ありふれない防人の剣客旅   作:大和万歳

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 神様の知らないヒカリでトンチキ持ってくるのはシェム・ハさん泣きそう
 トンチキで接続を何とかするんじゃなくてヘリオスみたいにそのまま周りを廃人にしそうで怖い




第十四刃

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 天之河をはじめとする一行がベヒモスを討伐してはや数日。一行は、一時迷宮攻略を中断してハイリヒ王国王都へ戻っていた。

 

 六十六層以降という今まで誰も足を踏み入れたことが無い領域での探索は予想以上の疲労をメンバーへと齎していた。誰も足を踏み入れた事がないということは、今までの階層と違い本当に何もマッピングがされていない白紙の地図を慎重に埋めていく必要があるということである。地道な探索、そして今まで以上に強さが上昇した魔物との戦闘、そういったモノによる疲労は激しいものであり、メルド団長は一度中断して休養を取るべきと判断した。

 休養を取るだけならば、わざわざ王都に戻る必要もなかったのだがホルアドへと戻り休息していた一行に、王宮からの迎えが来たのだ。どうやら今まで音沙汰がなかったヘルシャー帝国から勇者一行への会談の申し込みがされたからである。

 

 

「今まで到達したことの無い六十六層以降へ足を踏み入れた。なるほど確かに来るのは当然だろう」

 

 

 天之河らからすれば、何故今なのか?という疑問が浮かぶのは当然だったが、空からすればこのタイミングで帝国がやってくるのは当然と言えた。

 そもそもヘルシャー帝国というものは、冒険者や傭兵の聖地とも言うべき完全実力主義の国。そんな国がいきなり現れて人類を率いるなどと宣う勇者など納得できるわけが無い。宗教的には帝国も信徒であるがしかし、王国に比べて信仰度は低くそして大多数の帝国民は傭兵か傭兵業から成り上がった信仰よりも実益を求める人間が多い。

 そういった事もあり、今まで帝国は勇者らにこれといった興味もなかったがしかし、空の言うように歴史上の最高記録である六十六層を突破した、実力を示したという事実に帝国が天之河たちに興味を持つのも当然だろう。

 そんな話を帰りの馬車の中でしていた、一行は王宮に到着する。

 

 

 そして、王宮へ到着した彼らを───いや、正確に言えば彼女を出迎えるように王宮から一人の少年が駆けてきた。十歳ぐらいの金髪碧眼の美少年という異世界らしい典型的な見た目の少年は一般人というわけではなく、その優れた容姿からして上流階級側の人間であり、

 

 

「香織! よく帰ってきた! 待ちわびたぞ!」

 

 

 名をランデル・S・B・ハイリヒである。

 姓からわかる通り、彼はこのハイリヒ王国の王子。そんな彼はさながら飼い主に出会った子犬の様に白崎へと駆け寄って叫ぶ。勿論この場には白崎以外の生徒らもいるが、まあ、白崎以外見えないともとれるその態度は相当鈍感でもない限りは彼がどういう感情を向けているのかは察せられる。

 だが、そんなものは残念ながら叶わない。

 

 

「ランデル殿下。お久しぶりです」

 

「ああ、本当に久しぶりだな。お前が迷宮に行っている間は生きた心地がしなかったぞ。怪我はしてないか? 余がもっと強ければ、お前にこんなことをさせないというのに……………」

 

 

 可愛い弟の様な彼に微笑む白崎に、彼は顔を真っ赤にしながら精一杯男らしくそう言うがしかし、少年の背伸びとしか映らず微笑ましいものでしかない。

 次々と何か気遣いを口にしては、白崎にやんわりと断られるその様をなんとも言えぬ微妙な表情で見る周囲。ふと、空はそんな様を見ながら、脳裏に過ぎるのはもしも妹に言い寄る不埒な人間がいたらどうするかという、やはり疲れているのだろう、なんとも今考えることか?と言うようなモノだった。

 

 

「(……軟弱者なら、いやそれ以前に翼にバッサリ切られるか……または親父殿に…………緒川辺りなら俺も何も言わないんだが……いや、歳の差が)」

 

「妹さんのこと考えてるでしょ」

 

「何故わかる」

 

「いや、なんかそんな表情してたから」

 

 

 そんな思考に水を差すのはいつの間にかに隣にいた恵里。表情が変化している訳でもないのに内心を見抜かれ、その理由について聞き質しても返ってきたのはよく分からない答えである。

 実際、表情はまったく変わっていない。どうして、それでそういう表情だと思うのだろうか。

 空にはとんと分からないが、一先ず此方に来てから余計に何か深くなっているのではないか、と一瞬引きそうになる。

 と、どうやらランデル殿下と白崎の会話に空気も読まず勘違いしかしない天之河が口を挟んだようだ。傍から聞けば煽っているようにしか聞こえない言葉にランデル殿下は敵意剥き出しの言葉を天之河へとぶつける。

 それに白崎は苦笑いし、天之河はキョトンとしている。苦労人はため息をつく。その様子を見て、恵里もつい苦笑いし、空は肩を竦める。

 どちらもどちらだ。ランデル殿下の言葉は子供特有の自分本位で白崎の幸せを決めつけており、天之河は白崎は自分が好きだという前提がある。どっちもどっちで真に白崎の心を分かろうとしていない。

 

 

「まあ、どちらでもいいが」

 

 

 そんなものは空からすればどうでもいい話だ。自分へとその火の粉が飛んでさえ来なければ。

 そんなモノは飛んでこないだろうが、な。そんな風に胸中で呟いている空を見て恵里はやはり苦笑いする。

 

 

「よ、用事を思い出しました! 失礼します!」

 

 

 そう言ってランデル殿下はいきなり踵を返して駆けていく。

 そんな声に逸れていた意識は戻り、視線が先程までランデル殿下がいた場所へと向けられるとそこには十四歳ほどのランデル殿下同様金髪碧眼の少女がいた。

 彼女の名はリリアーナ。ランデル殿下の姉である王女であり国民にも人気が高く、天之河ら召喚された者らに王女としての立場だけでなく、一個人としても心を砕いていた。曰く、勇者らにとって本来関係の無い自分たちの世界の問題に巻き込んでしまった、そういう罪悪感があるらしい。

 なるほど、確かに好感が持てるがもしも空が彼女の立場であればそう思えるだろうか。

 まず、間違いなく自国の犠牲を減らせるなら、他国、いやこの場合は異世界か、異世界の人間を消費するのに罪悪感など無い。だって、当然の話だろう。誰だって自分の国、自分の国民の方が大切なのだから。

 それに使い潰したところで、異世界から何か文句や報復が来ないのもありだ。

 

 

「お帰りなさいませ、皆様。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」

 

 

 リリアーナはそう言ってふわりと微笑んだ。

 その微笑みに白崎や八重樫という美少女が身近にいるクラスメイトらは約一名を除きこぞって頬を染めた。リリアーナの美しさには二人にはない、洗練された王族としての気品や優雅さというものがあり、多少の美少女耐性で太刀打ちできるものではなかった。

 なお、頬を染めていない空は身内贔屓極まりない判定で圧倒的に妹へと軍配が上がっている為、簡単に弾いていた。

 空はそもそも判定が可笑しいので例外として、他のクラスメイトらに対して昔からの親友のように接することが出来る白崎らの方がおかしいのだ。

 

 

「ありがとう、リリィ。君の笑顔で疲れも吹っ飛んだよ。俺も、また君に会えて嬉しいよ」

 

「えっ、そ、そうですか? え、えっと」

 

 

 一切下心なく、素でキザなセリフを吐く天之河に王女という立場上、下心などが察せられるリリアーナはつい頬が赤くなる。そして、どう返すべきかオロオロとしてしまう、そういうギャップも人気の一つなのだろう。

 だが、ギャップなら俺の妹にもある。と何故か胸中で張り合い始める空の変化を何となく察したのか隣に立つ恵里は軽く肘で空を叩き此方側へと戻す。

 やはり、疲れているのだろう。いや、それよりもどうして空の胸中を恵里は察せられるのか、少し引いた。

 そんな二人の言葉を介さぬやり取りも、乱れた精神を立て直したリリアーナが天之河を促す声で終わった。

 

 

「えっと、とにかくお疲れ様でした。お食事の準備も、清めの準備もできておりますから、ゆっくりお寛ぎくださいませ。帝国からの使者様が来られるには未だ数日は掛かりますから、お気になさらず」

 

 

 その言葉に従い、一行は王宮へと入城し、用意された風呂で汗を流し、豪勢な食事に舌鼓を打つなどして迷宮での疲れを癒しつつ、居残り組へとベヒモスの討伐を伝え歓声が上がったり、これにより戦線復帰するメンバーが増えたり、畑山先生が一部で『豊穣の女神』と呼ばれ始めていることが話題になって彼女を身悶えさせたりと色々あったが、天之河達はゆっくりと迷宮攻略で疲弊した体を癒した。

 白崎は内心、迷宮攻略に戻りたくてそわそわしていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 風鳴空 17歳 男 レベル:48

 天職:防人  職業:冒険者  ランク・紫

 筋力:700

 体力:560

 耐性:430

 敏捷:650

 魔力:360

 魔耐:530

 技能:国津遺伝子[+剣質強化][+◼◼◼◼◼・◼◼◼◼◼◼][+神の依代]・状態異常耐性・剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇]・見切[+人体理解]・縮地[+加速]・先読・気配感知・言語理解[+統一言語]

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「(いや、待て)」

 

 

 久方振りに見たステータスプレートの内容に空は胸中でツッコんだ。珍しく疲れておかしな思考に傾いているというのに、最後の最後で余計に疲れてしまいかねないようなモノを目にして、ため息をつきそうになるも堪え技能へと目を通していく。

 国津遺伝子より派生した[剣質強化]以外の二つ。片や黒染まりで解読不可能、片や神の依代とは、どう考えても厄ネタどころの話ではない。

 

 

「これは、如何に。説明を要求します」

 

『ん、あ、ああ?いや、少しな。身体の中を整えたわけだが、特に悪いものは起きんよ。そもそもシェム・ハの断章があるわけでもない、腕輪でも付けん限りお前がシェム・ハの器になることも無い』

 

「御身も神でしょうに」

 

『そうだな。いざとなったら俺がお前の身体を動かす為の措置だ。なに、俺は別に蘇ってどうこうするつもりは無い。大和はお前たち防人に任せたからな』

 

 

 そう言うエンリルに空は納得するしかなかった。

 どうせ、何を言ったところであちらにこの身体の環境を整える力がある以上どうしようもない。仮にここで依代ではなくなったとしても気がつけば依代に戻っているのがオチだ。

 それならあらかじめそうだ、と認識している方が正解だろう。何より空はエンリルをそれなりに信用していた。そもそも身体を整えられるなら早々に依代にして復活していたりするはずなのだから。

 そして、次に視線を向けるのは言語理解の派生である[統一言語]、これに関してはいったいぜんたいどういうことだろうか。確かにシェム・ハの断章がないとしてもバラルの呪詛は健在なのでは。

 そう聞こうとして、それよりも先にエンリルの声が響いた。

 

 

『これは、依代として整える際についでにバラルの呪詛を取り除いた結果だな』

 

「ついで、程度でバラルの呪詛が解かれた、と」

 

 

 なんと言えばいいのか。

 目頭をつまみながらなんとも言えぬ、とため息をつく。そもそも統一言語が使えるから、なんだと言うのか。

 たった一人言語が出来ても話す相手がいない以上どうしようもない。そう考える空はベッドに倒れ込む。

 

 

「レベルは順調……いや、まだ足らないか」

 

 

 六十六層以降の魔物に対して、ベヒモスの様なモノでもない限りはこれといって苦戦はしない。

 だが、だからこそ空のレベルは伸び悩んでいた。苦戦しないのでは数を稼ぐしかなく、その数もなかなか稼ぐことが出来ない。

 故に強くなる為にはベヒモスクラスでもなければ、どうしようもなく、冒険者として迷宮攻略再開前に経験を積んでいた際に複数人で動くよりも一人の方が経験は積みやすいと感じていた。故に段々と仲間たちと共に迷宮攻略をするよりも一人で進む方が気が楽だ、と考えていて────

 

 

『なあ、空。お前は、神代魔法に興味はないか───』

 

 

 その悩みに神がその手を差し伸べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────






 今日で6月も最後です。
 明日から7月が始まり、より一層暑くなってくると思いますが皆さんもお体に気をつけてください。作者も頑張ります
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