無惨様に殺されたくないのでハードモード通り越して鬼モードですが必死に運命を回避します 作:経済人
「あれ?ここは‥‥?」
気がつくと私はまったく知らない所にいました。とても広く、とても歪なそこは階段や部屋が無秩序であり、どこが上なのか下なのかも分からない。
ただ、わかっているのは私がそんな歪んだ場所の床の上で土下座の姿勢でいること、そして、床を流れる大量の血流と胴体のない首‥‥
「ヒィ!!?」
ここはどこなの?!どうしてここに!そしてこの状況はなに!?はぁ!?ホントに何事!?
あまりの突然の連続で私の思考は大パニック。そのせいで私は目の前に立つ人物の存在に気がつきもしなかった。
「それが最後の言葉か?」
「ヘァ?」
混乱のせいもあったかもしれない。突然声をかけられて私は間抜けは声を出してしまった。声に反応して顔を上げたが私の視界は何故か斜めっていた。
え?と思っていたら突然どすっと何が床に落ちる音がした。何が落ちたとかと思い見渡そうとしたが首が動かない。目だけを動かして周りを見る。そこに見えたのは首のない胴体があった。
私はあまりの光景に悲鳴を上げた。しかし声が出ない。混乱しているはずの頭が次第に冷えていく気がする。ここまで来れば察しの悪い私でもわかる。
私は首を斬られたのだと。
あはは‥‥。気がつくと知らない所にいて突然死ぬなんてどんな悪夢ですか?酷い悪夢だな‥‥
血が流れ過ぎたからなのか、それとも夢だと思い考えるのを諦めたのか、私の思考が止まっていく。そして、視界がどんどん暗くなっていく。
最後に見えたのは首のない胴体、つまり死んだこの体と、死に行く私を上から冷たい目で見下ろす着物姿の女性だった。
「ヒィア!?」
私は意志が戻った。寝てたのかな。だとしたらさっき見たあれはまさに悪夢だったね~もう見たくないかな‥
うん?
私は今置かれている状況に頭の整理が追い付かなかった。私が今いるのは歪な空間、血だらけの床、そしてさっきの悪夢で最後に見た冷たい目をした女性だ!
「最後に何か言い残すことは?」
女性が私に尋ねてきた。この女性‥‥顔は間違いなく女性なのに声がイケメンボイスです。それにこの圧倒的なオーラは一体‥‥
「‥‥‥。」
状況が掴めずにいる私は何も発することができなかった。訳が分からない!!こ、これはどう言うシチュエーションなの!?そもそも私はどうしてこんなところに!?
「何も答えぬか?言い残すことはないのだな?」
「えっ?いや、ちょっと!」
私がやっと口を開いた時にはもう視界は歪んでいた。首はもう繋がっていないのです。
あ、あははは‥‥。また、この夢か‥‥。も、もしかしてさっきの夢の続きかな?相変わらず意味の分からない酷い悪夢だけど首が斬られた原因はわかった。はぁ‥‥同じ悪夢を見るなんて‥もしかしてこの夢見た後に二度寝でもしたのかな?だとしたら私は金輪際二度寝なんてしません。だ、だから‥‥この悪夢は!
「ヒィアアア!!」
ハァハァハァ‥‥ひ、酷い悪夢です。もう見たくないですし首を斬られた時の感覚や死んだ感覚がまだ残っていてリアル過ぎる!もう、見たくない。だから私は二度寝なんてしないぞ!だ、だから‥‥
お願いします!!夢であって!!!
流石に三度目のこの光景。そして残る記憶と感覚でもうこれは夢ではなく現実だと受け止めるしかない。私は今、知らない場所、訳の分からない状況で、あの女性に殺されようとしている!!
私は土下座の姿勢でいる。着ている服は私のものではない。所々赤くなっているのはあの女性に殺された誰かの帰り血だろう。
「もはや十二鬼月は上弦のみで良いと思っている。下弦の鬼は解体する」
あの女性です。何かを喋っている。あれ?さっきこんな事言ってましたか?手には最初に見た床に転がっていたはずの首が握られている。
そして、さっきまでは混乱と恐怖で気が付かなかったけど、私ともう一人、土下座の姿勢の人がいる。
女性は持っていた首を投げた。そして、首は最初にあった位置に転がった。
「最後に何か言い残すことは?」
そして、聞き覚えのあるセリフが飛んできた。
三度目の同じ光景、二回とも定位置にあったはずの斬られた首、知らないセリフと二度目のセリフ‥‥
ホントにもう、さすがにここまで状況証拠が揃うと私でも分かりますよ。もしかして私、死に戻りしてる?しかも少しずつ過去に遡っている。
私は覚悟を決めた。最後の確認の為、一か八かやってみることにした。
「わ、私はまだお役に立てます!もう少しだけ!ご猶予をいただけるのなら必ずお役に立てます!」
ど、どうですか?
「具体的にどれ程の猶予を?お前はどのような役に立てる?今のお前の力でどれ程のことができる?」
うん、予想通りだった!当たって欲しくなかったけど!けれどもこれで確証は得た!
「ち、血を!あなた様の血を分けていただけるのなら!私は必ず血に順応してみせます!より強力な鬼となり戦います!!」
「何故私がお前の指図で血を与えねばならぬ。甚だ図々しい。身の程をわきまえろ。」
「ち、違います!わ、私は‥‥」
「黙れ、何も違わない。私は何も間違えない。全ての決定権は私に有る。私の言うことは絶対である。お前に拒否する権利はない。私が正しいと言ったことが正しいのだ。お前は私に指図した。死に値する。」
そこからの記憶はないです。きっと殺されたのでしょう。まぁ、知りたいことはわかったので今のところは良しとしましょうか。はぁ‥‥どうしよう‥‥
多分4回目でしょうか?私は再び意識を取り戻した。いる場所は同じである。違いと言えば先程とまたシチュエーションが違うことです。
前は遺言を聞かれる所からでしたが、今度は男の人、いえ、十二鬼月の下弦の鬼が触手みたいなのに食べられてしまう所でした。
頭から鬼の血を浴びた。私は恐怖で動けなかった。しかし、本来の私なら発狂していたか気絶ものなのに‥‥やはりこれは体が違うからでしょうか?
私の置かれた状況ははっきり言わなくヤバいです!だって私、異世界転生とか言うヤツをしたのは間違いないのですから!
いや、まさか自分が体験するとは‥‥人生は小説より奇なりって言うし思っても見なかったことが現実に起こるのは仕方ないとはいえいきなり過ぎるでしょう!!
それはまぁ、アニメとか好きだし?一度くらいは異世界転生したいとか軽い気持ちで思ったこともありましたけど、この世界は不味いですよ!
この世界、私が転生しちゃったこの世界は間違いなく鬼滅の刃の世界です。しかもですよ?私がなっちゃったのは敵役の鬼ですよ!殺される可能性大ですよ!
それにこのポジションはかなり不味い!!
よりにもよって私は、十二鬼月の下弦になってしまったのだから!!下弦の鬼って確かアニメの最終回で特に出番も活躍もなく殺されたじゃないですか!!
そして、私を殺したあの女性‥‥に変身していた人物こそがこの世界のラスボスにして諸悪の根元‥‥
鬼舞辻無惨様!!
酷い‥‥もう死亡確定じゃないですか!よりにもよって何でこんな場面からスタートなんですか!すぐ殺される!しかも何故か死に戻りする!これって‥‥
死の無限ループ‥‥!?
い嫌だ‥‥そんなの絶対に嫌だ!!死にたくない!なんなら生き返りたくないけど、死にたくない!
でも生き返ると殺される!首を斬られるのスッゴく痛いんだよ!!死ぬのスッゴく怖いんだよ!そんなの何回も何回なんて!!絶対に嫌だ!!
でも、どうする?アニメだと‥‥
「私より鬼狩りが怖いか?」
「いいえ!!」
無惨様が下弦の女の子に質問している。無惨様に必死に訴えています。あの赤い服の子のように何とか言い逃れようとすると‥‥
「お前は私の言うことを否定するのか?」
「はぁ‥‥!」
あの子に向かって容赦なく触手が食らい付く。少し何の抵抗も出来ずに丸飲みにされてしまった。だからと言って‥‥あっ!後ろにいた鬼が逃げた。今逃げ出した顔に傷のある鬼のように逃げようとしても‥‥
無惨様は動きもしないうちに逃げた鬼の首を取っていた。
「もはや十二鬼月は上弦のみで良いと思っている。下弦の鬼は解体する」
うああああ!!来た!私の場合が来ちゃったよ!どどどどうしよう!?下手に言い訳したら無惨様に「私の言うことを否定するのか?」って言われて殺される!
逃げても無駄なのはあの鬼が実証済み。どうしよう!?どうすれば私は生き残れる?
不幸中の幸いは私は下弦の弐の鬼!遺言を言うチャンスを貰えている!ならば!ここで発言を間違えなければ死亡確定コースから逃れられるかも?
「最後に何か言い残すことは?」
「私はまだお役に立てます!もう少しだけご猶予をいただけるのなら必ずお役に!」
「具体的にどれ程の猶予を?お前はどのような役に立てる?今のお前の力でどれ程のことができる?」
よし!ここです!私の予想が当たればですが、ここで無惨様にダメ元で自分がまだ役に立つとアピールできれば良い!!アニメみたいに血を下さいとか何かしてもらうお願いをした時点でアウトです。
もしも!無惨様に役に立つと認められれば!私は!この理不尽な無限死にループから解放される!
「ご、ご猶予をいただけるのなら!私は準備を整えた後に鬼狩りの柱めに挑みます!必ずや柱の首を‥」
「黙れ」
「えっ?」
「私は下弦は弱いと言った。その弱いお前に鬼狩りの柱が殺れるだと?お前は自分が弱くないと?私の言葉を否定するのか?」
「い、いえ!違います!だから準備を‥」
「黙れ、何も違わない。私は何も間違えない。全ての決定権は私に有る。私の言うことは絶対である。お前に拒否する権利はない。私が正しいと言ったことが正しいのだ。お前は私の言葉を否定した。死に値する。」
「ヒィィィ!!」
私は無惨様に首を斬られ死んだ。
血を求めなくても殺された。殺された理由が少し違うだけでほとんど同じセリフで殺された。
復活したのは先程と同じ下弦の陸が触手に食べられる所からスタートだった。少しずつ過去に遡っていたのにどうしてなのかが分からない。戻してくれるのはここまでなのかそれとも何か法則があるのかもしれない。
そして、無惨様への自己アピール‥‥どこで怒りに触れるか分かんないからまるで地雷原だよ‥‥ハードモード過ぎる。
あとそれから‥‥本当に今さらだけど、下弦の弐の鬼って男だったよね?この体間違いなく女性なんですが?
それからも何度となく私は挑戦してみた。しかし、その度に私は斬首されて生き返った。回数が二桁になった辺りで私は死の記憶やその時の恐怖で病みかけていた。
ああ、不味い‥‥心が壊れそう‥‥いや、もういっそのこと壊れた方が苦しまないで良いかも‥‥嫌だ!やっぱり死にたくない!!
確定死亡の無限死にループなんてそんな運命なんて受け入れたくない!せっかく転生したんだ!異世界を堪能してみたいしこのまま死に続けるだけなんてそんなの真っ平です。
やっぱり‥‥作品からの運命からは逃れられないのですか?運命は変えられないのですか?
いや!!そんなことはないはず!だって作品と違って下弦の弐が女性だし下弦達はあの触手に食われて殺されるのに私は斬首されてるもの。作品とは異なる要素があるのなら‥‥あるいは!!
それに方向性は間違っていないはずだし、これまでの死も無駄ではない。結局殺されるのは変わってないが殺される理由とか無惨様のセリフが変わったりしている。つまり、変化は起こせることの証明です!
更に!この死に戻りの法則もわかってきました。この死に戻りはなんと!この無惨様によるパワハラ会議を長く生きているほど過去に遡っているのだ。
4回目と5回目が同じ場面スタートなのは生きている時間がほとんど同じだったからですね。
さて、ではどうするか‥‥無惨様と話している内に無惨様の好みも分かってきたものがある。
まず無惨様は私に、
『具体的にどれ程の猶予を?お前はどのような役に立てる?今のお前の力でどれ程のことができる?』
って聞いてきます。これだけ聞いてると何か会社の上司か面接官みたいですね。
具体的な計画が立てられたり、自分の力で何ができるとかの自己分析ができたり、血を下さいとか他力本願ではなく自身で向上するような‥‥
ビジョンと意識が高い系の部下が好きなのかもしれない。
実際に無惨様も
『十二鬼月に数えられたからと言ってそれで終わりではない。そこから始りだ。より人を喰らい、より強くなる。私の役に立つための始まり』
と言ってますしね。向上心のない鬼が嫌いなのかな?だから俺達に言われてもとか、柱から逃げてたりとか、血を分けてとかが許せないのかな?
例え私が柱と戦いますって言っても無惨様の言葉の否定になりかねないばかりか実効性のない計画として処分されるのだろうね‥‥
はぁ‥‥無惨様の役に立つ、自分の能力の範囲内で‥‥クッソ‥‥何をすれば無惨様が喜ぶのかが分からない。私、アニメしか見てないから情報が少ないよう‥‥
せめて、この鬼の能力が何かとか情報がもっとあって、自分をもっと強くしたり前もって作戦の一つや二つ準備があれば‥‥
今知っていることで、無惨様が関心を持ってくれそうなことは‥‥
あっ!1つだけある!
「無惨様!私に、私に猶予を下さいませ!必ずやお役に!」
「具体的にどれ程の猶予を?お前はどのような役に立てる?今のお前の力でどれ程のことができる?」
「私は!私が!!無惨様を煩わしているものを取り除いてご覧にいれます!」
「‥‥ほう?」
興味を持っていただけたようです。続きを言えと促してきました。
「はっ!最近無惨様の事を嗅ぎ回る鬼狩りがいると小耳に挟んでおります!無惨様が雑魚二人に始末を任せたもののその者らでは手に余るとか!ならば!その鬼狩りの始末、この私めにお任せくれませんか!?」
い、言っちゃった!主人公殺す宣言しちゃいました!しかし、今はこれしかありません!私の力で倒せる無惨様の標的‥‥
下弦の伍の累君がギリギリだった彼くらいしか思いつかないかもです。仮にも下弦の弐だから累君よりは強いはずです。
どうですか?
私は恐る恐る無惨様の顔色を伺ってみる。すると、驚くべきことが起きていました。初めてです。何度も繰り返して初めて見る表情を無惨様はしていました。
無惨様が‥‥悩んでる!!??
これは‥ワンチャンあるでは!?お願い!!来て!!この運命からの脱出のチャンス!!