ありふれない防人の剣客旅 作:大和万歳
全然執筆の時間が取れずここまで遅くなりました。
それと、XDでついにイグナイトが来ましたね。奏が当たりません……
─────〇─────
『では、
そんな言葉と共に私の中身は一瞬で書き換えられた。あの御方との繋がりを一切合切断ち切られて発狂していた私はその瞬間、一言二言の言葉では表せないような感情が幾つも幾つも溢れては別の感情に塗りつぶされていったのを感じていた。
まず最初に溢れたのは喪失感。あの御方、我らが主より賜りし無限大もの魔力の供給が断ち切られ、あろうことか主との繋がりすら切り裂かれた。いったいどういう理屈でそれを成したのか、私には何も分からない。ただ分かるのは主を感じる事も祈る事も出来なくなった、ということで────
それを塗り潰す様に染み出したのは嫌悪。お前が私を創ったのではないのか?今まで私はお前の命令を聴いて聴いて戦ってきたではないか、どうしてこんな状況で私に手を差し伸べてくれないのか。肉体がない故に神域より出られないのは知っている、知っているがしかし神だというのならば手を差し伸べるぐらい出来るのではないのか?
そして、次に溢れ出したのは悲哀。誰も私に手を差し伸べてはくれない。神も私の姉妹たちも誰も誰もこの私に手を差し伸べてくれず、誰も私を救ってくれない。
そんな感情が私の中で溢れていた。いったいこれはどういうことなのか、主の使徒として神命を実行する我々には感情などというものは存在していない筈なのに。いったいこれはなんだというのか。
『どうやら、難しいらしいな。仕方ない』
────?何かが起きたのでしょうか?
途端に私の中にあった感情の奔流が収まり、私の中にあった不可解な何かが緩やかに引いていくのが理解出来た。
熱が引いていく感覚、だけれども冷たくはならない、常温というべきなのでしょう。そして、同時に先程までの喪失感すら私の中から消えていて…………ああ、私の胸の中。心臓部に感じるモノが私を内側から改造しているのが理解できる。
それに応じて私の中に次々と様々な情報が
既に私はフュンフトではない。
いや、正確に言えばエヒトルジュエの使徒であるフュンフト、という存在ではなくなっている。エヒトルジュエの使徒であるフュンフトの躯体ではある、だが中身が大きく変化している。
まず、嘗て神域より魔力の供給を受けていた私の心臓部は既に別物へとすげ替えられていた。
完全聖遺物オリハルコン、またの名を
それによって精製されていく粒子がフュンフトという躯体の内部構造を書き換えていく。既に嘗てフュンフトと呼ばれていた精神性は
それを表すかのようにフュンフトの銀糸の様な髪が烏の濡れ羽色の様な黒髪へと変わっていく。
それに応じて、今度は思考そのものが影響を受けていく。感情を流し込まれてから、改めて使徒としてフュンフトが見てきた光景、他の姉妹たちが見てきた光景、成してきたモノを見返していく。エヒトルジュエの使徒ではなく、
何だこれは、私たちはこんなくだらない事をやっていたと?嗚呼、嗚呼、人間を生命を玩具にし愉悦に浸る?その為に彼らを踏み躙る?やめろ、やめろ、やめなさい。
どうしようもなく、殺意が溢れて────
『邪神滅殺。その一助となってくれ
───神命下賜・
神の言葉に私の中の炉心が完全起動したのを感じて、私は完全に新生した。
「風鳴様、睦月と申します。不束者ではございますが以後よろしくお願い致します」
「…………ああ、こちらこそよろしく頼む」
私が睦月という存在となった大きな要因である風鳴様。神の依代足り得るこの方は同じ神に仕える使徒であるという点で考えれば同僚という間柄になるのかもしれません。
ですが、やはりと言うべきでしょうか。つい数日前に殺し合いと言って遜色の無い戦いをしていた、というのにこの方は何か気にしたような素振りを見せることはなく、まるで感情の無いエヒトルジュエの使徒のよう…………いえ、この場合は人間性が薄いように見えます。
御方によれば、こう見えてもかなり人間性に富んでいる方らしいのですが、とてもそうには見えません。
しかし、そんな方ですが、その剣筋は正しく神の刃と誉れるべきものであると私は感じました。そもそも風鳴様と戦った私が言うのです、間違いないでしょう…………それはそうと、どう考えれば認識出来るからで魔力の経路や繋がりを断ち切る事ができるのでしょうか……私には分かりません。
それでもこの方は信用出来る方であるのは間違いありません。私にはその絡繰までは理解出来ませんがこの方は決して御方を裏切る事はなく、エヒトルジュエを殺し、邪神滅殺を成すと感じられました。
─────〇─────
風鳴空にとって、妹という存在はメンタルの三割を占めている。ちなみに残りの七割の内、三割は実父である風鳴八紘であり、残った四割には運命やら防人やら祖神が詰め込まれている。
勿論、彼にとっての妹は異父兄妹であり、ツヴァイウィングというアーティストをしている風鳴翼である。二人の仲、正確に言えば翼からの心証はあまり良くないもので、それを空は理解しているし、その理由もよくよく分かっている。
風鳴家、防人の一族、そんな家の兄妹仲の問題と言えば、複雑な理由があるのだろうと考えるかもしれないがその実態はいたってシンプル、悪くいえば在り来りな問題でしかなかった。
兄妹間の差、と言う奴だ。
言い換えれば育てられ方、対応のされ方、扱われ方。兄と弟、姉と妹、兄に妹、姉に弟、組み合わせなど多くあるが基本的にどのような組み合わせだろうとだいたい有り得るようなありふれたモノだ。
親からどのような対応をされたのか。
例えば、三兄弟がいるとしよう。まず一番上はだいたい最初の子供だからと四苦八苦しながらも親と触れ合うことが多く、真ん中は二人目だから少し慣れてそこまで引っ付いて触れ合うことはなくなり、そして末っ子は可愛いもので上の子らと比べて甘やかされるもの。結果として割を食うのは真ん中の子供。
と、まあ、親からの扱いが兄妹の仲に影響する事は多い。空は八紘の実子であり早い時から剣を振り始めていたが故に厳しいながらも父親と共にいる時間は長く、それに対して妹の翼は事情が事情である為に遠ざけられた。そこには翼の夢を応援し、風鳴という家がそれの障害となると考えたが故の不器用さと優しさの現れなのではあるが、当の本人にはそれが分かるはずもなく二人と翼の間に溝が生じるのは当然の帰結である。
ちなみにだが、親子二人して隠れて翼のライブに足を運んでいる事を当然翼は知らない筈だ。
と、そんな理由により空は妹からあまり良い感情を持たれていないが空から妹に対してはシスコンと呼ばれるには充分な程の好意を向けていた。
そして、転生者として風鳴翼の歩んでいく道を知っているが故に風鳴空は妹を護りたいと願っているのだ。だからこそ、妹の夢を踏み躙り穢すような真似など絶対に許すことは出来ず、それらの果てに父親を殺す様な事も許せず、例え護国の鬼になろうとも空は一切気にする事はないだろう。
護国の鬼となり、父親や妹、叔父に糾弾される事になろうとも、泥にかぶれようとも、刀剣、
「────だからこそ、俺は邪神を討滅して帰還しなければならない」
雪を踏み締め、絶刀を握りしめながら風鳴空は目的地である氷雪洞窟へ向けて何処までも広がっている雪原を三人で歩き進んでいく。
「妹想い、良いじゃない。私も妹は好きよ、それこそ妹の為に妹本人に恨まれても構わないぐらいには」
「私達の場合、姉妹と言えるわけではないのでなんとも言えませんが…………あなた方のソレは少し行き過ぎに感じられるのですが」
「言っている意味がよく分からないのだが」
「言っている意味がよく分からないのだけれど」
睦月が呆れたように呟いた言葉に対して空と少女はバッサリと切り捨てる。ええ、となんとも言えぬ表情をしながら案内する少女とその後を歩く空を睦月は追いかけていく。
─────〇─────
来週は木曜から執筆する機会なんてほとんどない忙しい時期が始まるので5日ほど更新出来ない時期があります。