ありふれない防人の剣客旅   作:大和万歳

6 / 41

 シンフォギアにおける時系列が完全に把握出来ておらず、年齢等の問題が生じた為、翼と主人公の年齢差が2歳ではなく、3歳になります。
 御指摘本当にありがとうございます



第六刃

─────〇─────

 

 

 

 

 

 翌朝、まだ日が登りきって間もない時間帯、ハジメ達は『オルクス大迷宮』の正面入口がある広場に集まっていた。

 誰もが少しばかりの緊張と未知への好奇心を表情に浮かべている中、ハジメは少々複雑そうな表情を浮かべて、空は相も変わらぬ表情であるがしかし何処と無く残念そうな雰囲気を醸し出していた。

 

 と、言うのも。

 異世界の大迷宮、と言われてまず思い浮かぶのは不気味に大口を開けて入り込む者を食らう陰湿な洞窟らしい入り口。

 だが、蓋を開けて見てみれば目の前にあるのはまるで博物館の様な入場ゲートという立派なしっかりとした入り口が構えており、更には美人な受付嬢が待機している受け付けまである。これには流石にハジメも空も、そして他にも数人の生徒らがなんとも言えぬ表情をしている。

 しかし、それも仕方ないのだろう。迷宮の中、とりわけ浅い階層はそれなりにいい稼ぎ場所として人気があるようで、人気ということは人が多いということ。その中に一定数は黒い人間も当然いるだろう。

 そして、そういった人間からすれば迷宮などという公の目が入らない場所など犯罪の拠点として利用するのはやはり当然である。そして、それ以外の人間が馬鹿騒ぎしてそのままの勢いで迷宮に入って死ぬなどもある種予想するのも簡単な話でしかない。

 そういった様々な問題が王国内であるなど戦争を控えている状態で百害あって一利もない。その事から冒険者ギルドと王国が協力してこういった施設を設立したようだ。

 受け付けではステータスプレートをチェックして出入りを入念に記録、それにより死亡者数などを正確に把握する事で犯罪などの抑止としているのだろう。

 明確に記録されるなど後ろ暗い人間からすれば忌避すべき事であるし、ステータスプレートを確認すればその人間が迷宮に挑む実力があるかどうかは調べられる為、馬鹿騒ぎの果てに迷宮で死ぬという間抜けを少なくする事も可能としていた。

 さて、そんな迷宮の受け付けでステータスプレートをチェックした一行はそのまま迷宮へと足を踏み入れていく。ここから先は文字通り危険な世界。

 ハジメは息を呑みながら拳を握り締めて迷宮へと進んだ。

 

 

 迷宮の中は静寂に満ちていた。

 縦横五メートル以上はある通路は松明といった灯りがあるわけでもなく、薄ぼんやりと発光している。王都の図書館で他の生徒ら以上に知識を蓄えていたハジメはその発光しているものが緑光石という特殊な鉱物によるものだと知っていた。

 そんな通路がしばらく続き、しっかりと隊列を組んで進んでいくとドーム状で七、八メートルほどの高さの広間のような場所に出た。そこを進みながら軽く周囲を観察しているとタイミングよくそれらは姿を現した。

 壁にある隙間の数々から灰色の毛玉が湧き出る様など普通ならば面白いがしかし、そのどれもがこちらを殺さんとする怪物だ。

 

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 

 そう、メルド団長が忠告する通りにラットマンと呼ばれた魔物たちは俊敏な動きで飛びかかってくる。

 ネズミな見た目でマッチョという気持ち悪い見た目に前へと出た天之河のパーティーにいた八重樫は頬を引き攣らせている。だが、そんな事は大して意味は無く、間合いにラットマンが入ると同時に天之河、八重樫、そして坂上龍太郎が迎撃していく。

 その間に白崎香織と中村、小柄な少女谷口鈴が詠唱し始める。

 聖剣などという勇者が持つには相応しいアーティファクトを天之河が振るい、『拳士』である坂上龍太郎がその拳と脚を振るう。そして八重樫が抜刀術の要領で剣を抜き放っていきみるみるうちにラットマンの数を減らしていく。

 なかなか様になっており、ハジメたちがその姿に見蕩れていると詠唱が響いた。

 

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ――『螺炎』」」」

 

 

 白崎香織ら後衛組が発動した螺旋状に渦巻く炎が残っていたラットマン達を巻き込み焼き尽くしていく。断末魔を上げながら灰へと変わっていき、ラットマンは全滅していた。

 どうやら、天之河のパーティーからすれば一層の魔物は弱すぎるようであるが……メルド団長はその光景に苦笑いする。

 

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

 そして、彼らの実力を褒めつつ注意する。それに頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めながら、もう一言注意する。

 

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 

 つまるところやり過ぎである。

 そんな指摘に魔法支援組は、思わず頬を赤らめてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 特段これといった事もなく、戦闘を行うパーティーを交代しながら一行は着実に下の階層へと進んで行く。勿論、空も永山重吾というやや老け顔の男子生徒がリーダーを務めているパーティーに加わり、魔物相手にその剣を振るい、何体かの魔物を葬っていった。

 そうして気がつけば目的地である二十層へと辿り着いていた。本来ならばある程度熟達した実力でなければこれないのだが、チートである空たちはあっさりと到達することが出来た。

 

 無論、チートであるからといって迷宮には決して無視出来ぬものもある。例を挙げるとすれば迷宮で最も恐ろしいトラップだろう。

 ゲームの話であるならばある程度の損害を無視してもいいのだろうが、ここは現実。常人ならば掠っただけで死に至るような致死性のトラップやらゲームではなく現実なら決して無視出来ぬようなトラップが数多くこの迷宮には存在している。そんな危険な迷宮を経験浅い彼らがスムーズに進められたのも偏にそういったトラップ対策を付き添いの騎士団員たちがしっかりと用意していたというのが一番の理由だろう。

 トラップを索敵するアイテムとそれを使用する騎士団員たちの経験によって、彼らは安全にトラップを回避して降りられたのだ。

 と、二十層へと辿り着いて早々にメルド団長のかけ声が響いた。

 

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからといってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

 

 彼のかけ声に生徒らの返答が響く中、ハジメは一人騎士団員たちに守られながら後方でそれを複雑な気持ちで聴いていた。

 というのもハジメはここまで、他のパーティーの様に前へ出て戦うといった事はしていなかった。それも仕方が無いだろう。

 彼らからすればハジメは無能であり、無能をわざわざ自分たちのパーティーに入れる理由がない。さしもの空もパーティーの一員である以上、ハジメを誘えるわけもない。

 その為、ハジメが行ったのはせいぜい騎士団員が弱らせた魔物相手に錬成を使って落とし穴からの串刺しを一匹の魔物だけにやった程度である。

 これではゲームの寄生プレイヤーではないか、とため息をつきながら、再び騎士団員が弱らせ弾き飛ばした魔物に地味に上がっている魔力と精度が上がった錬成を用いて動きを封じてから剣で腹を串刺しにした。

 

 

「(錬成の精度も上がってきてるし……まあ、地道に頑張ろ)」

 

 

 そんな風に胸中で呟きながら、魔力回復薬を口に含むハジメ。そんな彼を周囲の騎士団員たちは感心したように見ていた。

 当たり前だが、騎士団員たちもハジメには期待など全くしていなかった。だが、魔物との戦闘も余裕があり、後方でやることがなく立ち尽くしているハジメにも少しやらせようと何となく思った一人の騎士団員が弱らせた魔物をけしかけてみたのだ。

 蓋を開けて見てみれば、ハジメは碌に使えない剣を適当に振るって戦うのではなく、本来鍛治職である錬成師が錬成を使って魔物の動きを封じ込めてから止めを刺すというなんとも面白い方法で倒したのだ。

 これには騎士団員たちも感心した。何せ、錬成をそんな風に使うなど騎士団員たちの頭の中にはなく、そして間違いなく効果的な対処法だったのだから。

 そんな騎士団員たちの感心を余所にハジメはこんな風にしても魔物一匹相手に精一杯な自分はやはり無能であるとため息をつくばかりである。

 

 

 

 

 一旦の小休止を挟んでから、再び二十層の探索を再開した。

 この迷宮は既に四十七層までマッピングが終わっており、その為トラップにかかる可能性も少ない。

 そして、今回の訓練はこの二十層の最奥にあたる部屋を越えて二十一層への階段へとたどり着けば終了。つまるところ、トラップという危険なものはなく、後はしっかりと魔物に注意さえすればいいという状況に、一行の空気は何処か弛緩していた。

 さて、二十層の最奥の部屋は鍾乳洞じみたツララ状の壁が飛び出し、溶けていたりするなど複雑な地形をしており、そんなせり出した壁のせいで一行は横列ではなく縦列で進んでいた。

 そうしてしばし歩いているとメルド団長がその足を止め、続いて天之河らが足を止める。縦列である以上後方からすればどうして止まったのかは分からないものだが、天之河らがすぐに戦闘態勢に入ったのを見るにどうやら魔物が出現したようだ。

 

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

 

 メルド団長の忠告が響く。

 直後、前方にせり出していた壁が変色して起き上がり始めた。褐色に変わったそれは二本足で立ち上がりながらドラミングを始める。カメレオンやカエル、蛸に近い擬態能力を持ち合わせたゴリラの魔物らしい。

 

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

 

 メルド団長の声が響く。天之河らが相手をするようで構えながら前へと出て、飛びかかってきたロックマウントの豪腕を坂上龍太郎が拳で弾き返し、その間に天之河と八重樫がロックマウントを取り囲もうとするが、鍾乳洞に近しい地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

 その為、ロックマウントは存外頭が回るのか、一度その場から後ろへと下がることで距離を作り身体を仰け反らせ、大きく息を吸い込んだ。

 それにより、腹部と胸部が膨れて次の瞬間

 

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

 

 部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

 

「ぐっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

 

 咆哮をモロに浴びた三人は身体に突如として衝撃が走り、その場で硬直してしまった。どうやらダメージを与えるものではなく相手の動きを封じ込める類の固有魔法のようだ。

 敵の前で前衛三人が見事に硬直など、致命的であるがいったいどういう事か、ロックマウントはその隙を突いて突撃する事無くサイドステップをした。

 一瞬、怪訝な表情を浮かべる一行だがそれもすぐに驚きに変わった。ロックマウントはサイドステップをした先にあった岩を持ち上げて白崎香織ら後衛組へ向けて投げつけてきたのだ。

 綺麗なフォームで投げられた岩は見事に動けない前衛三人の頭上を飛び越えて後衛組へと迫るがしかし、避けるのは難しいと判断した彼女たちは予め何時でも放てるようにしていた魔法を使う為に杖を岩へと向けた。

 

 そうして、魔法を放ち岩を破壊────する前に白崎香織たちは衝撃的光景を見てしまった。

 ロックマウントが投げた岩がまさかのロックマウントだったのだ。空中で見事に一回転を決めたロックマウントは体勢を整えてまるで飛び込む水泳選手か何かのように迫ってきた。目が血走っており鼻息荒いというおまけ付きで。

 こんなもの固まるな、と言う方が無理がある。

 思わず後衛組は悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまい

 

 

「こらこら、戦闘中に何やってる!」

 

 

 彼女たちへとロックマウントがたどり着くよりも先にメルド団長が空中で切り捨てた。そんな彼の言葉に彼女たちは謝るものの中々気持ち悪かったようで、その表情は青褪めている。

 そんな様子を見て怒りに燃える男が一人。正義感と思い込みの塊な天之河光輝である。

 

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

 

 気持ち悪さと死の恐怖を勘違いした様で、彼女たちを怯えさせるなんて!となんとも微妙な点で怒りを露わにする天之河。そんな彼の意思に呼応して聖剣が輝き始めた。

 

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ――『天翔閃』!」

 

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

 

 メルド団長の静止の声を無視して、天之河は頭上に振り上げた聖剣を一気に振り下ろす。刹那、詠唱によって強烈な光を纏っていた聖剣より、その光そのものが斬撃として放たれた。

 その速度は中々速く、ロックマウントは地形などの理由からも反応速度からも回避は不可能。

 極太の光り輝く斬撃はそのまま一切抗う事を許さずにロックマウントを両断した挙句にその奥の壁すら粉砕してようやく消えた。

 正しく勇者の一撃に他ならないがなんともまあ、短絡的なその一撃に空は呆れていた。いったいどうして、この場でそれを使うのか、と。案の定、メルド団長に怒られている天之河の姿に胸中でため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。