ありふれない防人の剣客旅   作:大和万歳

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 気がつけば、アメノハバキリがヒロイン化していて、無機物に寝取られそうな女の子がいるらしい…………怖い

 誤字脱字報告本当にありがとうございます。


第二十四刃

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 その日、グリューエン大火山を覆っていた厚さ数キロに渡る巨大砂嵐が一時的に割れた。

 

 

 アンカジに生まれ育ってきた人々が一度たりとも見た事がなかった光景に誰しもが狼狽え驚き恐怖した。

 もしや天災の前触れなのでは?終末の始まり、そんな未知への恐怖がそこにはあり、家族と共に家へ籠って震えた。中にはもしかしたら、ついにグリューエン大火山が噴火するのでは、と考えて逃げ出そうとする冒険者の姿があり…………。

 そんな中、一人の冒険者の青年はグリューエン大火山に足を運ぶと言っていた、短い間だが共に戦った冒険者の身を案じていた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 そして─────

 

 

 

「フ、フッ、フハハハハハハ!!!」

 

 

 瞬間、大気を切り裂くのは幾重もの斬撃。

 目に見えぬ速度で振るわれた絶技のソレは羽虫であろうとも逃がすことは無い、と感じるまでのそれはしかして何も込められていない。殺意も敵意もなく、ただただ剣の閃き。

 故に逃れ生ける者など誰もいない。

 

 

「この程度で私が捉えられる、とでも?」

 

 

 だがしかし、相手もまた無味乾燥に対応する。

 迸るのは銀光。天に輝く月光をより強くしたかのような輝きが放たれて、絶技による斬撃の投網の一部と衝突する。その銀光は美しく魂すら魅了する輝きであれども見る者が変わればかくも恐ろしき死滅の銀光。

 故に如何なる障害も残しはしない。

 

 

「見せろ、お前の力を(つまび)らかに─────」

 

「無駄な抵抗を─────」

 

 

 斬撃と銀光が衝突し生じた空隙にて二人はぶつかり合う。片や鋼の魔力光を纏った絶刀、片や銀の魔力光を纏った大剣。

 何度も何度もぶつかり合い鎬を削り合う。

 銀の魔力光は触れれば即座に分解する固有魔法を有している為、ぶつかれば即座に絶刀は崩れ去る運命にある筈なのに絶刀は分解など知らぬ存ぜぬ片腹痛い、と固有魔法を切り裂きながら、大剣を断ち切ろうとぶつかる。

 と、なれば銀の戦乙女が劣勢となるのは当然だろう、おのが武器である固有魔法を斬られて無効化されているならば、だがしかし、固有魔法を無効化されたからといって劣勢とは限らない。

 一撃の威力を落とされたというのならば、手数を増やせば仔細問題なかろうよ。後ろに引かれた左手に握られるのはもう一振りの大剣。

 横合いから打ち込まれたそれに対して鋼の天羽々斬は鞘を大剣と身体の間に差し込みぶつかる瞬間に鞘を振るって弾いてみせる。銀の魔力光に触れたが故に鞘は分解されるがしかし分解された粒子体はすぐさま収束し結晶化を経て元の鞘へと復元する。

 そうして生まれた僅かな隙に天羽々斬はその場から後退しながら、絶技の槍衾を放つ。

 無論、戦乙女は分解を付与した双大剣を振るい、自身へ迫る槍衾を切り拓く様に突貫する。その背に携えた美しき銀翼をはためかせながら。

 

 そんな彼女の姿を後退しながら見る天羽々斬は、視線を鋭くし口角を僅かに上げて、ならばこれはどうだと再び斬撃を放っていく。だが、まるっきり同じではなく絶妙にタイミングをズラし、対応しにくいような組み合わせの斬撃。

 それに対して、戦乙女は何度でも何度でも、一切の疲労を感じさせずに真正面から斬撃を双大剣に付与された分解を使用しながら対応していく。

 ああ、なんてなんて、面白い。

 僅かに、いや、それなりに天羽々斬と比べて戦乙女の実力が高い。己よりも強い相手とぶつかり合いながら、天羽々斬は強く鋭く成長していく。本来ならば戦闘中に成長などありえないがしかし、天羽々斬の中のオリハルコンがそれを良しとする。覚醒などという光狂いよろしくの急成長などは起こしはしないが経験を確実に糧にしていく。

 その感覚に天羽々斬は笑みを浮かべる。

 

 

「お前が、お前こそが、我が好敵手(運命)!」

 

「意味が分からぬ事を!」

 

 

 斬撃を越えた戦乙女の双大剣とそれを迎え撃つ天羽々斬の絶刀が何度目になるか分からぬ程にぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 グリューエン大火山を攻略し、帰りのショートカットである三千メートル近い昇りエレベーター、円盤に乗って着くのを待つ中、空は自分が取得した空間魔法について思考を巡らしていた。

 単純に考えれば空間に関係する魔法だろう。

 だが、本当にそれだけなのか?

 空は妙に馴染むこの魔法の本質は何なのかを探っていく、ただ空間に作用するだけならばなるほど確かに空間転移などの魔法として使用するのだろうが…………。

 

 

「それだけで神代魔法と言えるのか?」

 

 

 空は魔法使いではない。確かに風の魔法に対して適性があり、実際に使用しているが……それでも本分は剣士だ。

 故に思考を巡らせながら、空間魔法の定義をより深く考える。

 

 

死想冥月(ペルセフォネ)空間干渉型召喚能力(シルヴァリオ・トリニティ)……」

 

 

 真っ先に思い浮かぶのは灰と光の境界線の愛する渚が有する能力。それは簡単に言えば、遠隔瞬間移動であり物質や法則を問わず、縁深いものを己が元まで呼び寄せられる能力であり、彼女はそれで主に冥王の反粒子を召還することで戦闘を行っていた。更にいえば彼女は最終的に座標情報さえ知覚できれば、地球の裏側にいる人間の空間を指定して発動起点とする事すら出来るようになっていた。

 つまるところ、空間転移の究極系と言えるだろう。

 やろうと考えて、しっかりと準備をしておけば敵対者が寝ている所にナイフの一本を転移させ落とせばいいのだから。

 

 

「死想冥月とはやや異なるし一般的な空間魔法という認識とも違うかもしれないが……審判者(ラダマンテュス)の空間への衝撃付与(スティグマ)もある意味空間に作用する能力と言えなくはない」

 

 

 衝撃を空間に貼り付ける。この辺りは議論の余地はあるだろうが、ある種の空間魔法と言えなくもない。転移要素はないがあくまで空間に作用しているという点を見ればだ。

 そして、同時にもしかすればこれもある意味空間干渉の能力なのではないか?と思考に過ぎるものがあった。

 

 

現象操作(シャインカラーズ)事象改竄(アメノクラト)……いや、少し色が違うか」

 

 

 これらはまた違った分類だろう。確かに空間に干渉しているが流石にこれらを空間魔法という括りに入れるのは違う。

 ならば、ならば、と思考は巡り巡る。

 空間魔法に空間転移以上のモノを求めてどうするのか?という思考が無いわけではない。剣士なのだから、わざわざ魔法に対してどうたらこうたら、と考えるぐらいならば空間転移によるヒットアンドアウェイでも行うか、これからの旅路での移動時間短縮に利用すればいい。

 

 

『空間に干渉する点を考えるなら、お前の使っている荷物袋なんかが一番じゃないか?見た目以上の内部空間がある、空間魔法の一端を利用してるもんだろう』

 

「それは、確かに」

 

 

 視線を腰に下げている荷物袋へと向ける。

 確かに言われてみれば空間を広げるというのもありふれたモノだ。転移もそうだがこうして内部空間を拡張出来るのは物資輸送にも役立てる。転移魔法はそのまま移動だが、空間拡張も併用すれば移動後のスペースも抑えられる。

 

 

「ゲームでよくあるアイテムボックスも出来るというわけだ」

 

 

 荷物袋でも十分問題は無いが。

 そう付け足しながら、気がつけばすぐ頭上に夜空が広がり始めていて、どうやら考え込んでいる内にもうすぐそこまで来ていたようで、たった一日の出来事に自分の甘さを再認識しながら、円盤が地上へと到達し─────

 

 

 

 

「私と共に来てもらいます。我が主の依代」

 

「断る」

 

 

 瞬間、抜刀し自分の眼前へと迫っていた存在へと叩き込む。それを二メートル程はあるだろう白い鍔のない大剣でそれは受け止めた。

 ギチギチと、音を立てながら絶刀と大剣が相手を折ろうとしている中、瞬時に空が蹴りを相手に叩き込むが相手はそれを受ける前に離れ宙に浮かびながら空を見下ろす。

 よく晴れた夜空の下、美しい月光を背にしてそれは佇んでいる。以前見た時と違い、纏っているのは修道服ではなく、白いドレス甲冑と言うべきモノを纏っている。

 膝下まではあるノースリーブのワンピースドレス、腕と足そして頭には金属製の防具が備わり、腰には両サイドへ金属プレートを吊り下げているなどと所謂、戦乙女と言うべき格好だ。

 嘗て、空が仲間たちの前から姿を消す原因となった存在、「神の人形」がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月光を背に夜空に浮かぶ戦乙女はその背に銀色に光り輝く一対の翼を広げた。見る限りその翼は物理的なものではなく、彼女の魔力で編まれた翼であるらしく、彼女の髪と同じ銀のそれは背にしている月光も相まってまるで芸術のような美しさ、いや人間では再現出来ぬ美しさがあった。

 だが、空にとってそんなものはどうでもよく、「神の人形」らしく無機質で機械的な人形のような瞳を見ながら、空は口を開く。

 

 

「一週間振り、だな。神の人形」

 

「…………いえ、私ははじめましてです、我が主の依代。私の名はフュンフト、我が主の命によりあなたを迎えに来ました」

 

「なるほど、流石は人形。量産品というわけか」

 

 

 と、なれば性能は一律だろう、と判断しながら果たしてその性能は如何程か。

 

 刹那、走るのは無数の銀閃。

 一先ず手足の一つでも寄越せと凡そ人外であろうとも逃れられぬ斬撃の投網で挨拶する。

 

 

「ノイントの報告では勇者と同程度だったはずですが」

 

 

 その挨拶に対し、フュンフトと名乗った戦乙女は事前情報とは乖離した能力値に再評価しながら淡々とその手の大剣で斬撃に穴を空ける。

 同時に簡単に連れ帰るのは難しい、と判断してその大剣に銀色の魔力光を纏わせる。

 

 

「主の為にも、なるべく無傷で連れ帰りたかったのですが仕方ありません。手足の一、二本は落とさせて貰います」

 

「やってみせるがいい。人形」

 

 

 依代とする為に空を手に入れなければならないのにも関わらず、手足の欠損も辞さないというあたり、そういった四肢の欠損を修復する事が出来るのだろう、と内のエンリルは判断し、逃走が不可能である事を理解する。

 空間魔法という足を手に入れたはいいが、まだ手に入れて十分少し、どう考えても手札にすることは不可能。そして、スペックをフルで活用したところでフュンフトから逃げる可能性は低い。何せ、ここはグリューエン大火山の頂上、逃げるには下山か迷宮の二択だが下山しても間違いなく追いつかれ、迷宮に逃げたところで消耗戦だ。

 如何に完全聖遺物との融合をしたとはいえ、マグマ蛇相手ではあまりに調整が足りない。ならば、ここで取る手は一つしかなくて。

 

 

『いけるか』

 

「(何とかするしかないでしょう)」

 

 

 神の使徒の撃退以外無い。

 

 

「では」

 

「疾ッ!」

 

 

 瞬間、空の背後へと移動していたフュンフト。狙いは絶刀を握る空の腕。

 だがそれを察知していた空はフュンフトが背後に回ると同時にその場から跳び退いてフュンフトへと斬撃を放つ。それを苦もなくフュンフトは大剣を振るって、銀の魔力光へと斬撃が触れた瞬間にまるで砂になったかのように散り散りとなって消えた。

 その光景に目を見開きながら、考察云々はエンリルへと投げ付けて飛翔し迫るフュンフトを回避して、距離を維持する様に斬撃を放っていく。

 だがやはり、魔力光へと触れれば容易く解けて消える。

 

 

『分解か』

 

 

 見たのは二度。たったそれだけでエンリルはフュンフトの力を看破した。

 ああ、そうかならば、と。

 空は地面を蹴り加速しフュンフトの懐へと迫り、いつの間にかに納刀していた絶刀で抜刀術をしかける。それに対して、フュンフトはさっきのを見ていなかったのか?と愚者でも見るかのように銀の魔力光を纏った大剣でそれを受け止める。

 瞬間、やはり絶刀は触れた事で翡翠の粒子へと分解されて───

 

 

「予想通りだ」

 

「なっ!?」

 

 

 すぐさま、粒子は再結合して結晶化、元の絶刀へと復元した。復元した絶刀はそのまま大剣を弾き上げ、その隙を突いて首を落とそうと再び振るうがしかし、銀翼がはためき夜闇を切り裂きながら銀羽の魔弾が放たれた。

 すぐに反応し、後方へと下がるが魔弾はそれを追いかけていく。

 

 

「───こうだな」

 

 

 当たるまで放たれるだろう銀羽の魔弾。それに対して、空がとった手は、絶刀で切り裂き落とす。

 ではなくて、下がりながら現れる幾重もの半透明な板が魔弾を受け止めていく。

 その結果に空は満足そうに軽く笑みを浮かべ、少しずつ理解していく。

 

 

「空間に作用する。干渉する……ならば、こうして板を作るのも問題ない、か」

 

 

 魔弾を受け止めていく板……空間に作られた壁を前に空はそう呟く。

 何をしたのか、と聞かれれば空間魔法で自分と向こう側の間に小さな壁を挟んだというモノ。空間転移など流石に使えるわけもないがこうした小細工を使う分には既に空間魔法は空に馴染んでいた。

 ならば、手札も僅かに増える。

 そう認識して、空は駆ける。

 

 

「ちょこまか、と!」

 

 

 そんな空へ先程のようにフュンフトは銀羽の魔弾を放っていく。しかし、同じとは思ってはいけない。

 先程のように空間の壁を作って受け止めてみれば魔弾が着弾した箇所から崩れていくのが分かる。つまるところ、魔弾にも分解を付与しているのだろう。

 ならば、止まるな。

 足を止めるな。

 ギチリ、と音が響き鋼の魔力光を身に纏い、先程以上の速度でフュンフトへと迫る。魔弾?放つ箇所が翼である以上至近距離であれば、フュンフト自身に当たる可能性はあり、何よりもそんな近距離で放てば間違いなく空は死ぬかもしれない。

 依代として確保せねばならないフュンフトからすれば、手足の一、二本はともかく生命を奪うのは好ましくない。

 であれば、使えんだろう。

 

 

「“劫火浪”」

 

 

 生きていれば問題ない。

 発動したのは、天空を焦がす大火。うねりを上げながら頭上より覆い尽くす様に迫る熱量、展開規模ともに桁外れなその大火はこれを受けても生きてはいるだろうというフュンフトのある種の信頼であり───

 

 

 ああ、もちろん。

 絶刀はそんな大火を軽々と両断してみせた。

 

 

「馬鹿な」

 

「狙って斬ればこんなものだろう」

 

 

 魔法という塊と置き換えれば、斬れるのは当然だろう。さも当たり前のように答えた空はそのままフュンフトを仕留める為に絶刀を振るう。

 

 

「いえ、まだです」

 

 

 間違いなくフュンフトを殺す速度で振るわれた斬撃をフュンフトは大剣で受け止めた。先程と違い、鋼の魔力光を纏った絶刀は分解されることはなく最初のように大剣とぶつかり合う。

 防がれた。

 ならば、こうだ、と。恐るべき速度で次々と絶技を放つ空をフュンフトは受け止めていく。何度も何度も受け止めていくその様は、普通であれば心が折れるはずだ。自分の力が軒並み効かないのだ、と。

 

 だが、空は笑っていた。

 口角を僅かに上げながら、何か素晴らしいモノを見たかのように笑みを浮かべて技を振るう。

 鋼の魔力光と銀の魔力光がぶつかり合い、その余波で砂嵐が割れていようが知らぬ知らぬ。既に空の絶刀に敵意も殺意もなく、一度空の斬撃より逃れ夜空へと佇むフュンフトを見上げて、空は笑った。

 

 

 

 かくして、戦いは冒頭へ至る。

 天羽々斬と戦乙女の戦いは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────

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