無惨様に殺されたくないのでハードモード通り越して鬼モードですが必死に運命を回避します 作:経済人
「動いた‥!」
物陰に隠れていた琥珀は右手で耳を押さえながら、視線をゆっくりと彼方へと向ける。
この町に駐屯している鬼殺隊の戦力、確認できているだけども四つの中隊が確認できている。そのうちの大半が寝泊まりしていた施設に潜伏している兵から盗み聞いた話からすると、これから出撃するようだ。
「動いたって、まさか!」
一緒に来ていた砂生が目を色を変える。
「鬼殺隊がようやく動いたわ」
「規模は?戦力はどれくらい?」
「少なくともニ中隊が白波屋防衛に回るみたい‥けれど残念ながら隊員のほとんどが雑魚‥二人くらいまともそうなのはいるけど柱はいない‥」
「柱がいないのは有難いけれども、その戦力では駄目だわ」
敵の出方を探るべく町に再び潜伏した琥珀。この後は別行動になるが用心のために砂生も付いてきてくれている。
白亜の予想で、柱はいないことになっていたがこれで確定情報になった。他に驚異になる存在がいるかが懸念ではなったがここまで来て姿を見せないのであればいないと考えてもよいだろう。
しかし一方でそれは不味い状況でもあった。
「あの程度なら私達二人と近くの伏兵達で奇襲すれば楽勝だわ。やるなら今よ!」
「駄目よ。このまま隠れながら追尾するわ。」
「琥珀‥‥!?」
「私達がここで鬼殺隊に攻撃を仕掛ければ、確かに敵を殲滅できるし、なんなら叢雲の方も強襲する作戦をマスターに立案しても良かった」
琥珀は冷静に言葉を続けた。
「でも、ここであれを潰せば叢雲商会の戦力を私達が全面的に相手することになる。更に今姿を出せば私達の存在が叢雲商会に捕捉される危険がある。そうなれば、私達は撤退を強いられる‥敵の存在、動きを味方に伝えることが出来なくなる。結果、敵の奇襲を受けることになりかねない‥‥」
「‥‥そうね」
本来なら鬼殺隊のみで敵を防いでくれるのであればそれが一番都合が良い。しかし、あまりに柱などの脅威であればここで確実に削るのも悪くなかった。
けれども、脅威どころか予見以下に雑魚ばかり‥‥これではマスターの言う通り彼らでは防げない。
「白亜様の予想通り‥けれども‥!」
「大丈夫、ここまでマスターの予想通りならこの後もそれに沿うだけよ。私達が忍耐強く敵を監視していれば、勝ちは転がって来ます。必ず‥」
「琥珀‥冷静かと思ったけれど実は緊張してる?」
「ちょ、ちょ?何を言うのかしら?私緊張なんて‥」
「そうかしら?なら先程から手をごしごししているそれは何をかしら?」
「やめてぇーー!」
「ほら、そんなに声を出すと見つかるわよ?私はここから叢雲の方を見張るから報告と監視を引き続きお願いね。」
「早く行ってしまって!」
「はーい」
そっぽを向く琥珀を見て、弄られ慣れてない所は流石は白亜様の個体だと思った。
しかし、内心ではこうも思ってしまった。
(白亜様の写しとも言える傀儡で、しかも作戦立案に深く関わる彼女が緊張しているとなると、当の白亜様が心配だわ‥‥)
考えすぎかもと思ってもやはり気にはなってしまう。もしかすると、予想以上に白亜様には厳しい1日になりそう‥‥そう思えてならない砂生だった。
(まぁ、それを補佐するのはきっとあの子の役目かしらね‥‥)
□
「これより、白波屋防衛計画を始動します」
静かな大広間の長机の前で、砂夜は声を発した。彼女の後ろには白亜、そして前にはおびただしい数の人、いや土傀儡達が整列している。いずれも白亜がこの日の為に用意した戦闘目的の個体達、町へ向かう部隊とこの館に残る守備兼予備兵力である。
「計画の内容はすでに白亜様より聞いての通りです。戦力、装備を含めて可能な限りをつくしたつもりです。」
彼女の言葉に意思を持たない彼らがどれだけ反応しているのかはわからない。ただ、前の彼女らだけは真剣に聞いてくれている。
「既に町に入った仲間からの報告によれば、鬼殺隊は動いたそうです。しかしもこれらの予想下の戦力です」
これには白亜が内心落胆した。つまり、彼らは宛にできない。いや、そもそもならないからそこ立ち上がったのだ。
「白亜様」
「うん。‥‥さて、私はいついなくなるかはわからない。だから、皆‥‥頼んだよ。」
本当ならここは激の一つでも飛ばしてかっこよく決めたい所ですが、情けないことに弱い言葉しかでない。
しかし、私の言葉に傀儡達は一斉に敬礼。更に数名からオー!と掛け声も聞こえる。
「それでは、持ち場について下さい!」
「砂夜ちゃん。お願いね」
「お任せください白亜様!」
私の軍の人選は、索敵、現場指揮を琥珀ちゃんに一任し、その補佐を砂生ちゃんにお願いしている。
そして、砂夜ちゃんは私が留守の間のこの館の防衛指揮と帰った後の報告係を任せている。
既に伏兵は配置の完了はしており、残りは琥珀ちゃんの求めに応じて投入する増援部隊、そして本命を食い止めるための主力である。
「順調に進めば琥珀ちゃん達も合流して敵を叩く‥‥うまく行けばいいな‥」
私は砂夜ちゃんにあとは任せると書斎にて静かに座した。あとはいつそのときが来るのかを待つのみでした。
□
この町は商業が盛んなこともあり、多くの商会や彼らの所有する施設が多く存在する。そんな彼らの知恵かもしくはただの偶然かはわからないが彼らの店や倉庫のある商業区と彼らの住む住居区に別れている。
その為、勤務時間を過ぎると途端に人がいなくなり、ほとんどが住居か夜の屋台などで過ごしている。
事態はそんな人のいない日が落ちた時刻に始まった。そんな人のほぼいないはずの商業区で今、荒い呼吸を繰り返す男がいた。表情も疲弊の色が濃い。
背に滅の字が入った隊服を纏う男、いや男達は刀を振るっている。相手は絶叫を放ちながら彼らへと突撃をしかけてくる。
もはや人ではない者達‥‥鬼の大群だった。
叢雲商会の保有する倉庫郡に囚われていた彼らは一斉に放たれると一直線に白波屋の方角へと進んで行った。それを巡回していた鬼殺隊が発見し戦闘は始まった。
戦闘の展開は激しく、数で勝る鬼が優勢だった。剣士の一人が鬼を一人斬り殺してもその後ろから敵が怯むことなく迫ってくる。
その物量と敵の激しい突撃に警備隊の迎撃は突破され次々と進んでいく。
あまりの敵の攻勢に鬼殺隊も白波屋の隊を回して応戦、巻き返しを図るもなお敵の攻撃も凄まじいもので舞い上がる砂塵に飛び散る血渋きと、まさに地獄のような光景となった。
そして、その光景を眺めて不適な微笑をする者がいるのだった。
「始まったわね‥」
琥珀は苦虫を噛み締めるような表情だった。叢雲商会を見張っていた砂生から倉庫郡から鬼の大群が出ていくのを聞いて、それを偽装して紛れている伏兵を使い鬼殺隊に伝えて彼らが有利に彼らを迎え撃てるよう誘導したまでは良かった。
ただ、予想外だった。
鬼殺隊が大したことないのはもはや解りきっていたので別に問題ではない。むしろあの数‥‥私が見た倉庫だけでなくまだ他にもあったようでかなりの数がいる。
それをよく防いでいるし、正直雑魚鬼程度なら彼らでもいけると思っていた。
ところが、相手の鬼の方が異常である。
「どうして?どうして死を恐れてないの?」
彼らの捨て身の攻撃には雑魚鬼でも流石に手は焼いてしまう。その上この量である。
「空腹で意思がおかしくなってる?いやそれにしても限度があるし‥‥何かたかが外れたような‥」
まさか何らかの手段で彼らを狂暴化してるのか?もしそうならばこのままでは彼らは全滅してしまう‥‥
「はぁ‥‥偽装剣士隊!突入よ!」
琥珀が命じると鬼郡の後ろから新手の鬼殺隊‥ではなく彼らの服を着て偽装した傀儡兵達が斬りかかる。
「よし‥しかしこれで鬼殺隊の大半はこちらに取られてしまいましたね。ここまでは敵の目論見通りかしら?」
さて、ここからです。
「石華のメンバーのお手並み拝見です」
戦場から大分離れて白波屋前の物陰に複数の武装集団が隠れており、周囲を包囲していた。彼らは鬼ではなくただの人間。叢雲商会の襲撃部隊である。
「鬼狩りどもはほとんどが隊長の策に釣られたようだな。」
「はい。残りの警備も僅かです。やるなら今かと」
「商会の別動隊は?」
「それが‥‥それらしき者がまだ‥」
「なんだと?!」
「実は数日前から姿を消しているとか‥」
「むむ、ならば仕方ない。こうなれば我々が」
「む?副隊長!向こうより顔などを布で隠した三人が近付いております」
「おう!それがきっと別動隊だ!よし!かかれ!鬼狩り達を皆殺しだ!」
副隊長と呼ばれた男の指示で部隊は動き始めた。彼らは静かに動き物陰から物陰へと動いて少しずつ近づいた。そして、手頃な位置につくと一斉に銃を構えた。琥珀が倉庫で見たのは鬼のカムフラージュを兼ねた彼ら用の兵装だったのです。
いくら鍛練された剣士でも、銃で奇襲されては堪らなかった。多くは銃殺され、残りもそれに合わせて突撃した兵に突き殺されてしまった。
鬼殺隊士や白波屋の奉公人達の応戦虚しくあっという間に鎮圧されあとは火事に見せかけて別動隊がここに匿われている店主の娘達を拐うだけ、それだけだった。
しかし、
「う、うわー!!?」
「ぎゃああああ!!」グサッ
突如悲鳴が起きる。何事かと事態を確認すると、別動隊と思っていた三人が部隊を襲っているのだ。
そう。彼ら‥敵が味方だと勘違いしていた彼女らこそが白亜の切り札だった。
「目標を捕捉‥撃破!目標を捕捉‥撃破!」
まず一人はとても細身のツインテールの少女。その細身に不釣り合いな大きさの腕を振り回し、敵を一人一人潰していた。
敵兵が複数で銃を放つ。彼女は避けようとはしないでその腕で銃弾を全て弾く。すると今度はお返しとばかりに腕を相手に向けて広げると、その掌に穴が開き、そこから石の礫がまるで砲弾のように発射される。
「な、何だ!あの化け物は!?」
アイツだけではない!二人目の長身にまるで聖職者のような格好をした女性に三人目の死んだ魚みたいな目をした女も異能な力を使い次々と兵を虐殺していく。
「な、何だ‥一体‥ま、まさか鬼か!?」
その異様な光景に戦い慣れしているはずの彼は怯え固まってしまう。そんな怯えきった副隊長の前に、聖職者のような女性が立つ。
「すいません‥はい鬼ではないです予想を裏切ってひぃ!ごめんなさい!」
「はぁ?」
な。なんだ?急に謝り始めた。いや、懺悔し始めた。
「鬼じゃなくてすいません!違っててすいません!生まれてきてすいません!!」
「いや~お前コンセは聖職者ぽいなにかだろ?懺悔される側だろ?何懺悔してるん?」
後から現れた死んだ魚目の女だ。
「うう‥ごめんなさい~!」
「はぁ‥‥まぁいいや。コイツが頭みたいじゃん?ならサクッとやってよ」
「うん!」
「ちょまっ!?」
彼女が頷き祈り始めると石の壁が現れる。そして、彼女は現れた石の壁を押し倒してきた。
「あなたを潰しますけど‥ごめんなさい!」
「うっうわわーーー!!?」べちゃ!
「ああ~罪深い私をお許しを~!!」
「はぁ‥面倒くさい」
「殲滅せよ‥」
「あれがマスター自慢の石華の火水変の三人‥‥自立自我の個体を三体も用意したのね。」
これで敵の襲撃部隊は壊滅寸前。問題はあの鬼だけど‥‥叢雲を見張っている砂生が何か掴んでいるかしら?
「こちら琥珀、砂生そちらはどう?‥‥砂生?」
『嘘でしょ‥‥どうしてよ。どうして‥‥!?』