ありふれない防人の剣客旅   作:大和万歳

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 実力とか技量とか一切関係なく装者たちと主人公の相性の良さを考えてみたらぶっちぎりで切ちゃんと響、未来さんがトップに来るの聖遺物の能力って怖いね……一番相性が悪いの多分クリスかな。距離関係なく切ってくるから……


 


第三十九刃

─────〇─────

 

 

 

 

 

「風鳴空と言います、よろしくお願いします」

 

 

 初めて彼を見た時、とても同じ人間とは思えなかった。

 お爺ちゃんとお父さんの知り合いだという人の息子で、ここに来たのも彼のお父さんとはまた違った知り合い、それこそライバルらしい友人に頼まれたから、らしい。

 光輝とは違っていた。

 初めて光輝を見た時、私が抱いたのはまるで王子様みたいという気持ち。ましてや、「雫ちゃんも、俺が守ってあげるよ」なんて言葉に私はカッコイイ男の子と女の子の絵本みたいな、御伽噺じみた物語を妄想したものだ。

 だがまあ、そんな妄想も小学生時代にあった事で消えてしまったけど。光輝が私に齎したのはお姫様と王子様みたいな仲睦まじい日々ではなく、私に対する女子からのやっかみばかり。確かに私は女の子な癖に竹刀ばかり振ってるし、髪も短かった。服だって周りの子たちが着てるみたいな可愛らしい洋服じゃない地味なものばかり。そして剣道なんてずっとやってばっかだから周りの子がするような女の子らしい話も出来やしない。そんな私が王子様に見える光輝の傍にいることが他の子たちには我慢出来なかったらしく、「あんた、女だったの?」なんて言われたりもした。

 もちろん光輝に助けを求めた時もある。だけど、みんないい子、だとか、話せばわかる、だとか、あろうことか本人たちに話すんだから、その後どうなるかなんて分かるものでしょう。

 より強くなって、より巧妙になって、より陰湿になって…………そこまで来れば、もう私の中で光輝に頼ることは無くなったし、でも突き放すことは出来なくてだから、一人家の道場の裏で泣いていて────

 

 

「そんなに辛いならば辞めればいい」

 

 

 突き放すようにいきなり横合いから告げられた言葉に私は何も言えなかった。

 隣を見てみれば相変わらず仏頂面で、空虚で何を考えてるのかよく分からない雰囲気の彼がいた。

 私が涙を拭いながら、彼を見ていれば続いてくるのはあまりにも一方的な言葉だった。

 

 

「別にお前が辞めたいと言えば、辞められるだろう。鷲三さんや虎一さんとて、とやかくは言わないだろう。辞めるという選択肢があるんだ、誰も責めやしない」

 

「……私は」

 

 

 あの時の私からすればいきなり出てきていきなり何をわかったつもりで言っているんだ、って思ったしあと絶妙に勘違いしてると思った。

 確かにあの頃、私は女の子らしくなりたかった。剣術なんかやりたくなかったし、和服や道着よりも女の子らしい可愛い洋服が着たかった。竹刀よりもお人形やキラキラしたアクセサリーみたいなものが持ちたかった。ううん、少なからず今の私もそう思ってる。

 流石に剣術をやりたくないとはもう思ってないし、竹刀や道着や和服が嫌だ、とは思ってないけれども女の子らしい格好がしたいし、女の子らしい事をしたいと思ってるのは事実。

 まあ、ともかくそういう思いがあったのは間違いないのだけど、私があの時泣いてたのはやっぱり光輝やその周りが原因だった。だから、彼が言ったことは凄いズレてた。でも、誰にも言ったことのない私のそういう部分を言い当てたのは怖かった。

 

 今、思えば多分妹さんの事があったから私にそう言ったのかもしれない。

 妹さんと違ってやりたくない、と言えば辞められる。あの時の言葉にはそんな私に対する優しさと文句が混ざっていた、と私は思ってる。

 でも、あの頃の私にそんな事なんか分かるはずがなくてその場から逃げ出した。

 

 

 初めて彼を見た時と泣いていた私に言葉を投げかけた時、どちらが私にとって印象が残るかなんて考えるまでもなかった。彼に言われた事は私の中に強く残った。やっぱりお爺ちゃんやお父さんからの期待を裏切るのが怖くて何も言えなかったけれども。

 私の中では彼は薄気味悪い男の子というよりも優しくない変な男の子に思えた。普通なら関わりたくなくなるかもしれないけれど、私は何か彼なら光輝と違って答えを教えてくれるような気もした。

 何でろくに話した事も無い相手にそんな事を、と思う事はあるけどもだからこそなんでしょうね。

 

 そういう風に思っていた私がまた、道場の裏に足を運べば、彼は来た。

 どうしてこうもタイミングがいいのか、とか思いもしたけどあの頃の私にはそんな事を考える余裕はなくて彼に色々な事を吐き出していた。

 光輝の事とか、いじめの事とか。色んなことを。

 彼は何も言わずに私が話し終わるまで待ってくれて、ズバズバと喋ってくれた。まあそれが私の環境を解決するようなモノではなかったのだけれど。

 誰かに自分の中で溜まってるモノを話すと楽になる、というどこかで聞いたような話が間違っていないのが分かって、気がつけば私は週に一回光輝やお父さんたちの目を盗んでは道場裏で彼に色んなことを話すようになった。

 それは高校生になってからも続いていた。流石に部活とかの関係や毎週毎週道場に来れるワケじゃないから空がお父さんやお爺ちゃん、他の門下生たちと鍛錬に参加した日や翌日に。何も無い日の夜に電話する、などと形式は変わっていったけれども、彼は私の愚痴を嫌そうな顔せず聞いてくれたし、たまに軽い小言は混ざっていたけれど、私の事を尊重してくれた。

 光輝と違って、王子様という女の子が憧れてしまうような人間ではなく、どちらかと言えば頼りたくなるような歳上、そんな雰囲気。

 

 

 この世界に来てからも、私は彼に助けられてばかりだ。

 訓練で初めて生きているものを殺した日の夜なんて、肉を切った感触が消えなくて怖くて慰めてもらった。

 南雲くんが奈落に落ちてしまった日だって、香織を落ち着かせたり慰めたりすることに意識を割いてないと私の方が先に壊れそうだった。死ぬかもしれない恐怖に殺さなければならない恐怖、それらに押し潰されなかったのもきっと吐き出す事ができる場所があったからだって、私は思っている、思っていたのよ。

 

 

「ねぇ、どうしていなくなったの?」

 

 

 あの日、唐突に彼は消えてしまった。

 クラスメイトの誰かが逃げた、と言っていたけど光輝もそれに対して否定したように彼はそういう人間ではないのは私たちがよく知っている。

 でも、私は知っている。

 彼は必要なら切り捨てる事ができる人でもあるって。そっちの方が良いと考えれば、私たちを置いて一人で走ってしまう。そして、勝手に一人で終わらせて何食わぬ顔で戻ってくる。

 彼はそういう人なのよ……だから、私は彼に甘えてしまう。

 

 

「ねぇ、どこにいるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風鳴空が王都より消えてから、1ヶ月と少しが経った。

 この世界に来てから2ヶ月弱。たったそれだけで詳細はどうあれ、二人のクラスメイトがいなくなった。

 その事実が彼らに重くのしかかっていた。

 こうしてファンタジーな異世界に来て特別な力を得て、それを振るう機会を与えられて、魔物という凶暴な怪物を倒していくという、そんなまるでゲームみたいな感覚を味わっていた彼らは、心のどこかで命を落とすかもしれないという当たり前な感覚を忘れていた所に南雲ハジメの死を受け、そして風鳴空の失踪という事態が決して無視出来ぬ影響を与えていた。

 天之河光輝は死に消えた彼らの為に、残った生きているクラスメイトたちの為に、この世界の人々の為にとより一層奮起して、その周囲の一部のクラスメイトが感化され戦うことを選ぶ中、それ以外の彼らは心が折れてしまっていた。

 そうしてクラスが真っ二つに割れてしまった中、中村恵里は天之河光輝率いる攻略組へと参加していた。

 

 クラスメイト達に隠れて良からぬことをしている彼女は、攻略組に参加するよりも居残り組となって、王都で暗躍している方が良かったのではないか、と考えられるが彼女にとって自分自身のステータスの向上が急務である以上攻略組へと参加するのは当然の帰結であった。

 流石に彼らの前で彼女の得意とする降霊術を使用することは避けている為、降霊術に関する技量の向上はなかなか出来ないものではあるが。

 

 

「(……それはそうとして、そろそろ()一人じゃどうしようもないんだよね)」

 

 

 迷宮攻略再開に伴い、『オルクス大迷宮』近くにある街ホルアドの外れにて光輝らパーティーは魔物相手の鍛錬に勤しんでいた。

 パーティーの一人である恵里はそんな鍛錬のさなか、魔法の準備をしながらやや行き詰まっていた自分の暗躍について思考を回していた。

 王城における兵士らの三割程を彼女が有する降霊術“縛魂”を用いて掌握しており、地下牢にある秘密の工房で働かせているが彼女はつい先日手に入れた情報について思い返す。

 

 

「(魂魄魔法と神山。書き出した情報を読む限り、攻略というか入るのに他の迷宮の攻略の証が二つは必要って…………クリアした王族はグリューエン大火山と海底遺跡?を攻略してたらしいから、多分探せば証があると思うけど)」

 

 

 そして、試練の内容や攻略の方法についても既に恵里は手にしている以上、攻略は一気に容易になるだろう。しかし、そんな情報のアドバンテージだけでは恵里は満足する事が出来なかった。

 それもそうだろう。恵里には降霊術による死者の使役が可能であるとはいえ、神山は七大迷宮の一つであり試練以外に強い魔物が潜んでいる可能性があるのだ。

 攻略者は既に死んで時間が経っており、彼女の有する手駒の強さはどんぐりの背比べでしかなく、攻略組のクラスメイト、その前衛らと比べてしまえば幾分か型落ちする。

 故に恵里は行き詰まっていた。

 神代魔法を手に入れれば、少なくともある程度は進める筈なのだがその為には自陣の実力が足りない。自陣の強化をしたいが、基本的に手駒たちは一度死んでいる以上恐らく成長することは出来ない。

 

 

「(だから、ある程度強い駒を手に入れるのが一番なんだけども……流石に騎士団長はねぇ。なら、クラスメイトの中で誰か味方に引き込めればいいんだけど)」

 

 

 そう考えながら、恵里は周囲を見回す。

 ここにいるのは自分たちのパーティーだけで、他の檜山ら小悪党四人組や嘗て風鳴空が所属していた永山パーティーはいない。

 ひとまず、この場にいるクラスメイトから仲間になりそうな人間を探してみようとして、真っ先に視線を向けるのはディロスという狼型の魔物相手に聖剣を振るっている天之河光輝。だが恵里はすぐに首を横に振って、無いな、と零す。

 当たり前だろう。恵里は天之河の悪癖を知っており、そんな人間が自分の死者の使役に対して肯定的になるわけが無い、と分かりきっていた。

 では、坂上龍太郎。これは天之河と違ってまだ柔軟だが正直にいえば味方に引き入れるにはリスクが高くそこまでリターンが無いことから却下。

 

 

「(…………ま、まあ、鈴は?結界師だし?さ、流石に戦力にはならないかなぁ?)」

 

 

 同じ後衛である友人である谷口鈴は戦力にならない、という建前で候補から外す。本人としては自分が猫を被る為に利用している相手と空に言っているが、その実少なからず親友という認識がある彼女を危険な目には巻き込めないという本音があり、却下。

 ならば、と谷口鈴とは反対側の隣に立って魔法を放っている白崎香織を見て、間違いなく面倒事を起こすと考え却下する。

 恵里からすれば、白崎香織は天之河光輝に続くトラブルメーカー気質でしかなく、そんな人間を味方に引き込んでみれば待っているのは本当に余計な事しか無いと恵里は思った。では、最後に、と視線が再び前衛へと向けられ

 

 

「(雫、雫か……。雫はなんというか、空くんと距離近かったからもしかしたら味方に引き込めるかもしれないと思うんだけども…………絶対に地雷だよね。こう、()が言えた立場じゃないけどなんというか)」

 

 

 魔物相手に武器を振るう八重樫の背を見ながら、恵里はいつも通りの表情をしつつその胸中では一番仲間に引き入れてはいけない人物として、八重樫を定めていた。

 恵里から見て、八重樫はこのグループにおいての手綱係もしくは苦労人枠という印象が強かった。

 色眼鏡を外してみれば、天之河はトラブルメーカーであり無意識に敵を作りやすいタイプだ。そして、坂上龍太郎も天之河を止めるよりもどちらかと言えば賛成する方で後押しする。白崎もまた無自覚トラブルメーカーだ。谷口は恵里同様、幼馴染四人とは少し線を引いた場所にいる為、特に何も無いが。

 ともかくそんな三人、もしくはトラブルメーカー二人の火消しを担当するのが基本的に八重樫だ。トラブルメーカー二人の中で、まだ白崎は後で彼女に迷惑をかけたことを謝罪するがもう一人は自分のやったことが間違っているとは思わない為に謝罪になど来るわけもなく……苦労するばかりである。

 

 

「(それになんだっけ……ソウルシスターズ?前聞いたら凄い苦虫を噛み潰したような表情をしてた気が…………)」

 

 

 そして、彼女のクールビューティーな外面故か、歳下の子だけでなく歳上の女性にもお姉さまと慕われているとか。そんな八重樫の心労につい恵里も同情してしまう。

 と、そういった事もあり恵里からすれば八重樫雫という少女は不満や心労などを溜め込むタイプと認識出来て、そんな彼女と空の距離が下手すれば自分よりも近いようにも見受けられるのも、恐らく彼女の溜め込んだモノを空に吐き出していたのかもしれないから、と恵里は推測する。

 だからこそ

 

 

「(絶対に地雷だよね。いや、()の推測が外れてるかもしれないけど、当たってたらガス抜きできてないから暴走とかするよ?ああいうタイプって、ハマると依存するタイプだし…………正直に言えばそもそも雫の性格的に無理だよね。オカンだし)」

 

 

 なら、一番使いやすいのは檜山かなぁ?と両隣の二人には聴こえないような声音で呟きながら、支援の為の魔法を放つ。

 既に恵里の思考は別のモノへと移っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────

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