ありふれない防人の剣客旅   作:大和万歳

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 まず先に謝罪をば、
 今回は思いっきり何時もの時間に遅れたことをおわびします。投稿を楽しみにしていただいた読者の方々、申し訳ないと思います。
 なぜ、遅れたのか、と言いますと、まあ言ってしまえば単に今日は時間がなかったからということになります。少し前から忙しく、書きためが出来てなかったのが原因ですね。
 それでは、本編をどうぞ




第三十四刃

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 受け付けのおばちゃんより貰った地図を見ながら、空はブルック滞在中の宿場として決めたのは『マサカの宿』という宿屋だった。

 地図によれば、料理は美味くまた防犯面でもしっかりとしており、何よりも空が求めている風呂があるというのがポイントが高かった。無論、風呂があるということはその分割り増しになるというもの。その点もしっかりと余計な事に路銀を使っていない空からすれば気にすることではなかった。

 ブルックを見て回るのもなんにせよ、ひとまず先にチェックインするのが重要だろう、と考えた二人は冒険者ギルドを出て、宿場を決めて早々に真っ直ぐ地図に従って件の宿屋へと向かった。そこそこに賑わう宿屋の中へ入れば、一階はどうやら食堂となっているらしく複数の人間が食事をとっており、その際にやはりと言うべきか睦月へと視線が集まる。二人はそれらを無視しカウンターであろう場所へ真っ直ぐ進めば、翼と同じぐらいの歳頃だろう少女が元気よく挨拶をする。

 

 

「いらっしゃいませー、ようこそ『マサカの宿』へ! 本日はお泊まりですか? それともお食事だけですか?」

 

「宿泊だ。確認だが、冒険者ギルドで頂いたこの地図に記載されている通りだろうか?」

 

 

 そう言いながら、空は地図を見せれば少女は頷いて説明を始める。

 

 

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい!書いてある通りですよ。それで何泊のご予定ですか?」

 

「二泊、食事付きと風呂も頼みたい」

 

「はい。お風呂は十五分百ルタです。今はこの時間帯が空いておりますが」

 

 

 そう言って、少女は時間帯表を見せる。

 空としてはゆっくりと入りたいものだが一時間も入る性格ではない。睦月は特段そこまで風呂に拘りがあるわけでもなく。

 

 

「三十分で頼む」

 

「三十分ですね。それでは、お部屋はどうなされますか?現在、一人部屋二つ、二人部屋が空いておりますが」

 

 

 チラチラとやや後ろに立つ睦月を好奇心が含まれた目で見る少女。後ろを見ているわけではないが空の空間把握により、周囲の食堂にいる客たちが聞き耳を立てているのが理解出来た。

 だから、どうしたという話なのだが。

 空が睦月を一瞥すれば、彼女はすぐにその意図を察してほんの少しだけ考える素振りをし

 

 

「私はどちらでも構いません」

 

「そうか……一人部屋ふたつで頼む」

 

「は、はい、承知致しました」

 

 

 二人の間に男女の関係などどこにもない。

 故に二人部屋だとしても問題など何も無いのだがしかし、やはり外聞というものもある。邪推されるのも面倒であるが故に空は二人部屋よりやや出費はあるが一人部屋ふたつをとることにした。

 そうしてつつがなく、宿泊の手続きが行われていき、部屋の鍵を受け取った空は片方を睦月に渡して早々に二階にある部屋へと向かっていく。

 

 

「何かあれば、言え。それと部屋の施錠はしっかりと行え……わかっていると思うが不審な輩には気をつけろ」

 

「はい、肝に銘じておきます」

 

 

 そう言って空と睦月は分かれ、各々の部屋へと入っていく。

 部屋の中はしっかりと掃除が行き届いており、ベッドも当たり前に整備されていた。空としても受け付けのおばちゃんの審美眼は決して侮るべきものでは無いと理解していた為、この宿屋が期待はずれということはない、と分かっていた。

 空は荷物袋を置いてから、ベッド脇に置かれていた簡素なテーブルに絶刀を置き、刀身の整備を始めていく。

 結局の所、オリハルコンで形作られているのだから一度分解して再結晶化させ、刀身に戻せば傷や疲労など全てゼロに戻るものだが、空にとってそんな手抜きは出来ない。何よりアメノハバキリには意識が残っている以上こういった手入れを怠り楽に走れば、もしかすれば……という事がある。

 故にしっかりと手入れを行っていき、気がつけば窓より差し込む陽光が夕陽へと変わっていた。

 

 

「……ふむ」

 

 

 刀身を通して伝わるアメノハバキリの満足そうな意識に空も良しとしたのか、片付けていき刀身を納刀して、帯刀するか部屋に残していくかどうかを一瞬逡巡してからそのまま持っていくことに決め、部屋を出る。

 手入れ中に睦月が何か言ってこなかった事を考え、空は隣の睦月の部屋をノックすればすぐに睦月が顔を出す。

 

 

「少し早いかもしれないが夕食にでも行くとしよう」

 

「はい、風鳴様」

 

 

 そうして、二人は階下の食堂へ向かえばやはり少し早かったのかしばらくテーブルで談笑───と、いっても二人が話すとしたらせいぜい旅路での行動についての話でしかなく、歳頃の男女らしい会話は一度もなかったのは仕方がないことだろう───し、夕食の時間に注文した料理はなるほど地図に紹介されていた通り、美味い料理で空の仏頂面も僅かに笑みを浮かばせていた。

 その間も当たり前のように二人へと好奇と嫉妬の眼差しが向けられていたのだが、これも当たり前に二人はそれらを無視して、食事を終えた後に風呂へと入る事となった。

 

 

 しっかりと男女で時間を分けたが睦月の好意もあり、先に風呂へと入った空は十五分という短い時間ながもやや砂が混じった髪を洗い、風呂で心身ともに安らいだ空としてはこの宿場に対して概ね満足していた。

 せいぜい、風呂を出て睦月が出るのを食堂の片隅で待っていた際に宿屋の少女から強い視線を受けていたのが空としてはなんとも言えないものではあったが。

 ブルックの街、一日目は特段これといった事もなく夜も更けていき、空と睦月は各々の部屋で眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブルックの街、二日目。

 この日は食料品以外の買い物をする事を事前に睦月と決めていた為に朝食をとった二人は早々に宿場を出て、まずは衣服、とりわけ防寒具を扱っている店を探すことから始まった。

 まだ午前中だというのに、街の中は既に喧騒に包まれており、メインストリートを見てみれば昨日のように露店には既に店主が入っており、大きく元気な声で呼び込んでいて、買い物をしている主婦や冒険者たちと激しく交渉を行っているのが見える。更には食べ物を取り扱っている露店も始まっていて、まだまだ昼は先だというのに香ばしい濃いめの味付けの匂いが漂い始めていて、視線を向ければ何かの肉の串焼きらしい。

 それを見ながら、少し早いのではないだろうか、と空は思いつつも日本ではないのだからそんなものか、と考えて目的地となる防寒具類を扱っている店がどこにあるのか受け付けのおばちゃんもといキャサリン直筆の地図へと視線を走らせる。

 地図には宿屋がしっかりと書いてあったように、道具屋や服屋などについてもきちんと記載されていた。服屋も普段着用の服屋、礼服を取り扱っている店、そして冒険者や旅人が行きつけの店、などと目的に応じてしっかりとどの店がオススメなのかが事細かでかつ簡潔に分かりやすく記載されている。その中で、空が選んだのは普段使いの衣服と冒険用の衣服のどちらも取り扱っている店。

 

 

「すまない、ギルドのキャサリン殿の地図を見て来たのだが───」

 

 

 そう言いながら、店へと足を踏み入れれば……

 

 

「あら~ん、いらっしゃい♥可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」

 

 

 怪物がいた。

 身長は空よりも高い二メートル強であり、全身は筋肉の鎧が纏っており、その顔面は画風が違うとしか思えない濃すぎるもの。そしてその髪型は基本的にスキンヘッドであるのだが、天辺に一房の長い髪が伸びていてそれを三つ編みに結っていてその先端をピンクのリボンで纏めている。

 そんな怪物が動く度に意図的に動かしているとしか思えない様に全身の筋肉がピクピクと動いてはギシミシと音を響かせている。そして、両手を頬の隣で組んでくねくねとしている、なんとも気持ち悪い動きを見せている。

 ちなみにだが、その格好は大胆にも筋肉に包まれた豪腕豪脚を露出しバキバキに割れた腹筋をさらけ出しているというものであり…………どういう服を着ているのかについては精神衛生上の問題で伏せさせてもらう。

 少なくともおおよそ常人、常人外れでも見るだけでもどうにかなりそうな見た目に睦月は一瞬白目を剥き、空は視線を全力で外している。

 

 

「あらあらぁ~ん? どうしちゃったの? 可愛い子がそんな顔してちゃだめよぉ~ん。ほら、笑って笑って?」

 

 

 と、怪物は白目を向いている睦月にくねくねと───同名の怪異も気絶するだろうおぞましさで───蠢きながら近づいてきて、意識を取り戻した睦月がその手に何時でも大剣を取り出せるよう構えながら、目の前の怪物を警戒する。

 

 

「なんですか、あなた人間……ですか?実は地獄の怪物とかでは」

 

「んんどぅぁ~れが、深淵の邪神すら裸足で逃げ出す、見ただけで魂が蒸発するような化物だゴルゥァァアア!!」

 

「貂蝉か、何かか……」

 

「も、申し訳、ございません……」

 

 

 怒りの咆哮を上げる怪物に睦月は頬を引き攣らせながら、やや涙目という空も見たことがない表情を見せながら謝罪すれば、怪物も再び笑顔?笑顔ということにしておこう、ともかく笑顔を見せて接客に戻った。

 

 

「いいのよ~ん。それでぇ? 今日は、どんな商品をお求めかしらぁ~ん?」

 

 

 故に空も調子を取り戻すように怪物もとい店員へと視線を合わせ、合わ、せ……一度だけ目を瞑ってから相手の全身を見ないように敢えて相手と目と目を合わせてから口を開く。

 

 

「雪原でも問題ないような防寒具を探しているのだが、あるだろうか」

 

「───もちろん、あるわよぉ〜ん。そうね、外套と防寒服どちらがいいかしらぁ〜ん?」

 

「動きやすい方で頼む」

 

 

 そう、注文すれば「任せてぇ〜ん」と言ってから、少し待っていてねとバチコーンという擬音を響かせそうなウィンクをかまして、店の奥へと入っていく。

 その後ろ姿を見送る中、空はその表情は相変わらずの仏頂面を保っているがその胸中では一心不乱に自分の記憶の中の可愛い妹の表情をひたすら思い浮かべ続けていた。

 さて、当たり前だがこの空と睦月の二人以外に怪物を見てしまったのはもう一人、正確に言えばもう一柱いるわけなのだが、いったいどんな反応をエンリルはしているのか、というと。

 

 

『………………』

 

 

 怪物が空の視界に映った瞬間に視界共有を切り、空たちがこの店を出るまでそのままでいるつもりらしい。

 

 そんな入って早々の恐ろしいトラップもといトラブルがありはしたが、やはりおばちゃんのオススメだけはあり、品揃えも豊富で品質も高く、冒険者の雑な扱いにも充分耐えられる実用性機能性も兼ねた品物ばかりであり、その見た目も良いという評判通りの店であった。

 また、見た目、見た目だけが唯一の欠点と言うべきか、彼?クリスタベル店長の人柄もその見た目によらず良心的でその能力も充分に信頼出来るものであった。

 目的の防寒具や換えの服などを買い揃え、しっかりと礼を告げてから二人は店を後にした。

 

 その後、軽く武器屋などを見て回った後に喫茶店の様な店で珈琲もどきを飲みながら軽い昼食をとり、午後も適当にブルックの街を見回った二人は『マサカの宿』へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────

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