────これより語りまするは、もしももしものお話。
あの時、変えられていく人々を救えなければ?
あの時、壊された少女を救えなければ?
……あの時、魔女に出会わなければ?
ただそれだけの分岐点。されど命運を決める分岐点。
嗚呼ご安心を。最終的には"月"は殺され、別の形であれど全ての修正は達成されますから。
私めはただの"意思"。語られなかったもしもの存在……少々茶々を入れて良いならば、それを観たいと思われましたら、どうぞ、私にお話させてくださいませ………
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……始まりの悲劇は、きっと『人魚姫』が死んだということでしょう。
いえ、もしかしたら作者が……これ以上遡るとキリがありませんので、そういうことにしておきましょう。
『マッチ売り』は王子へのありもしない、あるような恨み辛みを吐き出しながら巨大な怪物へと変じ、王子は手にした剣でそれを殺めた。
『第一王子』は異形へ慣れ果て、王子を殺めんと襲いかかり、王子の拠り所を砕いた。
『人魚の長女』は地上を侵攻し、遂には国を滅ぼしてみせた。
最後に残るはひとりぼっちの『王子』。虚の想区の中で、ただ一人彷徨い歩いていた。
何故、何故、何故と問いながら。
さてそんな或る日の事。王子は旅人に出会った。
おかしな格好をした二人組。いや、誰という訳ではなく、ただ旅をしている二人組だった。
「こんにちは。あなたはここの住民だったのですか?」
片方が王子へと問う。
「……ええ、そうですよ。僕はこの国の邪魔者でした。」
とさり、と王子の本が落ちる。直すこともかなわなくなったブックホルダーが緩んでいたのだろう。
真っ白な頁が、風にすら吹かれることなく開いた。
それを見た二人組。「探していたものを見つけた!」と大喜び。
「なんと可哀想な……あなたも空白の書の持ち主なのですね。」
「空白の……書?」
そして王子は二人組から聞いた。……いえ、聞いた、よりも「聞いてしまった」が適正でしょう。
想区、運命、カオステラー、解放、ヴィラン、ストーリーテラー。
そして空白の書。無限の可能性。白は全に介入出来るのだと。
王子は深く後悔した。「ならば何故、あの時救ってやれなかったのだ!」と。
王子は深く後悔した。「ならば何故、あの時助けてしまったのだ!」と。
枯れた涙を流す王子を、片方は撫で、片方は困ったようにした。
それから王子が落ち着いた頃、もう片方は慰めた。
「自分達は、そんな運命から人々を解放するために活動している」
空白は、新たな可能性を作り上げる。ならば、その力を使えば、ストーリーテラーも覆せよう、と。
この二人組、『かつてのフォルテム』の残党であった。
残党達は『かつてのフォルテム』の残党の中でもっとも上のものだった者を指導者とし、静かに静かに解放を進めていた。
「……そうか、ありがとう」
と王子はただ一言。
二人組はその後、数日滞在して王子に物語を教え、それから旅立って行った。
それから数ヶ月後、まだ王子は彷徨い歩いていた。
しかし、そこは虚の想区では無い。言うなれば、『美女と野獣』の想区だろうか。
剣は血に塗れ、銃はねじ曲がった力により、無限の弾丸を携えている。
その手に持つは剣と銃。雷の剣とただの拳銃。それだけを携えて、王子──否、『レヴォル』は
レヴォルは王子を捨て、決意したのだ。
のうのうと与えられた幸せを殲滅し、押し付けられた不幸から解放せんと。
そして、『学院』からはこう呼ばれている。
───『幸福殺し』と。