明久side
「明久、今から人間の里に行くぞ」
幻想郷に来て数日。妹紅の特訓でスペルカードルールも程度理解できた頃に妹紅は突然そう言った
「人間の里に?」
「あぁ、そろそろ食材だったりも買いに行きたいし、私の知り合いに明久の事を紹介しておこうと思ってね」
どうやら、先程のお昼ごはんで食材がそこそこなくなってきたようだ
ここは筍が取り放題で、ほぼ毎日筍だらけだったのだが、時期も時期なので筍は減ってきて、それ以外の食材は人間の里に買いに行かないといけないらしい
「ってことで、人間の里に行くよ」
「わかった!」
僕と妹紅はそんなやり取りをして家を出た
少年達移動中…
「ここが人間の里だ。迷いの竹林で迷わなくなったら一人でここに遊びに来るようにしてもいいぞ」
僕は妹紅の後ろを追いかけて人間の里に到着した
ちなみに、僕はまだ迷いの竹林で迷子になったりするので、妹紅はあまり僕を一人にしたくないようだ
「ここで私の知り合いが寺子屋をやってるんだ。今日は休みのはずだし、とりあえずそこに行こう」
妹紅の知り合いは寺子屋を経営してるらしい。外の世界では学校って呼んでるけど、幻想郷は明治時代から結界によって隔離されてることで色々と差異がある
「ここだよ。おーい、慧音ー。いるかー?」
寺子屋に到着した妹紅は、大声で叫んだ
「妹紅。あまり大声で叫ぶと迷惑だと何度言ったら…うん?そこの君は…」
「こいつは吉井明久。ちょっと訳があって私が預かることになった外来人だ」
「なにがどうなって外来人が迷いの竹林に…私は上白沢慧音。この寺子屋で教師をやってるよ。よろしく」
「吉井明久です。よろしくお願いします。慧音さん」
この女性は上白沢慧音さんと言うらしい
「それで妹紅、今日は何の用だい?」
「とりあえず、明久を紹介しておこうかなと。明久が迷いの竹林の道に慣れたら慧音の寺子屋に通わせてもいいなーっては思ったけど…明久ってどのくらい勉強できるんだ?」
「ハァ…知りもしないで通わせようとしていたのか…吉井君、今何歳だい?」
「12歳で、今年で13歳になります」
「だったら、問題を作ってくるから妹紅と待っていてくれ。どのくらい勉強ができるかだから難易度は少し難しめにするが、いいかな?」
「はい、大丈夫です」
「わかった。少し待っててくれ。妹紅、待合室で一緒に待ってて」
「了解ー」
そう言って、慧音さんは寺子屋の中に戻っていき、僕は妹紅に連れられて寺子屋の待合室に向かった
数分後
「待たせたね。これを解いてくれ」
慧音さんが戻ってきて、僕に紙と鉛筆を渡してきた
「わかりました」
僕は紙と鉛筆を受け取り、問題を解き始める
さらに数分後
「出来ました」
僕はそう言って、慧音さんに紙を渡す
「思ったより早かったな。ふむ…」
慧音さんはそう言いながら採点を始めた
「…これは寺子屋には通わなくてもいいんじゃないか?そこそこ難しく作ったつもりが満点とは」
どうやら全問正解できていたようだ
「吉井君、君は既に勉強ができるし、この問題が全て解けるなら私が教える必要はないだろう」
「ありがとうございます?」
褒められたのかな?
「うーん、やっぱりかー」
妹紅は予想通りといった感じで声を上げた
「妹紅、やっぱりってどういうことだ?」
「八雲紫曰く、明久の能力は『学習能力を強化する程度の能力』らしくて、幻想郷に来てはっきりと覚醒したけど、外の世界でも潜在的に発動してたらしいんだよねー。能力の副作用的な感じで頭の回転も速いらしい」
「そういうことは早く言え!」
慧音さんが思い切り妹紅に頭突きをした。痛そうだ
「いたた…だったら、明久は幻想郷で勉強することはないね。幻想郷のこと以外は」
「そうだな…もしよければ、私が一人紹介しようか?そこに行けば、幻想郷についても学べるし、それ以外も学ぶことができると思うよ」
慧音さんは僕にそう言った
「じゃあ慧音、それは任せた。私は買い物をしてくる」
妹紅はそう言い残して寺子屋を出ていく
「全く…妹紅の方はいいようだが、君はどうする?」
「お願いします。幻想郷のことをもっと知りたいですし…」
「だったら決まりだな。ついてくるといい」
そう言って慧音さんは立ち上がる
「わかりました!」
僕も追いかけるようについていった
少年達移動中…
「ここだ。すみません、阿求はいますか?」
「こちらです。ついてきてください」
そう言ってたどり着いたのは、すごく大きなお屋敷だった
慧音さんは近くにいた使用人さん?に話しかけて道案内をしてもらう
僕はそれについていった
「阿求様、お客様がお見えです」
「入れてください」
使用人さんは扉の向こうに声をかけて、返事が返ってくる
「では、どうぞ」
使用人さんは扉を開けて、中に入るように促す
「失礼します」
「失礼します」
慧音さんがそう言って中に入るので、僕は真似して中に入る
中にいたのは、着物を着た僕と同じくらいの年齢(見た目)の少女だった
「貴女が訪ねてくるとは、どうかしましたか?っと…そちらの方は?」
「私の知り合いが預かることになった吉井明久です。どうやら外の世界から来たらしく、幻想郷について知りたいと」
「吉井明久です。よろしくお願いします」
「そうでしたか。私は稗田阿求、千年以上の歴史がある稗田家の現当主です」
少女は稗田阿求というらしい
それにしても、稗田…何か聞いたことがあるような…
「稗田…なんか聞いたことあるような…どの本だっけ…」
「吉井君?どうした?」
「うーん…千年以上前の本…古事記…稗田阿礼?」
そうだ、古事記の編集者の一人と言われてる人物が稗田阿礼…稗田だったような
「!?」
そう考えていて顔を上げると、慧音さんは何やら驚いたような顔で、阿求さんはなにやら面白いものを見るような顔でこちらを見た
「まさかこれだけでそこまでたどり着くとは…慧音が連れてくるわけです
貴方の予想通り、私は稗田阿礼の転生体で、九代目です。といっても、転生前の記憶があるかと言えばとぎれとぎれなのですが…」
まさかの僕の予想は当たりらしい
「ま、まさか予想が的中するなんて」
「それで、幻想郷について知りたいんでしたね。まだ書いてる途中ではありますが、九作目の幻想郷縁起と、過去の幻想郷縁起ならありますが、読みますか?」
「幻想郷縁起…?」
なんだろう。話の流れから幻想郷について書いてある本だとは思うけど
「簡単に言えば、幻想郷の記録だよ。歴代の御阿礼の子…阿求や転生前の阿求がその代で記録したものだ」
慧音さんが補足してくれたなるほど
「大まかに言えばその通りですね。幻想郷関係の本も複数あるので、読みたいだけ読んでください」
「ありがとうございます!」
「それと、あまり硬くならないでください。私が転生を繰り返しているとはいえ、今の私…稗田阿求は貴方と同じくらいしか生きてません、なので普通に友達感覚で接してください。そのほうが嬉しいです」
阿求からそんな申し出があった。どうやら僕は少し距離があるような話し方だったようだ
「うん、わかったよ阿求!」
「それでいいんです。では、こっちについてきてください」
阿求は少しうれしそうにそう言い、僕はそれについていく
「吉井君。私は先に寺子屋に戻っておくから、五時頃になったら寺子屋に戻ってきなさい。妹紅にはそう伝えておくから」
「わかりました!」
慧音さんの言葉を受け取り、僕は阿求の後ろをついていき、慧音さんと別れた
少年少女移動中…
「ここです。そうだ、彼は五時頃に寺子屋に戻るそうなので、そのぐらいになったら呼びに来てください」
「かしこまりました」
すごく大きな書斎に着くなり阿求は近くにいた使用人さんに声をかける
まだ昼頃なのにそう声をかけておくということは、かなりの量の本がるのだろう
「そうですね…とりあえず、今の幻想郷を知るには書いてる途中の幻想郷縁起の方がいいですね…」
そう言って、阿求は奥の方から巻物のような資料を持ってきた
「これは?」
「これは『幻想郷縁起』と言って、その代の御阿礼の子が書いている物です。いわば幻想郷の資料集のようなものですね」
「なるほど…」
感心したように幻想郷縁起を見つめる僕に、阿求は続けた
「私はまだこの体に転生して十年ほどしか経っていないので、まだまだこの量ですが、もう少し情報が集まれば、本として完成するわけです」
「すごい…これを全部阿求が…」
「といっても、今代の幻想郷縁起は今までの『妖怪から人を守る書物』というよりも『読み物』に近いものですが…」
「それでもすごいよ!いろんな場所だけじゃなくて、一部の妖怪や、妖怪の種類ごとの解説まで…」
かなりすごい…いろんな場所や妖怪の種類ごとの細かい設定まで…
「そういえば、明久は外の世界からやってきたといいましたね。外の世界について教えてくれませんか?」
「んー…僕もあまり詳しいわけじゃないけど、それでもいいなら」
そんな話をしながら、僕と阿求の時間は過ぎていった
数時間後
「阿求様、失礼します。五時になりましたのでお知らせに参りました」
書斎の扉が開き、使用人さんの声が聞こえる
「もうそんな時間でしたか」
「時間って過ぎるのが早いね~」
僕は最新の幻想郷縁起と、二代前までの幻想郷縁起を読み終え、ある程度幻想郷への理解を深めることができた
「明久、ここにはいつでも来てください。」
「えっ、いいの?」
「いいんです。友達なのですから、好きな時に来ていただいて」
友達…その言葉に、僕は少し嬉しさがあった。外の世界ではあまりできなかった存在…
「わかった!また来るね!」
「ええ。またいつか」
その言葉を最後に、僕は阿求と別れた
妹紅と合流して、竹林にある妹紅の家に帰り、ご飯の時に今日の出来事を妹紅に話た
少し不安だった幻想郷での生活も、悪くないのかもしれないと思いながら…
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