Welcome!! to the fog of world... 作:Rat man
メグがスプリングトラップの追跡を撒いたその頃、ドワイト・ジェイク・ヘンリーの三人は、託
児所の部屋に設置されている発電機の修理を終えようとしている。ドワイトが手に持っている配線
を、数本綺麗に繋げるだけで完了である。パチパチと火花を飛ばしながらも、慎重に銅線を繋ぎ合
わせていき、数十秒経過した所で配線の修復が終わった。それと同時に、発電機の修理が完了した
音が鳴り響いた。
ジェイク「これで二台目だ。あと残り三台、この調子で直していくぞ」
ドワイト「あぁ。・・ん?あそこのカーテン閉まっていたよね?」
ジェイク「カーテン?・・あ、いつの間に開いてるじゃないか」
残りの発電機を修理しようとこの部屋から退出しようとした時、ドワイトが先程まで閉じられて
いたカーテンがいつの間にか開いてる状態に気付き、すかさずジェイクに話しかける。ジェイクも
ドワイトの発言がなければ、カーテンの変化に気付かず部屋から退出していたであろう。
ジェイク「しかし何時からだ?修理中はそんなこと起きなかったしな」
ヘンリー「・・おそらくさっき修理した発電機が、このカーテンを開く動力源になったのだろう
な。その証拠に、この発電機に繋げられているケーブル線が、向こうのカーテンの横に
設置されている配電盤に接続されているだろ。電力が送られて自動的に開く仕組みだ」
ジェイク「そういうことか。それじゃ、開かれたカーテンの中を調べてみるか。こんな仕掛けを
施したくらいだ。何かあるだろ」
彼らは開かれたカーテンの中を恐る恐る覗いてみる。薄暗い空間の中、そこには長方形の形を
した大きな木箱が1つ設置されていた。中の様子を確認した三人はそれぞれ顔を合わせる。
ドワイト「うーん。箱の中に何か入っているのかな?・・・誰がこれを開けるの?」
ジェイク「怪しさ満載な箱だな。南京錠もつけられているし、素手じゃ開けられねーぞ。あぁ、俺
は開けるのパスで」
ヘンリー「・・・どのみち此処で時間を潰すわけにはいかないな。君たちは先に他の発電機を探し
てくれ。私がこれを開錠できるか試してみる」
ジェイク「いいのか?なるべく早く出たほうがいいぞ。こういう袋小路な場所でさっきの機械人形
に見つかったら、一巻の終わりだぞ」
ドワイト「うん。ジェイクの言う通り、今は発電機を直すのが最優先だ。この箱を今開ける必要性
もないし・・・」
ヘンリー「確かに、私一人で単独行動を取れば、かなりのリスクが付きまとう。だが、それよりも
気になった点を見つけてしまってね。どうしても確認を取らなければならない」
ドワイト「気になる事?それっていったい何ですか?」
ヘンリー「すまないが、質問は後にしてくれ。兎も角、二人は早くここから出るんだ」
ジェイク「・・・よくわからないが、まぁ爺さんの言う通りにするよ。ドワイト、行くぞ」
ドワイト「え・・でも」
ジェイク「いいから早く!爺さんも何かあったら直ぐこの部屋から出るんだ!」
ジェイクは半ば強引にドワイトの腕を引っ張り、ヘンリーに対し僅かな忠告をしてからこの部屋
を後にした。残された彼は、木箱の開錠に挑戦するため、先程修理に使用した幾つかの小道具を取
り出して作業を開始する。
・・・・・・
メグ「はぁ・・、はぁ・・、(・・・どれくらい走ったんだろ)」
その頃、背中に負傷を負ったメグは、床に滴る血痕を機械人形に発見されないよう自分で応急処
置を施し、今は警備員室のデスクの下に隠れていた。しかし応急処置と言っても、傷を治療する救
急箱がないので適当なペーパータオルやその場にあったティッシュ箱から取り出したチリ紙を束ね
て止血を行い、うめき声を抑えるために何時も持参しているハンカチを口に咥えただけの、あまり
にお粗末な処置であった。当然、痛みも止まずに悲痛な声も駄々洩れ、止血も完全でないので血痕
も残る始末。おまけに先程のチェイスで体力も消耗しているのであまり満足に動くことが出来ない
のである。
メグ「(くそ!こんな状態じゃ、発電機の修理にも参加できない。それに、このまま隠れ続けて
もいずれ奴に見つかる。今度こそ逃げ切ることは不可能よ。・・・兎も角、ある程度疲労を
回復させてから移動して皆と合流しないと。)」
ドワイト達と合流すれば満足に治療を受けられる。そうすれば再び自由に走り回れる。だが、今
は大胆な行動は出来ないので慎重に行動する方針を決めた彼女は、暫く隠れくことに徹底する。
メグ「(あ、そうだ。皆と合流したら今までチェイスしたときに、使用した板の枚数と窓枠の場所
についても話さなきゃな。情報共有も大事だし・・・ん?)」
メグが考えに耽っていると、警備員室の右側のダクトから大きな物音が聴こえてきた。
"ゴン・・ゴゴン・・・ゴ・・・ガコン"
まるで、ダクトの中を誰かが通っているような音だ。ハッキリと耳で聴きとれるほどの音量だ。
誰が出している音だ?彼女は真っ先にあの機械人形が浮かび上がる。
メグ「(嘘でしょ!?あいつ、こんな狭い通路からでも来るの!?やばいやばい!!)」
万が一この部屋に侵入してきて、机の下を除かれたら終わりだ。うめき声が駄々洩れなので少し
注意力を働かせれば直ぐ見つかる。しかしこの机から出ようにも音は、すぐそこまで接近している
ので今から出るに出られない。対策を考えようにも頭が混乱して冷静な判断が出来ないので、最善
策が思い浮かばない。こうなってしまったら一か八か、両手で口を押えて強く歯を食いしばり強引
にうめき声をねじ伏せるようにするしかなかった。音が過ぎ去るのを待つしかない。
メグ「(見つかるな・・・見つかるな・・・早くいけ!くそったれが!!)」
バクバクと心臓音が彼女の耳に鳴り響く。胸が苦しい。姿勢もほぼ背中を丸めた状態なので態勢
も辛い。一刻も早く立ち去れ。そう願い続けてひたすら待った。・・・音が止んだ。静寂が訪れた
空間の中で彼女は、息を殺しながらゆっくりと机の中から這い出した。辺りを確認する。
メグ「(・・・誰もいない。っていう事はもうどっか行った?)」
音の主が何処か行ったことを確認し安堵する。脅威が去ったのだと。安堵して思わずため息をし
た。息を吐いて深呼吸をするため首が自然と上にあがる。薄暗い天井を見た。
見て気付いた
体が硬直した
僅かの間呼吸が止まった
口に咥えていたハンカチが零れ落ちた
見上げる天井に"何か"が張り付いていた
小さな雑音が部屋の中で鳴り響く
その"何か"の容姿は顔は狐型で、耳・鼻・目元がピンク色に染まっており、小奇麗な顔立ちをし
ていたが、逆に体の構造はバラバラになっており、胸元にピンク色のリボンを付けている以外は体
のパーツがぐちゃぐちゃに取り付けられていた。腕が二本体の右側に取り付けらていたり、足のパ
ーツが左右逆に配置されたり、体の至る所から二色の配線コードが剥きだされていた。極めつけは
その本体の背中に別の内骨格の頭が取り付けられていた。そのせいかその"何か"の存在がより不気
味さを表していた。思考停止した彼女とは別に、"何か"が天井からゆっくりと降りてきて接近して
きた。片目が欠如しているその顔が、まるで獲物を逃さないような雰囲気を漂わせる。まだ足を動
かせない。疲労と負傷に恐怖が重なり、メグは唯そこ立っているだけの状態となった。
次の瞬間
・・・彼女の視界が真っ暗となった。
"動き出した。決して存在してはならないものが"