無惨様に殺されたくないのでハードモード通り越して鬼モードですが必死に運命を回避します 作:経済人
数日後の夜‥‥
「あっ!お姉さん!全部売れましたよ!」
「うっそん‥‥」
志保ちゃんに任せろと言われて焼き物を渡して数日後、こうして彼女に言われた場所に来てみると彼女が焼き物屋を開いていてしかも完売していました。
「えへへ~これでも商家の娘ですから~♪」
「いやいや!この店どうしたの?それにどうやって全部売ったの!高そうなのとか安そうなの!」
「お店は父の知人で空き家を持て余している方から格安でお借りしました。綺麗なお皿とかは白亜さんの腕がいいおかげで高く買ってくださりましたよ?」
「‥‥安いのは?」
「はい、前に白亜さんから聞いたひゃっきんなる戦術を参考にして小銭で価格にしましたらかなり好評で、主婦やお店の人まで買っていきました。これもあれだけの量で品質が同じものを作れる白亜お姉さんのなせる技です。」
ああ‥あれ?私がこれ百均にありそうとかって言ったらそれは何ですかと食い付いて来たから話してあげましたけど、あの話だけで?
なんだかこの子私のこと持ち上げてくれますけど、私のはチート技(血鬼術)ですし、何よりこの短期間で店立ち上げて成功させるなんてこの子の方がすごいような‥‥
「えへへ~」ちら、ちら
あれ?この子、さっきからチラチラこっちを見て頭を動かしているけど‥まさか‥‥
「いや~志保ちゃん凄いね~よしよし♪」
「えへ~えへへ~♪」
うわ~凄い可愛‥‥物凄く喜んでくれてるよ‥‥尊くて死にそう‥‥
「白亜さん?」
「はっ!?意識が飛んでた!‥‥とりあえず片付けを手伝いますので帰りましょうか?」
店仕舞いを終えて彼女と共に帰路に付く私は内心とても安心していました。彼女と一緒にいることに安心感を覚えはじめたことには否定しませんがそうではありません。
「~♪」
「あら?志保さん今日はいつもより笑顔が素敵ですね。何かいいことでも?あ、全部売れたから!」
「はい、それに目利きの人からも好評だったので上手くいけば今後に繋がります!」
作品が全て売れたこと‥‥まぁ店舗の家賃とか諸経費抜きにしてもかなりの儲けなのでウハウハなのですがこれも違いますね。
「でも‥それだけではないです」
「う~ん?じゃあ何か面白い話でも聞いたの?」
「面白いかは知りませんけど‥‥最近、泥棒とかゴロツキが一人もいなくなって商売がしやすくなったと買いに来てた人が行ってました」
ああ‥‥それはですね、犯人は私です。もう二度と志保さんをあのようなことにはさせないと思って商売をすると提案されたあの日から傀儡達を使ってバレないように悪人を捕まえてました。
これで安心して志保さんを町にやれますし、私も保存食を手に入れられたので一石二鳥です。まぁ飢餓の心配がない安心感もよりもそれ以上に、今日の彼女、志保さんを見て私はとても安心したのです。
「これだけの商売の腕‥‥これなら志保さんはもう大丈夫ですね」
私は彼女に思ったことを話すことにした。
「商売をしたいって提案された時ね、驚いたけど上手くいけば一人立ちできるって思ったんだ。軌道に乗るまでは勿論面倒を見るつもりだったけど‥これなら安心です。」
志保さんは黙って聞いてくれています。
「なので、どうでしょう?このまま‥また町に住みますか?私の屋敷は町外れですのでここまで行ったり来たりは大変でしょう?」
「‥‥お姉さんは?」
「私は‥‥まぁこんな体質ですので広い屋敷に籠ってた方が良いの。だからあそこに残るわ」
嘘ではない。それに人目につかない方がいいですし、人が多い所だと何かボロを出しかねませんからね。
何よりも、彼女は私と一緒にいない方がいい。
私は‥‥鬼です。人を食べる本物の化物です。おそらく、転生を仕方が違っていれば本能に負けてこの間の鬼のように人を襲っていたかもしれません。
神に誓って私は志保さんを襲いません。しかし、私が化物だと知った時、彼女からどう思われるのだろうか?
それが‥‥無惨様に殺されるのと同じ位怖いです。
それに、いずれは私も人と、鬼狩りと戦う時が来るでしょう。そうなれば正体がバレるだけでなく、この子も巻き込まれる可能性がある。
だから、彼女が商売をして一人立ちする手伝いが済んだら身を引くつもりでした。勿論、売り物として作品は志保さんに提供し続けますし、他の鬼に襲われないように傀儡達に見守らせますし時折は私も行くつもりです。
「お姉さん、白亜さんは私が嫌になったのですか?」
ずっと黙っていた志保さんがストレートに聞いてしました。勿論私は首を横にふりました。
私は志保さんが嫌いな訳がないです。会いたくない訳ではなくただ、距離を置くべきだと思っただけです。
「なら、白亜さんが嫌でなければ‥‥これからも私を白亜さんの側に置いて下さい!」
「え?‥‥はあ!?」
「私は、大恩のある貴女に恩返しをしたかっただけです。じゃないとこんなお願い、厚かましくてできませんから‥‥」
へっ?この子何言ってるの?恩返し?お願いしたいことがある?
「私はこれからも貴女の所で一緒に暮らしたいです!料理でも洗濯でも、お金儲けもできます!だから‥‥私を一人にしないで‥‥くださいませ」
‥‥ああもう。何が志保さんの為にですか。正体がバレたら怖いです?それはこの子ではなく自分を守る為ではないですか!
私は志保をそっと抱き寄せました。
「わっ!」
「ごめんなさい、無神経なことを口にしました。分かりました。私でよければずっと側にいますよ、一人にはさせません」
「白亜さん‥‥」ぐすっ
泣くほど嬉しいのかこの子。私もこの子のことが好きだから嬉しいですが、私にはこの子の姉を食べた償いきれない罪が‥‥
この喜びと罪悪感が絡まり合いより重く私にのし掛かって来るのを感じます。
あの日、あの助けた日に私は覚悟を躊躇った。ならば私は今日この日から覚悟を決めよう。
もうこの罪から逃げない。私はこの重さと向き合い、彼女を幸せにしてみせる。その為にも、折りを見てこの子に本当のことを話す。
「なら、今日は白亜お姉さんの作品完売とその‥この記念に‥‥」
「はいはい、今日はどこかお店で美味しいでも食べましょうか?」
「やった~♪私!是非お姉さんに食べて欲しいお店があるんですよ♪」
彼女は上機嫌で歩きはじめました。
「白亜さんと~外食~♪」
はぁ‥‥行きますか。それにても、この子はそんなに嬉しいのか。そして私までもが嬉しく感じるこの気持ち‥‥
これは百合か?いやいや、どうかと言うと娘を見る愛しさか?
さてと、これから忙しくなりそうです。彼女に真実を伝える覚悟を決めるのもそうですが、同居を本気で決めるならばこれからの対策を本格的に進めないと。
昼間とか彼女を守ったり町に敵がいないかを索敵する為の土傀儡を作ったり、新しい作品を作ったり、鬼狩りを迎撃するプランを練ったりと‥‥
考え事をしながら彼女を追って歩きはじめた時でした。鬼の勘とでも言うのでしょうか?とてつもなく嫌な予感、殺気を感じたので私とっさに動きました。
首を狙った刀を私は袖から出した土の剣で防ぎました。
「ほぉーう、俺の一撃を防ぐとは、お前の反応もいいがその武器も凄いな」
この襲撃者余裕なのか話しかけてきましたよ。あ、ちなみにこれはいざって時の為に常に持ち歩いて触ってる粘土です。触れば触るほど自由が効く私の血鬼術で作ったので硬度はダイヤモンドを軽く超えてますよ。
「今ので死んどけば苦しまなくて良かったのになぁ!」
「随分と酷い挨拶ですね‥‥誰ですかって!!」
顔面も体中も傷だらけという凶悪な面相に短気で荒々しいこの男は‥‥この刀に隊服‥鬼殺隊ですね。隊服の胸元を大きく開けており、その上から大きく「殺」と刻まれた白い羽織を着用している。
そして、何となく感じるこの狂気と強者のオーラ‥‥この人は、柱‥ですね。
「‥‥これは不味い」
感覚で分かる、今の私では確実に勝てない。
「鬼の癖に堂々と町中を歩いた事を後悔するんだなっ!」
いやっ!?町中で殺り合うな!!なんて事を言わせてもらう前に彼は斬りかかってきた。
最初の一撃、二撃はどうにか防げました。しかし、どんなに得物が優秀でも肝心の私は剣の素人。どうにか首を守るがじわりじわりとダメージが蓄積されていく。
地形操作で壁を作ることも試みたが一瞬で斬り壊されるので頼りにならない。反撃の機会を窺うのだが、相手の攻撃につけいる隙がない。
「死ねよおらっ!!」
「しまっ!?」
武器を腕ごと切り落とされた。とても痛く斬られた腕を押さえようとしたがどうにか自制し残りの手で武器を作ろうと地面に触れようとしたが、敵は俊敏です。
「おらっ!!」
「きゃあああああ!!?」
もう片方の腕も切り落とされた。私は追い詰められた。武器もなく、腕がなければ土錬成は使えない。地形操作では歯が立たないし、土傀儡達を館から呼んでも時間はかかるしきっと役に立たない。
並べるだけで気が滅入る悪条件。満身創痍でもう抵抗する気力もなくなってきた。
しかし柱は手を緩めない。
いや、もうトドメをさせるのに殺らないのだから手を抜いているのかもしれませんね。
彼は私をなぶるように足を、腹部を、頬を鋭い痛みで貫かれる。度重なるダメージで鬼である私は、動くことすらできなくなりへたりこんだ。
そんな私に彼は刀を突きつける。
「もう終わりか?」
ここまで実力差があるのか。下弦と柱ではここまで差があるのか。これは下弦達が柱から逃げるのも無理はないと思う。
無惨様‥‥これは、無理ですよ。
これには思わずホールドアップ。私は苦笑を漏らした。
「‥‥参りましたよ。もういたぶられるのは御免ですよ。最もあなたは美人の私を苛めても嬉しそうではないですが」
「俺にそんな趣味はねぇよ、ただ‥最近クソ腹立つ野郎と女鬼を見たからよ。少しお前で憂さ晴らししたかもな」
そんな理由で苦しめないで欲しいんですが‥‥いや、もうそんな小言を言う余裕がない。抵抗できない、実力差と理不尽に虚しくなる。
その虚しさが私に生きる為の抵抗を止めさせた。
「ほう、醜い鬼の癖に潔いがいいな。もう、楽にしてやるぜ!」
また斬首されて死ぬのか‥‥私は怖いのを少しでも防ぐために目をつむる。
刀で肉が斬られる音、しかし私の体ではない。
「お、お前!?なにやってんだ!!?」
「グッ‥がっは!」
「な‥‥なんで‥‥どうして‥‥?志保さん!!」
彼女が、私と柱の間に入って、それで‥‥
「志保さん!しっかりして!志保さん!!」
私は彼女を胸に抱えた。体が冷たい‥‥
本当ならちゃんと抱いて支えたいが腕がないので叶わない。
「う、うう‥‥お姉さん‥よかった‥」
「どうして‥‥!」
「だって‥‥私は、もう大切な人に、先に逝って欲しくは‥げほっ!」
柱は動揺していた。それが人間を斬ってしまったからなのかそれとも信じられないものを見たからなのか。
「お、お前!どうしてソイツを庇った!ソイツは、ソイツは!」
「し、知ってますよ、白亜お姉さんが、鬼だってことくらいは‥‥」
あの日、家族や家を失い辛く悲しみに暮れる暇もなく、怪物に、鬼に襲われて絶望した時にふと現れたのはお姉さんでした。
私は気を失いかけていましたがかろうじて記憶は残ってます。あの怪物とお姉さんの会話から、お姉さんもきっと怪物‥‥鬼ではないかと判断した。
最初の鬼を追い払った彼女に食べられるかと思いました。しかし、その予想は裏切られ私は彼女に手厚く介抱されいました。
最初の頃は、何か魂胆があると思っていました。
しかし、いくら待っても、いくら探りを入れても彼女は何もして来ず、私に悪意を持っているかを掴めませんでした。
それどころか彼女は無防備だった。それに隠し事が下手で何か私に隠していることはすぐにわかった。
あの屋敷の奥の方にある小さな中庭。
掃除と称して彼女の真意を知るべく屋敷を探っていた私はある2つの墓を見つけた。
1つが誰の墓かは分からなかった。ただ、もう1つは直ぐに分かった。墓に添えられた髪飾り、それだけで私はそれが誰の墓なのかを察した。
そして、ごく稀に彼女がその墓の前で苦しんでいることも。私は知っている。
それから下手に隠された証拠や夜な夜なの彼女の懺悔や寝言、これだけあれば真相は明らかだった。彼女が、何を思って私を助けてくれたのか、何でそこまで苦しんでいるのか。
「どうして知って‥‥いや、それを知ってなおどうして!」
「‥‥だって」
姉を殺したのはお姉さんかもしれない。しかし仇を取ってくれたのもこの人だった。
「あり‥が‥とう」
「志保さん!!」
「姉の仇を‥私を助けてくれて‥‥」
「嫌‥‥そんな‥‥!」
もう彼女は動かなかった。私は彼女をそっと地に置いた。
「何なんだよ‥‥お前らは‥そのガキも鬼のお前も、何なんだよ!!」
柱が何か言っている。しかし、知ったことではない。
「ぐ、ぐああああああ!!」
私は男に向かい突っ込んだ。しかし、腕もなく、武器もなければ血鬼術もない私に勝てるはずもない。呆気なく首を斬られた。しかし、それで良かった。
「もう迷わない‥‥もし次があれば‥‥」