ありふれない防人の剣客旅   作:大和万歳

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 しっかりとシンフォギアにおける時系列を把握出来ておらず、年齢等の問題が生じた為、翼と主人公の年齢差が変更しました。
 これに伴い、辛かったので今日は二話投稿します。

 御指摘本当にありがとうございます。



第七刃

─────〇─────

 

 

 

 

 

 天之河が放った一撃がロックマウントを消し飛ばし、背後の壁を粉砕したのを見て放った本人は満足げにやり切ったと言わんばかりに息を吐いて、満面の笑みを浮かべて白崎香織らへと振り返るがそこにあったのは安堵の息を漏らし安心した彼女らの顔ではなく、笑顔で迫るメルド団長。

 笑っているが笑っていない。

 そのまま天之河へと迫ったメルド団長は天之河の頭に拳骨を振り下ろした。

 

 

「へぶぅ!?」

 

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが!崩落でもしたらどうすんだ!」

 

 

 そんな至極当たりまえなお叱りに天之河は声を詰まらせ、罰が悪そうに謝罪する。そんな彼に苦笑しながら彼女らが寄って礼を告げていく。確かに危険な行為ではあったが自分たちのために怒ったのだからありがとう、と告げるがそれはそれとして彼女らもあの行動についてはしっかりと注意をするのは忘れない。

 そうして、天之河から離れた中村は一人その視線を背後の戦闘には参加しなかった生徒らの比較的前にいた空を見つけて、一瞬ジトっとした視線を向けるがしかし、その視線を理解した空は静かに目を逸らした。

 大方、助けようと思えば助けられる距離だったろう、という意味合いの視線だろう。だが、残念ながら空からすればメルド団長が助けるだろうと理解していたし、何より自分が所属するパーティーと天之河パーティーは違うパーティーなのだから手を出すわけにもいかない。

 そして、そんな中村と空のアイコンタクトが交わした最中、ふと白崎香織は天之河の一撃で崩れた壁の方へと視線を向けた。

 

 

「……あれ、何かな?キラキラしてる……」

 

 

 白崎香織が漏らした言葉にその場の全員が反応し、彼女の視線と指さす方向へ視線が集まった。

 そこには青白く発光する鉱物がまるで花咲くように生えていた。インディコライトのような輝きに水晶のようなその姿は白崎香織を含め女子たちは皆一様に、うっとりとした表情を見せる。

 やはり、女子というモノは美しい宝石に目がないのだろう。妹は宝石よりも国宝の刀に見惚れそうであるが、と胸中で空は呟く中、メルド団長が感嘆の声を漏らした。

 

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 

 グランツ鉱石。

 簡単に言えば宝石の原石のようなものだ。

 特に何か、有能な力を秘めているというわけではないのだが、その美しい輝きがどうにも貴族の婦人・令嬢に大人気らしく、それを加工して指輪などにし贈るのが大変喜ばれるらしく求婚の際に選ばれる宝石としてトップ3に入る代物らしい。

 そんなメルド団長の簡単な説明に女子たちは皆、頬を染めながらさらにうっとりとする。八重樫はさすがにそこまでうっとりとした表情を見せていないが存外乙女らしい彼女の内心では他の女子同様うっとりしているのだろう。

 

 

「素敵……」

 

 

 そう呟きながら、誰にも気づかれない程度に白崎香織はチラリとハジメに視線を向ける。残念ながらその視線にとうのハジメは気づくことはなく、気づいたのは八重樫と空ともう一人だけであった。

 

 

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 

 そして、そんな風に言いながら飛び出した馬鹿が一人。

 白崎香織の視線に気づいていた、三人のうちの最後の一人、檜山大介である。天職『軽戦士』らしく、身軽に崩れた崖を登り始めた檜山にメルド団長は慌てだし声を荒げる。

 

 

「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」

 

 

 そんなメルド団長の静止の声も檜山は聞こえていない振りをして、登っていきついにグランツ鉱石へと辿り着いてしまった。そんな檜山を止めようとメルド団長は追いかけ始め、そして騎士団員が青褪めた表情で叫んだ。

 

 

「団長! トラップです!」

 

「ッ!?」

 

 

 そんな警告もメルド団長も一歩遅く、檜山が手を伸ばしてグランツ鉱石へと触れた刹那、鉱石を中心に魔法陣が広がった。不用意に宝に触れた業突く張りへと与えられる罰と言わんばかりのそれは瞬く間に部屋全体に広がり、その輝きを増していく。その光景はさながらこの世界へと召喚された時のことを思い出させる光景だ。

 メルド団長が声を荒げて指示を飛ばし、それに反応した生徒らは一様に部屋の出口へと走り出すがしかし、残念ながら間に合わない。

 部屋の中に光が満ち、ハジメらの視界が白一色に染まると同時に一瞬の浮遊感に包まれ、と思えば次の瞬間にはドスンと地面に落下した。

 落下した際に尻を打ってうめき声をあげながら、ハジメは周囲を見渡す。周囲にはハジメ同様クラスメイトがしりもちをついていたが、メルド団長や騎士団員達、そして空を始めとする一部の前衛職は既に立ち上がって周囲の警戒をしていた。

 先ほどのものはやはり、転移魔法の類であったようで、今いる場所は先ほどまでとは異なる、百メートルはあろう巨大な石造りの橋の上。天井は二十メートルは高いものであり、橋の下には残念ながら川など無くただただ奈落がその大口を開けていた。

 橋の横幅は十メートル程度しかなく、手すりも縁石もない。下手すればなにもつかめず奈落に呑まれてしまう、そんな橋の真ん中にハジメたちはいた。メルド団長はこの橋の両サイド、片や奥へと続く通路、片や上層へとつながる階段が見えているのを確認して険しい表情で素早く、指示を飛ばした。

 

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 

 轟く号令に生徒らはもたつきながらも動き出していくがしかし、業突く張りへの罰がたかだか転移ごときで済むはずがない。

 橋の両サイドに突如として赤黒い魔力の奔流が溢れ魔法陣が生じていったのだ。通路側に十メートル規模のものが一つ、それに対し階段側に生じた魔法陣は一メートル程であるがしかし、その数はあまりに夥しい。そうして、魔法陣からは次々に魔物が出現していく。

 階段側の無数の魔法陣からあふれ出すのは骨格の身体に剣を携えた魔物トラウムソルジャー。ほんの数秒だというのに既にその数は百に近いというのにいまだ、魔法陣は動いており次々とトラウムソルジャーを召喚している。

 そして、そんな階段側以上の地獄が背後、通路側に現れていた。

 十メートル規模の魔法陣より現れたのは正しくボスモンスターという言葉が似合ってしまう。それほどにその魔物は他と一線を画していた。

 魔法陣同様十メートルほどはある体長に四足の重厚な身体、頭部にはトリケラトプスじみた二本角に炎を灯した兜のようなものをつけた魔物。

 その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

 

「まさか……ベヒモス……なのか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メルド団長ですら冷や汗を垂らしながら焦燥を浮かべる怪物ベヒモス。それが咆哮を上げながらメルド団長らへと突進したと同時に未だ冷静さを取り戻せていない生徒らの中を一人、空は階段側に湧き始めたトラウムソルジャーの群れへと駆けていく。

 既に空はこの状況下で最も生存率の高い選択を取った。見捨てられないなどと子供の癇癪じみた事を宣う天之河と違い、空はこの場でメルド団長が死ぬ事も仕方ないと割り切っていた。

 後方通路側の方で騎士団員たちが使用した絶対の守りによる障壁がベヒモスの突進を阻み、衝撃が迸り撤退中の生徒らが次々と転倒していく中、空は腰に下げていた長剣を引き抜く。

 瞬間、派生技能である[剣質強化]によりアーティファクトでは無い普通の長剣がアーティファクトと遜色の無い名剣へと変質していき、突出した空はトラウムソルジャーへとその剣を振るった。トラウムソルジャーは三十八層の魔物であり今までの魔物とは一線を画す戦闘能力であるが、人型である以上空からすれば問題は無い。

 素早くトラウムソルジャーの剣を持っている方の肘関節を切り落とし、返す刃でそのまま背骨を切り飛ばす。

 

 まず一体。この程度ならば、問題無いと空は胸中で呟くがしかし、戦うべき後ろから走る生徒らは皆前門のトラウムソルジャーの群れ、後門のベヒモスという状況に未だパニック状態であり、隊列など無視してわれさきにと階段をめざしてがむしゃらに走り始めている。

 騎士団員の一人が必死にパニックを抑えようとしているが、恐怖で誰も耳を傾けられていない。

 そんな状況に空は舌打ちしながら次々とトラウムソルジャーを切り裂いていく。しかし、如何せん数が数でありこうして一体、二体を一度に斬った所で増える方が多いだろう。

 ならば、どうすると思考を回していきながら、その視界の端で一人の女子生徒が突き飛ばされ転倒したのが見えた。そして、そこに迫るトラウムソルジャーも。

 故に空はそれを助けるべく動こうとして、それよりも先に動いた影を見つけた。

 

 

 女子生徒へと振り下ろされようとしていたトラウムソルジャーの剣。だがしかし、トラウムソルジャーの足元が突然隆起し、バランスが崩れたのだろう。トラウムソルジャーの一撃はそのまま女子生徒から逸れて地面を叩いて終わる。

 それだけではない。地面の隆起はそのまま波打つかのように動いてそのトラウムソルジャーとそれ以外のトラウムソルジャーを数体巻き込むように橋の端へと移動させて奈落へと落下させたのだ。

 いったい誰がそんな事を、と女子生徒が周囲を見回せばやや離れた所で座り込み荒い息を吐くハジメがいた。ハジメは魔力回復薬を呷りながら、転倒したままの女子生徒へと駆け寄って立ち上がらせた。

 

 

 そんな様子を見ながら、空は軽く笑みを浮かべてトラウムソルジャーを切り裂いていき、そして女子生徒を送り出したハジメと視線がかち合った。

 視線に込められたモノを察したのか、それとも同じ気持ちだったか、ハジメは一度頷いて転身し走り出した。

 ベヒモスがいる方向へと。

 その姿を見送って、空は一度眼を瞑り懐から何かを引き抜いて目を見開く。

 

 

 敵の群れの眼前で目を瞑るなど、致命的な隙でしかなく、そんな隙を晒した事で何体かのトラウムソルジャーが迫ってくるがしかし、目を見開いた空は素早く懐から取り出した何かを投げ放つ。それは細く薄く鋭い掌程の長さしか無い刃物。

 それらがトラウムソルジャーの身体、ではなく地面へと突き刺さる。外した、とトラウムソルジャーらは目の前の人間を殺そうとするがしかしその身体は動かない。

 

 

「如何に薄暗かろうと丁度いい光源があったのでな、利用させてもらった」

 

 

 そう言いながら素早く空はトラウムソルジャーの腕を、脚を、背骨を、首を断ち切っていく。そして、長剣を納刀してトラウムソルジャーの手から離れた剣を二振り拾い上げて────

 

 

「[剣質強化]────」

 

 

 二振りの剣、その柄同士を強く押し付け合えば剣質が一振りのそれへと変わる。本職の錬成やそういったモノでは無い以上、文字通り付け焼き刃でしかないが擬似的な双刃、両刃剣へと成立する。

 理屈としては二振りの剣を繋げ、一振りの剣へとその剣の性質を補強するという屁理屈の様なモノでしかない。

 だがしかし、今この場において、僅かな時間であったとしてもその屁理屈を空は良しとして左の掌で両刃剣(つるぎ)を頭上に掲げながら回転させていき、右手で九字の印を切る事で両刃剣(つるぎ)に焔を纏わせる。

 焔を纏った両刃剣は回転し、焔輪の軌跡を描きながら空はトラウムソルジャーの群れの中へと突貫する。

 天之河以上の筋力・敏捷、そして縮地などをはじめとした技能を用いて加速していき

 

 

「これが、防人。その真剣(つるぎ)と知るがいい」

 

 

 焔を纏った両刃剣の一閃が一度に数十もの数のトラウムソルジャーを葬っていく。

 そうして、空の周囲のトラウムソルジャーを消し飛ばした空はその手の中にあるたった一撃で負荷に耐えれず砕け散っていく剣を範囲外にいたトラウムソルジャーへと投げ放ち諸共奈落へと落としながら再び長剣を引き抜く。

 

 

「どうした、この程度か」

 

 

 八相の構えで空は未だ多く増えていくトラウムソルジャーを睨みながらそう口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────〇─────

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