聖櫻学園運命記   作:文鳥丸

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それは昔を思い出させてくれる出会い。


第九話 図書室での出会い

 指定された教室に入ると、中には既に祐天寺が待っていて、ニッコリと笑ってシンを出迎えると、早速依頼が来ているとの事なので、シンは用意されたノートPCを立ち上げ、メールソフトを開くと、図書委員から依頼が来ていた。

 

『棚卸しを手伝ってもらいたいので、申し訳ありませんが出来ればお願いします』

 

 文面から大人しい人なのだろうと言う事が分かり、早速シンは図書室へと向かう。

 

「シン君」

 

 その際祐天寺に呼び止められ、まだ文面には記されてない、注意事項を述べる。

 

・活動は月、水、金のみ。基本的に悪男退治以外は受ける受けないは本人の意を尊重する。

・本来は3人以上存在しないと部としては認めないが、場合が場合なので出来れば用意してほしい程度の感覚。

・聖櫻学園は部活だけで全てを終える学校ではない。部活は青春の一巻、その事を忘れないでほしい。

 

「とまぁこんな具合に肩に力を入れ過ぎないでと言うのが本音ね」

「緩すぎやしませんかね……」

「家のモットーはたった一つ生徒達の自主性を尊重するだからね。じゃあお願いね」

 

 そう言うと祐天寺は手を振ってシンを見送った。

 祐天寺に見送られ、シンはどこか腑に落ちない様子で図書室へと向かう。

 これも仕事なのだと自分に言い聞かせながら。

 

 

 ***

 

 

 図書室に到着すると何故か受付には複数の男子生徒で埋め尽くされていた。

 何事かと思って受付へと向かうと、男子生徒達は一人の女子生徒に必死になってアプローチを送っていた。

 しきりに自分とデートをしようと言い続ける男子達を前に、水色の髪の毛を下くくりで二つのおさげにまとめた女子は困惑して何も言えないでいた。

 

「あ、あの本を借りないのなら、ご退室願いたいのですが……」

「その通りだ。逢引相手を求めるなら他を当たりな」

 

 オドオドとした調子で注意するしか出来ない女子生徒を助けようと、シンが間に割って入る。

 シンの威容な雰囲気を前に、先程まで女子生徒を口説こうとしていた男子生徒達は蜘蛛の子を散らすように去っていき、再び図書室には静寂が訪れていた。

 ネクタイの色から三年生だと判断したシンは、それ相応の対応を取る。

 

「あ、ありがとうございます……」

「ああ言う時、自分の手でどうにかならないのなら人を呼ぶなりにした方がいいですよ。それよりもこっちの話をしたいです。聖櫻学園お助け部のシン・アスカです。依頼人の図書委員の方ですか?」

「ハイ。私は聖櫻学園3-A所属、図書委員の村上文緒と申します。本日は立ち上がったばかりの部なのに急な申し出に応えてくれて本当にありがとうございます」

 

 文緒は立ち上がって深々と頭を下げた。

 この様子を見て相当人見知りが酷い性格なのだろうと感じたシンは、それ相応の態度で接しようとする。

 

「じゃあ早速仕事を教えてください。俺は何をすればいいんです?」

 

 仕事を片付けようとする。シンに対して文緒は自分では難しい高い棚の上にある本の入れ替えを求めた。

 言われるがままテキパキとシンは仕事を進めていき、予定よりもずっと早い時間で仕事は終了する。

 ホッと一息つくと、シンは他にやる事がないと分かると、その場を後にしようとするが、お茶と適当なお茶菓子を文緒から用意されると、行為は受け取ろうと湯飲みを手に取って、お茶を一杯飲む。

 

「馳走になりました。先輩それでは……」

「待ってください!」

 

 一礼して、その場を後にしようとするシンを文緒は止める。

 まだ仕事があるのかとシンは思ったが、文緒は柔和な笑みを崩さないままシンと接しようとする。

 

「せっかく知り合えたのですから、少しお話しませんか?」

「そうしたいんですが、俺は携帯を持っていなくてですね。お助け部の活動は本部のPCからでないと確認が出来ないんですよ」

「本当に少しだけですから……」

 

 人見知りの文緒にしては珍しく食い下がるのを見て、シンはこのまま邪見にするのは何か違うと判断し、その場に腰かけ、文緒の話に付き合おうとする。

 

「まぁこれもお助け部の活動の一環です」

「ありがとうございます。まずは本当に先程は助かりました。改めてお礼を言わせて下さい」

 

 そう言うと文緒は改めて頭を下げるが、シンはそれを手で制して止める。

 

「分かりました。感謝しているのは十分に伝わりましたから、それで最後にして下さい。でもいつもあんな感じなんですか?」

「あそこまで酷いのは久しぶりなんですけど、今日は周りに誰も居なかったから、こんな事になってしまったんでしょう……」

 

 文緒は困ったように笑いながら語る。

 確かに文緒は高校三年生とは思えないスタイルの良さに対し、整った顔立ちに、大人しすぎる性格。

 男に取って都合のいい部分を全て詰め合わせたような姿は、アプローチをかけずにはいられないだろうと思い、この学校の男達は馬鹿ばかりだ。それがシンの出した率直な感想だった。

 

「そうですか……先程のような事態に陥ったら、誰かに助けを求めるのが一番だと思います」

「ハイ。ところでシンさんは本はお好きですか?」

 

 率直な質問に対してシンはどう返すか迷ってしまう。

 家族を失う前、シンは文緒と同じように大人しすぎるぐらいの性格であり、文緒に近い物があった。

 しかし家族を失ってから、すっかり攻撃的な激情家になってしまい、趣味もバイクでのツーリングになってしまっていた。

 だが、今同じ趣味を持てるとはとても思えない。

 ならばかつて好きだった事をもう一度やると言うのも一興だろうと思い、自分の中で考えがまとまると、シンは質問の答えを返す。

 

「好きだったと言った方がいいですね。先輩は何かお勧めの本はありますか? こっちの世界の本はまだ読んだ事がなくて」

 

 本が好きと言う答えを聞くと、文緒の顔はパッと花が咲いたように明るい物に変わり、何も言わずに勢いよく立ち上がると、自分が好きな本を片っ端から取っていく。

 その様子を見て彼女は本当に本が好きなんだと思い、シンは微笑ましい気持ちになってしまうが、その眼前に置かれた4、5冊の本を見ると、一つ気付いてしまう事がある。

 

「まだ貸し出しカード持ってないんですけど」

 

 初歩的なミスに気付かなかった文緒は自分を恥じ、本の事ですっかりテンションが上がった事を反省し、一礼するとシンの分の貸し出しカードの作成に映る。

 その際シンは気付いてしまった。文緒を狙う不埒な視線に、何も言わずに視線の方向をジッと睨みつけると、拳を大きく振り上げて、勢いよくテーブルに叩き付け、辺りに轟音を響かせた。

 

「出てこい! そこのネズミ!」

 

 突然辺りに響く、図書館にはふさわしくない轟音を前に、文緒はPCから席を外し、何事かとシンに詰め寄る。

 シンが指さした先に居たのは、突然の轟音に驚き、おどおどとそこから出ようとする人影が一つ。

 

「大方隠し撮りをしようとする変態でしょう。こう言う輩は一回ガツンと痛い目に合わせなくては分からない物です」

 

 シンは盗撮犯が居ると思って追い払ったのだが、文緒は人影の正体が恐らく分かっており、人影が完全に暗がりから出ると呆れたような顔を浮かべる。

 

「文緒ちゃ~ん。この人怖い~」

 

 盗撮犯は気持ち悪いデブオタだろうと思っていたシンだが、そこに現れたのは腰まで伸びた金髪のロングヘアーの美少女であり、首には本格的な一眼レフカメラを提げていて、ネクタイの色から恐らく、文緒と同年代だとシンは判断するが、女性が女性を盗撮するのかと疑問に感じてしまう。

 シンが困惑していると、女生徒は文緒の胸に飛び込んで泣き真似をしており、文緒は彼女の頭を撫でて慰めながら、彼女の紹介を始める。

 

「望月さん。盗撮は控えて下さいって、いつも言っているじゃないですか……」

「だって~文緒ちゃんは今日もめちゃんこ可愛いから、つい~」

「お知り合いですか?」

 

 シンの問いかけに文緒は呆れながらも首を縦に振る。

 

「私の方から彼女の紹介は行います。彼女は私の友達で3-A所属の望月エレナさんって言います」

「ハ~イ。望月エレナで~す。趣味は可愛い女の子の撮影で~す。可愛い女の子と知り合えたら、私に連絡よろしく~」

「そんなもんお助け部の依頼でも却下するわ!」

 

 先輩ではあるのだが、彼女を相手に礼節を重んじる必要はない。そう判断したシンは激しい突っ込みを入れる。

 その判断は間違ってなかったと次の瞬間即座に思い知らされる。

 

「や~ん。文緒ちゃん、この人怖~い」

「いやあああああああああああああ!」

 

 猫なで声を出しながら、慰められているのをいい事にエレナは文緒の豊満な胸に頬ずりを繰り返し、彼女の大きな胸を顔全体で堪能する。

 文緒が完全に固まって行動に移せないのを見ると、シンは即座にエレナを引き剥がす。

 

「や~ん。友達同士のスキンシップの邪魔しないで~」

「本当にアンタと先輩友達なのか⁉」

「そうです。度が過ぎて困った事も度々ありますけれど……」

 

 申し訳なさそうに文緒が言うのを見て、シンは掴んでいたエレナの首根っこを外すと、エレナは再び文緒に抱き着く。

 そんなエレナを呆れながらも、文緒は優しく頭を撫でていて、その様子を見たシンは最後に一言彼女に告げる。

 

「同性同士でもセクハラは適用されます。もし自分で何か出来ないのならば、お助け部、もしくは生徒会、風紀委員など頼れる場は多々あります。俺もその選択肢の一つです」

 

 そう言うとシンは今度こそ図書室を後にした。

 エレナを慰めながら、まだカードの制作と貸し出しが終わってない事を反省し、文緒はまたシンに会えるかと楽しみにしていた。

 今度はちゃんとお勧めの本を読んで、シンと穏やかな時間を過ごしたいと思っていたから。

 

 

 ***

 

 

 この日の依頼を終えると、シンは祐天寺に自身にスマホを持たせる事を提案する。

 情報伝達の速さは戦場でも重宝されている事を熱弁すると、シンの訴えは最もだと判断して、祐天寺は許可を出す。

 

「そうね。でもシン君は未成年だから、携帯を買うには私達の許可が必要なのよ。今度買いに行きましょう」

「ありがとうございます」

「それと明日はもう仕事入っているから」

 

 今日の分は終わったからと告げると、祐天寺は次の仕事を行うため、職員室へと向かう。

 PCからメールの確認をすると、留学生二人の日本の案内が次の仕事だと言う事が分かり、二人の名前を記録する。

 

『ユーリヤ・ヴャルコワ、クロエ・ルメール』




と言う訳で今回はガールフレンド(仮)で一番人気の村上文緒先輩と、その相棒の望月エレナを絡ませました。

次回は同じく人気キャラのクロエとその相棒のユーリヤとの絡みを書いていきます。

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