質し、本来なら善属性しか存在しない選定の剣に、悪としての属性が付与された。

 その為真名も変化し、銘は【勝利すべき黄金の剣】ではなくなっている。

 

 

 彼女の支配下に置かれたこの宝具は、ただ邪悪を断ち切る事に特化した剣となり、所有者が悪を倒す事に意識を集約させている時に聖剣としての力が完成される剣となった。

 また攻撃した対象が悪として定義されている存在である場合、さらに追加の特効が入り、対象を内側から貫く光で焼き尽くす。

 ただし、悪についての定義は民衆や一般的な常識に一切左右されず、所有者の意向にしか左右されない。

 またその特効範囲は、聖人や産まれて間もない赤ん坊以外には入る程広く、種別上は対悪宝具であるが、対人類宝具と言っても何ら差し支えない。

 

 

 

 尚この宝具の本質は鏡像である。

 故にこの宝具は、己を映し出す対人(自身)宝具であり、善悪の概念の型に嵌め込む事の出来る全生命体がこの宝具の対象となる。

 ヒト科属性に対するカウンター。霊長に対する絶対的な殺害権利。

 

 

 

 


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